【社労士×税理士が解説】退職時の社会保険・雇用保険の手続き一覧|資格喪失届から離職票まで

監
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
従業員の退職時に人事担当者が行う手続きは、社会保険・雇用保険・税務・労働基準法関連で合計10種類以上あります。本記事では、社会保険資格喪失届(5日以内)・雇用保険資格喪失届(10日以内)・離職証明書・離職票・源泉徴収票・退職証明書など、退職日翌日から順に何をすべきかを期限別に完全整理。この記事を読めば、提出漏れや期限遅れを防ぎ、退職者とのトラブルも回避できます。
🏆 結論:退職時手続きは期限が短いものから順に処理する
最も期限が短いのは社会保険の資格喪失届(資格喪失日から5日以内・年金事務所)、次に雇用保険の資格喪失届(喪失日の翌日から10日以内・ハローワーク)、源泉徴収票は退職後1か月以内。離職票は退職者が希望する場合に発行し、後日会社宛てに届いたものを速やかに本人へ送付します。退職証明書は退職者から請求があった場合のみ発行義務(労基法22条)があります。
退職時の手続きは3系統で合計10種類以上
従業員が退職する際、会社側で行う手続きは社会保険・雇用保険・税務・労基法関連の3〜4系統に分かれます。まず全体像を把握することが、期限遅れ・提出漏れを防ぐ最初のステップです。
退職時手続き全体像一覧
| 系統 |
手続き |
提出先 |
期限 |
| 社会保険 | 健康保険・厚生年金資格喪失届 | 年金事務所 | 5日以内 |
| 社会保険 | 健康保険被保険者証の回収・返納 | 年金事務所(喪失届と同時) | 5日以内 |
| 雇用保険 | 雇用保険被保険者資格喪失届 | ハローワーク | 翌日から10日以内 |
| 雇用保険 | 雇用保険被保険者離職証明書 | ハローワーク(喪失届と同時) | 翌日から10日以内 |
| 雇用保険 | 離職票-1・離職票-2の交付 | 退職者本人へ送付 | 発行後速やかに |
| 税務 | 源泉徴収票の交付 | 退職者本人 | 退職後1か月以内 |
| 税務 | 給与支払報告書(特別徴収に係る異動届出書) | 市区町村 | 翌月10日まで |
| 労基法 | 退職証明書の発行 | 退職者本人(請求時) | 遅滞なく |
| 労基法 | 未払賃金の清算 | 退職者本人 | 請求から7日以内 |
| 労基法 | 金品の返還 | 退職者本人 | 請求から7日以内 |
💡 実務のポイント
実務では、退職が決まった時点でチェックリスト表を作成し、期限順に処理します。弊所が担当する製造業60名の顧問先では、退職日の2週間前に「退職手続きチェックシート」を起票し、社内で人事・経理・情報システムの3部門で分担しています。同じシートに進捗を書き込むことで、提出漏れを防いでいます。
退職日翌日から10日以内のスケジュール
期限管理が最も重要な最初の10日間を、日付ごとに整理します。
退職日翌日からの逆算スケジュール
| 日数 |
対応項目 |
担当 |
| 退職日 | 健康保険被保険者証の回収、貸与物の返還、退職願の受領 | 人事 |
| 翌日〜3日 | 離職証明書の作成(離職理由・賃金支払状況を記入) | 人事 |
| 翌日〜5日 | 社会保険資格喪失届の提出(年金事務所) | 人事 |
| 翌日〜10日 | 雇用保険資格喪失届・離職証明書の提出(ハローワーク) | 人事 |
| 翌月10日 | 住民税特別徴収に係る異動届出書の提出(市区町村) | 経理 |
| 退職後1か月以内 | 源泉徴収票の交付(退職者本人へ) | 経理 |
社会保険の資格喪失届(期限:5日以内)
最も期限が短いのが、健康保険・厚生年金の資格喪失届です。健保法第48条・厚年法第27条により、事業主は資格喪失日から5日以内に提出する義務があります。
資格喪失日の考え方
