公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
登録免許税の各論|会社設立・増資・抵当権設定・還付請求の手続き
会社設立や増資、不動産の抵当権設定で「登録免許税がいくらかかるの?」と疑問をお持ちの経営者・不動産オーナーに向けて、法人形態別の税額から還付請求まで、登録免許税の各論を実務に即して完全ガイドします。この記事を読めば、自社の登記手続きに必要な税額と節税策がわかります。


登録免許税の各論|会社設立・増資・抵当権設定・還付請求の手続き
会社設立や増資、不動産の抵当権設定で「登録免許税がいくらかかるの?」と疑問をお持ちの経営者・不動産オーナーに向けて、法人形態別の税額から還付請求まで、登録免許税の各論を実務に即して完全ガイドします。この記事を読めば、自社の登記手続きに必要な税額と節税策がわかります。
🏆 結論:登録免許税は登記の種類と法人形態で大きく変わる
株式会社の設立で最低15万円、合同会社なら6万円。抵当権設定は債権額の0.4%が原則ですが、住宅用は0.1%に軽減されます。さらに特定創業支援事業を活用すれば設立時の税額が半額に。払いすぎた場合は登記から5年以内に還付請求が可能です。
登録免許税の基礎知識(税額表・軽減措置・計算方法)については「登録免許税の基礎知識|税額一覧表・軽減措置・所有権移転登記の計算」で詳しく解説しています。本記事では、実務で特に問題になる以下の5テーマを掘り下げます。
| テーマ | 対象読者 | ポイント |
|---|---|---|
| 会社設立・増資の登録免許税 | 法人経営者・起業準備中の方 | 法人形態で最低額が大きく異なる |
| 抵当権設定の登録免許税 | 不動産オーナー・融資を受ける経営者 | 住宅用なら税率が4分の1に軽減 |
| 商業登記の登録免許税(変更登記) | 既存法人の経営者 | 同一分類なら1件分で済む |
| 還付請求の手続き | 過大に納付してしまった方 | 2つのルートがあり期限が異なる |
| 不動産の「価額」を巡る争い | 不動産オーナー・税理士 | 固定資産税評価額に誤りがある場合 |
会社設立の登録免許税は、「資本金の額×税率」と「最低額」を比較して高い方を納めます。法人形態によって税率と最低額が異なるため、設立前に正確な金額を把握しておくことが重要です。
| 法人形態 | 税率 | 最低額 | 軽減特例(半額) | 最低額超えのボーダー |
|---|---|---|---|---|
| 株式会社 | 0.7% | 15万円 | 7.5万円 | 約2,143万円 |
| 合同会社 | 0.7% | 6万円 | 3万円 | 約857万円 |
| 合名会社・合資会社 | — | 6万円(定額) | 3万円 | — |
| 一般社団法人・一般財団法人 | — | 6万円(定額) | — | — |
💡 実務のポイント
実務では、資本金100万円〜300万円で株式会社を設立するケースが多く、この場合の登録免許税は一律15万円です。「資本金を1円にしたら登録免許税もゼロになる」という誤解がありますが、最低額は必ず発生します。
📐 シミュレーション前提条件
| 資本金 | 株式会社(本則) | 株式会社(軽減) | 合同会社(本則) | 合同会社(軽減) |
|---|---|---|---|---|
| 100万円 | 15万円 | 7.5万円 | 6万円 | 3万円 |
| 500万円 | 15万円 | 7.5万円 | 6万円 | 3万円 |
| 1,000万円 | 15万円 | 7.5万円 | 7万円 | 3.5万円 |
| 3,000万円 | 21万円 | 10.5万円 | 21万円 | 10.5万円 |
| 5,000万円 | 35万円 | 17.5万円 | 35万円 | 17.5万円 |
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士・司法書士にご相談ください。
産業競争力強化法に基づく「特定創業支援等事業」の支援を受けると、登録免許税が半額になります。2027年3月31日まで利用可能な制度です(租税特別措置法)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | これから創業する方 or 創業5年未満の方(個人) |
