【税理士×行政書士のダブル監修】借地権の認定課税とは?権利金なしの土地賃貸借の税務リスク

【税理士×行政書士のダブル監修】借地権の認定課税とは?権利金なしの土地賃貸借の税務リスク
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

借地権の認定課税とは?権利金なしの土地賃貸借の税務リスク

「社長個人の土地に会社の建物を建てたいが、権利金は払いたくない」——こうした同族会社間の土地の貸し借りで、思わぬ法人税の課税リスクが発生することをご存じでしょうか。この記事では、借地権の認定課税のしくみを4パターンに整理し、「無償返還の届出書」や「相当の地代」を活用した回避策まで、実務ベースで完全ガイドします。

🏆 結論:認定課税を避けるには「無償返還届出書」の提出が最もシンプル

権利金のやりとりをせずに法人が土地を借りた場合、借地権相当額が「もらったもの」とみなされ、法人税が課される可能性があります。これを防ぐ方法は①相当の地代(更地価額の年6%)を支払う、②無償返還の届出書を税務署に提出する、の2つ。実務では②の無償返還届出書が圧倒的に多く使われています。ただし届出後も地代設定を間違えると相続税で不利になるため、「固定資産税の2〜3倍以上」の地代水準を維持することが重要です。

借地権の認定課税とは?基本的なしくみ

認定課税の定義

借地権の認定課税とは、土地の貸し借りで本来あるべき権利金の授受がない場合に、税務上「権利金に相当する額の贈与があった」とみなして課税する制度です。法人税法第22条2項と法人税法施行令第137条が根拠規定にあたります。

わかりやすく言えば、「赤の他人同士であれば権利金を払うはずなのに、身内だから払わなかった。それは権利金をタダであげたのと同じだから、税金をかけますよ」という考え方です。

💡 実務のポイント

年間多くの同族会社の税務を担当していますが、「社長の土地に会社の事務所を建てたい」という相談の際、認定課税のリスクを知らないまま着工しているケースがかなりあります。建物が完成してから気づくと対処が後手に回るため、必ず着工前に対策を取ってください。

認定課税が発生する前提条件

認定課税が行われるのは、次の2つの条件がそろった場合に限られます。

第1に、その地域に「権利金を収受する取引上の慣行がある」こと。具体的には、路線価図で借地権割合(A〜G)が付されている地域であれば、ほぼ権利金の慣行があるとみなされます。東京23区内であればほぼ全域が該当します。

第2に、権利金の授受がない(または著しく低い金額しか授受されていない)こと。権利金の慣行がない地域ではそもそも認定課税は行われません。

権利金とは何か

権利金とは、借地権の設定の対価として借地人が地主に支払う一時金です。土地の更地価額に借地権割合を乗じた金額が目安となります。たとえば更地価額1億円で借地権割合70%の土地であれば、権利金の目安は7,000万円です。

この金額を支払わない(または相当の地代も支払わない)場合に、税務署は「7,000万円相当の経済的利益が借地人に移転した」とみなして課税するわけです。

地主×借地人の4パターン別・認定課税の全体像

認定課税の取扱いは、地主と借地人がそれぞれ「個人」か「法人」かによって大きく変わります。以下の対照表で全パターンを整理します。

パターン 地主側の課税 借地人側の課税 実務上の頻度
①個人(地主)×法人(借地人)原則なし(所得税法上、借地権設定は譲渡に非該当)権利金相当額の受贈益(法人税課税)★★★ 最多
②法人(地主)×法人(借地人)権利金相当額の益金算入+寄附金(損金算入限度あり)権利金相当額の受贈益(法人税課税)★★ 多い
③法人(地主)×個人(借地人)権利金相当額の益金算入+役員賞与or寄附金役員・使用人→給与課税(所得税)、その他→一時所得★ やや少
④個人(地主)×個人(借地人)原則なし使用貸借なら非課税、賃貸借で権利金なしなら贈与税△ 使用貸借が多い

※パターン①が実務で最も多い典型例です(社長個人の土地に同族会社が建物を建築するケース)

