【社労士が解説】社労士に依頼できる業務一覧|1号業務・2号業務・3号業務の違いと独占業務の範囲

【社労士が解説】社労士に依頼できる業務一覧|1号業務・2号業務・3号業務の違いと独占業務の範囲
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

社労士に依頼できる業務一覧|1号業務・2号業務・3号業務の違いと独占業務の範囲

従業員を雇って社会保険や労働保険の手続きに頭を悩ませている経営者に向けて、社労士に依頼できる業務の全体像を一覧で解説します。この記事を読めば、自社でやる業務・税理士に頼む業務・社労士に頼むべき業務の区分が明確になります。

🏆 結論:社労士の業務は3区分、そのうち1号・2号が独占業務

社労士の業務は社会保険労務士法第2条で3つに区分されます。1号業務(社保・労働保険の手続き代行)と2号業務(就業規則・賃金台帳など法定帳簿の作成)は社労士の独占業務で、税理士やコンサルが有償で受託すれば社労士法第27条違反となり1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。3号業務(労務相談・コンサル)は独占ではないため、人事担当者や他士業も対応可能です。従業員が5名を超えたら、手続きミスと法令違反リスクを防ぐために顧問社労士の検討をおすすめします。

社労士の業務は3区分|社会保険労務士法第2条の全体像

社労士に何を頼めるのか。結論から言えば、社労士の業務は社会保険労務士法第2条第1項の第1号〜第3号で3つに区分されています。1号・2号が独占業務(社労士しかできない)で、3号は非独占業務(誰でもできるがプロが対応した方が安心)という構造です。

区分 業務内容 独占業務 代表例
1号業務労働社会保険諸法令に基づく申請書の作成・提出代行・事務代理社保新規適用、資格取得・喪失、算定基礎届、労災申請、助成金申請
2号業務労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成就業規則、賃金台帳、労働者名簿、出勤簿、36協定
3号業務労務管理・社会保険に関する相談・指導(コンサルティング)人事制度設計、評価制度、働き方改革対応、ハラスメント対応

💡 実務のポイント

「1号業務」「2号業務」という呼び方は、社労士法第2条第1項の号番号に由来します。条文の並び順がそのまま呼称になったため、1号→手続き、2号→帳簿、3号→相談、という順序を覚えておくと業務範囲の判断がスムーズです。実務では、顧問契約の初月に「1号と2号の線引き」を経営者に説明するのが定番で、就業規則の修正(2号)と資格取得届(1号)は同じ月に発生することが多いため混同しやすい論点です。

1号業務とは|社保・労働保険の手続き代行(独占業務)

1号業務とは、労働社会保険諸法令に基づく申請書・届出書を作成し、行政機関に提出する代行・事務代理のことです。健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の手続き全般がこれに該当します。社労士の独占業務であり、社労士以外が有償で受託することは社労士法第27条違反となります。

1号業務に含まれる主な手続き

従業員を1人でも雇っている会社であれば、毎年・毎月必ず発生する手続きが多数あります。

手続き 発生タイミング 提出先
社会保険新規適用届法人設立時・従業員雇用時年金事務所
資格取得・喪失届入退社時年金事務所・ハローワーク
算定基礎届(定時決定)毎年7月1日〜10日年金事務所
月額変更届(随時改定)固定給与2等級以上変動時年金事務所
労働保険年度更新毎年6月1日〜7月10日労働基準監督署
労災・傷病手当金・出産手当金申請発生時労基署・協会けんぽ
育児休業給付金・雇用調整助成金等発生時・随時ハローワーク

1号業務でよくある失敗事例

実務でよく見るのが、自社の経理担当が協会けんぽのオンライン申請を代行していたら、後日「社労士法違反のおそれがある」と行政窓口で指摘されたケースです。従業員が自分の手続きをするのは問題ありませんが、経理担当が他部署の従業員の手続きを代行(=雇用主である法人を代理)する場合、社労士本人または事業主の代表印での申請でなければ受理が渋られる場面が増えています。

⚠️ 注意:税理士事務所の職員による代行は違法

「税理士の顧問契約に社保手続きも含まれている」と案内する税理士事務所がありますが、税理士(社労士資格なし)が有償で社会保険手続きを代行すれば社労士法第27条違反です。全国社会保険労務士会連合会も「他士業や無資格者による受託は違法」と明記しており、税理士事務所名義で行う再委託や一括受託はグループ会社であっても「他人の求めに応じ報酬を得て」に該当します。違反した場合、受託者側に1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります(社労士法第32条の2)。

2号業務とは|就業規則・法定帳簿の作成(独占業務)

