消費税の税制改正まとめ|令和5年〜令和8年度の主要改正一覧

消費税の税制改正まとめ|令和5年〜令和8年度の主要改正一覧
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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消費税の最近の税制改正を整理して把握したい法人・個人事業主に向けて、令和5年〜令和8年度の主要改正を年度別一覧表で解説します。この記事を読めば、自社に影響する改正と対応期限が一目でわかります。

🏆 結論:中小企業が最も注意すべき3つの改正

令和5年〜令和8年度の消費税改正のうち、中小企業への影響が特に大きいのは以下の3つです。①インボイス経過措置の段階的縮小(R8.10月から控除割合70%→最終的にR13.10月で廃止)、②2割特例の終了と個人事業主向け3割特例の創設(R9〜R10年の2年限定)、③プラットフォーム課税の拡大(越境EC・少額輸入貨物への対応が必要)。特にインボイス経過措置は取引先との価格交渉に直結するため、スケジュールを正確に把握しておくことが重要です。

消費税の税制改正|令和5年〜令和8年度の全体像

消費税はインボイス制度の導入(令和5年10月)を境に、毎年のように制度の見直しが行われています。以下の年度別一覧表で全体像を把握しましょう。

年度 主な改正項目 施行日 影響を受ける事業者
R5インボイス制度の開始R5.10.1全事業者
2割特例の創設R5.10.1インボイス登録した免税事業者
少額特例(税込1万円未満の仕入れはインボイス不要)R5.10.1〜R11.9.30基準期間の課税売上高1億円以下等
免税事業者からの仕入れ経過措置(80%控除)R5.10.1〜R8.9.30課税事業者(仕入先に免税事業者がいる場合)
R6プラットフォーム課税(第1種PF)の創設R7.4.1国外事業者・PF事業者
特定新規設立法人の判定基準拡大R6.10.1以後設立新設法人
金地金等の仕入れ200万円以上での免税点・簡易課税制限R6.4.1金地金を取引する事業者
国外事業者のデジタルサービスに係るPE非保有の見直しR6.4.1国外事業者
R7免税店制度のリファンド方式への移行R7年度内施行予定免税店(輸出物品販売場)
消費税の延払基準(長期割賦販売等)の廃止R7.4.1〜長期割賦販売を行う事業者
R8インボイス経過措置の見直し(控除割合の4段階化・期間延長)R8.10.1〜課税事業者(免税事業者からの仕入れがある場合)
3割特例の創設(個人事業主のみ)R9〜R10年分インボイス登録した個人事業主(元免税事業者)
プラットフォーム課税(第2種PF)の創設施行日未定越境EC・PF事業者
少額輸入貨物(1万円以下)の消費税免除廃止施行日未定海外からの仕入れを行う事業者
暗号資産(セキュリティトークン等)の非課税化施行日未定暗号資産を取引する事業者
非居住者への国内不動産関連役務提供の課税施行日未定不動産関連サービスを提供する事業者

参考: 財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」

消費税のしくみの全体像については「消費税のしくみと基礎知識|課税の対象・税率・計算方法を完全ガイド」で解説しています。

【最重要】インボイス経過措置の見直し(R8年度改正)

免税事業者からの仕入れに係る控除割合の4段階化

インボイス制度の導入時に設けられた「免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除の経過措置」が、令和8年度改正で大幅に見直されました。当初は2段階で段階的に縮小される予定でしたが、4段階に細分化され、最終的な終了時期も2年延長されています。

📢 当初予定から大幅変更
期間 控除割合(改正後) 当初予定 仕入100万円の場合の控除額
R5.10〜R8.980%80%(同じ)約7.3万円控除可能
R8.10〜R10.970%50%約6.4万円控除可能
R10.10〜R12.950%0%(廃止)約4.5万円控除可能
R12.10〜R13.930%(新設)約2.7万円控除可能
R13.10〜0%(完全廃止)R11.10〜控除不可

