【税理士×行政書士が解説】特許出願の手続きと費用の基礎知識|審査請求・特許料と弁理士との役割分担

【税理士×行政書士が解説】特許出願の手続きと費用の基礎知識|審査請求・特許料と弁理士との役割分担
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

自社技術を守る特許出願の費用・期間・要件を法人経営者向けに整理。出願料・審査請求料・特許料の3段階印紙代、新規性喪失の例外、中小企業の減免制度、税務処理まで実務目線でガイドします。

🏆 結論:特許取得の最低費用は約17万円(自力出願)だが、実務上は弁理士報酬40〜60万円を含めて検討。新規性喪失前の出願と中小企業減免の活用が費用最適化の2大ポイント

特許取得までの特許庁印紙代は最低169,800円(出願料14,000円+審査請求料142,000円+3年分特許料13,800円)です。自力出願も可能ですが、出願代理は弁理士の独占業務のため行政書士・税理士は代理できません。中小企業・個人事業主は減免制度で審査請求料・特許料が1/3〜1/2に圧縮可能です。出願前の公開(論文発表・展示会出展)は新規性喪失となり特許取得不可となるため、「発表前の出願」が鉄則です。

特許とは|何が保護されるのか

結論から言えば、特許とは特許法第2条に基づき、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」である発明に与えられる独占排他権です。特許権の存続期間は出願日から20年(一部薬事関連等で延長あり)で、特許権者は他者の実施を差し止め・損害賠償請求することができます。

参考: e-Gov「特許法」

特許の対象となる発明の3種類

種類 内容
物の発明物品・装置・材料新型バッテリー・医薬品
方法の発明製造方法以外の方法通信方式・暗号化方法
物を生産する方法の発明製造プロセス化学合成法・半導体製造方法

💡 実務のポイント

弊所で年間30件以上の会社設立を支援する中で、創業者からの相談で最も多いのが「ビジネスモデル特許」の可否です。単なる商売上のアイデア・経済理論・人間の精神活動は特許の対象外ですが、ITシステム・コンピュータソフトウェアと結合させた処理フローは「方法の発明」として特許対象となり得ます。実際、2024年に相談を受けたSaaS事業者は、独自の集計アルゴリズムをコンピュータ処理方法として特許出願し、後発参入のブロックに成功したケースがあります。発明のコンセプト段階で弁理士相談を入れることが特許戦略の出発点です。

特許を受けるための5つの要件

特許を受けられるのは、特許法第29条・第32条等に定める次の5要件をすべて満たす発明のみです。

① 産業上の利用可能性(第29条第1項柱書)

産業として実施できる発明である必要があります。人間を手術・治療・診断する方法、理論上のみで実施不可能なもの、個人的・実験的にしか利用できないものは対象外です。ビジネスモデル単独も原則対象外ですが、IT実装と組み合わせると対象になる場合があります。

② 新規性(第29条第1項)

出願前に日本または外国で、公然知られた・公然実施された・刊行物またはインターネットで公開された発明は特許を受けられません。自社が学会発表・展示会出展・プレスリリース・製品販売を行った瞬間に新規性は失われます。

③ 進歩性(第29条第2項)

その技術分野の通常の知識を有する者が、公知技術から容易に発明できる程度のものは特許を受けられません。単なる材料の置き換え・設計変更・組み合わせは進歩性が否定される典型です。

④ 先願(第39条)

同一発明について先に出願された発明のみが特許を受けられます(先願主義)。発明が先であっても、他者が先に出願していれば特許は取れません。発明をしたらすぐに出願することが鉄則です。

⑤ 公序良俗違反でないこと(第32条)

公の秩序・善良の風俗・公衆衛生を害するおそれのある発明は特許対象外です。

⚠️ 新規性喪失の落とし穴

自社の発明について、特許出願前に論文発表・プレスリリース・展示会出展・自社サイト公開・クラウドファンディング等を行うと新規性が失われ、特許を取得できなくなります。特許法第30条の「新規性喪失の例外」を利用すれば発表から1年以内なら救済される可能性がありますが、外国出願では利用できない国が多く、国際展開を視野に入れた発明は絶対に発表前に出願するのが鉄則です。弊所が2024年に相談を受けた技術系スタートアップでは、シード期のプレゼン資料を投資家に開示したことで新規性喪失となり、主力技術の特許化を断念したケースがありました。

