【行政書士×社労士が解説】有料職業紹介事業の許可要件と申請手続き|資産500万・責任者講習・手数料規制を完全整理

監
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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有料職業紹介事業の許可要件と申請手続き|資産500万・責任者講習・手数料規制を完全整理
人材紹介ビジネスで参入する法人経営者に向けて、有料職業紹介事業の3大要件(財産的要件500万円・事業所・職業紹介責任者)、手数料の上限規制、取扱禁止業務、派遣業との違い、申請フローを行政書士・社労士の視点で整理します。この記事を読めば、自社が要件を満たすか判定し、申請を進められます。
🏆 結論:人材紹介は派遣業より参入ハードル低め
有料職業紹介事業は職業安定法第30条に基づく厚生労働大臣の許可制で、基準資産額500万円以上・現預金150万円以上という比較的低い財産要件で参入可能です。事業所ごとに職業紹介責任者(3年有効の講習受講者)を50人ごとに1名選任する必要があります。登録免許税9万円+手数料5万円+加算額(2事業所目以降)で、人材派遣業より約1,500万円分の初期資金要件が軽いのが特徴です。
有料職業紹介事業とは?職業安定法の体系
有料職業紹介事業とは、職業紹介を行うことの対価として手数料・報酬を受け取る事業です(職業安定法第4条第2項)。求人企業と求職者を仲介し、成約時に紹介手数料を受け取るビジネスモデルで、転職エージェント・ヘッドハンティング・再就職支援サービス等が該当します。
制度の詳細は厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」のページに整理されています。
有料職業紹介と隣接事業の区分
| 事業 |
雇用関係 |
収益源 |
手続き |
| 有料職業紹介事業 | 紹介先企業と求職者が直接雇用 | 成約時の紹介手数料 | 許可(本記事) |
| 労働者派遣事業 | 派遣元と労働者が雇用契約 | 派遣料金 | 許可(別制度) |
| 無料職業紹介事業 | 紹介先企業と求職者が直接雇用 | 無料 | 許可(別区分) |
| 求人情報サービス | 関与せず(媒体のみ) | 掲載料 | 届出(募集情報等提供事業) |
💡 実務のポイント:求人情報サービスは原則許可不要
求人広告媒体(求人サイト、求人誌等)の運営は、情報提供に留まる限り「募集情報等提供事業」として届出で足ります。個別の求職者を特定の求人に「紹介」する行為(マッチング・あっせん)を行うと有料職業紹介事業に該当し、許可が必要です。線引きは厳密で、2022年職業安定法改正で募集情報等提供事業にも新たな規制が導入されたため、サービス設計段階での専門家相談が推奨されます。
派遣業と職業紹介業の徹底比較
同じ人材ビジネスでも、派遣業と職業紹介業は制度・要件・ビジネスモデルが大きく異なります。「人材派遣業(労働者派遣事業)の許可要件と申請手続き」と合わせて比較することで、自社に最適な事業形態が見えてきます。
| 比較項目 |
労働者派遣事業 |
有料職業紹介事業 |
| 根拠法 | 労働者派遣法 | 職業安定法 |
| 基準資産額 | 2,000万円以上 | 500万円以上 |
| 現預金要件 | 1,500万円以上 | 150万円以上 |
| 事業所面積 | 20㎡以上(厳格) | 20㎡以上(緩和運用あり) |
| 責任者数の基準 | 100人に1名 | 50人に1名 |
| 責任者の実務経験 | 不要 | 3年以上の職業経験 |
| 登録免許税 | 9万円 | 9万円 |
| 手数料(収入印紙) | 12万円 | 5万円+1.8万円×(事業所数−1) |
| 初回許可有効期間 | 3年 | 3年 |
| 更新後有効期間 | 5年 | 5年 |
📝 行政書士の視点:併設取得が一般的
人材ビジネスを多角的に展開する場合、派遣業と職業紹介業の両方を取得する事業者が一般的です。特に「紹介予定派遣」(派遣期間終了後に直接雇用に切り替える形態)を扱う場合は両方の許可が必須です。ただし、両方取得する場合でも事業所要件・責任者要件は重複可能で、講習も別々に受講する必要がない点は効率的です。
