【税理士が解説】育児・介護休業中の社会保険料免除と給付金の全体像|月末ルール・14日ルール完全整理

監
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
【社労士×税理士が解説】育児・介護休業中の社会保険料免除と給付金の全体像|月末ルール・14日ルール完全整理
「産後パパ育休の社保料はどの月まで免除される?」「介護休業にも社保料免除はある?」でお困りの給与計算担当者・人事担当者に向けて、育児休業の社保料免除3ルール、介護休業に免除がない理由、給付金と合算した実質手取りの全体像を完全ガイドします。この記事を読めば、月末・14日・賞与の各ルールを正確に判定でき、社員への説明も的確に行えます。
🏆 結論:育児休業には3種類の社保料免除ルール、介護休業には免除なし
育児休業中の社会保険料免除は「①月末時点ルール」「②同月14日以上ルール(2022年10月改正)」「③賞与1か月超ルール」の3種類で判定します。月をまたぐ場合は月末時点ルールのみ適用され、14日ルールは同一月内の育休でのみ有効です。介護休業には社保料免除制度はなく、休業中も本人負担分が発生し続けます。育休給付金は非課税+保険料免除+雇用保険料ゼロの三重効果で手取り実質100%近くをカバーしますが、介護休業給付金は非課税だが社保料負担ありのため手取りは約50%程度にとどまります。給与計算担当者は免除判定フローを可視化し、月次給与計算に組み込むことが必須です。
育児・介護休業中の社保料と給付金|全体像を1枚で把握
育児休業と介護休業は、一見似た制度ですが、社会保険料免除と給付金の設計思想が大きく異なります。まず全体像を整理します。
| 項目 |
育児休業 |
介護休業 |
| 健康保険料の免除 | ✅あり(本人・会社双方) | ❌なし |
| 厚生年金保険料の免除 | ✅あり(本人・会社双方) | ❌なし |
| 雇用保険料 | 賃金不支給のため0円 | 賃金不支給のため0円 |
| 住民税 | 前年所得に対し課税継続 | 前年所得に対し課税継続 |
| 給付金(雇用保険) | 育休給付金67%(6か月以降50%)+出生後休業支援13% | 介護休業給付金67% |
| 給付金の課税 | 非課税 | 非課税 |
| 実質手取り補填率 | 約90〜100%(対象期間・所得による) | 約45〜55% |
| 年金受給額への影響 | なし(免除期間も保険料納付扱い) | なし(通常の納付) |
最大の違いは「社会保険料免除の有無」です。育児休業は次世代育成支援の観点から健康保険法・厚生年金保険法で免除が明記されていますが、介護休業は創設当初から免除制度が設けられておらず、現在も対象外のまま運用されています。これは実務上大きな手取り差を生み、従業員への説明でも誤解の多いポイントです。
育児休業の社保料免除|3つの判定ルール
育児休業中の社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の免除は、以下の3つのルールで判定します。
ルール①:月末時点で育休中
月末時点(当該月の末日)で育児休業を取得している場合、その月の保険料が免除されます。これは育休制度創設以来の基本ルールで、「月末ルール」と呼ばれます。
🧮 判定例:月末ルール
【ケース】育児休業期間:7月10日〜9月3日
【判定】
・7月末:育休中 → 7月分保険料 免除
・8月末:育休中 → 8月分保険料 免除
・9月末:育休終了後 → 9月分保険料 通常控除
ルール②:同月内で14日以上の育休取得(2022年10月改正)
月をまたがず、開始日と終了予定日の翌日が同一月内にあり、その月内の育児休業期間が14日以上の場合、月末に育休中でなくても、その月の保険料が免除されます。産後パパ育休(最大28日)の創設に合わせて2022年10月に導入された新ルールです。
🧮 判定例:14日ルール(同月内)
【ケース1】産後パパ育休:10月2日〜10月17日(16日間、同一月内)
→ 月末10月31日には育休中ではないが、10月中に16日間(≥14日)取得 → 10月分免除
【ケース2】育休:11月20日〜12月15日(月をまたぐ、12月中14日以上)
→ 11月末は育休中 → 11月分免除(月末ルール)
→ 12月中に14日以上だが、12月の育休は月末を含まず開始日と終了日の翌日が同一月でない → 12月分は免除されない
⚠️ よくある誤解:14日ルールは月またぎでは使えない
「月内で14日以上育休を取れば免除」というルールを拡大解釈し、月をまたぐケースでも14日ルールが適用されると誤解する給与計算担当者が少なくありません。正しくは「開始日と終了予定日の翌日が同一月」という条件が付きます。月をまたぐ場合は月末ルールでしか判定できず、月末に育休中でなければ原則免除されません。このルールを誤ると保険料控除漏れ・過大控除が発生し、復職後の給与精算でトラブルになります。
ルール③:賞与保険料の1か月超ルール
賞与にかかる社会保険料は、賞与支給月の末日を含んで連続1か月を超える育児休業等を取得した場合に限り免除されます。1か月ちょうどでは不可で、「暦日+1日以上」が必要です。
🧮 判定例:賞与1か月超ルール
【ケース1】育児休業:11月20日〜12月25日(36日間、12月末を含む)
→ 11月支給の賞与は1か月超の育休取得 → 11月支給賞与の保険料 免除
→ 12月支給の賞与は育休期間が12月末を含まない → 12月支給賞与の保険料 通常控除
【ケース2】産後パパ育休28日間のみ
→ 1か月を超えないため、賞与支給月の賞与保険料は免除されない
💡 実務のポイント
賞与支給月が育休期間に重なる場合、1か月ちょうどか1か月超かで結果が大きく変わります。賞与の標準賞与額が100万円なら社保料本人負担は約15万円、この免除の有無は家計に直撃します。育休期間を設計する際は、賞与支給月を挟んで1か月+1日以上とする運用を検討する価値があります。
免除判定フローチャート|月次給与計算での実務手順
給与計算担当者が毎月判定するフローを以下に示します。
📋 育休中社保料免除の判定フロー(毎月)
STEP 1: 当該従業員が当該月に育児休業(出生時育休・産後パパ育休を含む)を取得しているか?
