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社会福祉法人の税制優遇|法人税非課税・固定資産税非課税の適用要件
社会福祉法人の設立や法人形態の選択を検討している方に向けて、法人税・固定資産税・不動産取得税など8税目の優遇措置と適用要件、収益事業の判定方法、みなし寄付金制度までを一本にまとめて解説します。


社会福祉法人の設立や法人形態の選択を検討している方に向けて、法人税・固定資産税・不動産取得税など8税目の優遇措置と適用要件、収益事業の判定方法、みなし寄付金制度までを一本にまとめて解説します。
🏆 結論:社会福祉法人は8税目で広範な優遇を受けるが、収益事業には課税される
社会福祉法人は法人税法上の「公益法人等」に該当し、収益事業から生じた所得以外には法人税が課税されません。固定資産税・不動産取得税・登録免許税・印紙税にも非課税規定があり、税負担は株式会社と比べて大幅に軽減されます。ただし「社会福祉法人だから全て非課税」ではなく、法人税法上の収益事業(34業種)に該当する事業には課税されます。福祉用具貸与は物品貸付業に該当するため課税対象になるなど、個別の判定が必要です。
社会福祉法人は、法人税法第2条第6号に規定する「公益法人等」に該当します(法人税法別表第二)。公益法人等は、収益事業から生じた所得以外の所得には法人税が課税されません(法人税法第7条)。これが社会福祉法人の税制優遇の根幹です。
社会福祉法人とは、社会福祉法第22条に基づき、社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人です。設立には所轄庁(都道府県知事または市長)の認可が必要で、定款に社会福祉法で規定する事項を記載し、資産要件・組織運営要件を満たす必要があります。
| 区分 | 特徴 | 主な事業 |
|---|---|---|
| 第1種社会福祉事業 | 入所施設中心。経営主体は原則として行政または社会福祉法人に限定 | 特別養護老人ホーム、児童養護施設、障害者支援施設、救護施設 |
| 第2種社会福祉事業 | 在宅サービス中心。株式会社等も実施可能 | 保育所、訪問介護、デイサービス、ショートステイ、居宅介護支援 |
社会福祉法人が受けられる税制優遇は多岐にわたります。主要な8税目について一覧で整理します。
| 税目 | 優遇措置の内容 | 根拠法令 |
|---|---|---|
| 法人税 | 収益事業以外の所得は非課税。収益事業も軽減税率(年800万円以下は15%) | 法人税法第7条、第66条 |
| 住民税(法人税割) | 法人税が非課税の場合は法人税割も非課税 | 地方税法 |
| 住民税(均等割) | 収益事業を行わない場合は非課税(自治体により異なる) | 地方税法第296条 |
| 事業税 | 収益事業以外は非課税 | 地方税法第72条の5 |
| 消費税 | 介護保険サービス等は非課税(社会福祉法人に限らず) | 消費税法別表第一第7号 |
| 固定資産税 | 社会福祉事業の用に供する固定資産は非課税 | 地方税法第348条第2項 |
| 不動産取得税 | 社会福祉事業のために取得した不動産は非課税 | 地方税法第73条の4 |
| 登録免許税 | 社会福祉事業の用に供する不動産の登記は非課税 | 登録免許税法第4条 |
| 印紙税 | 社会福祉法人が作成する受取書は非課税 | 印紙税法別表第一 |
💡 実務のポイント
社会福祉法人の税務顧問をしていて最も多い誤解は「社会福祉法人だから全て非課税」という認識です。法人税は収益事業に課税されますし、固定資産税も社会福祉事業以外の用途に供する資産には課税されます。「社会福祉法人だから」ではなく「社会福祉事業の用に供しているから」非課税になるという点を正確に理解することが重要です。
社会福祉法人に法人税が課税されるのは、法人税法施行令第5条に定められた34業種に該当する事業を、継続して事業場を設けて行う場合に限られます。判定の2つのポイントは以下のとおりです。
第一に、事業が34業種のいずれかに該当するかどうか。第二に、その事業が「継続して事業場を設けて」行われているかどうかです。一時的なバザーや物品販売は継続性がないため収益事業に該当しません。