許可の3大要件
有料職業紹介事業の許可は、職業安定法第31条に基づく審査を経て付与されます。主要な3要件を整理します。
要件1:財産的要件
以下の2計算式を同時に満たす必要があります。
📐 財産的要件の計算式
①基準資産額 ≧ 500万円 × 事業所数
②自己名義の現金・預金 ≧ 150万円 + 60万円 × (事業所数−1)
※基準資産額 = 資産総額 − 負債総額 − 繰延資産 − 営業権(のれん)
具体計算例
| 事業所数 |
基準資産額(最低) |
現預金(最低) |
| 1事業所 | 500万円 | 150万円 |
| 2事業所 | 1,000万円 | 210万円 |
| 3事業所 | 1,500万円 | 270万円 |
| 5事業所 | 2,500万円 | 390万円 |
派遣業(2,000万円×事業所数+現預金1,500万円×事業所数)と比べて1事業所あたり1,500万円以上軽いのが職業紹介業の特徴です。創業期の小規模事業者に適した参入業態と言えます。
要件2:事業所要件
職業紹介事業を行う事業所の要件は派遣業と類似しますが、一部で運用が緩和されています。
- 事業で使用し得る面積が20㎡以上(近年は条件付きで緩和、在宅・シェアオフィスが認められるケースも)
- 使用目的が事務所であること(賃貸借契約書の使用目的との一致)
- 事業所の独立性
- 個人秘密を保持できる構造(鍵付きキャビネット等)
- 風俗営業が密集する等の好ましくない場所でないこと
💡 実務のポイント:面積要件の緩和運用
職業紹介業の事業所要件は、2017年改正以降に面積20㎡要件が緩和運用されています。オンライン面談が主流で、来訪者応対が少ない現代の人材紹介ビジネスの実態に合わせた改正です。それでも実質的な事務スペース確保・求職者情報の安全管理・独立性は必須で、バーチャルオフィスでは原則不許可となります。シェアオフィスの個室型での許可取得事例も増えていますが、労働局の個別判定です。
要件3:職業紹介責任者の選任
職業安定法第32条の14により、事業所ごとに1名以上の職業紹介責任者を選任する必要があります。紹介業務従事者50人ごとに1名の追加選任が求められます。
職業紹介責任者の資格要件
職業紹介責任者になるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 成年被後見人・被保佐人・破産者(復権未了)ではない
- 禁錮以上の刑または労働関係法令違反で5年経過
- 暴力団員・反社会的勢力でない
- 3年以上の職業経験(役職・業種問わず、社会人経験3年以上であればOK)
- 住所が定まっていること
- 「職業紹介責任者講習」を5年以内に受講していること
⚠️ 注意:派遣元責任者と異なる「5年有効」
派遣元責任者講習の有効期限が3年なのに対し、職業紹介責任者講習は5年です。両方を兼務する場合は、短い方の派遣元責任者講習(3年)のタイミングで再受講するのが実務的です。講習内容は別のため、それぞれ別々に受講する必要があります。
職業紹介責任者講習
講習は厚生労働省認定の講習実施機関が全国で開催しています。
| 項目 |
内容 |
| 受講時間 | 1日(6時間) |
| 受講費用 | 1万円前後 |
| オンライン受講 | 可(機関により対応状況が異なる) |
| 有効期限 | 5年 |
| 必須受講タイミング | 許可申請書類に修了証の写しを添付するため、申請前に受講必須 |
AYUSAWA PARTNERS
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初回相談無料。財産要件確認、事業所整備、申請書類作成まで行政書士・社労士がワンストップで対応します。
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取扱禁止業務と取扱い可能範囲
職業安定法第32条の11により、以下の業務への職業紹介は禁止されています。
職業紹介禁止業務
- 港湾運送業務(港湾労働法で別途規制)
- 建設業務(建設労働者雇用改善法で規制)