💡 実務のポイント

この見直しは「免税事業者に優しい改正」です。当初予定ではR11.10月に控除がゼロになる予定でしたが、R13.10月まで2年延長され、引き下げのペースも緩和されました。免税事業者の取引先にとっても、控除額の急減を避けられるため、価格交渉の時間的余裕が生まれます。ただし、最終的に控除がゼロになること自体は変わりません。免税事業者と取引がある場合は、中長期的にはインボイス登録を促すか、仕入先の見直しを検討する必要があります。

インボイス制度の詳細は「インボイス制度の概要|登録方法・影響・経過措置を完全ガイド」で解説しています。

2割特例の終了と3割特例の創設(R8年度改正)

2割特例はいつ終わるか

2割特例(売上税額の2割を納税額とする経過措置)は、令和8年9月30日を含む課税期間をもって終了します。法人・個人事業主とも同じタイミングです。

個人事業主のみ3割特例が2年間使える

令和8年度改正で、個人事業主に限り「3割特例」が創設されました。これは2割特例の終了後も、売上税額の3割を納税額とすることができる経過措置です。適用期間は令和9年分と令和10年分の2年間に限定されます。法人は対象外です。

項目 法人 個人事業主
2割特例R8.9.30を含む課税期間で終了R8年分(R8.12.31)で終了
3割特例対象外R9年分・R10年分の2年間
3割特例の終了後原則課税 or 簡易課税原則課税 or 簡易課税

2割特例→3割特例→簡易課税の移行シミュレーション

📐 シミュレーション前提条件

  • 個人事業主(サービス業・第5種事業)
  • 年間課税売上高(税抜):800万円
  • 売上に係る消費税額:80万円
年分 適用制度 納税額 計算方法
R8年2割特例(最終年)16万円80万円 × 20%
R9年3割特例(1年目)24万円80万円 × 30%
R10年3割特例(2年目・最終)24万円80万円 × 30%
R11年〜簡易課税(第5種・みなし仕入率50%)40万円80万円 ×(1 − 50%)

※概算値です。3割特例の終了後は簡易課税を選択することで納税額を抑えることが可能です。簡易課税選択届出書は3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間中に提出すればその課税期間から適用できる特例があります。

⚠️ 法人は3割特例を使えない

3割特例は個人事業主のみが対象です。法人は2割特例の終了後、原則課税または簡易課税(要件を満たす場合)に移行する必要があります。法人がインボイス登録を機に課税事業者になった場合は、2割特例終了に備えて簡易課税選択届出書の提出を検討してください。

簡易課税制度の詳細は「簡易課税制度のしくみ|届出・みなし仕入率・有利不利の判断基準」で解説しています。

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プラットフォーム課税の2段階整理(R6〜R8年度改正)

第1種プラットフォーム課税(R6年度改正・R7.4.1施行)

国外事業者がデジタルプラットフォームを通じて国内向けにデジタルサービスを提供する場合、そのプラットフォーム事業者(特定プラットフォーム事業者)に消費税の納税義務を転換する制度が令和7年4月1日から施行されています。対象は年間50億円超のデジタルサービス媒介を行うプラットフォーム事業者です。

第2種プラットフォーム課税(R8年度改正・施行日未定)

令和8年度改正では、物品販売に関するプラットフォーム課税が新設されました。国外事業者が国内向けにプラットフォームを介して物品を販売する場合、プラットフォーム事業者に消費税の納税義務を転換する制度です。

項目 第1種PF(R6改正) 第2種PF(R8改正)
対象取引デジタルサービス(アプリ・動画配信等)物品販売(越境EC・少額輸入貨物)
施行日R7.4.1施行日未定
対象PF事業者年間50億円超のデジタルサービス媒介国外事業者の物品販売を媒介するPF
中小企業への影響直接的な影響は小さい(PF事業者側の対応)海外ECサイト経由の仕入れコストが変動する可能性