| 介護サービス | 34業種の該当 | 法人税 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設) | 医療保健業 → 非該当(社会福祉事業として除外) | 非課税 |
| ショートステイ(短期入所生活介護) | 医療保健業 → 非該当 | 非課税 |
| デイサービス(通所介護) | 医療保健業 → 非該当 | 非課税 |
| 居宅介護支援(ケアマネジメント) | 医療保健業 → 非該当 | 非課税 |
| 福祉用具貸与 | 物品貸付業に該当 | 課税 |
| 障害者の就労支援(生産活動) | 製造業・物品販売業等に該当する場合あり | 要判定 |
| 法人の駐車場経営 | 駐車場業に該当(ただし医療保健業の付随行為として非該当となる場合あり) | 要判定 |
⚠️ 注意:「法人税法上の収益事業」と「社会福祉法上の収益事業」は異なる
社会福祉法人の文脈では「収益事業」という言葉が2つの異なる意味で使われます。法人税法上の収益事業は34業種に該当するかで判定されます。一方、社会福祉法上の収益事業は、法人の経営基盤を強化するために行う事業(例:売店経営、駐車場経営等)を指します。この2つの定義は一致しないため、実務では常にどちらの「収益事業」を指しているか確認する必要があります。
34業種に形式的に該当する場合でも、以下の要件を満たせば収益事業に該当しないとされることがあります。
| 特例 | 内容 |
|---|---|
| 障害者等雇用特例 | 身体障害者・生活保護受給者・65歳以上の者等が従業者の半数以上を占め、その事業が生活保護に寄与している場合 |
| 実費弁償特例 | 国・自治体からの事務委託で、対価が実費弁償の範囲内であり、所轄税務署長の確認を受けた場合 |
社会福祉法人が収益事業を行い課税所得が生じた場合、収益事業から非収益事業(社会福祉事業)へ資金を繰り入れると、その金額を「みなし寄付金」として損金に算入できます(法人税法第37条第5項)。
損金算入の限度額は、収益事業にかかる所得金額の50%と年200万円のいずれか大きい金額です。この制度を活用すれば、収益事業の税負担を大幅に軽減できます。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | みなし寄付金なし | みなし寄付金あり |
|---|---|---|
| 収益事業の所得 | 600万円 | 600万円 |
| みなし寄付金の損金算入額 | 0円 | 300万円(600万×50%) |
| 課税所得 | 600万円 | 300万円 |
| 法人税額(15%) | 90万円 | 45万円 |
| 節税効果 | — | 45万円 |
※概算値です。地方税は含みません。みなし寄付金の適用を受けるには、事業年度中に収益事業から非収益事業への資金繰入れの経理処理が必要です。
📊 公認会計士の視点
みなし寄付金を活用して課税所得がゼロになった場合でも、法人税の確定申告は必要です。社会福祉法人は普通法人に該当しないため中間申告は不要ですが、確定申告を怠ると青色申告の承認が取り消されるリスクがあります。収益事業を行っている社会福祉法人は、毎期の確定申告を忘れないよう管理しましょう。
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福祉・介護に強い税理士へ地方税法第348条第2項第10号〜第10号の7により、社会福祉事業の用に供する固定資産は固定資産税が非課税となります。重要なポイントは、非課税の判定は「所有者が社会福祉法人かどうか」ではなく「固定資産の用途が社会福祉事業かどうか」で決まるということです。
したがって、社会福祉法人が所有する資産でも社会福祉事業以外の用途(管理部門のみに使用、収益事業の用に供する等)には課税されます。逆に、個人が所有する土地を社会福祉法人に無償で貸し付けて社会福祉事業に使用している場合は、その土地の固定資産税は非課税になり得ます。ただし、有償で借り上げている場合は非課税の対象外です。
