【社労士×行政書士が解説】解雇の種類と要件|普通解雇・整理解雇・懲戒解雇の違いと手続き

【社労士×行政書士が解説】解雇の種類と要件|普通解雇・整理解雇・懲戒解雇の違いと手続き
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

従業員の解雇を検討している経営者に向けて、普通解雇・整理解雇・懲戒解雇それぞれの要件と手続きを社労士×行政書士が完全解説します。労働契約法16条の解雇権濫用法理、整理解雇の4要件、解雇予告のルール、就業規則の整備ポイントまで網羅。この記事を読めば、不当解雇として無効判定されるリスクを回避しながら、適法に解雇を進められます。

🏆 結論:解雇は労働契約法16条の「合理的理由」と「社会通念上の相当性」がすべて

日本の労働法では解雇が極めて厳しく制限されており、労働契約法第16条により「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当」と認められなければ無効となります。解雇には普通解雇・整理解雇・懲戒解雇の3種類があり、それぞれ要件が異なります。特に懲戒解雇は就業規則への事由記載が必須、整理解雇は4要件(人員整理の必要性・解雇回避努力・被解雇者選定の合理性・手続きの妥当性)すべての充足が必要です。いずれも解雇予告30日前通知または解雇予告手当の支払いが原則です。

解雇とは|会社側からの一方的な労働契約の終了

解雇とは、使用者(会社)から労働者に対して一方的に労働契約を終了させることをいいます。労働者の同意や選択の余地がない点で、退職(労働者側からの申し出)や合意退職とは根本的に異なります。

解雇の法的位置づけ

解雇は、労働者にとって生活基盤を奪う重大な処分です。そのため、日本の労働法制は解雇を極めて厳しく制限しており、労働契約法第16条の「解雇権濫用法理」が中核となります。この規定により、解雇は以下の2つの要件をいずれも満たさなければ無効となります。
要件 内容
① 客観的に合理的な理由解雇事由の存在、会社側の経営上の必要性、労働者側の非違行為などの客観的根拠
② 社会通念上の相当性解雇以外の手段(配置転換・指導教育など)を尽くしたか、処分の重さが妥当か

⚠️ 不当解雇判定のリスクが高い

日本の裁判実務では、解雇の有効性は会社側が立証する責任を負うとされており、会社に不利な判断となる傾向があります。不当解雇と判定されると、雇用関係継続が認められて労働者を復職させる義務と、解雇後の未払賃金(バックペイ)の支払い義務が生じます。バックペイは長期化すると数百万円〜数千万円に達するケースもあり、会社の経営を圧迫します。

解雇が法律上禁止される場合

労働基準法等により、以下の場合の解雇は絶対的に禁止されます。これらに該当する解雇は、理由の合理性にかかわらず無効となります。
禁止解雇 根拠法
業務上の傷病による療養期間中とその後30日間労基法第19条
産前産後休業期間中とその後30日間労基法第19条
婚姻・妊娠・出産・産前産後休業を理由とする解雇男女雇用機会均等法第9条
育児・介護休業申し出などを理由とする解雇育児・介護休業法第10条・第16条
労働組合員であること・組合活動を理由とする解雇労働組合法第7条
性別を理由とする解雇男女雇用機会均等法第6条第4号
労基署への申告を理由とする解雇労基法第104条第2項

解雇の3種類|普通解雇・整理解雇・懲戒解雇の違い

解雇は、理由と目的により3つに分類されます。それぞれ要件と手続きが異なります。

3種類の解雇の対比表

項目 普通解雇 整理解雇 懲戒解雇
性質労働契約不履行による契約解除経営上の必要性による人員削減企業秩序違反に対する制裁
主な理由能力不足、勤務態度不良、傷病業績悪化、事業縮小、倒産回避横領、重大なハラスメント、長期無断欠勤
根拠労契法16条労契法16条+整理解雇4要件労契法15条・16条
就業規則の要否解雇事由の記載が望ましい解雇事由の記載が望ましい懲戒事由の記載が必須
解雇予告30日前通知または手当30日前通知または手当原則同様。除外認定で即時可能
退職金規程どおり支給規程どおり支給規程により不支給または減額可
失業給付会社都合(給付制限なし)会社都合(給付制限なし)自己都合相当(給付制限3か月)