💡 実務のポイント

パターン①(個人地主×法人借地人)の場合、地主個人には原則として認定課税がかかりませんが、法人側に権利金相当額の受贈益が計上されます。法人税の実効税率が約33%とすると、更地価額1億円・借地権割合70%のケースでは、法人側に約2,310万円の法人税がかかる計算です。「社長の土地に会社の建物を建てただけ」で、これだけの税負担が生じるのです。

パターン①個人(地主)×法人(借地人)の詳細

最も多いのが、社長個人が所有する土地に、社長が代表を務める法人が事務所や工場を建てるケースです。地主が個人の場合、借地権の設定行為は所得税法上の「資産の譲渡」に該当しないため、地主個人にはみなし譲渡所得課税は行われません。

しかし借地人である法人には、権利金を支払わなかった分だけ経済的利益(受贈益)が発生したとみなされ、法人税が課税されます。法人税法第22条2項の「無償による資産の譲受け」に該当するためです。

パターン②法人(地主)×法人(借地人)の詳細

親会社が土地を所有し、子会社がその上に建物を建てるケースなどが該当します。この場合、地主である法人には権利金相当額の益金が認定されます。同時に、その金額は借地人法人への寄附金として扱われ、寄附金の損金算入限度額の制限を受けます。借地人法人には受贈益が計上されます。

つまり、地主側は「もらったのにあげた」という二重の課税関係が生じ、しかも寄附金の損金算入が制限されるため、税負担が最も重くなるパターンです。

パターン③法人(地主)×個人(借地人)の詳細

法人の土地を役員個人が借りて自宅を建てるようなケースです。地主法人には権利金相当額の益金が認定され、借地人が役員であれば「役員賞与」、使用人であれば「給与」として扱われます。いずれも法人側で損金不算入(役員賞与の場合)となるリスクがあります。

パターン④個人(地主)×個人(借地人)の詳細

親の土地に子が家を建てるケースが典型です。個人同士の使用貸借(タダで貸す)であれば、昭和48年の国税庁通達により認定課税は行われません。ただし、使用貸借でなく賃貸借契約を結びながら権利金を払わない場合は、借地人に贈与税がかかる可能性があります。

「認定課税される?」5段階判定フローチャート

自社のケースで認定課税が発生するかどうかを、以下のフローで判定できます。

ステップ 判定項目 Yes の場合 No の場合
その地域に権利金の慣行がある?(路線価図に借地権割合あり)→ ステップ②へ→ 認定課税なし ✅
当事者に法人が含まれる?(個人×個人の使用貸借を除く)→ ステップ③へ→ 原則 認定課税なし ✅
権利金を適正額で授受している?→ 認定課税なし ✅→ ステップ④へ
相当の地代(更地価額の年6%)を支払っている?→ 認定課税なし ✅→ ステップ⑤へ
「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出済み?→ 権利金の認定課税なし ✅(ただし地代の認定課税あり)→ 認定課税あり ❌

⚠️ 注意

ステップ⑤で無償返還届出書を提出済みでも、「権利金の認定課税」が回避されるだけで、「地代の認定課税」は別途発生します。相当の地代と実際の地代の差額について、地主から借地人への経済的利益の供与として認定されるため、地代設定も重要です。詳しくは後述の「無償返還届出書を提出した後の地代設定」で解説します。

認定課税を回避する3つの方法

方法①:権利金を支払う

最もオーソドックスな方法です。借地人が地主に権利金を支払えば、認定課税は行われません。ただし、同族会社間では権利金として数千万円の資金移動が必要になるため、実務上はあまり使われません。

方法②:相当の地代を支払う

権利金の支払いに代えて、「相当の地代」を支払う方法です。相当の地代の額は、法人税法施行令第137条および法人税基本通達13-1-2に基づき、原則として「その土地の更地価額のおおむね年6%程度の金額」とされています。

更地価額は時価(取引価格)が原則ですが、課税上弊害がない限り、相続税評価額(路線価)またはその過去3年間の平均額で計算することも認められています。

なお、相当の地代を授受する場合は、地代の改訂方法について「相当の地代の改訂方法に関する届出書」を税務署に提出する必要があります。改訂方法には「改訂する方式」(3年以内ごとに見直し)と「据え置く方式」(改訂しない)の2種類があります。

方法③:無償返還の届出書を提出する

実務で最も多く使われるのがこの方法です。借地契約書に「将来、借地人がその土地を無償で返還する」旨を定めた上で、地主と借地人の連名で「土地の無償返還に関する届出書」を所轄税務署に提出します。

