【社労士×税理士が解説】2025年育児・介護休業法改正の全ポイント|看護休暇拡充・柔軟な働き方5措置

【社労士×税理士が解説】2025年育児・介護休業法改正の全ポイント|看護休暇拡充・柔軟な働き方5措置
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

「2025年の育介法改正で自社の就業規則を何から直せばいい?」でお困りの経営者・人事担当者に向けて、2025年4月・10月の2段階施行で改正された11項目を完全ガイドします。この記事を読めば、自社の対応優先順位が決まり、就業規則改定と従業員周知のスケジュールを引けます。

🏆 結論:2025年改正は2段階施行・全事業者が対象・就業規則の改定が必須

2025年4月1日に9項目(子の看護等休暇・残業免除・テレワーク・介護離職防止等)、2025年10月1日に2項目(柔軟な働き方5措置・個別意向聴取)が施行されました。全11項目のうち、就業規則の改定が必要なのは子の看護等休暇・残業免除・短時間勤務代替措置・柔軟な働き方措置の4つ。育児休業取得状況の公表義務は従業員300人超企業に拡大、柔軟な働き方5措置は3歳〜就学前の子を持つ労働者が対象で、企業は選択肢から2つ以上を用意する必要があります。対応が遅れると是正勧告や企業名公表のリスクがあるため、未対応の企業は速やかに整備することが必要です。

2025年育児・介護休業法改正の全体像|2段階施行の11項目

2024年5月に改正育児・介護休業法(以下「育介法」)が成立し、2025年4月1日と10月1日の2段階で施行されました。この改正は「共働き・共育ての推進」「柔軟な働き方の支援」「介護離職防止」を3本柱とし、全事業者(労働者1人以上の全企業)に影響します。

結論から言えば、全11項目のうち企業規模を問わず対応が必須なのは9項目で、300人超企業のみ対象の項目が1つ、1,000人超企業が対象の項目が1つあります。順序立てて整備すれば難しくありませんが、就業規則の改定・個別意向聴取のフロー構築・管理職研修という3つの作業が並行して走るため、計画的な推進が必要です。

4月施行9項目と10月施行2項目の一覧

施行日 項目 分類 就業規則改定
2025/4/1①子の看護休暇→子の看護等休暇へ見直し育児✅必要
2025/4/1②所定外労働制限(残業免除)の対象拡大育児✅必要
2025/4/1③短時間勤務制度の代替措置にテレワーク追加育児✅必要
2025/4/1④育児のためのテレワーク導入(努力義務)育児推奨
2025/4/1⑤育児休業取得状況の公表義務拡大(300人超)育児不要
2025/4/1⑥介護休暇取得要件の緩和(勤続6か月未満除外撤廃)介護✅必要
2025/4/1⑦介護離職防止のための雇用環境整備介護関連規定
2025/4/1⑧介護に関する個別周知・意向確認介護関連規定
2025/4/1⑨介護のためのテレワーク導入(努力義務)介護推奨
2025/10/1⑩柔軟な働き方を実現するための5措置育児✅必要
2025/10/1⑪仕事と育児両立の個別意向聴取・配慮育児関連規定

このうち、就業規則の改定が明確に必要なのは①②③⑥⑩の5項目です。残業免除の対象が3歳未満から小学校就学前まで拡大されるなど、既存規程の条文修正が広範囲に及ぶため、専門家に規程例を確認しながら改定する運用が安全です。

【2025年4月施行①】子の看護等休暇の見直し|対象拡大と名称変更

改正の目玉の一つが「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」への名称変更と対象範囲の大幅拡大です。

変更点:取得事由の追加と対象年齢の拡大

項目 改正前 改正後(2025年4月〜)
名称子の看護休暇子の看護等休暇
対象年齢小学校就学前まで小学校3年生修了まで
取得事由病気・けが・予防接種・健康診断上記+感染症による学級閉鎖等・入園入学式・卒園式
労使協定除外勤続6か月未満を除外可勤続6か月未満の除外を撤廃
取得日数子1人年5日・2人以上年10日同上(変更なし)

対象年齢が就学前から小学校3年生修了までに延長され、インフルエンザによる学級閉鎖で自宅待機する場合でも、子ども本人が罹患していなくても取得可能になりました。卒園式・入学式での取得も明文化されており、共働き世帯からの問い合わせが増えているため、人事担当者は対応フローを整理しておく必要があります。