💡 実務のポイント

プラットフォーム課税は主にPF事業者側の対応が必要な制度ですが、中小企業にも間接的な影響があります。特に第2種PFが施行されると、これまで消費税が免除されていた1万円以下の越境EC(海外通販)にも消費税が課されるようになり、海外からの少額仕入れのコストが上がる可能性があります。

その他の主要改正項目

少額輸入貨物の消費税免除廃止(R8年度改正)

現行制度では、課税価格の合計額が1万円以下の輸入貨物は関税とともに消費税が免除されています。令和8年度改正では、少額越境ECの急増を受けて、この免除が見直されます。国内事業者との公平性を確保する観点から、販売者に消費税の納税義務を課す制度が導入される予定です。

暗号資産(セキュリティトークン等)の非課税化(R8年度改正)

暗号資産のうちセキュリティトークン等について、消費税の非課税対象とする改正が行われます。これにより、セキュリティトークンの譲渡が消費税の課税対象外となります。

暗号資産の非課税化の詳細は「暗号資産(セキュリティトークン)の消費税非課税化|令和8年度改正の内容」で解説しています。

非居住者への国内不動産関連役務提供の課税(R8年度改正)

非居住者に対して行われる国内に所在する不動産に関する役務提供(不動産管理・仲介等)について、消費税の課税対象とする見直しが行われます。これまで「国外取引」として免税扱いだったものが、不動産の所在地が国内であれば課税対象になります。

金地金等の仕入れ200万円以上での制限(R6年度改正・R6.4.1施行)

令和6年度改正で、課税期間中に金地金等の仕入れが税抜200万円以上の場合、免税点制度の適用および簡易課税制度の選択が制限されるようになりました。金地金売買による課税売上割合の操作を防止するための措置です。

中小企業経営者向け|「いつまでに何をすべきか」タイムライン

各改正項目について、中小企業が対応すべきアクションと期限を時系列で整理します。

時期 改正項目 必要なアクション 緊急度
R8.10月経過措置の控除割合が80%→70%に低下免税事業者からの仕入れがある場合、コスト増加を試算。価格交渉の検討
R8.12月2割特例の最終年(個人・12月決算法人)R9年以降の課税方式を決定。簡易課税選択届出書の要否を検討
R9.1月〜3割特例の適用開始(個人事業主のみ)3割特例 vs 簡易課税の有利不利を判定
R10.10月経過措置の控除割合が70%→50%に低下免税事業者との取引の見直し。インボイス登録の促進
R10.12月3割特例の終了(個人事業主・最終年)R11年以降の課税方式を確定。簡易課税選択届出書の提出
R12.10月経過措置の控除割合が50%→30%に低下免税事業者との取引条件の最終見直し
R13.10月経過措置の完全終了(控除0%)免税事業者からの仕入れは全額控除不可に。仕入先の全面見直しが必要

🧮 経過措置の影響額シミュレーション

免税事業者からの年間仕入額が500万円(税込550万円)の場合、経過措置の縮小による年間コスト増加額は以下のとおりです。R8.9以前(80%控除):約36.4万円控除可→R8.10以降(70%控除):約31.8万円控除可(差額約4.5万円増)→R10.10以降(50%控除):約22.7万円控除可(差額約13.6万円増)→R13.10以降(0%控除):控除不可(差額約36.4万円増)。最終的に年間36.4万円のコスト増加になります。

旧税率の経過措置(8%→10%引上げ時)の確認

令和元年10月1日の消費税率10%への引上げ時に設けられた旧税率(8%)の経過措置は、現在もごく一部の取引に適用されています。具体的には、長期の建設工事(指定日前の請負契約)や旅客運送(R1.10.1前に発行された乗車券)などです。