この届出を行えば、権利金の認定課税は行われません。しかし、相当の地代の認定課税は依然として行われる点に注意が必要です(地主が個人の場合は実質的に問題なし)。

📝 行政書士の視点

無償返還の届出書は、税務署への届出書類でありながら、借地契約書の整備とセットで行う必要があります。契約書に「無償返還」の条項がなければ届出自体が意味をなしません。契約書の文言は「借地人は、本契約の終了時に、借地を無償にて地主に返還するものとする」のように明確に記載してください。

3つの方法の税額シミュレーション比較

更地価額1億円・借地権割合70%の土地を、社長個人(地主)が同族法人(借地人)に貸す場合で、3つの方法を比較します。

📐 シミュレーション前提条件

  • 更地価額:1億円(相続税評価額ベース)
  • 借地権割合:70%(路線価図で記号D)
  • パターン:個人(地主)×法人(借地人)
  • 法人税実効税率:33.58%
  • 地主個人の所得税率:33%(課税所得900万円超〜1,800万円以下)
  • 固定資産税等:年間100万円
項目 ①権利金方式 ②相当の地代方式 ③無償返還届出方式
法人→個人への一時金7,000万円0円0円
年間地代通常の地代(約180万円)600万円(年6%)250万円(固定資産税の2.5倍)
法人の認定課税なしなしなし(届出書による)
個人の不動産所得(年間)180万円600万円250万円
個人の所得税(年間概算)約26万円約165万円約50万円
初期資金負担7,000万円なしなし
相続時の土地評価(貸宅地)3,000万円(1億×30%)8,000万円(改訂方式)〜変動8,000万円(自用地の80%)
総合評価相続対策◎ / 資金負担✕認定課税なし / 地代負担大バランス◎ / 実務最多

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

💡 実務のポイント

実務で最も多いのは③の無償返還届出方式です。初期資金が不要で、年間の地代負担も相当の地代(年600万円)に比べて抑えられるため、中小企業にとってバランスが良い方法です。ただし相続時の土地評価額は8,000万円(①の権利金方式なら3,000万円)となるため、相続対策を重視する場合は権利金方式も検討の余地があります。

AYUSAWA PARTNERS

借地権の認定課税対策のご相談は鮎澤パートナーズへ

初回相談無料。公認会計士・税理士・社労士・行政書士がワンストップで対応します。

鮎澤パートナーズに相談する

相当の地代の計算方法と注意点

相当の地代の計算式

相当の地代は、法人税基本通達13-1-2に基づき、以下の算式で計算します。

📐 相当の地代の計算式

相当の地代(年額)= 土地の更地価額 × おおむね6%

※「土地の更地価額」は以下のいずれかを使用:

  • その土地の時価(取引価格)
  • 近隣の類似土地の公示価格等から算出した価額
  • 相続税評価額(路線価)またはその過去3年間の平均額

たとえば、相続税評価額8,000万円の土地であれば、相当の地代は年480万円(月40万円)となります。通常の賃料相場に比べるとかなり高額であり、同族会社間では負担が重くなるケースが多いです。

固定方式と改訂方式

相当の地代を授受する場合、地代の改訂方法について「改訂する方式」と「据え置く方式」のいずれかを選択し、「相当の地代の改訂方法に関する届出書」を税務署に提出します。

項目 改訂方式(3年ごと見直し) 据置方式(改訂しない)
地代の変動地価上昇に応じて増額契約時の金額で固定
借地権の評価ゼロ(地代で完全カバー)地価上昇分だけ借地権が自然発生
届出の要否改訂届出書を提出届出なし or 据置の届出
注意点3年以内に改訂しないと認定課税のリスク地価上昇局面では自然発生借地権が生じ、返還時に課税リスク

