【行政書士×社労士が解説】特定技能ビザの取得要件と受入れ手続き|16分野の対象業種と実務の流れ

【行政書士×社労士が解説】特定技能ビザの取得要件と受入れ手続き|16分野の対象業種と実務の流れ
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

特定技能ビザの取得要件と受入れ手続き|16分野の対象業種と実務の流れ

人手不足の解消に特定技能外国人の採用を検討する企業向けに、受入企業の要件と具体的な手続きを解説します。この記事を読めば、16分野の対象業種、雇用契約の要件、1号支援計画の作成方法、登録支援機関の活用判断が具体的にわかります。

🏆 結論:特定技能の受入れは「16分野の該当確認→受入機関要件の整備→支援計画作成→入管申請」の4段階。1号は約8割の企業が登録支援機関に委託

特定技能ビザは人手不足が深刻な16分野で外国人を受け入れる制度で、技人国と違い大卒要件がなく、分野別の技能試験と日本語試験に合格すれば採用できます。受入企業(特定技能所属機関)には、日本人同等の報酬・社会保険加入・1号特定技能外国人支援計画の作成・実施が義務付けられます。支援業務は自社対応・登録支援機関への委託のいずれかを選択でき、約8割の企業が委託を選びます。在留資格申請から入社まで通常3〜6か月、登録支援機関の手数料は月額2〜5万円/人が相場です。

特定技能ビザとは|技能実習・技人国との違い

特定技能は、人手不足の特定産業分野で一定の技能を有する外国人を即戦力として受け入れるために2019年4月に創設された在留資格です(出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表、及び入管法第2条の5第3項)。2024年3月の閣議決定で対象分野が16に拡大され、2024年12月末時点で約28万人が在留しています。

技能実習・技人国との違い

項目 特定技能1号 技能実習 技人国
目的人材確保技能移転(国際貢献)専門的・技術的分野の労働
対象職種16分野90職種165作業ホワイトカラー全般
学歴不問(技能試験合格)不問大卒または実務10年以上
転職同一分野内で可能原則不可同一在留資格の範囲で可
在留期間上限通算5年最大5年(1号3号計)更新無制限
家族帯同不可(2号は可)不可

特定技能の対象16分野一覧

2024年3月の閣議決定により、特定技能1号の対象分野は16に拡大されました。

  1. 介護(身体介護・機能訓練補助・レクリエーション等)
  2. ビルクリーニング(建築物内部の清掃)
  3. 工業製品製造業(素形材・産業機械・電気電子情報関連)
  4. 建設(土木・建築・ライフライン等)
  5. 造船・舶用工業(溶接・仕上げ・機械加工等)
  6. 自動車整備(自動車の点検・整備)
  7. 航空(空港グランドハンドリング・航空機整備)
  8. 宿泊(フロント・企画広報・接客・レストラン)
  9. 農業(耕種農業全般・畜産農業全般)
  10. 漁業(漁業・養殖業)
  11. 飲食料品製造業(食品製造・食品衛生管理含む)
  12. 外食業(飲食物調理・接客・店舗管理)
  13. 自動車運送業(2024年追加)
  14. 鉄道(2024年追加)
  15. 林業(2024年追加)
  16. 木材産業(2024年追加)

💡 行政書士の視点

「特定技能の16分野に該当するか」を判断する際には、業種だけでなく具体的な業務区分の確認が必要です。例えば外食業の「飲食物調理」「接客」「店舗管理」は対象ですが、店舗で行う洗い場の補助作業が主業務になる場合は、業務区分を超えて単純労働と判定される恐れがあります。弊所では、受入企業の求人票と業務内容を精査し、該当区分に収まる形で業務設計することから支援を開始します。

特定技能1号と2号の違い

項目 特定技能1号 特定技能2号
技能水準相当程度の知識・経験熟練した技能
試験分野別技能試験+日本語試験(JFT-Basic または JLPT N4以上)熟練技能試験(一部分野のみ日本語試験)
在留期間1年・6か月・4か月(通算5年まで)3年・1年・6か月(更新無制限)
家族帯同不可可(配偶者・子)
対象分野16分野11分野(介護・自動車運送業・鉄道・林業・木材産業除く)
支援計画必須不要
永住権への道間接的(2号経由で可能)要件満たせば可能

