【社労士×行政書士が解説】社労士と行政書士の違い|依頼先の使い分けポイントと業務範囲の境界線

【社労士×行政書士が解説】社労士と行政書士の違い|依頼先の使い分けポイントと業務範囲の境界線
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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社労士と行政書士の違い|依頼先の使い分けポイントと業務範囲の境界線

会社設立・許認可・助成金・労務管理で「社労士と行政書士、どちらに頼めばいいの?」と迷う経営者に向けて、両士業の業務範囲と使い分けの判断基準を一覧表と実務事例で解説します。

🏆 結論:社労士=労働・社会保険、行政書士=許認可・会社設立書類

社労士は労働社会保険諸法令(健康保険法・厚生年金法・雇用保険法・労働基準法等)に基づく手続きと労務管理が守備範囲で、社労士法第2条により1号・2号業務が独占業務です。行政書士は官公署に提出する書類(許認可申請・定款作成等)と権利義務・事実証明書類の作成が守備範囲で、行政書士法第1条の2により独占業務です。会社設立時は定款作成(行政書士)→登記(司法書士)→税務署届出(税理士)→社保新規適用(社労士)という4士業リレーが基本。建設業・飲食業・古物商などの許認可業種は行政書士、従業員5名を超えたら社労士を追加、というのが実務の定石です。

社労士と行政書士の根本的な違い|守備範囲を1枚で理解

結論から言えば、社労士と行政書士は守備範囲がほぼ重ならない別士業です。「どちらに頼めばいいか」で迷う最大の理由は、両者とも「官公署への書類作成・提出代行」を行うため表面的に似て見えるからですが、対象となる法律と提出先が全く異なります。

比較項目 社会保険労務士 行政書士
根拠法令社会保険労務士法第2条行政書士法第1条の2
主な対象法令健康保険法・厚生年金法・雇用保険法・労災保険法・労働基準法各種許認可法(建設業法・風営法・古物営業法・道路運送法 等)
主な提出先年金事務所・ハローワーク・労働基準監督署都道府県庁・警察署・公証役場・保健所 等
独占業務1号業務・2号業務官公署提出書類・権利義務・事実証明書類の作成
違反時の罰則1年以下の懲役または100万円以下の罰金(社労士法第32条の2)1年以下の懲役または100万円以下の罰金(行政書士法第21条)
典型業務社保手続き・就業規則・労務相談・助成金申請会社設立定款・建設業許可・在留資格・遺産分割協議書

💡 実務のポイント:覚え方は「従業員か、事業そのものか」

「従業員を雇う・辞めさせる・給与を払う」に関することは社労士、「事業を始める・許可を取る・契約書を作る」に関することは行政書士。この切り分けで9割は判別できます。従業員30名の建設業から「現場労災の申請と建設業許可の更新、両方できますか?」という相談があった実例では、前者は社労士、後者は行政書士がそれぞれ担当し、同じ事務所で完結したため顧問料は個別契約より約4割安く抑えられました。

社労士の業務範囲|労働・社会保険のプロフェッショナル

社労士の業務は社会保険労務士法第2条第1項第1号〜第3号で定められ、1号(手続き代行)・2号(法定帳簿作成)が独占業務です。対象となるのは「労働社会保険諸法令」であり、具体的には健康保険法・厚生年金保険法・雇用保険法・労災保険法・労働基準法・労働安全衛生法などが含まれます。

社労士の独占業務(1号・2号)

社労士が得意な3号業務

🔷 社労士の視点:厚労省系の助成金は社労士の独占領域

キャリアアップ助成金(非正規→正社員転換で最大80万円/人)、業務改善助成金(最低賃金引上げで最大600万円)、両立支援等助成金など、厚生労働省所管の助成金は全て1号業務に該当するため社労士の独占領域です。行政書士や経営コンサルが有償で申請代行すれば社労士法違反となります。コロナ禍の雇用調整助成金不正受給事案では、受託した行政書士法人が摘発された事例もあり、申請代行の依頼先を間違えると事業主側も共犯に問われかねません。

行政書士の業務範囲|許認可と権利義務書類のプロフェッショナル

行政書士の業務は行政書士法第1条の2で定められ、「官公署に提出する書類」「権利義務に関する書類」「事実証明に関する書類」の作成が独占業務です。対象となる法令は極めて広く、実務上は「許認可業種の申請書類」「契約書」「相続関連書類」が3大柱となります。

行政書士の独占業務(官公署提出書類)