無償返還の届出書の実務ガイド

提出要件と手続きの流れ

無償返還の届出書は、以下の要件を満たした場合に提出できます。

要件1:貸主または借主の少なくとも一方が法人であること(個人同士では提出不可)。

要件2:借地権設定時に、権利金その他の経済的利益の授受がないこと。一部でも権利金を授受していると提出できません。

要件3:借地契約書に「将来、借地人がその土地を無償で返還する」旨が明記されていること。

提出に必要な書類

書類 内容 注意点
土地の無償返還に関する届出書所定の様式(国税庁HPで入手可)地主と借地人の連名で署名・押印
土地の賃貸借契約書の写し無償返還の条項を含むもの「無償で返還する」旨の明記が必須
土地の価額の計算明細路線価図等で更地価額を算出相当の地代の計算根拠として添付

参考: 国税庁「土地の無償返還に関する届出」

提出期限と提出先

法令上は「遅滞なく」と規定されており、具体的な期限は定められていません。しかし実務上は、借地契約を締結した法人の確定申告書の提出期限までに提出するのが望ましいとされています。

提出先は、土地所有者の納税地の所轄税務署です。書面で提出する場合は、届出書および添付書類を2部持参または送付します。e-Taxでの提出も可能です。

💡 実務のポイント

税務調査で「無償返還届出書を提出していない」ことが判明した場合でも、事後的に提出すれば、権利金の認定課税は行わないとされています。ただし、調査時に指摘を受けてから提出する場合は「遅滞なく」に該当しない可能性があるため、できる限り早期に提出しておくべきです。借地契約を結んだら、同日〜数日以内に届出書を準備するのがベストです。

無償返還届出書を提出した後の地代設定

地代の認定課税のしくみ

無償返還の届出書を提出すると、権利金の認定課税は回避できますが、代わりに「地代の認定課税」が行われます。具体的には、相当の地代と実際に収受している地代の差額が、地主から借地人への経済的利益の供与として認定されます。

たとえば、相当の地代が年600万円、実際の地代が年200万円の場合、差額の400万円が認定されます。

地主が個人の場合のメリット

地主が個人で借地人が法人の場合は、事実上、地代の認定課税による税負担の増加は発生しません。これは以下のロジックによります。

法人側では、相当の地代600万円が益金に計上される一方、差額400万円は受贈益(雑収入)として計上されます。しかし、支払地代600万円が損金に算入されるため、差し引きでの損益は実際の支払地代200万円と同額になります。

個人地主側では、所得税法上、認定された地代は総収入金額に算入すべき金額には含まれない(実際に受け取った200万円のみが不動産所得)とされているため、増税にはなりません。

📊 公認会計士の視点

会計処理上、法人側では「支払地代200万円」を計上するだけで済みます。認定課税はあくまで税務上の概念であり、仕訳として受贈益を計上する必要はありません。ただし、税務調査対策として、認定課税の計算根拠を別途書面で整理しておくことをおすすめします。

適正な地代の水準とは

無償返還届出方式を採用した場合、地代をいくらに設定すべきかが実務上のポイントです。

地代の水準 税務上の取扱い 相続税への影響
無償(ゼロ)使用貸借とみなされ、届出の効果が失われるリスク自用地評価(100%)で不利
固定資産税相当額以下使用貸借とみなされる可能性あり自用地評価(100%)で不利
固定資産税の2〜3倍以上賃貸借契約として認定 ✅貸宅地評価(80%)で有利
相当の地代(年6%)地代の認定課税なし貸宅地評価(評価方法は別途計算)

⚠️ 注意

地代を低く設定しすぎると「使用貸借」とみなされ、貸宅地としての評価(80%評価)ができなくなります。相続税対策の観点からも、固定資産税の2〜3倍以上の地代を設定しておくことが安全ラインです。この点を見落としている同族会社は実務上かなり多いです。

認定課税が発生した場合の税額インパクト

認定課税が行われた場合、具体的にどの程度の税負担が生じるのか、パターン別にシミュレーションします。

📐 シミュレーション前提条件

  • 更地価額:1億円
  • 借地権割合:70%(権利金相当額 = 7,000万円)
  • 法人税実効税率:33.58%
  • 所得税率:33%(+住民税10%)
パターン 地主側の追加税負担 借地人側の追加税負担 合計税負担
①個人×法人原則なし受贈益7,000万円×33.58%≒約2,350万円約2,350万円
②法人×法人益金7,000万円(寄附金損金算入限度あり)受贈益7,000万円×33.58%≒約2,350万円約4,700万円超
③法人×個人(役員)益金7,000万円(役員賞与損金不算入)給与所得7,000万円×43%≒約3,010万円約5,360万円超

