育児休業の分割取得と産後パパ育休|制度の全体像・申請手続き・社保免除

育児休業の分割取得と産後パパ育休|制度の全体像・申請手続き・社保免除
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

「産後パパ育休と通常育休の違いがわからない」という人事担当者に向けて、分割取得ルール・申請手続き・社保免除条件を完全ガイドします。この記事を読めば、制度全体像を把握して従業員の問い合わせに即答できるようになります。

🏆 結論:2022年10月改正で男性は最大4回分割が可能に。社保免除は月末日在籍か月内14日以上で判定

2022年10月施行の育児・介護休業法改正により、①産後パパ育休(出生時育児休業、2回分割)、②通常の育児休業(2回分割)が創設され、男性は子の出生後最大4回の休業取得が可能になりました。社会保険料免除は「月末日に育休中」または「月内に14日以上育休取得」のいずれかを満たせば対象。2025年4月改正では両親14日以上取得で給付金が手取り10割相当に引き上げ。申請期限は産後パパ育休が2週間前、通常育休が1か月前です。

育児休業制度の全体像

育児休業制度は、育児・介護休業法第5条〜第9条の6で規定される、労働者が子の養育のために休業できる制度です。厚生労働省「育児・介護休業法特設サイト」によれば、2022年10月の大規模改正により、男性の育児参加を促進する枠組みが整備されました。労働基準法第65条(産前産後休業)と連動して運用されるため、両者の理解が必要です。

現行制度の3つの柱

制度 対象 取得時期 期間
産後パパ育休(出生時育児休業)父(または養親)出生後8週間以内通算4週間(28日)・2回分割可
通常の育児休業父母(養親含む)子が1歳になるまで(原則)2回分割可
延長育児休業父母1歳〜2歳特別な事情(保育園入園不可等)で延長

男性の最大取得パターン

男性は産後パパ育休2回+通常育休2回の合計最大4回の休業を取得できます。女性は産後休業(8週間)後に通常育休2回を取得できます。

産後パパ育休(出生時育児休業)の制度詳細

産後パパ育休の特徴

2022年10月に新設された、父親が出生後の初期に集中的に育児参加するための制度です。従来の育児休業より柔軟な取得が可能です。

制度の5つのポイント

  1. 対象期間:子の出生後8週間以内
  2. 取得可能日数:通算4週間(28日)
  3. 分割取得:2回まで分割可能(同時に申出必要)
  4. 休業中の就業:労使協定締結で最大10日まで可能
  5. 申請期限:原則2週間前まで(通常育休の1か月前より短い)

💡 産後パパ育休の独自機能「休業中の就業」

通常の育児休業と異なり、産後パパ育休では労使協定の締結を前提として、休業期間中の一部就業(最大10日、休業期間の半分以下)が認められています。プロジェクト対応などで完全に離れられない男性が、部分的に就業しながら育児参加できる柔軟な仕組みです。ただし就業日が多すぎると社会保険料免除の条件に影響するため、事前に日数設計が必要です。

申請手続きの流れ

産後パパ育休の申請は、原則として開始予定日の2週間前までに会社に申出る必要があります。通常育休(1か月前)より短い期間なので注意が必要です。

  1. 労働者が会社に申出書を提出(2週間前までに)
  2. 会社は速やかに休業開始日・終了日を通知
  3. 必要に応じて労使協定で就業日を協議
  4. 休業開始後、健康保険組合・年金事務所へ社保免除申出
  5. ハローワークへ出生時育児休業給付金の支給申請

通常の育児休業の制度詳細

基本的な仕組み

子が1歳になるまでの期間に取得できる長期の休業制度です。2022年10月から2回までの分割取得が可能になりました。

通常育休の5つのポイント

  1. 対象期間:原則として子が1歳に達する日まで
  2. 分割取得:2回まで分割可能(分割申出は各回別途でOK)
  3. 申請期限:原則1か月前まで
  4. 延長:特別な事情があれば1歳半、2歳まで延長可能
  5. 両親ともに育休:パパママ育休プラスで1歳2か月まで延長

産後パパ育休との違い

項目 産後パパ育休 通常育休
対象父親のみ父母両方
取得時期出生後8週間以内1歳まで(延長あり)
期間最大4週間最大1年(延長で2年)
分割2回まで(同時申出)2回まで(別々の申出可)
就業労使協定で最大10日可能原則不可
申請期限2週間前1か月前