| 支援内容 | 経営・財務・人材育成・販路拡大のうち4分野の知識習得(約1ヶ月以上) |
| 証明書の取得先 | 市区町村の商工担当課 |
| 登記時の提出 | 設立登記申請書に証明書を添付 |
| 注意点 | 2社目の設立は対象外。設立登記の前に証明書を取得する必要あり |
📝 行政書士の視点
特定創業支援事業の受講には最短でも1ヶ月程度かかります。設立を急いでいる方は、受講期間と設立スケジュールを事前に調整してください。なお、証明書は支援を受けた市区町村でしか発行されないため、設立予定地で受講するのがスムーズです。
会社設立後に資本金を増やす増資(募集株式の発行、新株発行)の際にも登録免許税がかかります。
| 法人形態 | 課税標準 | 税率 | 最低額 |
|---|---|---|---|
| 株式会社の増資 | 増加した資本金の額 | 0.7% | 3万円 |
| 合同会社の増資 | 増加した資本金の額 | 0.7% | 3万円 |
実務では、増資額500万円の場合の登録免許税は35,000円(500万円×0.7%)、1,000万円の場合は70,000円です。増資にあたっては、登録免許税だけでなく、司法書士の報酬(3万〜5万円程度)も発生する点に留意してください。
抵当権設定登記の登録免許税は、債権額(根抵当権の場合は極度額)に税率を掛けて計算します。不動産の数に関係なく、1つの申請で複数の不動産に抵当権を設定しても税額は変わりません(登録免許税法第13条第1項)。
| パターン | 税率 | 債権額1,000万円の場合 | 根拠法令 |
|---|---|---|---|
| 原則(事業用不動産など) | 0.4% | 4万円 | 登録免許税法別表第一 |
| 住宅用家屋(一般住宅) | 0.1% | 1万円 | 租税特別措置法第75条 |
| 特定法人(日本政策金融公庫等) | 非課税 | 0円 | 登録免許税法第4条 |
| 追加設定(共同担保の追加) | — | 1,500円/件 | 登録免許税法第13条第2項 |
💡 実務のポイント
中小企業が日本政策金融公庫から融資を受ける場合、抵当権設定登記の登録免許税が非課税になります。ただし、資本金5億円以上の法人は非課税の対象外です。公庫から「非課税証明書」が発行されるので、登記申請時に添付してください。
📐 シミュレーション前提条件
| 借入額(債権額) | 原則(0.4%) | 住宅用軽減(0.1%) | 軽減による節約額 |
|---|---|---|---|
| 2,000万円 | 8万円 | 2万円 | 6万円 |
| 3,000万円 | 12万円 | 3万円 | 9万円 |
| 5,000万円 | 20万円 | 5万円 | 15万円 |
住宅用家屋の軽減を受けるためには、市区町村で「住宅用家屋証明書」を取得し、登記申請時に添付する必要があります。証明書の発行手数料は1,300円程度です。
AYUSAWA PARTNERS
会社設立・登記のご相談は鮎澤パートナーズへ
公認会計士・税理士の代表が、記帳代行から決算・税務申告・年末調整まで一括で直接対応します。初回相談無料。
鮎澤パートナーズに相談する会社設立後も、役員変更・本店移転・目的変更などの際に登録免許税がかかります。経営者として知っておくべき主要な変更登記の税額を早見表にまとめました。
| 登記の種類 | 課税標準 | 税額 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 役員変更(就任・退任・重任) | 件数 | 1万円※ | ※資本金1億円超は3万円 |
| 本店移転(管轄内) | 件数 | 3万円 | 1申請 |
| 本店移転(管轄外) | 件数 | 6万円 | 旧管轄3万+新管轄3万の2申請 |
| 目的変更 | 件数 | 3万円 | — |
| 商号変更 | 件数 | 3万円 | — |
| 増資(資本金の増加) | 増加額 | 増加額×0.7%(最低3万円) | — |
| 解散・清算結了 | 件数 | 各3万円 | 合計6万円 |