💡 実務のポイント

「有給とは別に年5日の看護等休暇を使えるのか、一度に使い切っていいのか」という質問が従業員から多く寄せられます。看護等休暇は年次有給休暇とは別枠で、1日または時間単位で取得できます。半日単位の定めは廃止され、時間単位取得が原則です。賃金の有給・無給は企業判断ですが、無給の場合も育児休業給付金のような国の補填はないため、就業規則で明確に定めておく必要があります。

【2025年4月施行②】所定外労働制限(残業免除)の対象拡大

労働者から請求があれば残業(所定外労働)をさせてはならないとする「所定外労働の制限」の対象が拡大されました。

これにより、子が小学校に入学するまで残業免除の請求が可能になります。企業側は、労働者からの請求があれば原則として残業をさせられません(事業の正常な運営を妨げる場合を除く)。人員計画や業務配分の見直しが必要になるケースが増えるため、管理職は早期に対応フローを確認しておくべきです。

【2025年4月施行③】短時間勤務制度の代替措置にテレワーク追加

3歳未満の子を養育する労働者に対する短時間勤務制度(1日6時間)について、業務の性質上導入が困難な場合の代替措置として、従来の「始業時刻の変更」「育児休業に準ずる措置」に加え、「テレワーク」が選択肢に追加されました。

実務では、製造業や店舗小売業など物理的な職場勤務が必須の業種で、短時間勤務制度の導入が困難なケースがあります。これらの業種では、一部業務のみテレワーク化して代替措置とする運用も可能となりました。就業規則の代替措置の選択肢にテレワークを明記する改定が必要です。

【2025年4月施行④】育児のためのテレワーク導入(努力義務)

3歳未満の子を養育する労働者について、テレワークを選択できるような措置を講じることが努力義務として新設されました。義務ではなく努力義務のため罰則はありませんが、厚労省は就業規則での整備を推奨しています。テレワーク環境が整っている企業は、育児期の継続就業促進という観点から積極的に導入することを検討すべきです。

【2025年4月施行⑤】育児休業取得状況の公表義務拡大

従業員300人超の企業に対して、男性労働者の育児休業取得率または育児休業および育児目的休暇の取得率を年1回公表することが義務化されました(従来は1,000人超企業のみ)。

📢 公表義務の対象企業と公表方法

対象企業:常時雇用する労働者数が300人を超える事業主
公表事項:①男性の育児休業等取得率 または ②男性の育児休業等および育児目的休暇取得率
公表方法:自社ホームページまたは厚労省「両立支援のひろば」等で毎年1回公表
計算期間:公表前事業年度の男性育休取得率(特定のフォーマットで計算)

計算方法は厚生労働省「育児・介護休業法について」で詳細に公開されており、「育児休業等をした男性労働者数÷配偶者が出産した男性労働者数」で算出します。公表を怠った場合は指導・勧告の対象となり、悪質な場合は企業名公表もあり得るため、人事担当者は公表期限を逃さないよう管理が必要です。

【2025年4月施行⑥〜⑨】介護に関する改正4項目

介護離職防止のため、介護関連の制度整備が大幅に強化されました。

⑥介護休暇の取得要件緩和

介護休暇について、労使協定による「勤続6か月未満の労働者を対象外とする」定めが廃止されました。これにより、入社直後の従業員でも介護休暇が取得可能になります。既存の労使協定にこの除外規定がある場合は、速やかに改定が必要です。

⑦介護離職防止のための雇用環境整備

事業主は以下のいずれかを講じる義務があります。

複数を選択することが望ましく、実務では相談窓口設置+管理職研修の組合せが定番です。

⑧介護に関する個別周知・意向確認

労働者が介護に直面したことを申し出た場合、事業主は個別に制度内容を周知し、利用意向を確認する義務があります。さらに、40歳前後の労働者には介護に直面する前の早期段階で情報提供することが義務化されました。

💡 実務のポイント

40歳前後の早期情報提供は「40歳到達時の1回」「40歳到達後の一定期間内1回」のいずれかで実施します。実務では「40歳の誕生月に人事から個別メールで介護制度のパンフレットを送付する」運用が現実的です。対象者リストの整備と送信スケジュールの管理が必要になるため、人事システム上で自動抽出できる仕組みを作ると工数削減になります。

⑨介護のためのテレワーク導入(努力義務)

要介護状態にある対象家族を介護する労働者について、テレワークを選択できるような措置を講じることが努力義務となりました。介護離職を防ぐための重要な選択肢として位置づけられています。