派遣業と異なり、医療関係・警備業務・士業業務は職業紹介では原則可能です。医師・看護師等の医療専門職への転職紹介は、有料職業紹介業の主要領域の一つとなっています。
手数料の規制と届出
職業紹介事業者が受け取る手数料には、職業安定法第32条の3に基づく規制があります。
手数料の種類と上限
| 手数料区分 |
内容 |
上限 |
| 届出制手数料 | 事業者が自由に設定(求人者から受領) | 事実上の上限なし(届出必須) |
| 上限制手数料 | 届出なしの場合に適用 | 紹介成立時の6ヶ月以内の賃金の11%(税込) |
| 求職者手数料 | 求職者から受領する手数料 | 原則禁止(芸能家・モデル等の例外あり) |
📊 税理士の視点:業界標準は理論年収の30〜35%
人材紹介業界では、届出制手数料として理論年収(内定者の初年度想定年収)の30〜35%を設定するのが業界標準です。ハイクラス・エグゼクティブ紹介では40%を超えるケースもあります。返還規定(早期退職時の一部返金)も契約で定めるのが一般的で、「紹介後3ヶ月以内の退職で80%返金、6ヶ月以内で50%返金」等の規程を申請時に届出します。返還規定の有無は受注の競争力を左右するため、ビジネスモデル設計時に決めておくべきです。
求職者からの手数料徴収の特例
原則として求職者からの手数料徴収は禁止ですが、厚生労働省令で定める以下の専門職に限り例外的に徴収可能です。
- 芸能家
- モデル
- 科学技術者
- 経営管理者(年収700万円超)
- 熟練技能者(厚生労働省令に定めるもの)
上限は年収の10.8%(税込)です(職業紹介事業紹介料)。
許可申請の流れ【7ステップ】
許可申請から取得までの期間は2〜4ヶ月です。派遣業より短いのが一般的です。
ステップ別タイムライン
| 時期 |
実施事項 |
| −4ヶ月 | 事業計画策定、職業紹介責任者の確保、事業所物件選定 |
| −3ヶ月 | 職業紹介責任者講習の受講、労働局への事前相談 |
| −2.5ヶ月 | 定款変更(事業目的に「有料職業紹介事業」を記載)、資産要件の充足確認 |
| −2ヶ月 | 事業所の鍵付きキャビネット等の整備、手数料表の作成 |
| −1ヶ月 | 申請書類の作成、収入印紙の準備 |
| 申請日 | 都道府県労働局への申請書類提出 |
| 申請+2〜3ヶ月 | 労働局による実地調査、厚生労働大臣の許可、許可証交付 |
申請書類一覧
- 有料職業紹介事業許可申請書
- 有料職業紹介事業計画書
- 定款・法人登記事項証明書
- 直近事業年度の貸借対照表・損益計算書・法人税納税申告書
- 役員の住民票・履歴書・誓約書
- 職業紹介責任者の住民票・履歴書・受講証明書
- 事業所の賃貸借契約書の写し・平面図
- 個人情報適正管理規程
- 業務運営規程(手数料表含む)
- 納税証明書
取得にかかる費用の総額
📐 費用シミュレーション前提条件
- 事業所1箇所での新規許可を想定
- 基準資産500万円・現預金150万円は別途自己資金で確保
- 2026年4月時点の水準
| 費目 |
自分で申請 |
行政書士依頼 |
| 登録免許税 | 9万円 | 9万円 |
| 収入印紙(手数料・1事業所) | 5万円 | 5万円 |
| 職業紹介責任者講習 | 約1万円 | 約1万円 |
| 事務所備品整備 | 5〜20万円 | 5〜20万円 |
| 書類取得費 | 5,000〜1万円 | 5,000〜1万円 |
| 行政書士報酬 | — | 15〜25万円 |
| 合計(法定費用+整備費) | 約20〜36万円 | 約35〜61万円 |
派遣業(約32〜93万円)と比べて1〜2割安く、基準資産も500万円で済むため、人材ビジネスへの参入ハードルは職業紹介業の方が低いと言えます。
許可取得後の義務と更新
新規許可の有効期間は3年、その後は5年ごとの更新制です(職業安定法第32条の6)。
継続義務
- 毎事業年度終了後の事業報告書提出(4月末まで)
- 手数料実績の報告
- 職業紹介責任者の5年ごとの再講習受講
- 個人情報適正管理規程の運用
- 業務運営規程(手数料表)の変更時届出
- 求人・求職受理の原則義務(第5条の6)
- 手数料表の事業所での掲示
- 人材サービス総合サイトでの情報開示
よくある質問
個人事業主でも職業紹介事業の許可は取れますか?