健康保険・厚生年金における資格喪失日は、退職日の翌日です。たとえば3月31日退職なら、資格喪失日は4月1日、提出期限は4月6日(5日目)です。月末退職と月途中退職で喪失日と保険料の扱いが異なるため、注意が必要です。
| 退職日 |
資格喪失日 |
最終保険料控除月 |
備考 |
| 3月30日(月途中) | 3月31日 | 2月分まで | 3月分の保険料は徴収しない |
| 3月31日(月末) | 4月1日 | 3月分まで | 3月分の保険料を徴収 |
⚠️ 月末退職と月途中退職で給与計算が変わる
月末退職(例:3月31日)の場合、3月分の社会保険料を最終給与から控除します。月途中退職(例:3月30日)の場合は、前月(2月)分の保険料までの控除となり、3月分は徴収しません。この違いを理解せず月末退職者の保険料を控除し忘れると、会社負担が増えます。
提出書類と添付書類
| 書類 |
内容 |
| 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届 | 日本年金機構の様式。氏名・基礎年金番号・退職日・喪失原因等を記入 |
| 健康保険被保険者証(原本) | 退職者本人・被扶養者分も全て回収 |
| 高齢受給者証(該当者のみ) | 70歳以上の退職者 |
| 健康保険限度額適用認定証(該当者のみ) | 申請済みの場合は返却 |
様式と記入例は日本年金機構「被保険者資格喪失届」で確認できます。
健康保険証を回収できない場合
退職者が保険証を紛失・返却しない場合、「健康保険被保険者証回収不能届」を添付して提出します。これにより喪失届自体は受理されますが、会社から退職者への返却督促は継続する必要があります。
雇用保険の資格喪失届(期限:10日以内)
雇用保険法施行規則第7条により、雇用保険被保険者資格喪失届は資格喪失の翌日から10日以内にハローワークへ提出します。
資格喪失届と離職証明書は同時提出が基本
離職票の交付を希望する退職者が1人でもいる場合、資格喪失届と離職証明書(離職票交付申請書)を同時に提出します。離職票は事業主がハローワークに離職証明書を提出し、ハローワーク側で処理した後に発行される公文書です。
💡 離職票交付希望の確認
現場でよく見かけるのが、退職者に離職票の希望を確認せずに資格喪失届のみ提出してしまい、後日「離職票がほしい」と連絡を受けて再度ハローワークに行くケースです。退職前に必ず「離職票の交付を希望するか」を確認し、必要な場合は離職証明書を同時提出します。59歳以上の退職者は、本人の希望にかかわらず離職票発行が必須です(雇用保険法施行規則第17条)。
離職証明書の記入項目と注意点
離職証明書(3枚複写)の主要項目は以下のとおりです。
| 項目 |
記入内容 |
| 離職等年月日 | 退職日 |
| 被保険者期間算定対象期間 | 退職日から遡って賃金支払基礎日数11日以上の月を最大12か月分 |
| 賃金支払対象期間 | 賃金締切日基準で算定対象期間内の給与支給月 |
| 賃金額 | 各月の支給総額(社保控除前の額面) |
| 離職理由 | 定型選択肢から該当するものを選択 |
| 離職区分 | 1(事業主都合)〜5(自己都合)のコード |
| 1週間の所定労働時間 | 退職時点の週所定労働時間 |
離職理由の記入は慎重に
離職理由は、退職者の失業給付(基本手当)の給付日数・給付制限期間に直接影響します。以下の区分により給付条件が大きく変わります。
| 離職区分 |
給付制限 |
給付日数(30歳未満) |
| 1(事業主都合解雇) | なし | 最大180日 |
| 2(特定理由離職者) | なし | 最大150日 |
| 3(その他・就職困難者) | なし | 最大300日 |
| 4(自己都合) | 原則2か月 | 最大150日 |
| 5(懲戒解雇等) | 原則3か月 | 最大150日 |