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

パターン②③では、地主側と借地人側の双方に課税されるため、合計税負担が4,000万円を超えることもあります。認定課税の対策をしないことのリスクの大きさが、この数字からも明らかです。

相続税評価への影響

3つの方式別・土地の相続税評価額

借地権の認定課税対策をどの方式で行ったかによって、地主(個人)が亡くなった場合の土地の相続税評価額が大きく異なります。相続対策と法人の資金繰りの両面から、方式の選択が重要です。

方式 底地の評価方法 評価額(更地1億円の場合)
権利金方式(借地権設定済み)自用地評価額×(1−借地権割合)3,000万円
相当の地代方式(改訂方式)自用地評価額×80%8,000万円
無償返還届出方式自用地評価額×80%8,000万円
使用貸借(対策なし)自用地評価額×100%1億円

権利金方式が相続税対策としては最も有利ですが、初期資金7,000万円の負担が必要です。無償返還届出方式でも自用地の80%評価まで圧縮でき、さらに「小規模宅地等の特例」(貸付事業用宅地等として200㎡まで50%減額)を適用できる可能性があります。

相続税・贈与税について詳しくは「相続税の基礎知識と計算方法」で解説しています。

法人における借地権の税務処理

借地権の取得・計上

法人が権利金を支払って借地権を取得した場合、借地権は無形固定資産として貸借対照表に計上されます。借地権は非償却資産であるため、減価償却はできません。法人税法施行令第13条で「土地の上に存する権利」として耐用年数の適用対象外とされています。

認定課税により借地権が認定された場合も同様に、借地権として資産計上し、減価償却はできません。

借地権の返還時の課税関係

借地権の返還時には、無償返還か有償返還かで課税関係が異なります。無償返還の届出書を提出している場合は、借地権の評価はゼロであるため、返還時に課税関係は生じません。

届出を提出していない場合は、借地権の返還について立退料が発生する場合は法人の損金(または益金)になり、無償で返還した場合は借地権相当額の寄附金として認定されるリスクがあります。

💡 実務のポイント

借地契約の終了時にトラブルになるケースが多いのは、当初の対策が不十分なままスタートしてしまった場合です。「無償返還届出書を出しているから安心」ではなく、契約書の文言、地代の水準、届出書の保管、そして将来の相続を見据えた設計が重要です。契約開始時に専門家と全体設計を行うことを強くおすすめします。

無償返還届出書の提出チェックリスト

以下のチェックリストで、提出漏れや不備を防ぎましょう。

確認項目 ポイント
貸主または借主に法人が含まれるか個人同士では提出不可
権利金の授受がないことを確認一部でも授受していると提出不可
賃貸借契約書に「無償返還」条項を明記「本契約の終了時に無償にて返還する」
地代を固定資産税の2〜3倍以上に設定使用貸借扱いを避けるため
届出書を「連名」で作成地主と借地人の両者の署名・押印
土地の価額の計算明細書を添付路線価図のコピー等で更地価額を算出
土地所有者の所轄税務署に提出書面2部 or e-Tax
提出期限:「遅滞なく」(確定申告期限まで目安)契約締結後できるだけ早期に提出
届出書の控え(受付印付き)を保管税務調査時の証明資料として必須

税務調査で指摘されやすいポイント

よくある指摘事例

借地権関連の税務調査では、以下のポイントが特に指摘を受けやすいです。

⚠️ 税務調査で指摘を受けやすいケース

1. 無償返還届出書の提出漏れ——契約書に無償返還の条項はあるが、税務署への届出を忘れているケース。意外にも多い指摘事項です。
2. 地代がゼロまたは固定資産税以下——届出を提出しているが、地代を設定していない(または極端に安い)ため、使用貸借と認定されるケース。
3. 賃貸借契約書がない——口頭の約束だけで土地を使用しており、契約書自体が存在しないケース。
4. 権利金の一部を授受している——開業時に「保証金」名目で金銭を授受しており、無償返還届出書の要件を満たさないケース。

税務調査について詳しくは「税務調査の対策と準備」も参考になります。

よくある質問(FAQ)

