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医療法人の持分に関する相続税・贈与税の特例
持分あり医療法人の出資者が亡くなった場合の相続税が心配な理事長・出資者に向けて、4つの税制優遇特例の全容を解説します。この記事を読めば、認定医療法人の要件・移行の手順・各特例の使い分けを理解できます。


持分あり医療法人の出資者が亡くなった場合の相続税が心配な理事長・出資者に向けて、4つの税制優遇特例の全容を解説します。この記事を読めば、認定医療法人の要件・移行の手順・各特例の使い分けを理解できます。
🏆 結論:認定医療法人への移行が最も効果的な相続税対策
持分あり医療法人(経過措置型医療法人)の持分は相続財産として相続税の課税対象となり、評価額が数億円に達することも珍しくありません。認定医療法人への移行を前提とした4つの税制特例(相続税の納税猶予・税額控除、贈与税の納税猶予・税額控除)を活用すれば、移行期限(最長3年)内に持分を全て放棄することで猶予税額が免除されます。移行計画の認定期限は令和8年12月31日です。
平成19年(2007年)3月31日以前に設立された医療法人は「持分の定めのある社団医療法人」(経過措置型医療法人)と呼ばれ、出資者が医療法人に対して持分(財産権)を有しています。出資者が死亡すると、この持分が相続財産として相続税の課税対象になります。
医療法人は配当が禁止されているため法人内に利益が蓄積されやすく、設立から数十年を経た医療法人では持分の評価額が数億円〜数十億円に達するケースが珍しくありません。しかし持分は換金性がないため、納税資金の確保が大きな課題となります。
⚠️ 注意
持分の評価は「取引相場のない株式」の評価方法に準じて行われ、類似業種比準方式や純資産価額方式で算定します。医療法人は配当禁止のため利益蓄積が大きく、一般的な中小企業よりも評価額が高くなりやすい傾向があります。実務では「思った以上に高い評価額に驚く」ケースが頻繁にあります。
医療法人の持分に関する税制特例は、相続税と贈与税それぞれに「納税猶予」と「税額控除」の2種類があり、合計4つです。
| 特例 | 対象 | 効果 | 免除条件 |
|---|---|---|---|
| ①相続税の納税猶予 | 持分を相続した相続人 | 持分対応の相続税を猶予 | 移行期限内に持分全部を放棄 |
| ②相続税の税額控除 | 申告期限までに持分を放棄した相続人 | 放棄部分の相続税を控除 | 申告期限までに放棄完了 |
| ③贈与税の納税猶予 | 他の出資者の放棄で経済的利益を受けた出資者 | 経済的利益の贈与税を猶予 | 移行期限内に自己の持分全部を放棄 |
| ④贈与税の税額控除 | 他の出資者の放棄で経済的利益を受けた出資者 | 放棄部分の贈与税を控除 | 放棄完了 |
参考: 国税庁「No.4150 医療法人の持分についての相続税の納税猶予の特例」
💡 実務のポイント
①と②は選択適用ではなく、状況に応じて使い分けます。相続開始後すぐに持分を放棄できるなら②の税額控除が手続きもシンプル。放棄に時間がかかる場合は①の納税猶予で移行期限まで時間を確保し、その間に全出資者の合意形成を進めます。実務では①と③を組み合わせて使うケースが最も多いです。
4つの税制特例を受けるには、医療法人が「認定医療法人」であることが前提です。認定医療法人とは、持分あり医療法人から持分なし医療法人への移行計画について厚生労働大臣の認定を受けた医療法人を指します。
社員総会で移行について議決していること、移行計画(最長3年以内の移行期限を設定)を策定していること、法人の運営が適正であること(役員報酬・親族割合等の基準)が主な要件です。
📢 認定期限に注意
認定医療法人の認定期限は令和8年(2026年)12月31日です。相続税の税額控除の特例も、相続税の申告期限または令和8年12月31日のいずれか早い日までに認定を受ける必要があります。移行を検討中の医療法人は、早急に計画策定を開始してください。
認定医療法人を経由して持分なし医療法人に移行する全体のステップは以下のとおりです。
| ステップ | 手続き内容 | 提出先 |
|---|---|---|
| ①合意形成 | 社員総会で移行の議決 | — |
| ②認定申請 | 移行計画を作成し厚生労働大臣に認定申請 | 厚生労働省 |