特許取得の費用|特許庁印紙代の3段階構造

特許取得の特許庁費用は「出願料」「審査請求料」「特許料」の3段階で発生します。それぞれ支払タイミングが異なる点が特徴です。

3段階の印紙代(2026年4月時点)

参考: 特許庁「産業財産権関係料金一覧」

段階 金額 支払タイミング
出願料14,000円(出願時)特許出願と同時
出願審査請求料138,000円+(請求項数×4,000円)出願日から3年以内
特許料(第1〜3年)4,300円+(請求項数×300円)(1年分)登録査定後30日以内(3年分一括)
特許料(第4〜6年)10,300円+(請求項数×800円)(1年分)前年まで(各年分)
特許料(第7〜9年)24,800円+(請求項数×1,900円)(1年分)前年まで(各年分)
特許料(第10年以降)59,400円+(請求項数×4,600円)(1年分)前年まで(各年分)

最低費用シミュレーション

🧮 請求項数1・自力出願の最低費用

・出願料:14,000円
・審査請求料(1請求項):142,000円
・設定登録料(3年分・1請求項):13,800円
・合計:169,800円
※電子出願の場合。書面出願時は電子化手数料(1出願1,200円+書面1枚700円)が別途加算されます。

弁理士報酬の相場

日本弁理士会の報酬アンケート結果等を参考にすると、相場は以下のとおりです。商標登録と比べて特許出願は明細書作成が高難度で、弁理士報酬が高額になります。

業務 弁理士報酬相場(税抜)
先行技術調査50,000〜150,000円
出願(明細書・図面作成+提出)250,000〜500,000円
審査請求代行10,000〜30,000円
拒絶理由通知への応答(中間処理)80,000〜200,000円/回
登録料納付代行10,000〜30,000円
成功報酬なし〜100,000円(事務所により)

通常の発明で弁理士に依頼する場合、出願から登録まで総額40万〜60万円(印紙代+弁理士報酬)が相場です。

中小企業・個人事業主向けの減免制度

特許庁は中小企業・個人事業主・スタートアップに対して、審査請求料・特許料を大幅に軽減する減免制度を設けています。2019年の制度拡充以降、対象者の範囲が広がっています。

参考: 特許庁「中小企業等の特許料等の減免制度」

対象者 軽減率
中小企業(原則)審査請求料・特許料(1〜10年分)を1/2
中小ベンチャー企業(設立10年未満・資本金3億円以下)審査請求料・特許料(1〜10年分)を1/3
個人(法人格を持たない事業者)審査請求料・特許料を1/2
大学・試験研究機関等審査請求料・特許料を1/2または1/3

減免申請は審査請求時・各年分の特許料納付時に行います。対象要件を満たせば、審査請求料142,000円が71,000円(1/2)または47,300円(1/3)まで圧縮可能です。

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特許取得までの流れ【8ステップ】

ステップ1:発明の着想と社内管理

研究開発・製品開発の過程で新たな発明が生まれたら、発明者・日時・内容を発明届出書等で社内管理します。職務発明(従業員発明)の場合は会社の特許を受ける権利を確定させる規程整備が必要です。

ステップ2:先行技術調査

特許庁のJ-PlatPatで類似発明の有無を調査します。先行文献がある場合は、差別化要素を見出して明細書の記載を工夫する必要があります。精度の高い調査は弁理士に依頼するのが実務的です。

ステップ3:明細書・請求の範囲の作成

明細書(発明の詳細な説明)、特許請求の範囲(権利範囲)、図面、要約書を作成します。請求項の記載が権利範囲を決定するため、広すぎると拒絶、狭すぎると権利価値が低下する微妙なバランス感が必要です。

ステップ4:特許出願

電子出願または書面出願で特許庁に提出します。出願料14,000円を特許印紙で納付します。出願日が先願主義の基準日となるため、日付は重要です。

ステップ5:出願公開(1年6ヶ月後)

出願から1年6ヶ月経過すると、出願内容が特許公報として公開されます。この公開により「拡大された範囲の先願(特許法第29条の2)」として他者の出願を排除する効果が発生します。

ステップ6:出願審査請求(3年以内)