介護分野は1号のみで、2号の対象ではありません。ただし介護福祉士の国家資格を取得すれば、在留資格「介護」に移行して無期限で就労できるルートが設けられています。

受入企業(特定技能所属機関)の要件

特定技能外国人を雇用する企業は、入管法上「特定技能所属機関」と呼ばれ、入管法第2条の5第3項・第4項および特定技能の基準省令に基づく以下の要件をすべて満たす必要があります。

機関自体に関する基準

  1. 労働・社会保険・租税関係法令の遵守:過去5年以内に重大な違反がないこと
  2. 1年以内に不当な理由による労働者離職(非自発的離職)がないこと
  3. 1年以内に外国人の行方不明(帰責事由あり)がないこと
  4. 欠格事由に該当しないこと:暴力団排除、禁錮以上の刑歴などがない
  5. 外国人支援体制があること:自社支援または登録支援機関への委託
  6. 支援責任者・支援担当者を配置できること
  7. 保証金の徴収禁止:外国人本人・家族から金銭的保証を受けない

雇用契約に関する基準

⚠️ 日本人と同等の報酬は「業界水準」ではなく「自社水準」

「日本人と同等額以上の報酬」とは業界平均ではなく、自社内で同じ業務に従事する日本人従業員の給与と比較します。就業規則・給与テーブル・同職日本人の給与明細が証憑として求められるため、採用前に社内の給与体系を整備する必要があります。同職の日本人がいない場合は、業界賃金統計・最低賃金の1.3倍以上などが目安となります。

1号特定技能外国人支援計画の作成【10項目】

1号特定技能外国人を雇用する受入企業は、支援計画を作成し、計画に基づく支援の実施が義務付けられています。支援計画の必須項目は10項目です。

  1. 事前ガイダンス:雇用契約締結後、在留申請前に、労働条件・活動内容・入国手続・保証金徴収の有無等を対面またはテレビ電話で説明(3時間以上が目安)
  2. 出入国する際の送迎:空港から事業所または住居まで送迎、出国時も空港の保安検査場まで同行
  3. 住居確保・生活に必要な契約支援:社宅提供または賃貸住宅の保証人となる、銀行口座・携帯電話・ライフライン契約の案内・補助
  4. 生活オリエンテーション:入国後、生活一般の事項・公的手続・緊急連絡先等を説明(8時間以上が目安)
  5. 公的手続等への同行:社会保障・税手続の書類作成補助、必要に応じて役所へ同行
  6. 日本語学習機会の提供:日本語学校の案内、学習教材の提供等
  7. 相談・苦情対応:職場・生活上の相談窓口を設置、母国語で対応可能な体制
  8. 日本人との交流促進:地域行事・交流イベントの案内・補助
  9. 転職支援(受入企業都合の解雇の場合):次の受入先の紹介、失業手当等の受給手続補助
  10. 定期的な面談・行政機関への通報:3か月に1回以上、支援責任者が面談し、労働関係法令違反等があれば行政通報

🔷 社労士の視点

支援計画10項目の中でも、実務上頻繁にトラブルになるのが「相談・苦情対応」と「定期的な面談」です。日本人と同じ社内連絡体制で対応すると、言語・文化の違いから苦情が可視化されず、後に重大な労務問題(未払い残業代請求・ハラスメント告発等)に発展することがあります。入社時から母国語対応窓口を明示し、月次の面談記録を残す運用を強く推奨します。

登録支援機関の活用|自社対応vs委託の判断基準

支援業務は自社で実施することも、登録支援機関に全部委託することもできます。実務では約8割の企業が登録支援機関に委託しています。

登録支援機関に委託するメリット

自社支援を選ぶ場合の要件

自社で支援計画を実施する場合、以下の要件を満たす必要があります。

登録支援機関の手数料相場

費用項目 相場 備考
初期費用(支援計画作成等)5〜15万円/人初回採用時のみ
月額支援費用2〜5万円/人継続的に発生
在留資格申請取次10〜20万円/件申請ごとに発生
年度更新時の対応3〜10万円/人更新時

※地域・登録支援機関により変動します。

受入れ手続きの全体フロー【8ステップ】

【ステップ1】事業計画・採用計画の策定(0〜1か月目)

16分野のどの業務区分で採用するか、受入予定人数、採用時期を決めます。分野によっては業界団体(協議会)への加入が必要です。

【ステップ2】分野別協議会への加入(1か月目)