| ③持分放棄 | 全出資者が持分を放棄 | — |
| ④定款変更 | 持分に関する定款の変更・認可 | 都道府県 |
| ⑤移行完了報告 | 厚生労働省へ実施状況を報告 | 厚生労働省 |
| ⑥運営状況報告 | 移行完了後6年間、毎年運営状況を報告 | 厚生労働省 |
AYUSAWA PARTNERS
医療法人の持分対策は鮎澤パートナーズへ
初回相談無料。公認会計士・税理士が持分の評価から認定医療法人の移行計画策定まで一貫して対応します。
鮎澤パートナーズに相談する持分あり医療法人のまま対策を取らない場合、以下の3つのシナリオで大きな税負担が発生します。
持分が相続財産となり、相続人に相続税が課税されます。相続人が納税資金を確保するため医療法人に払戻しを請求すると、医療法人の資金繰りが悪化し、医業の継続に支障をきたす可能性があります。
放棄した出資者自身には課税されませんが、残りの出資者の持分価値が上昇するため、残りの出資者に贈与税が課税されます。持分評価額が10億円で2人の出資者が50%ずつ持つ場合、一方が放棄するとその5億円分について他方に贈与税が発生します。
医療法人に対して贈与があったとみなされ、相続税法第66条第4項の規定により医療法人に贈与税が課税される可能性があります。ただし、認定医療法人であれば一定の要件を満たすことでこの贈与税は非課税となります。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 持分5億円 | 持分10億円 | 持分15億円 |
|---|---|---|---|
| 通常の相続税(特例なし) | 約1億2,000万円 | 約3億2,000万円 | 約5億5,000万円 |
| 持分放棄後の相続税 | 約160万円 | 約160万円 | 約160万円 |
| 節税効果 | 約1億1,840万円 | 約3億1,840万円 | 約5億4,840万円 |
※概算値です。配偶者の税額軽減は考慮していません。正確な計算は税理士にご相談ください。
持分を全部放棄して持分なし医療法人に移行すれば、相続財産から持分が除外されるため、残りの個人財産(自宅+預貯金)のみに相続税がかかります。持分評価額が大きいほど節税効果は絶大です。
医療法人の持分に関する特例は、法人版事業承継税制(非上場株式の納税猶予)とは別の制度です。法人版事業承継税制は「株式を保持しながら税金を猶予する」制度ですが、医療法人の特例は「持分を放棄して持分なし法人に移行する」ことが免除の条件です。
つまり、医療法人の特例は「持分を手放す」ことが前提であり、出資者としての財産権を失う代わりに相続税・贈与税の負担がなくなるという構造です。事業承継税制全般については「事業承継税制とは?法人版・個人版の適用要件と特例措置を完全ガイド」をご覧ください。
持分なし医療法人への移行が困難な場合や、移行までの間の対策として、持分の評価額を引き下げる方法もあります。主な手法は、①理事長への退職金の支給(利益の社外流出により純資産を減少させる)、②設備投資(含み損の創出)、③MS法人(メディカルサービス法人)への業務委託によるコスト増加です。
相続税の計算方法や基礎控除の仕組みについては「相続税の計算方法」で解説しています。小規模宅地等の特例を自宅の土地に適用することで、持分以外の財産の相続税負担も軽減できます(「小規模宅地等の特例の概要」参照)。
📊 公認会計士の視点
医療法人の持分評価は「取引相場のない株式」の評価方法に準じますが、配当還元方式が使えないケースが多く、純資産価額方式が適用されることが一般的です。退職金支給による評価引き下げは効果的ですが、不相当に高額な退職金は損金算入が否認されるリスクもあるため、適正額の算定が重要です。
持分あり医療法人で一部の出資者が持分を放棄すると、残りの出資者の持分価値が増加するため「みなし贈与」として贈与税が課税されます。これが③贈与税の納税猶予の適用場面です。
認定医療法人であれば、この贈与税が猶予され、残りの出資者も移行期限内に持分を全て放棄すれば猶予税額が免除されます。贈与税の基本的な仕組みについては「贈与税の仕組みと基礎」をご覧ください。
📋 この記事のポイント
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