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【2025年10月施行⑩】柔軟な働き方を実現するための5措置

2025年10月1日から、3歳〜小学校就学前の子を養育する労働者について、事業主は柔軟な働き方を実現する措置として、以下の5つから2つ以上を選択して講じる義務があります。

5つの措置の一覧

措置 概要 主なメリット
①始業時刻等の変更時差出勤・フレックスタイム制保育園送迎との両立が容易
②テレワーク等(月10日以上)在宅勤務・モバイルワーク(時間単位OK)通勤負担の解消・家事育児との両立
③保育施設の設置運営等事業所内保育施設・ベビーシッター補助等保育の確保・復職支援
④養育両立支援休暇(年10日以上)就業しつつ子を養育する新しい休暇学校行事・予防接種等に柔軟対応
⑤短時間勤務制度1日の所定労働時間の短縮業務負担の軽減
⭐ 導入実例が多いのは②テレワークと⑤短時間勤務

労働者は企業が用意した2つ以上の措置の中から1つを選択して利用できます。措置を選ぶ際は、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)からの意見聴取が必要です。中小企業の場合、既存の短時間勤務制度と新規導入のテレワーク制度の組合せが最も導入コストが低く、現実的です。

養育両立支援休暇という新しい選択肢

5措置の中でもっとも新しい概念が「養育両立支援休暇」(年10日以上)です。これは育児休業ではなく、就業しながら子を養育するために年間10日以上与える休暇で、学校行事・予防接種・保育所の急な休園等に対応する位置付けです。子の看護等休暇(年5日/10日)とは別枠として設計することが可能で、従業員の満足度向上につながります。

【2025年10月施行⑪】仕事と育児両立の個別意向聴取・配慮

子が3歳に達する前(1歳11か月〜2歳11か月の時期)までに、事業主は以下を行う義務があります。

  1. 個別周知:柔軟な働き方5措置の中から企業が講じた措置の内容を労働者に周知
  2. 意向確認:労働者がどの措置を利用するかの意向を面談またはオンライン面談で確認
  3. 配慮:聴取した意向を踏まえ、労働者の事情に応じた配慮を実施

周知・意向確認の方法は、①面談(オンライン可)、②書面交付、③労働者が希望した場合はFAX・電子メール等(記録を出力して書面作成可能なもの)が認められています。実務では、3歳到達前の対象者を人事システムで自動抽出し、個別面談を設定する運用が定着しつつあります。

企業対応チェックリスト|優先順位別に整理

改正対応は段階的に進める必要があります。以下のチェックリストを優先順位順に活用してください。

✅ 対応優先順位チェックリスト

【最優先:就業規則改定】

  • □ 子の看護等休暇の条項を改定(名称・対象年齢・取得事由・勤続要件)
  • □ 所定外労働制限の対象を「小学校就学前」に拡大
  • □ 短時間勤務代替措置にテレワークを追加
  • □ 介護休暇の労使協定「勤続6か月未満除外」条項を削除
  • □ 柔軟な働き方5措置のうち2つを選択し規程化

【次優先:運用フロー整備】

  • □ 介護に関する個別周知・意向確認のフロー構築
  • □ 40歳前後の労働者への介護制度情報提供の仕組み
  • □ 仕事と育児両立の個別意向聴取・配慮のフロー構築
  • □ 管理職・従業員向けの研修実施

【300人超企業のみ】

  • □ 男性育休取得率の公表準備(両立支援のひろば登録含む)

未対応の場合のリスクと企業名公表

育介法違反があった場合、以下のリスクがあります。

⚠️ 未対応企業のリスク

①行政からの指導・勧告:都道府県労働局から是正を求められ、従わない場合は勧告に進む
②企業名公表:勧告に従わない悪質な場合、企業名が公表される(育児・介護休業法56条の2)
③過料:報告義務違反等に対して20万円以下の過料
④採用・リテンションへの悪影響:両立支援が不十分な企業は若年層の採用で敬遠されやすい
⑤民事上の損害賠償:違法な取扱いを受けた労働者から損害賠償請求を受ける可能性

実務では、行政指導の段階で速やかに対応すれば企業名公表に至るケースは多くありませんが、是正指導を無視すると悪質と判断されるため、指導を受けた場合は弁明の機会を活用しつつ期限内に改善することが重要です。