→ YESなら STEP 2 へ。NOなら通常控除。
STEP 2: 月末時点で育休中か?
→ YESなら 当月分免除(月末ルール適用)。NOなら STEP 3 へ。
STEP 3: 開始日と終了予定日の翌日が同一月か?
→ YESなら STEP 4 へ。NOなら 通常控除。
STEP 4: 当該月内の育休日数が14日以上か?
→ YESなら 当月分免除(14日ルール適用)。NOなら 通常控除。
STEP 5(賞与のみ): 賞与支給月の末日を含む連続育休が1か月を超えるか?
→ YESなら 賞与保険料免除。NOなら 通常控除。
届出書類の整備
社保料免除を受けるには、「健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書」を年金事務所に提出する必要があります。詳細な書式と記入例は日本年金機構「育児休業等による保険料免除」で確認できます。必要書類・提出先は以下のとおりです。
- 健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書(新規)
- 育児休業期間の変更・終了時の申出書
- 添付書類:なし(会社が事実確認した上で提出)
- 提出先:事業所を管轄する年金事務所または事務センター
- 提出期限:育児休業等取得期間中または終了日から起算して1か月以内
介護休業に社保料免除がない理由と実務対応
介護休業では、育児休業と異なり社会保険料の免除制度がありません。これは制度設計上の理由があります。
免除がない制度上の背景
- 育児休業は「次世代育成支援」という国策的位置づけで、経済的負担軽減措置として社保料免除が明文化されている
- 介護休業は93日が上限と比較的短期であり、所得補填は給付金(67%)で対応する設計
- 介護休業は取得回数が限定的で、社保料負担が長期化するケースが少ない前提
介護休業中の社保料精算方法
介護休業中も本人負担分の社保料が発生するため、会社は以下のいずれかで精算します。
| 方法 |
運用 |
メリット/デメリット |
| ①会社立替→復職後精算 | 会社が一旦立替、復職後の給与から分割控除 | 従業員の手元が楽/会社は一時的に立替負担 |
| ②毎月本人振込 | 従業員が毎月会社指定口座へ本人負担分を振込 | 会社の立替不要/従業員は毎月対応が負担 |
| ③給付金受給後一括精算 | 給付金支給後にまとめて振込・控除 | タイミング調整が柔軟/金額が大きくなる |
💡 実務のポイント
実務では①会社立替方式が最も多く採用されます。ただし復職後に一括控除すると手取りがマイナスになるケースがあるため、分割控除(3〜6か月)を書面で合意しておくことが重要です。合意書には控除金額・控除期間・復職時点での立替総額を明記し、給与明細にも立替精算として別建てで表示する運用が後日のトラブル回避に有効です。
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給付金と社保料免除の組合せシミュレーション
育児休業と介護休業で、給付金+社保料免除の累積効果が手取りにどう反映されるかを比較します。
📐 シミュレーション前提条件
- 月収40万円(標準報酬月額410,000円として計算)
- 本人負担社保料率:健康保険5%+厚生年金9.15%+雇用保険0.6%=約14.75%
- 税率:所得税10%+住民税10%=約20%(育休中も住民税は継続)
- 休業前の手取り:月額約30.7万円
- 給付率:育休67%、介護休業67%
比較表:育児休業 vs 介護休業(月収40万円)
| 項目 |
育児休業 |
介護休業 |
| 給付金(月額・67%) | 268,000円 | 268,000円 |
| 給付金の課税 | 非課税(実質+0円) | 非課税(実質+0円) |
| 健康保険料負担 | 0円(免除) | -20,500円(本人負担あり) |
| 厚生年金保険料負担 | 0円(免除) | -37,515円(本人負担あり) |
| 住民税 | -約25,000円 | -約25,000円 |
| 月額実質手取り | 約243,000円 | 約185,000円 |
| 休業前手取り比 | 約79% | 約60% |
※簡易シミュレーションです。出生後休業支援給付金加算(+13%)や扶養控除等で数値は変動します。
同じ「67%給付」でも、社保料免除の有無で実質手取りに月約6万円の差が生じます。育児休業はさらに出生後休業支援給付金(+13%)が最大28日間上乗せされるため、この期間は実質手取り100%近くまで回復します。一方、介護休業は給付金のみで社保料負担がフルに発生するため、手取りベースで約60%にとどまります。
年金・健康保険への影響と復職後の取り扱い
免除期間も年金額に算入される