| 合併 | 資本金増加額 | 増加額×0.15%(最低3万円) | — |
💡 実務のポイント
同じ課税根拠に分類される登記(たとえば「目的変更」と「監査役設置会社の定めの登記」)を1通の申請書にまとめれば、登録免許税は加算されず1件分(3万円)で済みます。変更登記が複数ある場合は、まとめて申請できないか司法書士に確認するのが節約のコツです。
登録免許税を過大に納付してしまった場合、一定の条件を満たせば還付を受けることができます。まず、還付の対象となるケースを整理します。
| ケース | 還付 | 注意点 |
|---|---|---|
| 税額を計算間違いして多く納付した | ○ | 登記完了日から5年以内に請求 |
| 軽減措置の適用を忘れて本則で納付した | △ | 証明書の添付がなければ還付不可 |
| 登記申請を取り下げた | ○ | 領収証書の再使用も選択可能 |
| 登記申請が却下された | ○ | 登記機関から自動で還付手続き |
| 固定資産税評価額に誤りがあった | ○ | 後から判明した場合も対象 |
| 非課税規定に該当するのに納付した(証明書なし) | × | 登記時に証明書の添付が必須 |
⚠️ 注意
軽減措置の証明書(住宅用家屋証明書など)を登記申請時に添付し忘れた場合、後から証明書を提出しても還付は認められません。これは国税不服審判所の裁決でも繰り返し確認されている重要なルールです。軽減の適用を受ける場合は、申請前に証明書の準備を必ず確認してください。
登録免許税の還付には、「登記機関(法務局)経由」と「税務署への直接請求」の2つのルートがあります。最高裁平成17年4月14日判決により、どちらのルートでも還付請求が可能であることが確認されています。
| 比較項目 | ルート①:登記機関経由(登録免許税法31条2項) | ルート②:税務署直接(国税通則法56条) |
|---|---|---|
| 請求先 | 登記を受けた法務局 | 住所地の所轄税務署 |
| 期限 | 登記を受けた日から5年以内 | 国税通則法の一般的な期限 |
| 提出書類 | 還付通知請求・申出書 | 過誤納金の還付請求書 |
| 還付加算金の起算日 | 請求日の翌日から1ヶ月後 | 納付日から(より有利な場合あり) |
| メリット | 手続きが簡易・迅速 | 登記機関が拒否した場合の救済手段 |
| 拒否された場合 | 拒否通知は行政処分→抗告訴訟可能 | 通常の不服申立て手続き |
💡 実務のポイント
実務では、まずルート①(法務局への還付通知請求)を利用するのが一般的です。司法書士に登記を依頼した場合は、委任状に「還付金の受領権限」を含めておくと、還付金を代理受領してもらえるのでスムーズです。
ルート①(登記機関経由)の還付請求は、以下の5ステップで行います。
| ステップ | 手続き | 必要なもの・注意点 |
|---|---|---|
| 1 | 過大納付の確認 | 登記完了証・領収証書を確認 |
| 2 | 還付通知請求・申出書の作成 | 法務局HPから様式を入手 |
| 3 | 法務局に提出 | 登記を受けた法務局に直接提出 |
| 4 | 法務局から税務署へ還付通知 | 法務局が審査後、税務署に通知 |
| 5 | 税務署から還付金の受領 | 指定口座に振込(数週間〜1ヶ月程度) |
登録免許税の課税標準である不動産の「価額」は、原則として固定資産課税台帳に登録された価格(固定資産税評価額)を使用します。しかし、この評価額が実態と異なるケースがあり、登録免許税の過大納付につながることがあります。
実務で問題になるケースとしては、地積(土地の面積)の誤り、新築建物の評価額が未確定の場合、災害による滅失・損壊で価値が下がった場合などがあります。
| 項目 | ①地積の過大(裁決・平成24年1月24日) | ②還付請求の可否(最判・平成17年4月14日) |
|---|---|---|
| 争点 | 登記後に地積が過大と判明した場合、登録免許税の還付を受けられるか | 登録免許税法31条2項の請求によらずに過誤納金の還付を請求できるか |