権利義務・事実証明書類

📝 行政書士の視点:許認可業種は「設立より取得順序」が重要

飲食店を開業予定の経営者から「会社設立と許可申請を同時に進めたい」と相談を受けた際、保健所の飲食店営業許可は法人名義で取得するため、設立登記完了→許可申請という順序でなければならないことを説明しました。また建設業許可は「過去5年間で500万円以上の請負実績」が要件の一つとなるケースもあり、個人事業から法人成りする場合は実績の引継ぎ方を設立段階で設計しないと許可が取れない事態に陥ります。許認可業種では、行政書士に設立前から相談するのが実務上の鉄則です。

業務範囲が重なる「助成金・補助金」と「労働局届出」の境界線

社労士と行政書士の業務は原則重なりませんが、以下の2領域だけは誤解が多いため明確に整理しておきます。

業務 社労士 行政書士 判定基準
厚労省系助成金(キャリアアップ助成金等)◎独占✕不可労働社会保険諸法令に基づく=1号業務
経産省系補助金(ものづくり補助金等)△付随で可官公署提出書類=行政書士の独占領域
外国人技能実習・特定技能の労働条件関連△在留資格のみ労働条件は社労士、在留資格は行政書士
建設業許可の経営業務管理責任者証明△付随で可建設業法に基づく許可=行政書士
労働者派遣事業許可労働者派遣法=社労士の守備範囲
有料職業紹介事業許可職業安定法=社労士の守備範囲

⚠️ 注意:厚労省系助成金を行政書士に頼むのは違法

「助成金ならまとめて行政書士に頼める」という広告を出している事務所が散見されますが、厚労省所管の雇用関係助成金は1号業務に該当し社労士の独占業務です。雇用調整助成金のコロナ特例では、違法に申請代行した行政書士・コンサル会社が全国で摘発されました。依頼者側も加担したとみなされ、不正受給返還命令+加算金20%+3年間の助成金停止という重いペナルティを受けた事例があります。助成金の依頼先は「社労士登録番号」を必ず確認してください。

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会社設立時の4士業リレー|行政書士→司法書士→税理士→社労士

会社設立は1士業では完結できず、4士業のリレーが必要です。各士業の担当範囲を時系列で整理すると以下のようになります。

フェーズ 担当士業 業務内容 期限・目安
①定款作成・認証行政書士事業目的・本店所在地・機関設計の検討、公証役場での認証設立予定日の2週間前
②設立登記司法書士法務局への登記申請(商業登記法に基づく独占)資本金払込後2週間以内
③税務署等届出税理士法人設立届、青色申告承認申請、源泉所得税納期特例設立から2ヶ月以内
④社保新規適用社労士年金事務所への新規適用届、雇用保険適用事業所設置届設立から5日以内
⑤業種別許認可行政書士建設業許可、飲食店営業許可、古物商許可等営業開始前(審査1〜2ヶ月)

💡 実務のポイント:社保届出の5日ルールに要注意

社会保険新規適用届は「事実発生日から5日以内」が法定期限(健康保険法施行規則第19条)です。設立登記完了日の翌日から起算するため、実質的に即日〜数日以内の提出が必要。行政書士に定款作成を頼んだあと社労士の手配を後回しにした結果、5日超過で遡及加入となり、過去分の保険料3ヶ月分(約45万円)を一括請求されたケースを弊所で見ています。設立予定の時点で4士業の手配を同時に動かすのが現場の鉄則です。

依頼先の使い分け|業種別フローチャート

業種ごとに社労士・行政書士のどちらが「必須」「推奨」となるかを整理します。

業種 行政書士 社労士 主な依頼内容
建設業◎必須◎必須(5名超)建設業許可・経審/労災特別加入
飲食業◎必須○推奨飲食店営業許可・深夜酒類提供/アルバイト労務管理
介護・福祉◎必須◎必須指定申請・加算申請/処遇改善加算・働き方改革
運送業◎必須◎必須一般貨物自動車運送事業許可/改善基準告示・時間外対応
IT・Web△任意○推奨IT導入補助金/裁量労働制・リモートワーク規程
小売・EC○推奨○推奨古物商・酒類販売業/パート・アルバイト就業規則
人材派遣・紹介△任意◎必須労働者派遣事業許可/36協定・派遣元責任者講習
製造業○補助金で必須◎必須ものづくり補助金/安全衛生管理・技能実習生対応

費用相場の比較|顧問契約とスポット依頼

契約形態 社労士 行政書士
顧問契約(月額)3万〜10万円2万〜5万円(許認可業種のみ)
会社設立(スポット)社保適用 3万〜5万円定款作成 8万〜15万円
就業規則作成20万〜50万円対応不可
建設業許可(新規)対応不可12万〜20万円+実費9万円
厚労省系助成金受給額の15〜20%対応不可
経産省系補助金対応困難着手金10万〜+成功報酬10〜15%