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社会保険料免除の2つの判定ルール

免除対象となる社会保険料

育児休業期間中は、健康保険料と厚生年金保険料が労使双方とも免除されます。給与ベースの労働者負担分だけでなく、会社負担分も免除される点が大きな経済メリットです。

2022年10月改正後の免除判定ルール

月単位での社会保険料免除は、以下の2つのいずれかに該当すれば対象となります。

  1. ルールA(月末日基準):当該月の末日に育児休業を取得している
  2. ルールB(月内14日以上基準):同一月内に14日以上の育児休業を取得している(産後パパ育休の場合)

ルールBは2022年10月改正で追加されたもので、短期間の育休でも14日以上なら月内で社会保険料免除が受けられるようになりました。日本年金機構「育児休業等期間中の厚生年金保険料の免除」で詳細ルールを確認できます。

賞与の社会保険料免除ルール

賞与の社会保険料免除は、賞与支給月の末日を含む連続1か月を超える育休を取得している場合に適用されます。短期間の育休では賞与の社保免除は受けられません。

🧮 具体例:産後パパ育休の社保免除シミュレーション

Aさん(月給40万円・標準報酬月額41万円)が2026年4月30日〜5月13日(14日間)に1回目の産後パパ育休を取得した場合:

■4月分社保料:4月30日が育休中 → ルールA該当で免除
■5月分社保料:月内14日以上の育休取得 → ルールB該当で免除

■免除額概算(標準報酬月額41万円の場合)
・健保料(労使合計・東京都協会けんぽ):約41,000円/月
・厚年料(労使合計18.3%):約75,000円/月
・合計:約116,000円/月 × 2か月 = 約232,000円の免除

2025年4月改正|給付金の大幅拡充

出生後休業支援給付金の創設

2025年4月施行の改正により、両親がともに14日以上の育児休業を取得した場合、通常の育児休業給付金(休業前賃金の67%)に加えて、最大28日間にわたり休業前賃金の13%が上乗せ支給される「出生後休業支援給付金」が創設されました。

給付金の合計で手取り10割相当

育児休業給付金67%+出生後休業支援給付金13%=休業前賃金の80%(課税前)が支給されます。これに社会保険料免除と育休期間中の所得税非課税を加味すると、実質的に手取り10割相当となる仕組みです。

給付名 支給率 支給条件
育児休業給付金(通常分)67%(6か月経過後50%)雇用保険加入・休業前賃金の条件
出生時育児休業給付金67%産後パパ育休取得者
出生後休業支援給付金(2025年4月〜)+13%(最大28日)両親14日以上取得

休業の申請手続き|従業員から会社へ

申請書類

労働者が会社に提出する書類は主に以下のとおりです。会社が独自のフォーマットを用意することが一般的ですが、法定フォーマットはありません。

  • 育児休業申出書(出生時育児休業申出書)
  • 配偶者の就業状況に関する申出書(必要時)
  • 母子健康手帳のコピーまたは医師の証明書
  • 出生後の場合:住民票のコピーまたは出生届受理証明書

会社から行政への申請手続き

会社は従業員からの申出を受けて、以下の行政手続きを速やかに行います。

  1. 健康保険・厚生年金:「育児休業等取得者申出書」を年金事務所または健保組合へ提出
  2. 雇用保険:育児休業給付金の支給申請をハローワークへ(2か月に1回)
  3. 労働保険:特段の届出不要(賃金総額に基づく確定保険料で精算)

2025年10月改正|育休申出の撤回柔軟化・公表義務強化

育休申出撤回の柔軟化

2025年10月施行の改正により、育児休業の申出を開始前日まで撤回できるようになりました(従来は開始日前日まで、取下後は再取得不可)。本人の状況変化に応じた柔軟な対応が可能になりました。

300人超企業の公表義務

従業員300人超の企業に対し、男性の育児休業取得率の公表義務が強化されました。従来は1000人超だった義務対象が、300人超に拡大されています。公表先は厚生労働省の「両立支援のひろば」サイトです。

📢 2025年10月改正に対応した就業規則更新

既存の育児・介護休業規程で「育児休業の撤回は開始日の1か月前まで」と定めている会社は、「開始前日まで撤回可能」に変更する必要があります。また男性育休取得率公表の対象企業(300人超)は、公表義務がない旨の旧規定を削除する必要があります。