💡 実務のポイント

実務では、解雇の種類を誤ると後に無効判定を受けるリスクが高まります。現場でよく見かけるのは、能力不足の社員を「懲戒解雇」として処分してしまい、懲戒事由の就業規則記載要件を満たさず無効判定されるケースです。弊所が担当した小売業30名の顧問先では、問題行動のある従業員に対し普通解雇と懲戒解雇どちらが適切かを判例基準で検討し、普通解雇を選択してトラブル回避に成功した事例があります。

普通解雇の要件と手続き

普通解雇は、労働者の能力不足・勤務態度不良・傷病など、労働契約の本旨に従った債務履行ができない場合に行う解雇です。

普通解雇が認められる主な事由

カテゴリ 具体例
能力・勤務成績不良業務遂行能力の著しい欠如、改善指導にもかかわらず改善されない
勤務態度不良正当な理由のない欠勤・遅刻の常習化、上司の指示違反
傷病による労務提供不能私傷病による休職期間満了、就業不能状態の継続
適格性欠如採用時の前提条件(資格・免許)の喪失、協調性の著しい欠如
経歴詐称重要な経歴・学歴・職歴の虚偽記載

普通解雇の手順7ステップ

ステップ 内容
1. 問題行動の記録日時・内容・対応者を書面で残す
2. 改善指導の実施口頭→書面による注意、指導記録の保存
3. 配置転換等の検討他部署への異動や業務内容の変更を試みる
4. 解雇事由の確認就業規則の解雇事由に該当することを確認
5. 解雇予告または解雇予告手当の支払い30日前予告または30日分の平均賃金支給
6. 解雇通知書の交付書面で解雇理由と解雇日を明記
7. 解雇理由証明書の発行請求時に遅滞なく交付(労基法22条)

📢 改善指導の記録が最重要

普通解雇が裁判で有効と認められるためには、問題行動の具体的な記録と、改善指導を行った記録が不可欠です。口頭指導だけでは「指導が十分でなかった」と判断されるリスクが高いため、書面で注意書を交付し、本人の署名を取得する形が望ましいです。弊所が担当したIT企業20名の顧問先では、勤怠不良の社員に対し3段階の注意書を交付して、その後の普通解雇が有効と認められた実績があります。

整理解雇の4要件と実施手順

整理解雇は、会社の経営上の必要性から人員削減のために行う解雇です。労働者側には非がないため、最も厳しい審査基準が適用されます。

整理解雇の4要件(判例で確立)

要件 内容 証明のポイント
① 人員削減の必要性経営上の合理的必要性決算書・資金繰り表・業界動向資料
② 解雇回避努力義務の履行解雇以外の手段を尽くしたこと役員報酬削減、新規採用停止、配転、希望退職募集
③ 被解雇者選定の合理性客観的・公平な基準での選定評価基準の文書化、恣意性排除
④ 解雇手続きの妥当性対象者・労組への十分な説明と協議説明会記録、協議議事録、質問回答書

整理解雇の実施手順10ステップ

ステップ 内容 所要期間
1. 経営状況の整理財務資料で人員削減の必要性を根拠化1〜2週間
2. 解雇回避策の検討・実施役員報酬削減、採用停止、賞与削減、配転1〜3か月
3. 希望退職者募集割増退職金で希望退職を募集2週間〜1か月
4. 人選基準の策定客観的評価基準の文書化1週間
5. 対象者の決定人選基準に基づく機械的判定1週間
6. 労組・従業員への説明全体説明会と個別面談2〜4週間
7. 労組との協議団体交渉等での誠実協議1〜2か月
8. 解雇予告30日前の書面通知または予告手当30日以上
9. 解雇実行・退職金支払い解雇通知書交付、退職金清算解雇日当日
10. 事後手続き社保喪失届、離職票、解雇理由証明書10日以内

⚠️ 解雇回避努力の省略は致命的

整理解雇で裁判上無効と判断される最多の原因は、解雇回避努力が不十分であることです。役員報酬の削減、希望退職の募集、新規採用の停止、配置転換の検討などを実施していないと、「まだ他の手段があったはず」と判断されます。弊所が担当した飲食業の顧問先では、コロナ禍での整理解雇前に役員報酬を3か月50%カット、パート時間の調整、希望退職募集を実施した上で整理解雇を行い、トラブルなく完了しました。

懲戒解雇の要件と手続き

懲戒解雇は、労働者が企業秩序を著しく乱した場合に科される制裁です。懲戒処分の中で最も重い処分であり、労働者の人生への影響が大きいため、他の解雇以上に厳格な基準で判断されます。

