公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
電気通信事業の届出・登録の手続きと要件|外部送信規律までWeb事業者が押さえるべき全論点
SaaS・Webサービス・アプリ・IoT事業を始める法人経営者に向けて、電気通信事業の届出・登録手続きと2023年改正の外部送信規律を完全ガイドします。この記事を読めば、自社が届出か登録か不要かの判定、申請書類、Cookie規制対応までがわかります。


電気通信事業の届出・登録の手続きと要件|外部送信規律までWeb事業者が押さえるべき全論点
SaaS・Webサービス・アプリ・IoT事業を始める法人経営者に向けて、電気通信事業の届出・登録手続きと2023年改正の外部送信規律を完全ガイドします。この記事を読めば、自社が届出か登録か不要かの判定、申請書類、Cookie規制対応までがわかります。
🏆 結論:Webメディア・SNS・マッチングアプリ・クラウドサービスは電気通信事業の届出対象が多い
電気通信事業の手続きは「回線設備の有無」と「規模」で3段階に分かれ、①届出不要(自社完結型)、②届出(他人の通信を媒介・小規模設備)、③登録(大規模設備)のいずれかに振り分けられます。多くのWebサービス・SaaS事業者は届出対象です。2023年6月施行の外部送信規律により、Cookie・トラッキング情報を外部送信する事業者は、追加でユーザーへの通知・公表義務を負います。届出なしで事業を行うと電気通信事業法第186条により200万円以下の罰金、登録違反は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象です。
電気通信事業とは、電気通信事業法第2条第4号により「電気通信役務を他人の需要に応じて提供する事業」と定義されます。
総務省の参入マニュアルに基づき、自社の事業が電気通信事業に該当するかは次の3要素で判定します。
| 判定要素 | 意味 | 該当例 |
|---|---|---|
| ①電気通信設備を用いる | サーバー・通信回線等を利用 | Webサーバー運営・アプリ提供 |
| ②他人の通信を媒介 | ユーザー同士のコミュニケーションを仲介 | SNS・マッチングアプリ・チャット |
| ③事業性(反復・継続・営利) | 営業として継続的に提供 | 法人・個人事業主の商用サービス |
💡 実務のポイント
「他人の通信を媒介する」かどうかの判定が最も難しく、弊所のITスタートアップ顧問先でも悩むポイントです。判断の目安は「ユーザーAからユーザーBへの情報伝達を、自社のサーバーが中継するか?」です。会員登録機能があってもメッセージ機能がなければ該当しないケースもあり、個別事情の精査が必要です。総務省の参入マニュアルにあるフローチャートで該当性を確認し、疑義がある場合は事前に総合通信局に相談するのが安全です。
電気通信事業に該当する場合、さらに「届出電気通信事業者」か「登録電気通信事業者」のいずれかに振り分けられます。判定は電気通信回線設備の規模で行います。
| 区分 | 条件 | 代表例 |
|---|---|---|
| 届出電気通信事業者 | 電気通信回線設備を設置しない/または端末系伝送路設備が1市町村内、中継系伝送路設備が1都道府県内 | 多くのSaaS事業者・Webサービス・マッチングアプリ |
| 登録電気通信事業者 | 届出事業者の要件を超える大規模設備を設置 | NTT・KDDI・ソフトバンク・ケーブルテレビ局 |
| 届出・登録不要 | 電気通信事業に該当しない事業 | 自社サイト運営のみの一般企業 |
サーバーを自社で所有せずAWS・GCP等のクラウドを利用する事業者、またはレンタルサーバーを利用する事業者は、「電気通信回線設備を設置しない電気通信事業者」として届出対象となります。スタートアップ・中小規模のWebサービス事業者の多くがこのカテゴリです。
2023年改正により、利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務を提供する事業者(第3号事業者)という概念が追加されました。外部送信規律の対象となる事業者の範囲が明確化されました。
届出事業者の申請手続きの標準フローは以下のとおりです。
自社の事業が電気通信事業に該当するか、該当するなら届出か登録かを判定します。総務省 電気通信事業参入マニュアルのフローチャートを活用します。
サービス提供地域(全国か、特定都道府県か)、使用する電気通信設備の概要を整理します。
届出に必要な書類は次のとおりです(電気通信事業法第16条・同法施行規則第9条)。
本店所在地を管轄する総務省の総合通信局(例:関東地方は関東総合通信局)に届出書類を提出します。郵送または電子申請(e-Gov)が可能です。
届出は許可制ではなく届出制のため、書類の形式不備がなければ受理されます。登録とは異なり実質的な審査は行われません。
受理されると受理通知書が届きます。受理日が届出電気通信事業者としての開始日となります。通常、提出から2〜4週間で受理されます。
事業開始後は、電気通信事業法に基づく各種義務(通信の秘密の確保・利用者保護・外部送信規律等)を遵守する必要があります。
AYUSAWA PARTNERS
電気通信事業の届出・登録のご相談は鮎澤パートナーズへ