⚠️ 離職理由の虚偽記載は後日トラブルの元
「自己都合」として提出したが実際は会社の退職勧奨だった場合、退職者がハローワークに異議申し立てを行い、離職理由が「特定受給資格者」に変更されることがあります。その場合、会社は助成金の不支給・訴訟リスクを負います。弊所が担当した飲食業の顧問先では、店長退職を「自己都合」で届出したところ、退職者の異議申し立てで「退職勧奨」と認定され、当期申請中のキャリアアップ助成金が不支給となる事例がありました。
雇用保険法の条文はe-Gov法令検索「雇用保険法」で確認できます。
離職票-1・離職票-2の交付フロー
離職票は、退職者が失業給付を受けるために必要な公文書です。会社が直接発行するのではなく、ハローワークから事業主経由で退職者に渡る流れになります。
離職票交付までの5ステップ
| ステップ |
内容 |
担当 |
| 1 | 離職証明書(3枚複写)を作成し、退職者に内容確認してもらう | 会社 |
| 2 | 退職者が事業主記載欄・離職理由欄の内容を確認し署名 | 退職者 |
| 3 | 離職証明書と資格喪失届をハローワークに提出 | 会社 |
| 4 | ハローワークで処理後、離職票-1・離職票-2が会社宛に送付 | ハローワーク |
| 5 | 会社が離職票-1・離職票-2を退職者本人宛に速やかに郵送 | 会社 |
離職票発行までの目安期間
ハローワーク処理後、離職票が会社に届くまで概ね10〜14日、それを退職者に郵送するため、退職者が離職票を手にするまで退職日から2〜3週間かかります。失業給付の受給開始を急ぐ退職者のために、電子申請を活用すれば数日短縮できます。
🧮 電子申請(e-Gov)活用のメリット
e-Gov電子申請を使えば、離職票が電子公文書としてダウンロード可能となり、会社から退職者へのメール送付も可能です。紙のやり取りを省略できるため、退職者が失業給付を受給するまでの期間を1週間程度短縮できます。資本金1億円超の特定法人は電子申請が義務化されています。
退職後の健康保険の選択肢
退職者から「退職後の健康保険はどうしたらよいか」と相談を受けることは頻繁にあります。退職者には4つの選択肢があり、事前に情報提供しておくことでトラブルを防げます。
退職後健康保険の4選択肢
| 選択肢 |
加入先 |
手続期限 |
保険料負担 |
| 1. 任意継続 | 協会けんぽ/健保組合 | 喪失後20日以内 | 全額自己負担(退職時標準報酬月額ベース) |
| 2. 国民健康保険 | 市区町村 | 喪失後14日以内 | 前年所得ベース |
| 3. 家族の被扶養者 | 家族の健保組合 | 速やかに | なし(年収130万円未満等の要件あり) |
| 4. 次の会社の健保 | 次の会社 | 入社日から5日以内 | 次の会社が手続き |
💡 任意継続と国民健康保険どちらが得か
任意継続は退職時の標準報酬月額(30万円超の場合は30万円の上限)で計算されるため、高給与者は有利になりやすい一方、国民健康保険は前年所得ベースなので退職翌年は所得減により2年目から安くなるケースが多いです。弊所が担当するIT企業でも、退職者の多くは「1年目は任意継続、2年目は国民健康保険」に切り替えると負担が最小になる傾向があります。退職者には年間シミュレーションを提示してあげると親切です。
任意継続の資格喪失証明書
退職者が国民健康保険や家族の被扶養者への切替を希望する場合、健康保険資格喪失証明書を会社または年金事務所から受け取る必要があります。実務では資格喪失届提出と同時に年金事務所で発行を依頼すると、退職者に渡すまでの期間が短縮できます。
源泉徴収票と住民税の手続き
退職時は税務関連の手続きも並行して必要です。
源泉徴収票の交付義務
所得税法第226条により、源泉徴収票は退職後1か月以内に退職者本人へ交付する義務があります。電子データでの交付も可能ですが、本人の承諾が必要です。