多くの分野で、受入企業は業界の分野別協議会に加入することが義務化されています。例えば建設業なら「建設技能人材機構(JAC)」、介護業なら「介護分野における特定技能協議会」への加入が必要です。

【ステップ3】登録支援機関の選定・契約(1〜2か月目)

自社支援か登録支援機関委託かを決定し、委託の場合は登録支援機関と支援委託契約を締結します。登録支援機関は出入国在留管理庁のホームページで公開されている登録簿から選びます。

【ステップ4】外国人候補者の募集・選考(1〜3か月目)

以下のいずれかのルートで候補者を募集します。

【ステップ5】雇用契約の締結(3〜4か月目)

日本人と同等以上の報酬、社会保険加入、業務区分に適合する業務内容を明記した雇用契約書を作成します。

【ステップ6】1号特定技能外国人支援計画の作成(3〜4か月目)

10項目の支援計画を具体的に作成します。登録支援機関に委託する場合は同機関が作成を代行します。

【ステップ7】在留資格申請(4〜5か月目)

海外在住者の場合は在留資格認定証明書交付申請、日本在住者(技能実習2号修了者等)の場合は在留資格変更許可申請を行います。審査期間は2〜3か月です。

【ステップ8】入国・就労開始(5〜6か月目)

在留資格認定証明書が交付されたら本人が現地日本大使館でビザ申請・取得、入国後は事前ガイダンス・生活オリエンテーションを実施して就労開始します。

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育成就労制度との関係|2027年4月からの新体系

2024年6月に改正入管法が成立し、技能実習制度に代わる「育成就労制度」が2027年4月1日から施行されます。育成就労は「人材育成・人材確保」を目的とし、原則3年間で特定技能1号への移行を前提とした制度設計です。

育成就労から特定技能へのキャリアパス

ステージ 期間 習得要件
育成就労3年日本語N5→N4、技能検定基礎級→随時3級
特定技能1号通算5年分野別技能試験+JLPT N4以上
特定技能2号更新無制限熟練技能試験合格

特定技能は19分野ですが、育成就労は17分野(航空・自動車運送業を除く)となります。2027年3月までに入国済みの技能実習生は現行制度で継続可能ですが、それ以降の新規採用は育成就労ルートに切り替わります。

受入後の義務|4つの届出と3か月に1回の面談

受入企業が行うべき定期・随時届出

届出の種類 頻度 届出先
受入れ困難に係る届出発生日から14日以内出入国在留管理庁
雇用契約の変更に係る届出変更日から14日以内出入国在留管理庁
定期届出(受入活動状況)四半期ごと出入国在留管理庁
外国人雇用状況届出雇用・離職時ハローワーク

届出漏れは受入機関基準違反となり、今後の受入れ停止・受入資格の取消対象となります。登録支援機関に委託している場合は届出も代行してもらえますが、最終責任は受入企業にあります。

不許可・受入停止になりやすいケースと対策

ケース1:労働関係法令違反

残業代未払い、就業規則未整備、安全衛生法違反等が発覚すると受入機関基準違反となります。対策:入社前に社労士と連携して就業規則・36協定・給与計算を整備し、最低賃金・割増賃金を確実に支払う。

ケース2:業務区分を逸脱した業務

例えば外食業で雇用した特定技能外国人に清掃・洗い場のみ担当させると、業務区分逸脱と判定されます。対策:業務区分の範囲内で日報・シフト表を記録し、業務実態を明確にする。

ケース3:報酬が日本人と同等でない

同職日本人と比較して報酬が明らかに低い場合は不許可・受入停止となります。対策:給与テーブル・日本人同職の給与明細を整備し、雇用契約締結時点で比較資料を作成する。

ケース4:支援計画の不実施

定期面談を実施していない、事前ガイダンスが形式的、相談窓口が機能していない場合は支援計画違反となります。対策:面談記録・ガイダンス実施記録を書面で残す。登録支援機関と連携して定期的に実施状況を点検。

⚠️ 受入機関基準違反のペナルティ

受入機関基準に違反すると、5年間は新規の特定技能外国人受入れができなくなります。また、既雇用の外国人についても契約解消・他社移籍を求められるケースがあります。違反の多くは「悪意」ではなく「知識不足」に起因するため、受入れ開始前に社内の労務・社保・税務体制を整備することが不可欠です。