無償返還の届出書は契約後いつまでに提出すればよいですか?
法令上は「遅滞なく」と規定されており、明確な期限はありません。実務上は借地契約を締結した法人の確定申告書の提出期限まで(決算日から2ヶ月以内)が目安です。できるだけ契約締結後すぐに提出してください。
個人同士の土地の貸し借りでも認定課税されますか?
個人同士の使用貸借(無償で貸す)であれば、昭和48年の国税庁通達により認定課税は行われません。ただし、賃貸借契約を結びながら権利金を払わない場合は贈与税がかかる可能性があります。なお、個人同士では無償返還の届出書は提出できません。
相当の地代とは具体的にいくらですか?
原則として「土地の更地価額のおおむね年6%」です。更地価額として相続税評価額(路線価)を使う場合、たとえば路線価評価額8,000万円の土地であれば年480万円(月40万円)が目安です。おおむね3年以内ごとの見直しも必要です。
無償返還届出書を出し忘れていた場合、後から提出できますか?
はい、事後的な提出も認められています。税務調査で指摘を受けた後でも、届出書を提出すれば権利金の認定課税は行わないとされています。ただし、既に課税処分が確定している場合は別途対応が必要ですので、できるだけ早期に提出してください。
定期借地権の場合も認定課税はありますか?
法人税法施行令137条の「借地権」には定期借地権も含まれるため、権利金の慣行がある地域では認定課税の対象となり得ます。ただし、定期借地権は更新がない点で通常の借地権とは異なるため、権利金の額は通常より低くなるケースが一般的です。
無償返還の届出書を提出した場合、相続税での土地の評価はどうなりますか?
自用地評価額の80%で評価されます(20%の減額)。たとえば自用地評価額1億円であれば8,000万円が相続税評価額です。さらに小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等として200㎡まで50%減額)が適用できる場合は、評価額を大幅に圧縮できます。
法人が個人地主に支払う地代はいくらに設定すべきですか?
無償返還届出方式の場合、最低でも固定資産税の2〜3倍以上に設定してください。これより低いと「使用貸借」と認定され、貸宅地としての80%評価が受けられなくなります。相当の地代(年6%)まで引き上げる必要はありません。
借地権の認定課税で課される税額は具体的にいくら程度ですか?
更地価額1億円・借地権割合70%の場合、借地人法人には権利金相当額7,000万円に対して法人税(実効税率約33%)が約2,350万円かかります。地主が法人の場合はさらに地主側にも課税され、合計で4,000万円を超えるケースもあります。
借地権は減価償却できますか?
いいえ、借地権は非償却資産です。法人税法施行令第13条の「土地の上に存する権利」として減価償却の対象外とされています。認定課税により借地権が認定された場合も同様に、資産計上はされますが減価償却はできません。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 借地権の認定課税とは、権利金のやりとりがない土地の貸し借りで、権利金をもらったとみなして課税する制度
  • 地主×借地人が個人か法人かで課税パターンが4つに分かれる。最も多いのは「個人地主×法人借地人」のケース
  • 回避策は3つ:①権利金を支払う、②相当の地代(年6%)を支払う、③無償返還届出書を提出する
  • 実務で最も使われるのは③の無償返還届出方式。初期資金不要で法人の負担が軽い
  • 無償返還届出方式でも地代は「固定資産税の2〜3倍以上」が必須(使用貸借認定を防ぐため)
  • 相続税では無償返還届出方式で自用地評価の80%に圧縮。小規模宅地等の特例も適用可能
  • 対策を怠ると、更地1億円の土地で2,000万円超の追徴課税リスクがある

借地権の認定課税は、同族会社の土地活用で最も見落とされやすい税務リスクの一つです。建物の着工前に、契約書の整備・届出書の提出・地代水準の設定を一体的に行うことが重要です。法人設立の流れについては「会社設立の流れと手順」、法人化の判断基準については「法人成りのタイミングと判断基準」もあわせてご覧ください。決算・申告の全体像は「法人決算の流れ」で解説しています。

AYUSAWA PARTNERS

借地権・認定課税のご相談は鮎澤パートナーズへ

初回相談無料。公認会計士・税理士・社労士・行政書士がワンストップで対応します。同族会社の土地活用・認定課税対策を一貫してサポートします。

鮎澤パートナーズに相談する