出願日から3年以内に出願審査請求を行わないと、出願は取下げ擬制となり権利化できません。請求時に審査請求料(138,000円+請求項×4,000円)を納付します。審査請求は出願時に同時に行うことも可能です。

ステップ7:実体審査

審査官が新規性・進歩性・先願等の特許要件を審査します。審査期間は審査請求から平均10〜14ヶ月です。約8割の出願で拒絶理由通知が出され、意見書・補正書の提出で反論する中間処理が必要になります。

ステップ8:登録査定・特許料納付

すべての拒絶理由が解消すれば登録査定が出され、30日以内に第1〜3年分の特許料を一括納付します。特許料納付後、特許原簿に登録されて特許権が発生します。

審査期間を短縮する制度

早期審査

次のいずれかに該当する出願は早期審査の対象となり、審査期間が平均2〜3ヶ月まで短縮されます。申請料は無料です。

スーパー早期審査

早期審査対象に加えて、実施関連かつ外国関連の厳しい条件を満たす出願は、平均1ヶ月まで短縮されます。ベンチャー・スタートアップの資金調達時に特許取得を急ぐ場合に活用できます。

特許出願は弁理士の独占業務

💡 弁理士法による業務独占

特許法・実用新案法・意匠法・商標法に基づく出願代理は弁理士の独占業務です(弁理士法第4条・第75条)。弁理士資格を持たない者(行政書士・税理士・弁護士含む)は、特許出願を「業として代理」することができません。ただし、弁護士は他の法律事件と同様に特許実務も扱えます。発明者自身の出願(自己出願)は法律上問題ありません。弊所では、創業者の発明戦略相談・研究開発税制との連動・職務発明規程整備等は4士業で対応し、出願そのものは提携弁理士事務所と連携してワンストップでサポートします。

特許権の税務処理|取得費・研究開発費・償却

特許出願費用の会計処理

費用 税務処理
出願料・弁理士費用(出願段階)研究開発費または仮勘定で計上→登録時に特許権へ振替
審査請求料・中間処理費用同上
設定登録料(第1〜3年分)特許権として無形固定資産計上
毎年の特許料(維持)支払年度の損金算入(販管費)

特許権の減価償却

💡 税理士の視点

特許出願費用は研究開発税制の適用対象となる重要な支出です。研究開発費として処理した出願関連費用は、試験研究費の総額型税額控除(法人税額の最大25%控除)の対象となり、中小企業者等の加算税額控除も活用できます。弊所が2024年に支援したメーカー(年商8億円)では、特許出願関連費用380万円を含む試験研究費総額1,200万円を計上し、試験研究費税額控除で約180万円の法人税額削減を実現しました。特許出願の経理処理は、損金か資産計上かだけでなく、研究開発税制との連動まで考える必要があります。

特許権の維持・活用

特許料の毎年納付

特許権を維持するには、毎年(設定登録から4年目以降)特許料を納付し続ける必要があります。年を追うごとに金額が段階的に上昇し、10年目以降は1請求項あたり年間約64,000円の維持コストがかかります。事業化の見通しが立たない特許は放棄することも経営判断です。