懲戒解雇の4つの成立要件

要件 内容
① 就業規則への事由記載あらかじめ就業規則に懲戒の種類と事由が記載されていること(労基法89条)
② 就業規則の周知労働者に書面交付・掲示などで周知されていること(労基法106条)
③ 合理的理由懲戒事由に該当する客観的行為があること(労契法15条)
④ 社会通念上の相当性処分の重さが行為と釣り合うこと、弁明機会の付与等の適正手続き

懲戒解雇が認められる主な事由

カテゴリ 具体例
刑事犯罪横領、背任、窃盗、傷害、詐欺
企業秩序違反長期無断欠勤(原則2週間以上)、職場放棄
重大なハラスメントセクハラ・パワハラ・マタハラで是正指導に従わない場合
機密情報漏洩営業秘密の持ち出し、競業他社への転職と同時の情報流出
経歴詐称重大な経歴詐称(特に職位・資格に関するもの)
会社への重大な損害故意または重過失による金銭的損害、顧客関係の破壊

懲戒解雇の手順8ステップ

ステップ 内容
1. 事実調査証拠収集、関係者ヒアリング、客観資料
2. 就業規則の確認該当懲戒事由の特定、処分範囲の確認
3. 弁明機会の付与本人への聞き取り、反論記録の作成
4. 懲戒委員会等での審議就業規則に委員会手続きがあれば実施
5. 処分決定懲戒解雇が妥当か他の処分か判断
6. 解雇予告除外認定の申請(任意)労基署に申請(重大事案のみ)
7. 懲戒解雇通知書の交付書面で理由と解雇日を明記
8. 事後手続き社保喪失届、離職票(離職区分5)、解雇理由証明書

解雇予告除外認定とは

労基法第20条第1項但書により、「労働者の責に帰すべき事由」に基づく解雇では、労基署長の除外認定を受ければ解雇予告手当の支払いなしに即時解雇が可能です。ただし、認定基準は非常に厳しく、典型例は以下のとおりです。

💡 除外認定が認められる典型例

会社の金銭・物品を盗み、横領、背任した場合/賭博、風紀紊乱等で職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を与えた場合/雇入れの際に採用条件の要素となる経歴を詐称した場合/他の事業への転職を目的とした長期無断欠勤/2週間以上の正当理由なき無断欠勤。これ以外の「普通の能力不足」や「性格不適合」程度では認定されません。

解雇予告と解雇予告手当

すべての解雇に共通する重要ルールが、解雇予告の義務です。

解雇予告の3つの選択肢

選択肢 内容
① 30日以上前の予告解雇日の30日以上前に書面で通知(労基法20条1項)
② 解雇予告手当の支払い予告なしで即時解雇し、30日分の平均賃金を支払う
③ 予告日数と手当の併用予告日数が30日未満の場合、不足日数分の手当を支払う

解雇予告手当の計算方法

平均賃金は、原則として解雇日以前3か月間の賃金総額を暦日数で除した金額です。

🧮 計算例:月給30万円の場合

直近3か月の賃金総額 30万円×3=90万円/暦日数 91日(3か月)=平均賃金 9,890円。解雇予告手当は 9,890円×30日分=29万6,700円。予告を15日前に行った場合は、不足15日分の14万8,350円を支払います。

解雇予告不要な例外

以下の場合、解雇予告は不要です(労基法21条)。
例外対象 条件
日雇い労働者1か月を超えない範囲
2か月以内の有期契約労働者契約期間を超えない範囲
季節的業務で4か月以内の労働者契約期間を超えない範囲
試用期間中で14日以内試用開始から14日以内に限る
労働基準法の原文はe-Gov法令検索「労働基準法」で、労働契約法はe-Gov法令検索「労働契約法」で確認できます。厚生労働省が発表している労働契約終了の基本ルールは厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」でも整理されています。

解雇の重要判例5選

裁判所の判断基準を理解するため、解雇関連の代表的な判例を整理します。
判例 要旨
日本食塩製造事件(最判昭50.4.25)解雇権濫用法理の確立。合理的理由と相当性を要する
高知放送事件(最判昭52.1.31)2週連続の遅刻でも解雇は酷であり無効
東洋酸素事件(東京高判昭54.10.29)整理解雇4要件の原型となる判示
フジ興産事件(最判平15.10.10)懲戒には事前の就業規則記載と周知が必要
セガ・エンタープライゼス事件(東京地決平11.10.15)能力不足解雇には著しい能力不足と改善不能の立証が必要

