【税理士×行政書士のダブル監修】社会福祉法人の税制優遇|法人税非課税・固定資産税非課税の適用要件

【税理士×行政書士のダブル監修】社会福祉法人の税制優遇|法人税非課税・固定資産税非課税の適用要件
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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社会福祉法人の税制優遇|法人税非課税・固定資産税非課税の適用要件

社会福祉法人の設立や法人形態の選択を検討している方に向けて、法人税・固定資産税・不動産取得税など8税目の優遇措置と適用要件、収益事業の判定方法、みなし寄付金制度までを一本にまとめて解説します。

🏆 結論:社会福祉法人は8税目で広範な優遇を受けるが、収益事業には課税される

社会福祉法人は法人税法上の「公益法人等」に該当し、収益事業から生じた所得以外には法人税が課税されません。固定資産税・不動産取得税・登録免許税・印紙税にも非課税規定があり、税負担は株式会社と比べて大幅に軽減されます。ただし「社会福祉法人だから全て非課税」ではなく、法人税法上の収益事業(34業種)に該当する事業には課税されます。福祉用具貸与は物品貸付業に該当するため課税対象になるなど、個別の判定が必要です。

社会福祉法人の税法上の位置づけ

法人税法上は「公益法人等」

社会福祉法人は、法人税法第2条第6号に規定する「公益法人等」に該当します(法人税法別表第二)。公益法人等は、収益事業から生じた所得以外の所得には法人税が課税されません(法人税法第7条)。これが社会福祉法人の税制優遇の根幹です。

社会福祉法人とは、社会福祉法第22条に基づき、社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人です。設立には所轄庁(都道府県知事または市長)の認可が必要で、定款に社会福祉法で規定する事項を記載し、資産要件・組織運営要件を満たす必要があります。

社会福祉事業の2つの区分

区分 特徴 主な事業
第1種社会福祉事業入所施設中心。経営主体は原則として行政または社会福祉法人に限定特別養護老人ホーム、児童養護施設、障害者支援施設、救護施設
第2種社会福祉事業在宅サービス中心。株式会社等も実施可能保育所、訪問介護、デイサービス、ショートステイ、居宅介護支援

社会福祉法人の8税目の優遇措置一覧

社会福祉法人が受けられる税制優遇は多岐にわたります。主要な8税目について一覧で整理します。

税目 優遇措置の内容 根拠法令
法人税収益事業以外の所得は非課税。収益事業も軽減税率(年800万円以下は15%)法人税法第7条、第66条
住民税(法人税割)法人税が非課税の場合は法人税割も非課税地方税法
住民税(均等割)収益事業を行わない場合は非課税(自治体により異なる)地方税法第296条
事業税収益事業以外は非課税地方税法第72条の5
消費税介護保険サービス等は非課税(社会福祉法人に限らず)消費税法別表第一第7号
固定資産税社会福祉事業の用に供する固定資産は非課税地方税法第348条第2項
不動産取得税社会福祉事業のために取得した不動産は非課税地方税法第73条の4
登録免許税社会福祉事業の用に供する不動産の登記は非課税登録免許税法第4条
印紙税社会福祉法人が作成する受取書は非課税印紙税法別表第一

💡 実務のポイント

社会福祉法人の税務顧問をしていて最も多い誤解は「社会福祉法人だから全て非課税」という認識です。法人税は収益事業に課税されますし、固定資産税も社会福祉事業以外の用途に供する資産には課税されます。「社会福祉法人だから」ではなく「社会福祉事業の用に供しているから」非課税になるという点を正確に理解することが重要です。

法人税の非課税制度と収益事業の判定

収益事業に該当するかの判定ポイント

社会福祉法人に法人税が課税されるのは、法人税法施行令第5条に定められた34業種に該当する事業を、継続して事業場を設けて行う場合に限られます。判定の2つのポイントは以下のとおりです。

第一に、事業が34業種のいずれかに該当するかどうか。第二に、その事業が「継続して事業場を設けて」行われているかどうかです。一時的なバザーや物品販売は継続性がないため収益事業に該当しません。