| 交付対象 |
提出先 |
期限 |
| 源泉徴収票(本人用) | 退職者本人 | 退職後1か月以内 |
| 源泉徴収票(税務署用) | 税務署 | 翌年1月31日(法人500万円超のみ) |
| 給与支払報告書 | 市区町村 | 翌年1月31日 |
住民税特別徴収の異動届
住民税を特別徴収(給与天引き)していた場合、「給与所得者異動届出書」を退職者の居住市区町村に退職月の翌月10日までに提出します。退職月により残りの住民税の扱いが異なります。
| 退職時期 |
残りの住民税の扱い |
| 1月1日〜4月30日退職 | 5月までの残額を一括徴収(最終給与・退職金から) |
| 5月退職 | 通常どおり5月分を徴収 |
| 6月1日〜12月31日退職 | 本人の希望で一括徴収 or 普通徴収に切替 |
📢 1〜4月退職者の一括徴収は必須
1月から4月退職者は、残りの住民税を一括徴収するのが原則です。退職者の最終給与から控除しきれない場合、退職金から控除する必要があり、退職金が少ない場合は会社が立て替えて後日請求するケースも発生します。退職相談の段階で住民税額を確認し、最終給与で賄えるか試算しておくことが重要です。
退職証明書と離職票の違い
退職者から「退職証明書がほしい」「離職票がほしい」という要望を受けることがありますが、両者は別物です。
退職証明書と離職票の比較
| 項目 |
退職証明書 |
離職票 |
| 発行者 | 会社 | ハローワーク |
| 法的性質 | 私文書(労基法22条) | 公文書 |
| 発行義務 | 退職者の請求時(遅滞なく) | 退職者希望時(59歳以上は義務) |
| 主な用途 | 転職先への提出、国民健康保険の手続き | 失業給付(基本手当)申請 |
| 記載事項 | 使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職理由(本人が記載を請求した項目のみ) | 離職日、賃金支払状況、離職理由 |
| 発行時期 | 請求後すぐ | 退職後2〜3週間 |
退職証明書の記載事項ルール
労基法第22条により、退職証明書には退職者が請求した項目のみ記載します。会社が勝手に全項目を記載することは禁止されており、特に退職者が希望しない「退職の事由」を記載すると労基法違反となります。
⚠️ 退職事由の勝手な記載は労基法違反
退職者が退職理由の記載を希望しないのに「一身上の都合」「会社都合」と記載することは労基法22条3項の違反となります。実務では、退職者から「使用期間・業務の種類・地位・賃金のみ記載を希望」との意思確認書を取ることが望ましいです。
退職日に会社側が回収・発行するものチェックリスト
退職日当日に、会社が退職者から回収するものと、退職者に渡すものを整理します。
退職日の回収物リスト
| カテゴリ |
具体例 |
| 保険関連 | 健康保険被保険者証(本人・扶養家族分)、高齢受給者証 |
| 会社貸与物 | 社員証、IDカード、セキュリティキー、制服、名刺、PC、スマホ |
| 機密情報 | 業務データ、顧客リスト、パスワード、ファイル類 |
| 書類 | 退職願・退職届、秘密保持誓約書(退職時)、引継書 |
退職日以降に渡す書類リスト
| 書類 |
渡す時期 |
| 離職票-1・離職票-2 | 退職後2〜3週間(ハローワーク処理後) |
| 源泉徴収票 | 退職後1か月以内 |
| 健康保険資格喪失証明書 | 退職後速やかに |
| 退職証明書 | 退職者の請求時(遅滞なく) |
| 年金手帳(会社保管の場合) | 退職日または退職後速やかに |
よくある失敗とその対策
現場でよく見かける退職手続きの失敗を整理します。
失敗パターン8選
| 失敗パターン |
影響 |
対策 |
| 1. 資格喪失届の期限超過 | 健保証の不正使用で会社に請求 | 退職日翌日に喪失届をすぐ提出 |