固定資産税の非課税は自動的に適用されるわけではありません。市区町村に「固定資産税・都市計画税非課税申告書」を提出する必要があります。申告時に必要な書類は自治体により異なりますが、一般的には以下の書類が求められます。
| 必要書類 | 備考 |
|---|---|
| 固定資産税非課税申告書 | 各自治体所定の様式 |
| 登記簿謄本(履歴事項証明書) | 法人の目的に社会福祉事業が記載されていること |
| 定款 | 事業内容の確認 |
| 事業所の設置認可書 | 介護保険事業者の指定通知書等 |
| 財産目録 | 対象資産の特定 |
| 平面図 | 用途の確認(社会福祉事業と管理部門の区分等) |
賦課期日(1月1日)時点で社会福祉事業の用に供されていない資産は課税対象です。建築中の建物で賦課期日に事業が開始されていない場合も課税されますが、賦課期日後に事業を開始した場合は減免申請ができる自治体もあります。
社会福祉法人が収益事業用の資産について固定資産税や不動産取得税を支払った場合、その金額は収益事業の経費(租税公課)として損金に算入できます。一方、非課税対象の社会福祉事業用資産に誤って課税された場合は、還付請求を行います。
不動産取得税や登録免許税は、取得した資産の取得価額に算入するか、支払時の租税公課として費用計上するかを選択できます(法人税法基本通達7-3-3の2)。社会福祉法人の場合は取得価額に算入しない処理が一般的です。
固定資産税の取扱いや不動産に関する税務については「不動産賃貸所得の計算方法」でも解説しています。
介護事業を開始する際の法人形態選択の参考として、税制面の比較を示します。
| 比較項目 | 株式会社 | NPO法人 | 社会福祉法人 |
|---|---|---|---|
| 法人税 | 全所得に課税 | 収益事業のみ課税 | 収益事業のみ課税 |
| 法人税率(年800万円以下) | 15%(中小法人) | 15% | 15% |
| みなし寄付金 | なし | 所得の20%(上限200万円) | 所得の50%(上限200万円とのいずれか大) |
| 固定資産税 | 課税 | 原則課税 | 社会福祉事業用は非課税 |
| 不動産取得税 | 課税 | 原則課税 | 社会福祉事業用は非課税 |
| 印紙税 | 課税 | 課税 | 受取書は非課税 |
| 設立の難易度 | 低い(約2週間) | 中程度(約4ヶ月) | 高い(6ヶ月〜1年以上) |
| 残余財産の帰属 | 株主に分配 | 定款で定めた団体等 | 他の社会福祉法人等 or 国庫 |
税制面だけを見れば社会福祉法人が最も有利ですが、設立のハードルが非常に高く、資産要件(原則として不動産の自己所有)や行政の認可手続きに1年以上かかるケースもあります。小規模な訪問介護やデイサービスであれば株式会社や合同会社で開業し、事業規模の拡大に合わせて法人形態の変更を検討するのが現実的です。
介護事業の開業手続きの全体像については「介護事業の開業届と指定申請」で詳しく解説しています。消費税の取扱いについては「介護事業の消費税と処遇改善加算の会計処理」もあわせてご参照ください。
📝 行政書士の視点
社会福祉法人の設立は、定款の作成→所轄庁への事前相談→認可申請→認可→設立登記という流れになります。認可までの期間は自治体によって異なり、事前相談から設立登記まで6ヶ月〜1年以上かかるケースもあります。設立後は毎年度の事業報告・計算書類の届出義務があり、運営の透明性確保も求められます。税制優遇のメリットと運営負荷を比較検討した上で法人形態を選択しましょう。
📋 この記事のポイント
📝 次のアクション
現在株式会社で介護事業を運営している方は、まず自社の固定資産の規模と法人税の負担額を確認しましょう。不動産を自己所有しており、固定資産税・法人税の合計負担が大きい場合は、社会福祉法人への転換を検討する価値があります。転換には1年以上の準備期間が必要なため、まずは社会福祉法人の設立支援に対応できる税理士・行政書士に相談してください。
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