取得可能です。ただし財産要件(基準資産500万円以上)の証明は個人の資産で行い、事業用口座・個人口座の明確な分離が求められます。法人の方が取引先(求人企業)からの信頼性が高く、実務的には法人成りしてから許可取得する事業者が多数です。
紹介予定派遣を行うには両方の許可が必要ですか?
はい、労働者派遣事業許可と有料職業紹介事業許可の両方が必要です。紹介予定派遣は「派遣期間中は派遣事業、直接雇用への切り替え時に職業紹介」として二段階の許可を使います。両方を同時申請することで、事業所整備や責任者選任を効率化できるメリットがあります。
派遣業との違いは何ですか?
雇用関係が決定的に異なります。派遣業は「派遣元が労働者と雇用契約を結び、派遣先で指揮命令を受ける」のに対し、職業紹介業は「紹介先企業と求職者が直接雇用関係を結ぶ」仕組みです。職業紹介業の収益は成約時の紹介手数料のみで、派遣業のような継続的な派遣料金は発生しません。
職業紹介責任者に必要な「3年以上の職業経験」とは具体的に何ですか?
社会人としての3年以上の職業経験を指し、業界・業種・職種は問われません。小売業、製造業、事務職、営業職等、どの経歴でも3年以上あればOKです。新卒で人材会社に入社してすぐ責任者になるケースでは、この要件を満たさないため注意が必要です。
求職者から手数料を取れるケースはありますか?
原則禁止ですが、芸能家・モデル・科学技術者・経営管理者(年収700万円超)・熟練技能者は例外的に徴収可能です(上限:年収の10.8%税込)。一般的な転職エージェント業務では、求職者からではなく求人企業からのみ手数料を徴収するのが標準的です。
オンライン完結型の人材紹介でも許可は必要ですか?
必要です。対面・オンラインに関係なく、職業紹介の「あっせん」行為を行う場合は許可が必要です。オンライン完結型でも事業所要件(20㎡以上・独立性)は適用されるため、完全在宅では原則不許可となります。個室型シェアオフィスでの許可取得事例は増えており、物件選定時の労働局相談が重要です。
外国人材の職業紹介はできますか?
可能です。ただし外国人の在留資格・就労可能な職種の確認が必須で、紹介先企業が適切な雇用手続き(在留資格の変更等)を行うことが前提です。「
在留資格の種類と選定ガイド」をあわせてご確認ください。介護・技能実習・特定技能等の分野では、監理団体・登録支援機関との別の許認可が絡む場合もあります。
まとめ:職業紹介業は派遣業より参入しやすい人材ビジネス
📋 この記事のポイント
- 有料職業紹介事業は職業安定法第30条に基づく厚生労働大臣の許可制
- 財産要件:基準資産500万円以上・現預金150万円以上(派遣業より大幅に軽い)
- 事業所要件:20㎡以上(緩和運用あり)・独立性・鍵付きキャビネット
- 職業紹介責任者:50人ごとに1名、5年有効の講習受講が必須、3年以上の職業経験要件
- 取扱禁止業務は港湾・建設のみ(医療・警備・士業は可)
- 手数料は届出制(事実上上限なし、業界標準は理論年収の30〜35%)
- 求職者からの手数料は原則禁止(芸能家等の一部例外あり)
- 法定費用は約15万円、派遣業の3分の1程度で参入可能
✅ 次のアクション
- 直近決算で基準資産額500万円・現預金150万円を確認する
- 職業紹介責任者候補者の確保と講習受講スケジュール確定
- 事業所物件の20㎡要件・独立性を確認する
- 手数料体系(届出制or上限制)を決定し、業務運営規程を整備する
- 派遣業との併設取得を検討する
- 専門家(行政書士・社労士・税理士)に初期相談する
有料職業紹介事業は、人材ビジネスへの第一歩として派遣業より参入しやすい業態です。鮎澤パートナーズでは行政書士が許可申請、社労士が個人情報管理規程・業務運営規程、税理士が決算対策・手数料設計、公認会計士が資金計画までワンストップで対応しています。関連する許認可として、人材派遣業は「人材派遣業(労働者派遣事業)の許可要件と申請手続き」、介護人材領域は「介護事業の指定申請と要件」、許認可全般の体系は「建設業許可の要件と申請フロー」、外国人材の取扱いは「在留資格の種類と選定ガイド」でご確認ください。
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