企業に求められる雇用環境整備

2022年4月から義務化された4つの措置

育児休業取得希望者の申出があった場合、企業は以下のいずれかを実施しなければなりません。

  1. 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
  2. 相談体制の整備(相談窓口設置等)
  3. 事例の収集・提供
  4. 制度と取得促進方針の周知

個別周知・意向確認の義務

従業員本人または配偶者の妊娠・出産等を把握した際に、育児休業制度を個別に周知し、取得意向を確認しなければなりません。書面・FAX・電子メール等の方法で記録に残す必要があります。

男性育休取得時の職場対応

業務引継ぎの実務

産後パパ育休は2週間前の申出で取得可能なため、突然の申出に備えた業務マニュアル整備と、複数名でカバーできる体制構築が必要です。

評価・昇給への配慮

育児休業取得を理由とした不利益取扱いは禁止されています(育介法第10条)。取得期間を評価対象から除外する、昇給時期を調整するなどの配慮が必要です。

💡 実務のポイント

弊所が顧問先で男性育休促進支援を行った事例では、IT企業(従業員80名)で男性育休取得率が導入前の10%から、導入後の翌年には70%まで向上しました。ポイントは、①男性の先行取得事例の社内広報、②管理職向け研修の徹底、③引継ぎマニュアルの統一化、の3つです。数値目標を設定した企業のほうが実際の取得率が高くなる傾向があります。

よくある質問

産後パパ育休と通常育休を両方取得できますか?
両方取得できます。産後パパ育休を出生後8週間以内に最大2回、その後通常育休を子が1歳になるまでに最大2回、合計4回まで分割取得が可能です。例えば出生後すぐに2週間(産パパ1回目)、6週目に2週間(産パパ2回目)、子が3か月時点で3か月間(通常育休1回目)、子が10か月時点で2か月間(通常育休2回目)といった柔軟な取得ができます。
パート・アルバイトも育児休業を取得できますか?
取得できます。2022年4月改正により、有期雇用労働者の取得要件が緩和され、「子が1歳6か月に達するまでの間に雇用契約が満了することが明らかでない」ことのみで取得可能になりました。入社1年以上という従前要件は労使協定で除外する場合を除き撤廃されています。
社会保険料免除の申請手続きは会社が行うのですか?
会社が行います。労働者が育児休業申出書を提出した後、会社は日本年金機構または健康保険組合に「育児休業等取得者申出書」を提出します。免除開始月から終了月の翌月まで反映されるため、届出を怠ると高額な社保料が従業員・会社双方に請求されるリスクがあります。
産後パパ育休中に就業する場合、給料はどうなりますか?
就業した日の賃金は通常通り支払います。ただし就業日数が多すぎると出生時育児休業給付金が減額または不支給となる場合があります。具体的には、休業期間中の就業日数が所定労働日数の半分を超えると給付金が支給されないため、労使協定で就業日数を事前に協議しておくことが重要です。
育休取得を理由に解雇・降格することは可能ですか?
不可能です。育児・介護休業法第10条により、育児休業の申出・取得を理由とする解雇・降格・給与減額等の不利益取扱いは明確に禁止されています。違反した場合は企業名公表の対象となる可能性もあるため、育休取得者に対する人事処分は極めて慎重に行う必要があります。
配偶者が専業主婦でも男性が育休を取れますか?
取れます。2022年4月改正により、配偶者の就業状況にかかわらず男性が育児休業を取得できるようになりました。「配偶者が専業主婦(夫)なら育休不要」という旧運用は廃止されています。就業規則に古い記載が残っている場合は速やかに改訂が必要です。
育休期間中の社会保険料は誰が負担しますか?
労使双方とも負担が免除されます。免除期間は年金の加入期間・給付計算に反映されるため、将来の年金受給額にマイナスの影響はありません。免除期間中も保険給付(出産手当金・医療保険給付)は通常どおり受けられます。就業規則の関連規定は「就業規則作成完全ガイド」も参考にしてください。

📋 この記事のポイント

  • 2022年10月改正で男性は最大4回(産パパ2回+通常2回)の分割取得が可能
  • 社保免除は月末日在籍または月内14日以上の2ルール。2022年10月に14日ルール追加
  • 2025年4月改正で両親14日以上取得により手取り10割相当の給付金支給
  • 2025年10月改正で育休撤回を開始前日まで可能に。300人超企業の公表義務化
  • 申請期限は産後パパ育休2週間前、通常育休1か月前。期限違いに注意

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