特許権の活用戦略

よくある失敗パターン

  1. 出願前の発明公開:学会発表・展示会出展・自社サイト公開で新規性喪失
  2. 先行技術調査不足:調査せず出願し、先行文献で拒絶査定
  3. 請求項の記載が広すぎる:進歩性で拒絶、またはクレーム限定補正で権利範囲が狭くなる
  4. 審査請求期限の徒過:出願から3年経過で取下げ擬制
  5. 特許料納付忘れ:毎年の納付を忘れて権利消滅
  6. 職務発明規程の不備:従業員発明で後に紛争発生、相当の利益支払で経営負担
特許出願してから登録まで何年かかりますか?
通常審査では出願から登録まで平均3〜4年(出願後すぐ審査請求した場合)です。出願→審査請求→実体審査→拒絶理由通知→意見書・補正書→登録査定の流れで、特に中間処理に時間がかかります。早期審査を利用すれば2〜3ヶ月まで短縮可能。資金調達時に特許取得状況を示したい場合は早期審査の活用を検討してください。
出願後すぐに審査請求しないとダメですか?
必須ではありません。出願日から3年以内に審査請求すれば問題ありません。事業化の見通しが立つまで審査請求を待つことで、不要な審査請求料(約14万円)の支出を回避できます。ただし、競合の参入を牽制したい場合は早期の審査請求+特許取得が戦略的に有効です。審査請求しないまま3年経過すると出願は取下げ擬制となり、同じ発明を再度出願しても自己の公開出願により新規性喪失で特許不可となるため、期限管理は厳格に行う必要があります。
新規性喪失の例外はどう活用しますか?
特許法第30条により、自らの発表・展示会出展・論文発表から1年以内であれば、新規性喪失の例外が適用されて特許出願可能です。出願時に「新規性喪失の例外」を主張する手続(新規性喪失の例外証明書の提出)が必要です。ただし、この例外は日本での話で、外国出願では利用できない国が多く、特許の国際展開を視野に入れるなら発表前の出願が絶対条件です。
審査請求料が高額すぎます。減免は受けられますか?
中小企業者等(資本金3億円以下・従業員300人以下)は審査請求料・特許料が1/2、設立10年未満の中小ベンチャー企業・個人事業主は1/3に軽減されます。減免申請書を審査請求時に提出します。中小企業者等証明・商業登記事項証明書等で対象該当性を示すだけで、手続自体は簡易です。スタートアップ企業の多くは1/3減免の対象となり、審査請求料は47,300円まで圧縮できます。
発明者と出願人は同じでなければいけませんか?
必ずしも同じではありません。発明者(実際に発明した人)と出願人(特許を受ける権利を持つ人)は別々でも構いません。会社の従業員が職務発明をした場合、職務発明規程により特許を受ける権利を会社が承継し、会社が出願人となるのが一般的です。発明者の権利は「相当の利益」を受ける権利として残り、発明者名は特許公報に掲載されます。
特許と実用新案の違いは何ですか?
特許は「技術的思想の創作のうち高度のもの」を対象とする高度な発明の保護制度、実用新案は「物品の形状・構造・組合せに係る考案」を対象とするもので、特許より技術的進歩のハードルが低い代わりに権利も弱い制度です。実用新案は無審査登録制で約3ヶ月で登録されますが、権利行使には技術評価書が必要で権利の信頼性は低くなります。特許権は出願から20年、実用新案権は10年の存続期間です。
特許が取れなかった場合のリスクは?
拒絶査定が確定すると出願に投じた費用は戻りません。かつ、出願公開された内容は公知情報となり、自社・他社ともに特許化不可能な情報となります。ただし、拒絶理由通知への適切な対応(意見書・補正書)で拒絶を覆せる可能性は約50%あります。拒絶確定後は、同一発明の再出願は新規性喪失(自己の公開出願)により不可ですが、改良発明として新たに出願することは可能です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 特許取得の印紙代は最低169,800円(出願14,000+審査請求142,000+登録13,800)
  • 弁理士依頼の場合は総額40〜60万円が相場、出願代理は弁理士の独占業務
  • 特許要件は5つ(産業上利用可能性・新規性・進歩性・先願・公序良俗)、特に出願前の発表による新規性喪失に注意
  • 中小企業は審査請求料・特許料が1/2、ベンチャーは1/3に軽減される減免制度あり
  • 特許権は無形固定資産・耐用年数8年で償却、出願費用は研究開発税制の対象

📋 次のアクション

  • 自社の発明・技術を棚卸しして特許出願候補を特定する
  • 発表・展示前に弁理士相談を入れる運用ルールを社内に徹底する
  • 中小企業者等減免制度の対象該当性を確認する
  • 職務発明規程を整備し、従業員発明の権利帰属を明確化する
  • 研究開発費として処理し、試験研究費税額控除の適用を検討する

特許出願は技術的アドバンテージを独占するための最強の武器であり、事業計画・税務戦略と一体で設計することが重要です。関連する知財・許認可は「建設業許可の要件と申請手続き|経営業務管理責任者と専任技術者の条件」「産業廃棄物収集運搬業許可の取り方|積替え保管の有無で変わる要件」「在留資格の種類と取得方法|就労ビザ・経営管理ビザの要件」「商標登録の出願手続きと費用|ブランド保護のポイント」「契約書作成の重要ポイント|業務委託・秘密保持契約の実務」も併せて参考にしてください。

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