| 結論 | 還付を認容。課税標準は登記時の時価であり、地積の誤りがあれば過大納付に該当する | 国税通則法56条に基づく直接請求も可能と認定。2ルートの還付請求が法的に確認された |
| 実務への影響 | 地積更正・分筆後に過大な評価額で納付したことが判明した場合、5年以内なら還付請求が可能 | 法務局に還付を拒否された場合でも税務署に直接請求できる。拒否通知は行政処分として訴訟の対象にもなる |
📊 公認会計士の視点
法人が不動産を取得した場合、登録免許税は取得価額に算入するのが原則です(法人税法施行令第54条)。しかし、還付が認められた場合は取得価額の減額処理が必要になります。還付額が重要な場合は、固定資産台帳の修正と減価償却計算の見直しも忘れずに行ってください。
| 優先度 | 節約方法 | 効果の目安 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 1 | 特定創業支援事業の活用 | 設立時の税額が半額 | 新規創業者 |
| 2 | 住宅用家屋証明書の取得 | 抵当権設定が4分の1に | 住宅購入者 |
| 3 | 変更登記のまとめ申請 | 同一分類なら1件分に | 既存法人 |
| 4 | 合同会社での設立 | 最低額が15万→6万円に | 法人形態未定の方 |
| 5 | 日本政策金融公庫の活用 | 抵当権設定が非課税 | 公庫融資を受ける法人 |
実務では、上記の方法を組み合わせることで登録免許税を大幅に抑えられます。たとえば、合同会社で設立(6万円)+特定創業支援事業で半額(3万円)にすれば、株式会社の本則(15万円)と比較して12万円の節約になります。
📐 シミュレーション前提条件
| 費用項目 | 株式会社(本則) | 株式会社(軽減) | 合同会社(本則) | 合同会社(軽減) |
|---|---|---|---|---|
| 登録免許税 | 15万円 | 7.5万円 | 6万円 | 3万円 |
| 定款認証手数料 | 3万円 | 3万円 | 不要 | 不要 |
| 定款の謄本手数料 | 約2,000円 | 約2,000円 | 不要 | 不要 |
| 法定費用合計 | 約18.2万円 | 約10.7万円 | 6万円 | 3万円 |
※司法書士の報酬(5万〜15万円程度)は含まれていません。※概算値です。
年間50社以上の設立を支援してきた経験上、合同会社を選択する経営者は増加傾向にあります。ただし、将来的に株式上場を目指す場合や、ベンチャーキャピタルからの出資を受ける予定がある場合は、株式会社を選択するのが適切です。法人形態の選択は登録免許税だけでなく、事業計画全体で判断してください。
法人設立から不動産取得まで、登録免許税に関する手続きでミスが多いポイントをチェックリストにまとめました。
| No. | チェック項目 | よくあるミス |
|---|---|---|
| 1 | 法人形態に応じた最低額を確認したか | 合同会社を株式会社と同額で計算してしまう |
| 2 | 特定創業支援事業の証明書は取得済みか | 設立登記後に証明書を取得しても適用されない |
| 3 | 抵当権設定の課税標準は「債権額」か | 不動産の評価額で計算してしまう |
| 4 | 住宅用家屋証明書を用意したか | 証明書なしで本則税率を適用されてしまう |
| 5 | 収入印紙の額面は正確か | 端数処理の誤りで不足額が発生 |
| 6 | 複数の変更登記をまとめられないか確認したか | 別々に申請して登録免許税が二重にかかる |
| 7 | 日本政策金融公庫の非課税証明書を確認したか | 証明書の添付を忘れて登録免許税を納付してしまう |
| 8 | 管轄外の本店移転で2件分の税額を準備したか | 1件分の3万円しか用意しない |
📋 この記事のポイント
登録免許税の基本的な仕組みについては「登録免許税の基礎知識|税額一覧表・軽減措置・所有権移転登記の計算」、加算税全般については「加算税の全体像」もあわせてご覧ください。
AYUSAWA PARTNERS
会社設立・商業登記のご相談は鮎澤パートナーズへ
公認会計士・税理士の代表が、記帳代行から決算・税務申告・年末調整まで一括で直接対応します。初回相談無料。
鮎澤パートナーズに相談する