| 2. 離職理由の記入ミス | 退職者から異議申立て、助成金不支給 | 退職者と離職理由を事前協議 |
| 3. 離職票の発行遅延 | 退職者の失業給付受給遅れ、苦情 | 電子申請で期間短縮 |
| 4. 源泉徴収票の発行忘れ | 退職者の確定申告・転職に支障 | 1か月以内を経理タスクに設定 |
| 5. 住民税異動届の提出漏れ | 市区町村からの督促、過少納付 | 退職月の翌月10日をカレンダー化 |
| 6. 保険証の回収漏れ | 退職後の不正使用で会社に返還請求 | 退職日当日に全数回収・扶養者分も |
| 7. 月末退職の保険料控除忘れ | 会社負担増 | 月末・月途中の判別を給与計算前に確認 |
| 8. 秘密保持誓約書の未取得 | 退職後の情報漏洩リスク | 退職日前に誓約書を取得 |
💡 実務のポイント
実務では、退職手続きをワンストップ管理するため「退職手続きチェックシート」を標準化します。弊所が担当する小売業の顧問先では、退職者1名につき15項目のチェックリストを運用し、誰が何をいつ完了したかを全社員が見える状態にしています。これにより退職者とのトラブルがゼロになりました。
AYUSAWA PARTNERS
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自社対応vs社労士依頼の判断基準
退職手続きを自社で処理するか、社労士に依頼するかの判断基準を整理します。
| 判断軸 |
自社対応が向く |
社労士依頼が向く |
| 従業員規模 | 10名以下で退職頻度が低い | 30名以上で退職が定期的に発生 |
| 離職理由の複雑性 | 自己都合が中心 | 解雇・退職勧奨が含まれる |
| 助成金の申請有無 | 申請していない | 申請中(離職理由が助成金に影響) |
| 期限管理 | 専任担当が期限管理を徹底できる | 経理・人事兼任で期限遅れリスクあり |
| コスト目安 | 無料〜数千円(システム利用料) | 1件2〜5万円(スポット依頼) |
電子申請の活用で実務を効率化
2020年4月以降、資本金1億円超の特定法人は雇用保険・社会保険の電子申請が義務化されました。中小企業でも電子申請を活用することで、以下のメリットがあります。
| メリット |
具体的効果 |
| 時間短縮 | 窓口提出の移動時間・待ち時間がゼロ |
| 24時間提出 | 営業時間外でも申請可能 |
| 書類の電子化 | 紙の保管が不要、電子帳簿保存法対応 |
| 離職票の早期入手 | 紙より1週間程度短縮 |
電子申請の利用方法は厚生労働省「雇用保険の電子申請」に詳しく記載されています。
まとめ:退職時手続きは期限管理が全て
📋 この記事のポイント
- 退職時の手続きは社保・雇保・税務・労基法の3〜4系統で合計10種類以上ある
- 最も期限が短いのは社会保険資格喪失届(5日以内)、次いで雇用保険資格喪失届(10日以内)
- 離職理由の記入は退職者の失業給付に影響するため、事前協議が重要
- 源泉徴収票は退職後1か月以内、住民税異動届は退職月の翌月10日まで
- 月末退職と月途中退職で保険料の控除月が異なるため給与計算に注意
- 離職票と退職証明書は別物で、発行元・用途・法的根拠がすべて異なる
- 電子申請を活用することで離職票発行を1週間程度短縮できる
✅ 次のアクション
- 「退職手続きチェックシート」を作成し、期限管理を標準化する
- 退職者との面談で離職票の交付希望・離職理由を事前確認する
- 退職月が1〜4月の場合、住民税の一括徴収額を給与計算前に確認する
- 電子申請(e-Gov)の利用準備を進め、雇用保険・社会保険の手続きを効率化する
- 退職後の健康保険4選択肢について、事前に退職者へ情報提供する仕組みを作る
よくある質問
社会保険の資格喪失届を5日以内に提出できなかった場合、どうなりますか?
