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2024年4月、建設業・自動車運転者・医師にも時間外労働の上限規制が本格適用されました。業種によって年720時間・年960時間と上限が異なり、さらに改善基準告示の拘束時間・休息期間のルールが別途適用されます。本記事では実務で使える形で整理します。


2024年4月、建設業・自動車運転者・医師にも時間外労働の上限規制が本格適用されました。業種によって年720時間・年960時間と上限が異なり、さらに改善基準告示の拘束時間・休息期間のルールが別途適用されます。本記事では実務で使える形で整理します。
🏆 結論:業種ごとに異なる上限と届出様式を把握する
建設業は原則一般業種と同じ年720時間(災害復旧・復興は除外)、自動車運転者は年960時間(ただし単月100時間未満・複数月平均80時間・月45時間超年6回までは適用なし)、医師はA水準年960時間〜特例水準年1,860時間が適用されます。36協定届出は業種別に専用様式(様式第9号の3の4など)を使用し、改善基準告示との二重管理が必要です。
「2024年問題」とは、働き方改革関連法による時間外労働の上限規制が、2024年4月から建設業・自動車運転者・医師にも適用開始となったことを指します。これらの業種は、一般業種に適用された2019年4月(中小企業は2020年4月)から5年間の猶予期間を経て、ようやく本格規制の対象となりました。
| 業種 | 年の上限 | 適用されない規定 |
|---|---|---|
| 建設業(通常工事) | 720時間 | なし(一般業種と同じ) |
| 建設業(災害復旧・復興事業) | 720時間 | 単月100時間未満、複数月平均80時間以内 |
| 自動車運転者 | 960時間 | 単月100時間未満、複数月平均80時間以内、月45時間超年6回まで |
| 医師(A水準) | 960時間 | 面接指導・休息確保が条件 |
| 医師(特例水準B・C) | 1,860時間 | 都道府県知事の指定が必要 |
⚠️ 重要な実務ポイント
自動車運転者の「年960時間」は、一般業種より240時間分緩い上限ですが、「単月100時間未満」「複数月平均80時間以内」「月45時間超年6回まで」の3つが適用されないため、極端に言えば毎月80時間の残業が合法になり得ます。ただし、後述の改善基準告示で拘束時間・休息期間の別規制がかかるため、実際には相当な管理負荷がかかります。
参考: 厚生労働省「建設業・ドライバー・医師の働き方改革総合サイト」
建設業は、原則として一般業種と同じ上限規制が適用されます。つまり年720時間・単月100時間未満・複数月平均80時間以内・月45時間超年6回までの4上限がすべて適用されます。
地震・豪雨・土砂災害などの復旧・復興に該当する工事については、単月100時間未満および複数月平均80時間以内の2つの上限が適用されません。ただし、年720時間・月45時間超年6回までは適用されます。
💡 実務のポイント
インフラ工事を中心とする建設業者は、災害復旧対応の可能性が常にあります。実務では最初から災害復旧・復興対応ありの様式第9号の3の2で届出するのが安全策です。通常工事用で届出した後に災害復旧が必要になった場合、協定の変更届出が必要になり、その間の労働時間管理が煩雑になります。
現場ごとに事業場単位の届出が原則ですが、労働者の過半数代表の選出が困難な小規模現場では、本社で一括締結し、各現場を対象とすることが一般的です。この場合、協定書に「対象事業場」として全現場を明記します。
トラック運転者・バス運転者・タクシー運転者・ハイヤー運転者が対象です。運行管理者・整備士・事務職など運転業務以外の従業員は一般業種の上限規制(年720時間)が適用されます。
労働基準法の上限規制とは別に、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(通称「改善基準告示」)が2024年4月に改正施行されました。36協定の時間外労働時間管理とは別に、拘束時間・休息期間の管理が必要です。
| 項目 | 改正前(〜2024年3月) | 改正後(2024年4月〜) |
|---|---|---|
| 年の拘束時間 | 3,516時間 | 3,300時間(労使協定で3,400時間まで) |
| 1ヶ月の拘束時間 | 原則293時間 | 原則284時間(労使協定で310時間まで) |
| 1日の拘束時間 | 原則13時間・最大16時間 | 原則13時間・最大15時間(延長回数週2回まで) |
| 1日の休息期間 | 継続8時間以上 | 継続11時間を基本、下限9時間 |
| 連続運転時間 | 4時間以内(30分以上の中断) | 4時間以内(概ね10分以上×合計30分以上) |