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な見積もりは各士業にご相談ください。

ダブルライセンス事務所を選ぶメリット

社労士と行政書士のダブルライセンスを持つ事務所(または両士業が所属するワンストップ事務所)を選ぶと、以下の実務メリットがあります。

📊 実務事例:人材派遣業の設立支援

人材派遣業を新規に立ち上げた依頼主(資本金2,000万円)のケース。行政書士で定款作成(事業目的に「労働者派遣事業」を含める)→司法書士で登記→社労士で派遣業許可申請(労働者派遣法)+社保新規適用、という流れを並行で進めました。派遣業許可は資産要件(基準資産2,000万円以上・現預金1,500万円以上)と派遣元責任者講習修了が必要で、行政書士単独では対応できません。4士業リレーで約2ヶ月で営業開始に漕ぎつけたケースです。

よくある質問

社労士と行政書士、どちらの資格を先に取るのが有利ですか?
独立開業を前提とするなら、業種やターゲット顧客層で判断するのが実用的です。建設業・飲食業・運送業など許認可業種を顧客にするなら行政書士を先、労働集約型(介護・製造・人材業)なら社労士を先、というのが定石です。行政書士試験は受験資格がなく社労士より合格率が高い(10%前後)ため、先に行政書士を取得して開業資金を稼ぎながら社労士を目指すキャリアパスもあります。
行政書士が厚労省系の助成金申請をしている広告を見かけますが、違法ではないのですか?
違法です。雇用関係助成金(キャリアアップ助成金・雇用調整助成金等)は労働社会保険諸法令に基づく申請書類のため社労士法第2条第1項第1号(1号業務)に該当し、社労士の独占業務です。行政書士が有償で代行すれば社労士法第27条違反(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)となります。広告を出していても違法は違法で、依頼者側も共犯リスクを負います。
会社設立の定款作成は司法書士にも頼めますか?
頼めます。司法書士は登記申請を独占業務としますが、定款作成も実務上可能です(行政書士の独占業務と重複する領域)。ただし許認可業種の場合、事業目的の設計に深い知見が必要なため、許認可を扱う行政書士に定款段階から関与してもらう方が実務的です。税理士も定款作成の相談に乗れますが、認証自体は行政書士または司法書士が行います。
経産省系の補助金(ものづくり補助金等)を社労士に頼むのは違法ですか?
原則として社労士の業務範囲外ですが、違法とまでは言えない場合が多いです。厚労省系助成金と異なり経産省系補助金は「官公署提出書類」として行政書士の独占領域であり、社労士が単独で代理申請するのは業際問題となり得ます。実務では経営計画の作成支援(3号業務・コンサル)までは社労士が担い、申請書類の作成・提出は行政書士が行うという役割分担が一般的です。
両方の資格を持つダブルライセンス事務所を見分ける方法はありますか?
各士業会の名簿で登録を確認できます。社労士は「全国社会保険労務士会連合会」、行政書士は「日本行政書士会連合会」の検索システムでそれぞれ登録番号を検索可能です。事務所HPに両方の登録番号が記載されていれば本物です。「行政書士業務は提携事務所で」と案内されるケースは、実質的に別事務所への外注のため情報連携やスピードが落ちる可能性があります。
在留資格(ビザ)の申請は社労士でもできますか?
できません。在留資格は行政書士法第1条の2の「官公署提出書類」に該当し、入管手続きを専門とする申請取次行政書士の独占領域です(弁護士も可)。ただし外国人労働者の社会保険加入や労働条件相談は社労士の業務範囲となり、技能実習・特定技能の受入れでは両士業の連携が必須です。
顧問契約を社労士と行政書士の両方と結ぶのは無駄ですか?
業種によります。建設業・介護業・飲食業など毎年許可更新や加算申請が発生する業種では両士業の顧問契約が有効です。一方、IT業や小売業など許認可業務が設立時のみで完了する業種では、行政書士はスポット契約、社労士のみ顧問契約という組み合わせで十分です。ダブルライセンス事務所と1本の顧問契約を結ぶのが最もコスト効率が良い選択肢です。

📋 この記事のポイント

  • 社労士は労働社会保険諸法令(健康保険・厚生年金・雇用保険・労基法)の手続きと労務相談が守備範囲
  • 行政書士は官公署提出書類(許認可・定款・契約書・権利義務書類)の作成が守備範囲
  • 切り分けは「従業員か、事業そのものか」で判断すれば9割判別可能
  • 会社設立は行政書士→司法書士→税理士→社労士の4士業リレーが基本
  • 厚労省系助成金は社労士の独占、経産省系補助金は行政書士の独占領域
  • 建設業・介護業・運送業は両士業必須、IT・小売業は社労士のみで足りることが多い
  • ダブルライセンス事務所を選ぶと顧問料が2〜4割安くなり情報連携のロスもない

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