不当解雇と判定された場合のリスク

解雇が労契法16条違反として無効判断されると、以下のリスクが発生します。
リスク 具体的影響
復職義務労働者の復職請求に応じる義務
バックペイ解雇期間中の賃金全額を遡及支払い
慰謝料精神的苦痛に対する損害賠償(30〜200万円程度)
訴訟コスト弁護士費用、裁判所対応の労務コスト
評判の毀損SNS・採用市場でのネガティブ評価
助成金への影響会社都合解雇による助成金不支給期間

AYUSAWA PARTNERS

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解雇の代替手段|退職勧奨と合意退職

解雇はリスクが高いため、実務では「退職勧奨」で合意退職に導くことが多くあります。退職勧奨自体は法的に問題ありませんが、行き過ぎると「退職強要」として違法となります。

退職勧奨vs解雇の比較

項目 退職勧奨 解雇
法的性質合意退職(労働者同意)一方的契約終了
後日訴訟リスク合意書があれば低い高い
会社の説明責任穏当な説明で足りる客観的合理性・相当性の立証
金銭面の負担退職加算金(月給の1〜3か月分が相場)解雇予告手当+訴訟時バックペイ
失業給付会社都合扱いが多い会社都合または自己都合相当

💡 実務のポイント

実務では、問題社員対応の9割は退職勧奨で処理します。弊所が担当する中小企業の顧問先でも、能力不足や勤務態度不良の従業員については、まず丁寧な退職勧奨と退職加算金(月給2〜3か月分)の提示で合意退職に導くのが基本方針です。この方法なら、後日トラブルに発展するリスクが格段に下がります。

就業規則の整備|解雇事由・懲戒事由の記載

解雇を有効に行うためには、就業規則に解雇事由・懲戒事由を明確に記載することが不可欠です。特に懲戒解雇は就業規則への事由記載が必須要件です。

就業規則に記載すべき解雇関連条項

条項 記載ポイント
普通解雇事由能力不足、傷病、経歴詐称等を具体列挙、最後に「その他前各号に準ずる事由」
懲戒事由懲戒解雇事由を列挙(横領、長期無断欠勤等)
懲戒の種類戒告→訓告→けん責→減給→出勤停止→降格→諭旨退職→懲戒解雇
退職金の取扱い懲戒解雇時の不支給・減額規定
休職・復職私傷病休職期間、復職判定手続き
弁明機会懲戒前の弁明機会付与の手続き

周知の方法

労基法106条により、就業規則は労働者への周知が必要です。周知方法は以下のいずれかで足ります。
  1. 各作業場の見やすい場所への掲示または備付け
  2. 書面での交付
  3. 磁気ディスク等に記録し、労働者が常時確認できる機器の設置

⚠️ 就業規則の未周知で懲戒無効になる

フジ興産事件(最判平15.10.10)で確立されたように、就業規則に懲戒事由が記載されていても、労働者に周知されていなければ懲戒解雇は無効となります。弊所が担当した運輸業30名の顧問先では、就業規則を役員室に保管し従業員への周知を怠っていたため、懲戒解雇の有効性が争われるリスクがありました。現在は全員に書面配布と社内イントラでの常時閲覧体制を整備しています。

解雇時の会社側の実務チェックリスト

解雇を実行する際に、漏れなく対応すべき項目を整理します。
カテゴリ 実施事項
事前準備就業規則の解雇事由確認、問題行動の記録整理、弁護士・社労士相談
本人対応面談記録、改善指導書の交付、弁明機会付与、解雇通知書
書類整備解雇通知書、解雇理由証明書、離職証明書、源泉徴収票
賃金・金品最終給与、解雇予告手当、退職金、未払残業代
社保・税務手続き資格喪失届(5日以内)、雇用保険資格喪失届(10日以内)、住民税異動届
情報管理PCアカウント無効化、機密情報回収、秘密保持誓約書

まとめ:解雇は事前準備と書類整備が決め手

📋 この記事のポイント

  • 解雇は労働契約法16条の「客観的合理性」と「社会通念上の相当性」がなければ無効となる
  • 解雇には普通解雇・整理解雇・懲戒解雇の3種類があり、それぞれ要件と手続きが異なる
  • 整理解雇には4要件(必要性・回避努力・人選合理性・手続妥当性)すべての充足が必要
  • 懲戒解雇は就業規則への事由記載と周知が必須要件(フジ興産事件)
  • 解雇予告は30日前通知または解雇予告手当の支払いが原則
  • 不当解雇と判定されると復職義務・バックペイ・慰謝料の負担が生じる
  • 実務では退職勧奨による合意退職でトラブル回避を図るのが基本戦略