バス運転者は年の拘束時間3,300時間(4週平均で65時間以内)、タクシー運転者(日勤)は1ヶ月の拘束時間288時間以内など、業種ごとに細かく定められています。特にタクシーは隔日勤務(2日分を1日で勤務する勤務形態)という独特の制度があり、拘束時間の計算が複雑です。
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鮎澤パートナーズに相談する医師の働き方改革は、患者の安全確保と医療機関の機能維持の両立という難しい課題を抱えるため、他業種と大きく異なる三段階の水準制度が設けられています。
| 水準 | 対象医師 | 年の上限 |
|---|---|---|
| A水準 | すべての勤務医(原則) | 960時間 |
| B水準 | 地域医療確保のため必要な医療機関の医師 | 1,860時間 |
| 連携B水準 | 地域医療確保のため派遣される医師 | 1,860時間 |
| C-1水準 | 研修医・専攻医 | 1,860時間 |
| C-2水準 | 高度技能取得研修の医師 | 1,860時間 |
B・連携B・C水準を適用するには、医療機関が都道府県知事の指定を受ける必要があります。指定を受けるには、医療機関勤務環境評価センターによる評価を経て、医師の労働時間短縮計画(時短計画)の策定と実行が条件となります。
医師の場合、時間外・休日労働が月100時間以上となる前に面接指導を実施する義務があります(医療法第108条第1項)。これは36協定の単月100時間未満という規制の例外適用と引き換えに設けられた安全弁です。
36協定の届出様式は、一般業種用と特例業種用で分かれています。提出時に間違えると受理されないため、事前確認が必須です。
| 業種・条件 | 使用様式 |
|---|---|
| 一般業種(特別条項なし) | 様式第9号 |
| 一般業種(特別条項あり) | 様式第9号の2 |
| 建設業(災害復旧・復興対応あり・特別条項なし) | 様式第9号の3 |
| 建設業(災害復旧・復興対応あり・特別条項あり) | 様式第9号の3の2 |
| 自動車運転者(特別条項なし) | 様式第9号の3の3 |
| 自動車運転者(特別条項あり) | 様式第9号の3の4 |
| 医師(特例水準適用) | 様式第9号の4 |
| 新技術・新商品等の研究開発業務 | 様式第9号の5 |
🧮 電子申請の活用
厚生労働省「労働条件ポータルサイト」では、36協定届作成支援ツールが提供されており、業種と特別条項の有無を選択するだけで適切な様式が自動選択されます。e-Govからの電子申請で24時間いつでも提出可能です。
建設業と運送業は、業務災害のリスクが高いため、労災保険料率が一般業種より格段に高く設定されています。36協定の届出管理とセットで、労災保険料の適正申告も実務の重要ポイントです。
| 業種 | 労災保険料率 | 特徴 |
|---|---|---|
| 鉄道・軌道建設業 | 1000分の9 | 最高水準 |
| 建築事業 | 1000分の9.5 | 労務費率で計算 |
| 道路新設事業 | 1000分の11 | 労務費率で計算 |
| 貨物取扱事業(港湾貨物以外) | 1000分の8.5 | 運送業の標準 |
| 一般の卸売業・小売業 | 1000分の3 | 比較対照 |
| 金融業・保険業・不動産業 | 1000分の2.5 | 最低水準 |
雇用保険料率は業種別に3区分(一般事業・農林水産清酒製造業・建設業)で設定されており、建設業が最高です。
36協定の上限規制違反は、労働基準法第119条第1号により6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象です。これは業種を問いません。
2024年4月以降、建設業・運送業を中心とした重点監督が実施されており、以下が指導の主な焦点となっています。
⚠️ 過労死労災の高水準
脳・心臓疾患による労災請求・認定件数は、運送業が全産業の中で突出しており、全産業の約3分の1を占めます(厚生労働省「過労死等の労災補償状況」令和4年度)。長時間労働は労災リスクと直結し、労基署の指導強化の主要な根拠になっています。
📋 この記事のポイント
2024年問題で新たに上限規制の対象となった建設業・自動車運転者・医師は、業種ごとに異なる上限時間と届出様式、改善基準告示の別規制を正確に把握する必要があります。特に自動車運転者は時間外労働の上限規制と改善基準告示の二重管理が必要で、実務負荷は他業種より格段に高くなります。
2024年4月以降、労基署の監督指導は建設業・運送業を重点化しており、過労死労災の多発業種として罰則適用のハードルが下がっています。36協定の適切な締結と届出は、もはや「任意の努力」ではなく「事業継続の前提条件」です。
建設業・運送業・医療機関の労務管理でお悩みの場合は、社会保険労務士・税理士・公認会計士・行政書士がワンストップで対応する鮎澤パートナーズまでご相談ください。36協定の作成・届出から改善基準告示対応、労災保険料の適正申告まで、業種特有の課題に包括的に対応します。