【税理士×社労士が解説】税理士と社会保険労務士の違い|給与計算・年末調整はどちらに依頼?

【税理士×社労士が解説】税理士と社会保険労務士の違い|給与計算・年末調整はどちらに依頼?
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

税理士と社会保険労務士の違い|給与計算・年末調整はどちらに依頼?

「給与計算は税理士と社労士のどちらに頼めばいいのか」「年末調整はどっちの仕事?」と迷っている経営者に向けて、両資格の独占業務の境界線と、業務項目別の最適な依頼先を完全ガイドします。この記事を読めば、自社の状況に合った外注先を迷わず選べます。

🏆 結論:給与計算はどちらにも依頼可。年末調整(税額計算・源泉徴収票作成)は税理士、社保手続き・助成金は社労士の独占業務

給与計算そのものは税理士・社労士のどちらにも依頼できます。ただし、年末調整に伴う所得税の精算計算・源泉徴収票の作成・法定調書の提出は税務書類の作成に該当するため税理士の独占業務(税理士法第2条第1項)です。一方、健康保険・厚生年金・雇用保険の届出や助成金の申請は社会保険労務士の独占業務(社会保険労務士法第27条)です。従業員5名以下なら税理士のみでカバー可能、10名以上なら社労士の併用またはワンストップ事務所の活用をおすすめします。

税理士と社会保険労務士の違い【一覧表で比較】

税理士と社労士の違いを、経営者が日常業務で直面する観点から比較します。

比較項目 税理士 社会保険労務士
根拠法税理士法社会保険労務士法
独占業務税務代理・税務書類作成・税務相談社保・労保の届出代行・書類作成・助成金申請
主な守備範囲税金(法人税・所得税・消費税等)人事・労務(社保・労保・就業規則等)
給与計算○(対応可)○(対応可)
年末調整◎(独占業務に含む)△(給与・社保料計算まで。税額計算は不可)
社保の届出×(対応不可)◎(独占業務)
助成金申請×(対応不可)◎(独占業務)
就業規則の作成×
確定申告◎(独占業務)×
顧問料の相場(月額)2万〜5万円2万〜4万円

参考: e-Gov「税理士法」 e-Gov「社会保険労務士法」

給与計算の各工程を分解|税理士と社労士の対応可否マトリクス

「給与計算はどちらにも依頼できる」とよく言われますが、給与計算を構成する各工程を分解すると、実は税理士にしかできない工程と社労士にしかできない工程があります。

給与関連の工程 税理士 社労士 根拠
勤怠集計独占業務ではない
基本給・手当の計算独占業務ではない
残業代の計算労基法に精通する社労士が得意
社会保険料の計算社労士の専門領域
所得税の源泉徴収額計算税額計算は税理士の専門
住民税の特別徴収地方税の手続きは税理士寄り
年末調整(税額精算・還付計算)×税務書類の作成(税理士法第2条)
源泉徴収票・法定調書の作成×税務書類の作成(税理士法第2条)
算定基礎届の提出×社保届出(社労士法第27条)
月額変更届の提出×社保届出(社労士法第27条)
労働保険の年度更新×労保届出(社労士法第27条)
助成金の申請×社労士の独占業務

🔷 社労士の視点

年末調整に関して、社労士が対応できるのは「給与データの整理」「社会保険料控除額の計算」「各種控除申告書の回収・チェック」までです。税額の精算計算(過不足額の算出)と源泉徴収票の作成は税理士の独占業務であり、社労士が行うと税理士法違反となります。この境界線を理解していない事務所に依頼すると、結局年末調整の時期に別途税理士を探す手間が発生します。

従業員数別|税理士と社労士のどちらに依頼すべきか【判定表】

従業員数は「税理士のみで十分か、社労士も必要か」を判断する最もわかりやすい基準です。

従業員数 推奨する外注先 理由
1〜5名税理士のみ社保手続きの頻度が低く、税理士の顧問契約内で対応できることが多い
6〜10名税理士+社労士(スポット)入退社が増え、社保届出の頻度が上がる。スポットで社労士を活用
11〜30名税理士+社労士(顧問)就業規則の作成義務(常時10人以上)、助成金の活用余地が大きくなる
31名以上税理士+社労士(顧問)+給与計算システム給与計算ソフトと連携して効率化。社労士の労務コンサルが重要に

💡 実務のポイント

常時10人以上の労働者を使用する事業場は、労働基準法第89条により就業規則の作成・届出が義務付けられています。就業規則の作成は社労士の専門分野であり、税理士では対応できません。この義務が生じるタイミングが「社労士を顧問にすべきか」の判断の分水嶺です。顧問税理士の費用相場については「顧問税理士の費用相場」をご覧ください。

年末調整の業務フロー|税理士と社労士の境界線

年末調整は税理士と社労士の業務が交差する典型的な場面です。以下のフローで、どの工程が誰の担当かを整理します。

工程 内容 担当
① 控除申告書の配布・回収扶養控除等申告書、保険料控除申告書等を従業員に配布し回収どちらでも可
② 給与データの確定1月〜12月の給与・賞与データを確定どちらでも可
③ 社会保険料控除額の算出健康保険・厚生年金・雇用保険の年間控除額を確定社労士が得意
④ 所得税の精算計算年間の所得税額を算出し、毎月の源泉徴収額との過不足を精算税理士
⑤ 源泉徴収票の作成従業員ごとの源泉徴収票を作成税理士
⑥ 法定調書の提出給与支払報告書・支払調書合計表を税務署・市区町村に提出税理士

実務では、①〜③を社労士が担当し、④〜⑥を税理士が担当する分業パターンが最も効率的です。ただし、税理士と社労士が別々の事務所だと、データの受け渡しで手間が発生します。税理士×社労士のダブルライセンス事務所やワンストップ事務所であれば、この連携が社内で完結します。