✅ 次のアクション

  • 就業規則に解雇事由・懲戒事由が明確に記載されているか点検する
  • 就業規則の周知方法(書面配布・掲示・イントラ公開)を確認する
  • 問題行動のある従業員については、改善指導の記録を書面で残す仕組みを作る
  • 解雇を検討する前に、必ず社労士・弁護士に相談し、代替手段を検討する
  • 退職勧奨の手順と合意書のテンプレートを整備する

よくある質問

試用期間中であれば自由に解雇できますか?
試用期間中でも自由な解雇はできません。試用期間は「解約権留保付き労働契約」とされ、解約権の行使にも労契法16条の合理性と相当性が要件となります。ただし、通常の解雇よりも広い範囲で適性判断に基づく解雇が認められる傾向はあります。また、試用開始から14日以内であれば解雇予告は不要です(労基法21条)。
能力不足を理由とした解雇はどの程度の証拠が必要ですか?
著しい能力不足であることと、改善指導にもかかわらず改善されないことの立証が必要です。具体的には、業務成績の数値データ、同僚との比較、改善指導書の記録、配置転換の検討と実施、改善期間中の評価記録などを書面で残します。1〜2回の注意だけでは不十分で、通常は3〜6か月以上の指導期間と、その間の改善記録が求められます。
うつ病による休職者が復職できない場合、解雇はできますか?
就業規則の休職期間満了による自然退職の規定があればそれに従います。休職期間満了後も就業不能な場合、自然退職または普通解雇となります。ただし、復職判定は主治医の意見書と産業医の判断を踏まえて慎重に行う必要があり、本人が復職可能と主張する場合は試し出勤期間を設けるのが実務的です。いきなり解雇すると「復職機会の付与不足」として無効判定を受けるリスクがあります。
横領が発覚した従業員は即時解雇できますか?
横領は懲戒解雇事由として典型例ですが、即時解雇(解雇予告手当なし)には労基署の解雇予告除外認定が必要です。認定が下りるまでは暫定的に自宅待機(出勤停止)扱いとし、予告手当を準備しつつ認定手続きを進めます。認定には通常2〜3週間かかるため、実務では「解雇予告手当を支払って即時解雇」する方が迅速なケースも多いです。
整理解雇で希望退職を募集する際の退職加算金はいくらが妥当ですか?
業界・会社規模・年齢により異なりますが、相場は月給の3〜12か月分です。大企業では退職金に加えて24か月分の加算金を出すケースもありますが、中小企業では月給3〜6か月分が多いです。希望退職の応募者を確保するため、相場より少し厚めに設定し、応募期間を2〜4週間設けるのが実務的です。
解雇理由証明書と退職証明書の違いは何ですか?
解雇理由証明書(労基法22条2項)は解雇通告後に解雇された労働者が会社に対して請求できる書類で、解雇理由を明記する義務があります。退職証明書(労基法22条1項)は退職後に請求できる書類で、使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由のうち本人が請求した項目のみを記載します。解雇の場合は両方の請求が可能です。
就業規則のない会社でも懲戒解雇はできますか?
原則としてできません。労基法89条により常時10人以上の労働者を使用する会社は就業規則の作成義務があり、懲戒解雇を行うには就業規則に懲戒事由の記載が必要です。10人未満の会社で就業規則がない場合は、個別の労働契約書に懲戒事由を明記するか、就業規則を作成してから懲戒解雇を検討することになります。
解雇した従業員が労働審判を申し立てた場合、どう対応すべきですか?
労働審判は3回以内の期日で迅速に解決する手続きで、会社側は1回目の期日までに詳細な答弁書と証拠を提出する必要があります。対応は専門の弁護士に依頼するのが鉄則です。多くの場合、審判手続き中に調停で解決金を支払い和解するパターンが多く、相場は月給の3〜12か月分程度です。訴訟に移行するとバックペイが累積し負担が増すため、早期和解が合理的選択となることが多いです。
解雇は会社経営の中で最もリスクの高い労務対応です。事前の就業規則整備と問題社員対応の仕組み作りがトラブル防止の鍵となります。就業規則の作成・変更については「就業規則の作成・変更完全ガイド」、社会保険の全体像は「社会保険の全体像|加入義務と手続き完全ガイド」、助成金活用は「キャリアアップ助成金の要件と申請方法」をご参照ください。また、退職時の手続き全体は「退職時の社会保険・雇用保険の手続き一覧」、退職勧奨のリスクと進め方は「退職勧奨のリスクと適正な進め方」で詳説しています。