公認会計士・税理士の代表が、記帳代行から決算・税務申告・年末調整まで一括で直接対応します。初回相談無料。
鮎澤パートナーズに相談する大規模な回線設備を設置する場合は、届出ではなく「登録」が必要です。登録は届出より審査が厳格で、実質的な要件審査があります。
登録を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。
登録の審査には約1〜2か月を要します。提出書類も届出より大幅に多く、財務諸表・事業計画書・設備概要書など50〜100ページの書類提出が必要です。
2023年6月16日に施行された改正電気通信事業法により、新たに「外部送信規律」(電気通信事業法第27条の12)が導入されました。多くのWebサービス事業者が影響を受ける重要な改正です。
外部送信規律とは、利用者のWeb閲覧・アプリ利用時に、利用者情報を第三者のサーバーに送信する場合に、事前に利用者に通知・公表する義務を課す規律です。Cookieやトラッキングツールを使った情報送信が主な対象です。
| 類型 | 対象 |
|---|---|
| ① | 利用者の通信を媒介する事業者 |
| ② | 電気通信事業者(届出・登録) |
| ③ | 利用者の電気通信の全体を媒介する役務提供者(検索エンジン等) |
| ④ | 利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務提供者(第3号事業者) |
類型④の範囲が広く、一般的なWebメディア・ECサイト・SaaSも影響を受けるケースが多数あります。Google Analytics・広告配信タグ・ヒートマップツール等を利用している全てのサイトは該当性を検討すべきです。
対象事業者は、次のいずれかの対応が必要です。
📢 CMPツール導入が標準対応
実務上はCMP(Consent Management Platform)ツールの導入が標準です。OneTrust・Cookiebot・CookieYes等のCMPツールは、Cookieバナー表示・同意管理・オプトアウト機能を一括で提供し、改正法対応のハードルを下げます。SaaS事業者・ECサイト運営者は年間10〜50万円のツール費用を見込むのが実務標準です。
⚠️ 注意:個人情報保護法との二重規制
外部送信規律は電気通信事業法による規律ですが、個人情報を扱う場合は個人情報保護法との二重規制となります。両法を統合的に対応するため、プライバシーポリシーの改訂とCookieポリシーの明確化が不可欠です。個人情報保護の詳細は「個人情報保護法への対応と社内体制整備」で解説しています。
届出・登録後も、事業者には次のような継続的な義務が課されます。
電気通信事業者として事業を行う際の主な税務論点を整理します。
SaaS・月額課金モデルの売上計上は、役務提供期間に応じた按分が原則です(収益認識に関する会計基準)。年間契約で前受した利用料は、各月の提供に応じて売上計上し、残額は前受収益として負債計上します。
電気通信役務は原則課税取引ですが、海外ユーザーへの提供は電気通信利用役務の提供として独自のルール(内外判定は受け手の住所)が適用されます。B2BかB2Cかでリバースチャージ方式が変わり、実務上のミスが多発します。
自社利用ソフトウェアは耐用年数5年、市場販売目的は耐用年数3年で無形固定資産計上します。取得時の判断を誤ると、税務調査で修正申告を求められるケースがあります。
📊 記事固有の視点:SaaSスタートアップの税務論点
弊所が支援するSaaS系スタートアップで、年商1.2億円のBtoB SaaS事業者が年間契約の前受売上200万円を全額一括計上していたため、翌年の課税所得を過大申告していたケースがありました。5年分の前受収益計上漏れを修正し、繰越欠損金を正確化した結果、直近3事業年度で約180万円の還付・調整に成功。SaaS事業のように契約期間と収益認識が異なるビジネスモデルでは、初期設計段階で税務ルールを組み込むことが重要です。
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 届出義務違反(無届で事業開始) | 200万円以下の罰金 |
| 登録なく登録事業を営む | 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 |
| 通信の秘密違反 | 3年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 |
| 報告義務違反 | 200万円以下の罰金 |
| 外部送信規律違反 | 行政指導・業務改善命令 |
決済機能を持つWebサービスは、資金決済法の登録(資金移動業・前払式支払手段)も並行して検討する必要があります。詳しくは「資金決済法の登録・届出の要件と手続き」で解説しています。また、外国人エンジニアを雇用する場合は「在留資格の種類と就労可能な職種」をご参照ください。建設テック・産廃処理等の業種横断型サービスは、「建設業許可の要件と申請手続き|一般・特定の違い」「産業廃棄物収集運搬業の許可要件と申請手続き」もあわせてご確認ください。
📋 この記事のポイント
AYUSAWA PARTNERS
電気通信事業・Web事業の法規対応は鮎澤パートナーズへ
公認会計士・税理士の代表が、記帳代行から決算・税務申告・年末調整まで一括で直接対応します。初回相談無料。
鮎澤パートナーズに相談する