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助成金を活用するなら社労士が必須

社労士の独占業務としての助成金申請

厚生労働省が提供するキャリアアップ助成金・人材確保等支援助成金・両立支援等助成金などの雇用関係助成金の申請手続きは、社会保険労務士法第27条に基づき社労士の独占業務です。税理士がこれらの申請を代行することはできません。

実務では、助成金を活用することで「従業員を正社員に転換→キャリアアップ助成金で57万円」「育児休業の取得促進→両立支援等助成金で30万円」といった補助が受けられるケースがあります。これらの助成金は「知っているかどうか」で受給の有無が決まるため、社労士を顧問に付けていない企業は機会損失が大きいです。

税理士と社労士の連携による節税+助成金の二重メリット

例えば、従業員の処遇改善を検討する場合、社労士は「この改善パターンなら助成金が○万円受給できます」、税理士は「この方法なら人件費を損金算入して法人税を○万円軽減できます」とそれぞれの視点からアドバイスできます。

この連携が機能するには、税理士と社労士が同じ情報を共有していることが前提です。別々の事務所に依頼していると、情報の共有が不十分になり、助成金と節税のどちらか一方しか活用できないケースが実際に起こります。

費用比較シミュレーション|税理士のみ vs 税理士+社労士 vs ワンストップ

📐 シミュレーション前提条件

  • 年商5,000万円の法人(従業員15名)
  • 月次顧問+決算申告+年末調整+給与計算+社保手続きを外注
費用項目 税理士のみ 税理士+社労士 ワンストップ
税理士顧問料(年額)420,000円420,000円480,000円
決算申告料200,000円200,000円200,000円
社労士顧問料(年額)300,000円(税理士料に含む)
給与計算(年額)180,000円180,000円150,000円
社保手続き(自社対応コスト)120,000円(顧問に含む)(顧問に含む)
年間合計920,000円1,100,000円830,000円

※概算値です。個別の状況により異なります。ワンストップ事務所はパッケージ料金で割安になるケースを想定。

ワンストップ事務所はデータ共有の手間がなく、パッケージ料金で提供されるため、税理士+社労士を別々に依頼するよりも年間27万円程度のコスト削減が見込めます。さらに、助成金の受給(仮に57万円のキャリアアップ助成金を1件受給)を含めると、実質的な費用対効果はさらに大きくなります。

税理士と公認会計士の違いとの関連

税理士と社労士の違いに加えて、税理士と公認会計士の違いが気になる方も多いでしょう。会社のステージが上がりIPO準備や事業承継を検討する段階では、公認会計士の専門知識も必要になります。詳しくは「税理士と公認会計士の違い|どちらに依頼すべきかを場面別に解説」をご覧ください。

また、会社設立時の届出や許認可で行政書士が必要になるケースもあります。行政書士との違いは「税理士と行政書士・弁護士の違い」で解説しています。

参考: 国税庁「税理士制度の概要」

よくある質問(FAQ)

給与計算だけ社労士に依頼して、年末調整だけ税理士に依頼できますか?
可能ですが、データの受け渡しに手間がかかります。社労士が計算した給与データを税理士に引き継ぐ必要があるため、ソフトの互換性やデータ形式の確認が必要です。ワンストップ事務所であれば、この連携が社内で完結するため効率的です。
従業員が5名以下でも社労士は必要ですか?
必須ではありません。5名以下であれば、社保手続きの頻度が低いため税理士のみで対応可能です。ただし、助成金の活用を検討しているなら、スポットで社労士に相談する価値はあります。
税理士が給与計算をやってくれない場合はどうすればいいですか?
税理士事務所によっては給与計算に対応していないケースがあります。その場合は社労士に給与計算を依頼するか、給与計算ソフト(freee人事労務・マネーフォワード クラウド給与等)を自社で導入して自計化する方法があります。
社労士に税金の相談はできますか?
社労士が個別の税額計算を伴う相談に応じることは、税理士法第52条に違反する可能性があります。「この経費は損金になりますか?」「節税のために○○した方がいいですか?」といった相談は税理士に行ってください。社労士に相談できるのは、社会保険料の計算方法や労務管理に関する事項です。
就業規則の作成は税理士に依頼できますか?
就業規則の作成・変更は社労士の専門分野です。税理士は就業規則の作成には対応しません。常時10人以上の労働者を使用する事業場は、労働基準法第89条により就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。
税理士と社労士の両方の資格を持つ人はいますか?
はい、ダブルライセンスの専門家は一定数存在します。税理士×社労士のダブル資格者であれば、税務と労務の両方の観点からワンストップでアドバイスを受けられます。確定申告を税理士に依頼する費用は「確定申告を税理士に依頼する費用」をご覧ください。
社労士の顧問料の相場はいくらですか?
月額2万〜4万円が一般的な相場です。従業員数が10名を超えると月3万〜5万円になるケースが多いです。給与計算を含むかどうかで金額が変わるため、見積もり時に「給与計算込みか」を確認してください。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 給与計算は税理士・社労士のどちらにも依頼可能。ただし各工程には独占業務の境界がある
  • 年末調整の税額精算・源泉徴収票作成は税理士の独占業務。社保届出・助成金は社労士の独占業務
  • 従業員5名以下なら税理士のみ、10名以上なら社労士の併用またはワンストップ事務所がおすすめ
  • 助成金の活用は社労士が必須。知らないだけで数十万円の機会損失が発生している企業は多い
  • ワンストップ事務所はデータ共有の手間がなく、パッケージ料金で年間27万円程度のコスト削減が見込める
  • 役員報酬の設計など税務×労務が交差するテーマは、両方の視点を持つ専門家に相談すべき

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