2号業務は、労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(就業規則・賃金台帳・労働者名簿等)の作成です。1号業務と同様に社労士の独占業務で、法第27条により社労士以外が有償で受託することは禁じられています。

2号業務の代表例と作成義務

帳簿・書類 作成義務の発生条件 根拠法令
就業規則常時10人以上の従業員を使用する事業場労働基準法第89条
賃金台帳全ての事業場(人数不問)労働基準法第108条
労働者名簿全ての事業場(日雇労働者除く)労働基準法第107条
出勤簿・タイムカード全ての事業場労働安全衛生法第66条の8の3
36協定時間外・休日労働させる全事業場労働基準法第36条

💡 実務のポイント:就業規則は「ひな形コピペ」が通用しない

従業員15名のIT企業から就業規則の作成依頼を受けた際、インターネットのひな形を流用していたため「退職金規程がないのに退職時の金銭支給を約束するメール」が社内に出回っていた事例がありました。結果、労務トラブルで300万円超の解決金を支払うことに。就業規則は自社の実態・支給慣行・人事評価制度と整合していないと、かえってトラブルの火種になります。社労士が関与すれば、こうした実態との乖離を事前に洗い出せます。

3号業務とは|労務相談・コンサル(非独占業務)

3号業務は、労務管理・社会保険に関する相談・指導を行う業務です。1号・2号と異なり独占業務ではないため、社労士以外の専門家(弁護士・経営コンサル・人事担当者など)も報酬を得て行えます。ただし専門性の高い労務管理は社労士の知見が欠かせない領域です。

3号業務の具体例

📊 公認会計士×社労士の視点

3号業務のうちM&A労務DDは、弊所で実際に買収側(年商30億円の製造業)から依頼を受けた案件で、対象会社の未払残業代が簿外で約2,400万円発生していることが判明したケースがあります。財務DD(会計士)だけでは見抜けない労務リスクを、社労士が賃金台帳・タイムカード・36協定を突合して発見し、最終的に買収価格が引き下げられました。労務DDは3号業務なので弁護士や経営コンサルでも対応可能ですが、社保・労働時間計算の実務知識は社労士が最も深いため、会計士DDとセットで依頼するのが最適です。

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独占業務と非独占業務の判定フロー|税理士・弁護士との線引き

「この業務は税理士に頼んでいいのか、社労士でなければダメなのか」という判断に迷う場面は多いものです。以下のフローで判定できます。

業務内容 社労士 税理士 弁護士 行政書士
社保・労働保険の手続き代行(1号)◎独占✕不可○可✕不可
就業規則・賃金台帳作成(2号)◎独占✕不可○可✕不可
労務相談・コンサル(3号)△範囲限定△範囲限定
給与計算○付随で可✕不可
年末調整(所得税)△付随で可◎独占✕不可
労働審判・訴訟代理✕不可(特定社労士はあっせん可)✕不可◎独占✕不可
会社設立登記✕不可✕不可△定款作成まで(登記は司法書士)

📝 行政書士の視点:会社設立時の業務分担

会社設立時に発生する業務は、定款作成(行政書士)→登記(司法書士)→税務署等への開業届(税理士)→社会保険新規適用届(社労士)という4士業リレーが基本です。弊所のようなワンストップ事務所であれば全工程を一気通貫で対応できますが、単独資格の士業に分散して依頼する場合は、各士業の業務範囲を事前に確認し、責任分界点を明確にしておくことがトラブル回避につながります。

社労士法違反の罰則|非社労士が受託した場合

1号・2号業務を社労士以外が有償で受託した場合、社会保険労務士法第27条(業務の制限)違反となり、以下の罰則が科される可能性があります。

⚠️ 社労士法違反の罰則

社会保険労務士法第32条の2第1項第6号:1年以下の懲役または100万円以下の罰金
さらに法人が関与していた場合、両罰規定(法第36条)により法人自体にも罰金刑が科されることがあります。助成金申請の不正受給(コロナ禍の雇用調整助成金等)では、受託側の行政書士・コンサルが一斉に摘発された事例もあります。

違反とならないケース(グレーゾーン)

以下のような場合は、直ちに違反とはなりません。ただし繰り返されると「実質的な業務」とみなされるおそれがあります。

社労士に依頼する費用相場|顧問料とスポット料金

社労士の費用は「顧問契約」と「スポット契約」で大きく分かれます。従業員規模・依頼範囲によって変動しますが、実務では以下が目安です。

契約形態 対象業務 月額目安
顧問契約(従業員5名以下)1号業務の手続き代行+労務相談3万〜5万円
顧問契約(従業員10〜30名)1号業務+給与計算+労務相談5万〜10万円
顧問契約(従業員50名超)1号+2号+給与計算+コンサル10万〜30万円
就業規則作成(スポット)2号業務単発20万〜50万円
助成金申請(成功報酬型)キャリアアップ助成金等受給額の15〜20%