現時点で新たに旧税率が適用される取引はほとんどありませんが、R1.10.1前に締結された長期請負契約の最終精算が残っている場合は、8%税率での精算が必要です。

改正への対応チェックリスト

# チェック項目 対象者
1免税事業者からの仕入れ額を把握し、R8.10月以降のコスト増加を試算したか課税事業者
22割特例終了後の課税方式(簡易課税 or 原則課税)を決定したかインボイス登録した元免税事業者
3簡易課税選択届出書の提出要否と期限を確認したか基準期間の課税売上高5,000万円以下の事業者
43割特例の対象となるか確認したか(個人事業主のみ)個人事業主
5海外ECサイトからの仕入れに対する消費税の影響を把握したか海外からの仕入れがある事業者
6免税事業者の取引先にインボイス登録を促す(または価格見直しの)交渉を開始したか課税事業者

よくある質問(FAQ)

2割特例は令和9年以降も使えますか?
法人は令和8年9月30日を含む課税期間で終了し、以降は使えません。個人事業主については、令和9年分と令和10年分に限り「3割特例」(売上税額の3割を納税額とする制度)が使えます。3割特例も令和10年分で終了し、令和11年分以降は原則課税または簡易課税を選択する必要があります。
3割特例は法人も使えますか?
使えません。3割特例は個人事業主のみが対象です。法人は2割特例の終了後、原則課税または簡易課税(基準期間の課税売上高5,000万円以下の場合)に移行する必要があります。簡易課税を選択する場合は、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに届出書を提出してください。
インボイス経過措置の変更はいつから適用されますか?
改正後のスケジュールは、R8.10月から控除割合が70%に低下し、以後R10.10月から50%、R12.10月から30%、R13.10月から0%(完全廃止)となります。当初予定ではR8.10月から50%、R11.10月から0%でしたが、令和8年度改正で控除割合の低下が緩和され、終了時期が2年延長されました。
少額特例(税込1万円未満のインボイス不要)はいつまで使えますか?
少額特例は令和11年9月30日までの時限措置です。基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5,000万円以下)の事業者が対象です。この期間内は、税込1万円未満の課税仕入れについてインボイスの保存がなくても仕入税額控除が認められます。
プラットフォーム課税は中小企業にも影響がありますか?
直接的な影響は主にプラットフォーム事業者側にあります。ただし、間接的な影響として、越境ECサイト(海外の通販サイト)からの仕入れに消費税が課されるようになるため、海外からの少額仕入れのコストが上がる可能性があります。また、海外のアプリストアやクラウドサービスの価格にも影響が出る可能性があります。
免税事業者のままでいるデメリットは今後どうなりますか?
経過措置の控除割合が段階的に低下するため、取引先(課税事業者)から見た「免税事業者との取引コスト」は年々増加します。R13.10月以降は控除が完全にゼロになるため、取引先は免税事業者からの仕入れ分の消費税を全額負担することになります。その結果、取引条件の見直し(値下げ要求や取引先の変更)を求められるリスクが高まります。
消費税の税率そのものが変わる予定はありますか?
現時点(令和8年4月)で、消費税率10%(軽減税率8%)を変更する改正案は出ていません。令和5年〜令和8年度の改正はいずれも「制度・手続き・経過措置」の見直しであり、税率そのものの変更ではありません。ただし、社会保障費の増大や財政状況によって将来的に議論される可能性はあります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • インボイス経過措置は4段階に細分化(80%→70%→50%→30%→0%)、最終廃止はR13.10月
  • 2割特例はR8年分(個人)/R8.9.30を含む課税期間(法人)で終了
  • 個人事業主のみR9〜R10年の2年間「3割特例」が使える(法人は対象外)
  • プラットフォーム課税が第1種(デジタルサービス)+第2種(物品販売)の2段階に拡大
  • 少額輸入貨物(1万円以下)の消費税免除が見直し予定
  • 暗号資産(セキュリティトークン等)の譲渡が非課税化へ
  • 中小企業は「R8.10月の経過措置縮小」と「2割特例終了後の課税方式選択」が最優先の対応事項

参考: 国税庁「インボイス制度の概要」

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