助成金活用のチャンス|両立支援等助成金

育介法対応のコストを抑えるため、厚生労働省の「両立支援等助成金」を活用する方法があります。

両立支援等助成金の主なコース

コース名 概要 支給額目安
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)男性の育休取得者がいる中小企業20万円〜60万円
育児休業等支援コース育休取得・職場復帰支援に取り組む中小企業30万円〜60万円
介護離職防止支援コース介護休業の取得・職場復帰を支援する中小企業30万円〜60万円
柔軟な働き方選択制度等支援コース柔軟な働き方の選択肢を導入した中小企業20万円〜60万円

※支給額・要件は年度により変動します。詳細は厚労省サイトまたは社労士にご確認ください。

💡 実務のポイント

助成金は就業規則の改定タイミングと申請要件がリンクするため、改定前に申請計画を立てる必要があります。「先に就業規則を改定してから申請」という順序では要件を満たせないケースがあるため、助成金活用を前提とする場合は社労士と事前相談することをお勧めします。

よくある質問

2025年10月施行の柔軟な働き方5措置はすべての企業に義務ですか?
はい、労働者1人以上を雇用する全事業主が対象です。ただし、企業は5つの措置から2つ以上を「選択して」講じればよく、5つすべてを用意する必要はありません。業種や規模に応じて現実的な組み合わせを選べます。
就業規則の改定を怠るとすぐに罰則を受けますか?
いきなり罰則に進むことはありません。まず都道府県労働局から是正指導があり、従わない場合に勧告、それでも改善しない悪質な場合に企業名公表という段階を踏みます。指導を受けた段階で速やかに対応すれば大きな問題にはなりません。
男性育休取得率の公表義務は何人以上の企業が対象ですか?
2025年4月以降は常時雇用労働者数が300人を超える企業が対象です。従来は1,000人超企業のみでしたが対象が拡大されました。自社ホームページまたは厚労省「両立支援のひろば」等で公表します。
子の看護等休暇は有給ですか、無給ですか?
法律上は有給・無給のいずれも認められており、企業が就業規則で定めます。実務では無給とする企業が多いですが、人材確保の観点から有給化する企業も増えています。無給の場合でも国から給付金は支給されません。
介護に関する40歳前後の情報提供は具体的にいつ行えばよいですか?
①40歳到達時の1回、または②40歳到達後の一定期間内(例:45歳到達時まで)に1回のいずれかで実施します。実務では40歳の誕生月に人事から個別メールで介護制度のパンフレットを送付する運用が一般的です。
柔軟な働き方5措置を導入する際に必要な手続きは?
①過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)からの意見聴取、②2つ以上の措置を就業規則に規定、③労働者への個別周知・意向確認の仕組み構築が必要です。意見聴取の記録は保管しておくことをお勧めします。
育児・介護休業規程は自社で作成できますか?
厚生労働省が規定例(簡易版・詳細版)を公表しているため、これをベースに自社用にカスタマイズすれば作成可能です。ただし自社の既存規程との整合性、労使協定の改定、助成金申請要件との整合など、専門的判断が必要な箇所が多いため、社労士に依頼する企業が多数です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 2025年育介法改正は4月施行9項目・10月施行2項目の2段階施行で、全事業者が対象
  • 就業規則改定が必須なのは①子の看護等休暇②残業免除③短時間勤務代替措置⑥介護休暇要件⑩柔軟な働き方5措置の5項目
  • 子の看護等休暇は対象年齢が小学校3年生修了までに拡大、感染症による学級閉鎖・入園入学式も取得事由に追加
  • 柔軟な働き方5措置(10月施行)では、事業主は5つから2つ以上を選択、労働者は1つを選択利用
  • 育児休業取得状況の公表義務が300人超企業に拡大(従来は1,000人超)
  • 介護に関する40歳前後の早期情報提供が義務化、介護に直面した労働者への個別周知・意向確認も義務
  • 違反時は指導・勧告・企業名公表のリスク、両立支援等助成金の活用で対応コストを圧縮可能

✅ 次のアクション

2025年の育児・介護休業法改正は、企業の両立支援体制を大きく変える内容です。対応は就業規則の改定、運用フローの構築、管理職研修の3点が並行しますが、優先順位を明確にすれば計画的に進められます。改正対応でお困りの際は、鮎澤パートナーズへご相談ください。社会保険労務士・税理士・公認会計士・行政書士が4士業のワンストップ体制で、規程改定から助成金活用までトータルで支援いたします。

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