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な見積もりは社労士に直接ご相談ください。

社労士に依頼すべきタイミング|従業員5名が分岐点

実務上、社労士への依頼を検討すべきタイミングは従業員数で判断するのが実用的です。

従業員数 社労士への依頼要否 理由
0〜1名(一人社長)原則不要一人社長は労災加入不可、雇用保険なし、社保のみ
2〜4名スポットで検討入退社時の手続きと賃金台帳整備で十分
5〜9名顧問契約推奨算定基礎届・年度更新・助成金で毎月手続き発生
10名以上必須就業規則作成義務発生(労基法第89条)
30名以上必須+労務DD推奨ハラスメント相談窓口、36協定運用が複雑化

🔷 社労士の視点:従業員10名超で顧問契約をケチると高くつく

従業員12名の飲食業で顧問社労士を付けず、退職した元従業員から未払残業代請求を受けた案件では、タイムカード管理が不十分だったため労基署に立ち入り調査が入り、過去2年分の未払残業代に加え労基法違反での是正勧告まで受けました。月額5万円の顧問料を惜しんだ結果、解決金と是正対応で総額800万円超の出費に。従業員10名を超えたら、顧問社労士は「保険」ではなく「必須インフラ」と考えた方がよい、というのが現場の実感です。

よくある質問

税理士に社保手続きを無料で頼むのは違法ですか?
無償で単発的な対応であれば直ちに違法ではありません。ただし、顧問契約の中に「報酬性あり」と解釈される対応が継続的に含まれると、実質的な業務受託とみなされ社労士法第27条違反となるおそれがあります。税理士法人が社労士法人を併設するケースが増えているのは、この線引きを明確にするためです。
自分で会社の社保手続きをするのは問題ありませんか?
事業主自身や自社の人事担当者が自社の従業員の手続きをするのは、社労士法第27条の「他人の求めに応じ」に該当しないため問題ありません。ただしグループ会社の一括受託(別法人の手続きを代行)は違法となる点に注意が必要です。
助成金申請は社労士以外でもできますか?
雇用・労働関係の助成金(キャリアアップ助成金・雇用調整助成金等)は厚労省所管で、申請書類は労働社会保険諸法令に基づくため1号業務に該当し、社労士の独占業務です。経済産業省所管の補助金(ものづくり補助金・IT導入補助金等)は中小企業診断士・行政書士・経営コンサルでも対応可能です。
社労士と税理士、どちらを先に頼むべきですか?
一人社長なら税理士を先、従業員を雇った時点で社労士を追加するのが一般的な順序です。ただし、創業と同時に複数名の採用を予定している場合は、会社設立の段階から社労士にも相談しておくと、社保新規適用届(設立から5日以内)の期限超過を防げます。
特定社労士とは何ですか?通常の社労士と何が違いますか?
紛争解決手続代理業務試験に合格し登録を受けた社労士のことです。個別労働関係紛争(解雇・労働条件)の裁判外紛争解決手続(ADR)で、従業員との間のあっせん代理が可能になります。ただし労働審判・訴訟代理はできず、これらは弁護士の独占業務です。
社労士法人とは個人の社労士と違いがありますか?
社労士法人は社労士が2名以上で設立する法人で、複数拠点展開や大規模クライアント対応に強いのが特徴です。個人社労士と業務内容は同じですが、社労士法第18条により1人社労士は事務所を1つしか持てないのに対し、法人なら複数支店を設けられます。費用は規模に応じて法人の方がやや高めの傾向があります。
顧問社労士を途中で変更できますか?
可能です。顧問契約書に解約予告期間(通常1〜3ヶ月)が定められていることが多いので、その期間を守って書面で通知すれば変更できます。変更時は賃金台帳・就業規則・マイナンバー管理簿等の引継ぎが必要なため、決算期や算定基礎届の時期を避けて、閑散期に切り替えるのが実務的です。

📋 この記事のポイント

  • 社労士の業務は1号(手続き代行)・2号(帳簿作成)・3号(相談)の3区分
  • 1号・2号は社労士の独占業務で、違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金
  • 3号業務は非独占なので人事担当・他士業でも対応可能だが専門性は社労士が最高
  • 税理士による社保手続きの有償受託は違法(社労士法第27条違反)
  • 従業員10名以上で就業規則作成義務(労基法第89条)=2号業務の依頼が事実上必須
  • 顧問社労士の費用相場は従業員規模別で月額3万〜30万円
  • 従業員5名超で顧問契約、10名超で必須インフラ、30名超で労務DD検討が実務的な目安

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