期限超過自体に罰金はありませんが、退職後も健康保険証が有効のまま放置されると、退職者が医療機関を受診した場合に会社負担の保険料が請求されるリスクがあります。また、年金事務所から指導が入る可能性もあります。遅れた場合は、できるだけ早く理由書を添えて提出することが実務的な対応です。
離職票の交付を退職者が希望しなかった場合、後日請求されたらどうしますか?
退職後でも離職票の発行は可能です。ハローワークに「雇用保険被保険者離職票交付申請書」を提出すれば、遡って離職証明書を作成し離職票を発行できます。ただし、賃金計算データの再確認や書類作成の手間が発生するため、退職時に必ず希望確認することを推奨します。59歳以上の退職者は本人の希望にかかわらず発行が義務です。
退職者が健康保険証を紛失して返却できない場合、どう対応すべきですか?
「健康保険被保険者証回収不能届」を年金事務所に提出することで資格喪失届自体は受理されます。ただし、退職者には保険証の紛失届を年金事務所に提出してもらい、不正使用のリスクを減らす必要があります。紛失した保険証で退職後に医療機関を受診された場合、会社が保険者に対して治療費を弁償する可能性があるため、退職日に現物回収することが原則です。
月末退職と月途中退職で社会保険料はどう違いますか?
月末退職(例:3月31日)は資格喪失日が翌月1日となるため、3月分の社会保険料が最終給与から控除されます。月途中退職(例:3月30日)は資格喪失日が3月31日となり、3月分は徴収しません。実務では「月末日の1日違いで1か月分の保険料負担が変わる」ことを退職者にも事前説明することで、手取り額の認識齟齬を防げます。
住民税の一括徴収は強制ですか?
1月1日から4月30日退職の場合、残りの住民税(5月分まで)を最終給与または退職金から一括徴収することが原則です(地方税法第321条の5第2項)。6月以降12月までの退職者は本人選択で一括徴収または普通徴収(本人が自分で納付)への切替が可能です。退職金が少額で一括徴収できない場合は、市区町村に相談して分割納付の調整が可能な場合があります。
退職者が退職証明書の全項目記載を会社に求めることはできますか?
労基法第22条により、退職者は使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由(解雇の場合は解雇理由)のうち、本人が請求した項目のみの証明を求めることができます。会社は請求されていない項目を勝手に記載してはなりません。ただし、退職者が全項目記載を希望すれば、全項目記載した退職証明書を発行します。
電子申請(e-Gov)を使うと、どの手続きが電子化できますか?
社会保険資格喪失届、雇用保険被保険者資格喪失届、離職証明書、源泉徴収票など主要な退職手続きがすべて電子化できます。離職票も電子公文書として受領可能で、退職者にメール添付で送付することもできます。マイナポータルAPI連携を使えば、税務・社保・雇保を一括申請できる「電子申請ワンストップ」の仕組みも整備されつつあります。
任意継続と国民健康保険、どちらを退職者に勧めるべきですか?
給与水準と前年所得により有利な選択が異なるため、どちらかを一律に勧めるのは避けるべきです。高給与(標準報酬月額30万円超)の退職者は任意継続の上限メリットで初年度有利、前年所得が低下傾向にある退職者は国民健康保険が2年目から有利になる傾向があります。退職者には両方の保険料試算を提示し、本人の意思決定を支援する対応が望ましいです。自治体HPの国民健康保険シミュレーターを案内するのも親切です。
退職時の手続きは会社として最後の責任を果たす重要なプロセスです。社会保険・雇用保険の全体像は「社会保険の全体像|加入義務と手続き完全ガイド」、就業規則への退職条項整備は「就業規則の作成・変更完全ガイド」、助成金との連携は「キャリアアップ助成金の要件と申請方法」をご参照ください。また、解雇種類と要件については「解雇の種類と要件|普通解雇・懲戒解雇・整理解雇の違い」、退職勧奨のリスクは「退職勧奨のリスクと適正な進め方」で詳説しています。