よくある質問

特定技能1号の雇用で技能実習と違うメリットは何ですか?
特定技能は即戦力として採用でき、転職も同一分野内で可能です。技能実習は「技能移転」が建前のため本人の転職ができず、受入期間の柔軟性にも制約があります。また、特定技能は学歴要件がなく分野別技能試験合格者が対象なので、採用時点で日本語・業務スキルを持つ人材を雇用できます。
特定技能1号は何年まで在留できますか?
通算5年までです。5年を超えて継続雇用したい場合は、特定技能2号への移行が必要で、2号の熟練技能試験に合格する必要があります。介護分野は特定技能2号の対象外なので、代わりに介護福祉士の国家資格を取得して在留資格「介護」に移行するルートがあります。
受入企業が自社で支援計画を実施するのは難しいですか?
初めて特定技能外国人を雇用する中小企業の多くは、自社支援のノウハウがないため登録支援機関への委託を選びます。特に「母国語での相談対応」「生活オリエンテーション」などは通訳・専門知識が必要で、自社対応のハードルが高い項目です。受入経験のある大企業では自社支援体制を構築するケースも見られます。
特定技能外国人の給与相場はどのくらいですか?
分野・地域により異なりますが、月給20〜28万円(手取り16〜22万円程度)が目安です。日本人と同等以上が要件なので、自社の日本人同職給与テーブルを基準に決定します。残業代・社保加入は日本人と同じ取扱いです。登録支援機関への委託費を含めると、1人あたり年間コストは330〜400万円程度になります。
分野別協議会への加入は義務ですか?
16分野のうち建設・介護・自動車整備等では受入企業の協議会加入が義務化されています。加入費用は分野・団体により異なり、年会費10〜30万円、入会金数万円程度が相場です。建設分野では「建設キャリアアップシステム(CCUS)」への登録も必要など、分野固有の追加手続があります。
技能実習から特定技能への変更は可能ですか?
技能実習2号を良好に修了した外国人は、技能試験・日本語試験を免除されて特定技能1号に切り替えられます。同じ受入企業で継続雇用する場合、在留資格変更許可申請を行い、支援計画を新たに作成します。切替時期は在留期限の3か月前からが望ましく、手続き期間として2〜3か月を見込んでください。
特定技能外国人を解雇する場合の手続きは?
自己都合退職でも会社都合解雇でも、出入国在留管理庁へ「雇用契約終了の届出」が14日以内に必要です。会社都合で解雇する場合、次の受入先を紹介する支援義務(転職支援)があり、本人が次の雇用先を見つけるまでの住居支援等も継続することが望ましいとされます。
登録支援機関はどのように選べばいいですか?
選定ポイントは①採用予定外国人の母国語対応が可能か、②同じ分野・業種の受入実績があるか、③地域の労基署・入管との連携実績があるか、④料金体系が明確か、⑤行政書士・社労士等の専門家が在籍しているかです。出入国在留管理庁の登録簿から候補を選び、複数機関に見積もりを依頼することを推奨します。
育成就労制度の施行後、既存の技能実習生はどうなりますか?
2027年3月までに入国済みの技能実習生は、現行制度のまま実習を継続できます。技能実習2号・3号への移行も現行ルールが適用されます。修了後は特定技能1号への移行が可能です。2027年4月以降の新規採用は育成就労制度となり、3年間で特定技能1号への移行を前提とする設計になります。
外国人の家族を呼び寄せることはできますか?
特定技能1号では家族帯同は認められていません。特定技能2号に移行すれば配偶者・子を「家族滞在」の資格で呼び寄せ可能です。介護分野は2号対象外なので、家族帯同を希望する場合は介護福祉士取得→在留資格「介護」への移行を検討してください。

📋 この記事のポイント

  • 特定技能は人手不足16分野で外国人を受け入れる在留資格(2024年3月拡大)
  • 1号は通算5年、2号は更新無制限。介護分野は2号対象外
  • 受入企業には労働・社保法令遵守、日本人同等報酬、支援計画作成等の義務
  • 1号支援計画は10項目(事前ガイダンス・生活支援・相談対応・定期面談等)
  • 支援業務は自社実施 or 登録支援機関委託。約8割は委託を選択
  • 登録支援機関の手数料は月額2〜5万円/人が相場
  • 受入れから就労開始まで3〜6か月、分野別協議会への加入が必要
  • 2027年4月から育成就労制度が施行、技能実習は廃止
  • 受入機関基準違反は5年間の受入停止ペナルティあり

AYUSAWA PARTNERS

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