育児休業で社保料が免除された期間は、将来の年金額計算において「保険料を納付したもの」として扱われます。厚生年金では、育児休業期間中の標準報酬月額が低下した場合でも、育児休業前の標準報酬月額をベースに年金額が計算される「養育期間の従前標準報酬月額みなし措置」もあります。
📢 養育期間の従前標準報酬月額みなし措置
3歳未満の子を養育する労働者が、育児のために労働時間短縮等で標準報酬月額が低下した場合、低下前の標準報酬月額を年金額計算の基礎とできる制度です。申出が必要で、「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を会社経由で年金事務所に提出します。将来の受給年金額を守るための重要な措置で、従業員への周知を忘れないことが重要です。
復職後の標準報酬月額の再決定(月変)
育休から復帰後、短時間勤務等で給与が減少した場合、通常の月額変更届ではなく「育児休業等終了時の月額変更」または「3歳未満の子の養育に係る月額変更」の特例を使えます。
- 通常の月変:固定的賃金の変動があり、変動月以後3か月平均で2等級以上の差が生じた場合
- 育休終了時の月変特例:育休から復帰直後3か月間の平均報酬で月額変更。2等級差不要、非固定的賃金変動でも可、3か月のうち17日以上の月の報酬で計算
復職直後に正確な標準報酬月額を見直すことで、翌月以降の社保料負担を適正水準にできます。
よくある質問
産後パパ育休14日間で確実に社保料免除を受けるには?
同一月内で開始〜終了が完結し、かつ14日以上の取得であれば免除されます。月をまたぐ場合は月末時点の育休中か否かで判定されるため、月末を含む取得計画にするか、同一月内完結とするかを事前に設計してください。
育休期間中に賞与が支給される場合、確実に賞与の社保料を免除するには?
賞与支給月の末日を含んで連続1か月を超える育休(暦日+1日以上)を取得する必要があります。たとえば12月支給賞与の場合、11月下旬〜12月末+1月1日までを含む育休を取ると、12月支給分の賞与保険料が免除されます。
介護休業中に社保料を立て替えずに従業員に負担させる方法はありますか?
可能です。毎月従業員が会社指定口座に本人負担分を振り込む方式や、給付金受給後に一括精算する方式があります。ただし従業員にとっては毎月の負担が継続するため、会社立替+復職後分割控除が実務的に最もスムーズです。
育休明けの月額変更特例と通常の月変はどちらが有利ですか?
育休明け月変特例の方が有利なケースが多いです。2等級差不要、3か月中17日以上の月を算定対象にできるため、時短勤務で給与が減った場合でもすぐに標準報酬月額を下げられます。本人の社保料負担が早期に軽減される一方、将来の年金額は標準報酬月額の低下に連動しますが、養育期間の従前標準報酬月額みなし措置を併用すれば年金額は従前水準で計算されます。
住民税はなぜ育休中も支払うのですか?
住民税は前年の所得に対して課税されるため、前年に所得があった労働者は翌年度分を支払う必要があります。会社が特別徴収している場合は、育休中は従業員が普通徴収で自己納付するか、会社が立替えて復職後に精算する方式を取ります。育休3年目以降は前年所得がほぼゼロとなり、住民税もゼロに近くなります。
社保料免除の申出を忘れた場合、遡って免除されますか?
免除はされますが、遡及申請は複雑になります。「健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書」を年金事務所に遅れて提出することで、結果的には免除扱いとなります。ただし既に控除済みの保険料の還付手続きが必要になり、会社の給与計算の遡及修正も発生するため、速やかな提出が望ましいです。
派遣社員・パートでも育休の社保料免除を受けられますか?
健康保険・厚生年金保険の被保険者であれば、雇用形態を問わず免除対象となります。週20時間以上等の社保加入要件を満たしているパートは被保険者であり、免除申請が可能です。一方、社保未加入の短時間パートは対象外です。
まとめ
📋 この記事のポイント
- 育児休業には①月末ルール②同月14日以上ルール③賞与1か月超ルールの3種類の社保料免除がある
- 14日ルールは「開始日と終了予定日の翌日が同一月」の場合のみ適用、月またぎでは使えない
- 賞与保険料免除は支給月末日を含む連続1か月超の育休が必要(1か月ちょうどは不可)
- 介護休業には社保料免除制度がなく、休業中も本人負担分が発生するため会社立替+復職後精算が実務の標準
- 同じ67%給付でも、社保料免除の有無で実質手取りに月6万円以上の差が生じる
- 育休免除期間も年金額に算入され、養育期間の従前標準報酬月額みなし措置で受給年金額が保護される
- 復職後の短時間勤務では「育休終了時月変特例」で社保料を早期に下げられる
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