介護サービスと収益事業の判定表

介護サービス 34業種の該当 法人税
特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)医療保健業 → 非該当(社会福祉事業として除外)非課税
ショートステイ(短期入所生活介護)医療保健業 → 非該当非課税
デイサービス(通所介護)医療保健業 → 非該当非課税
居宅介護支援(ケアマネジメント)医療保健業 → 非該当非課税
福祉用具貸与物品貸付業に該当課税
障害者の就労支援(生産活動)製造業・物品販売業等に該当する場合あり要判定
法人の駐車場経営駐車場業に該当(ただし医療保健業の付随行為として非該当となる場合あり)要判定

⚠️ 注意:「法人税法上の収益事業」と「社会福祉法上の収益事業」は異なる

社会福祉法人の文脈では「収益事業」という言葉が2つの異なる意味で使われます。法人税法上の収益事業は34業種に該当するかで判定されます。一方、社会福祉法上の収益事業は、法人の経営基盤を強化するために行う事業(例:売店経営、駐車場経営等)を指します。この2つの定義は一致しないため、実務では常にどちらの「収益事業」を指しているか確認する必要があります。

収益事業に該当しない特例

34業種に形式的に該当する場合でも、以下の要件を満たせば収益事業に該当しないとされることがあります。

特例 内容
障害者等雇用特例身体障害者・生活保護受給者・65歳以上の者等が従業者の半数以上を占め、その事業が生活保護に寄与している場合
実費弁償特例国・自治体からの事務委託で、対価が実費弁償の範囲内であり、所轄税務署長の確認を受けた場合

みなし寄付金制度のしくみとシミュレーション

みなし寄付金制度とは

社会福祉法人が収益事業を行い課税所得が生じた場合、収益事業から非収益事業(社会福祉事業)へ資金を繰り入れると、その金額を「みなし寄付金」として損金に算入できます(法人税法第37条第5項)。

損金算入の限度額は、収益事業にかかる所得金額の50%と年200万円のいずれか大きい金額です。この制度を活用すれば、収益事業の税負担を大幅に軽減できます。

みなし寄付金の節税シミュレーション

📐 シミュレーション前提条件

  • 社会福祉法人が福祉用具貸与事業(収益事業)で年間所得600万円を計上
  • 同額を非収益事業(特別養護老人ホームの運営)に繰り入れ
項目 みなし寄付金なし みなし寄付金あり
収益事業の所得600万円600万円
みなし寄付金の損金算入額0円300万円(600万×50%)
課税所得600万円300万円
法人税額(15%)90万円45万円
節税効果45万円

※概算値です。地方税は含みません。みなし寄付金の適用を受けるには、事業年度中に収益事業から非収益事業への資金繰入れの経理処理が必要です。

📊 公認会計士の視点

みなし寄付金を活用して課税所得がゼロになった場合でも、法人税の確定申告は必要です。社会福祉法人は普通法人に該当しないため中間申告は不要ですが、確定申告を怠ると青色申告の承認が取り消されるリスクがあります。収益事業を行っている社会福祉法人は、毎期の確定申告を忘れないよう管理しましょう。

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固定資産税の非課税制度と申告手続き

固定資産税が非課税となる要件

地方税法第348条第2項第10号〜第10号の7により、社会福祉事業の用に供する固定資産は固定資産税が非課税となります。重要なポイントは、非課税の判定は「所有者が社会福祉法人かどうか」ではなく「固定資産の用途が社会福祉事業かどうか」で決まるということです。

したがって、社会福祉法人が所有する資産でも社会福祉事業以外の用途(管理部門のみに使用、収益事業の用に供する等)には課税されます。逆に、個人が所有する土地を社会福祉法人に無償で貸し付けて社会福祉事業に使用している場合は、その土地の固定資産税は非課税になり得ます。ただし、有償で借り上げている場合は非課税の対象外です。

非課税申告の手続き

固定資産税の非課税は自動的に適用されるわけではありません。市区町村に「固定資産税・都市計画税非課税申告書」を提出する必要があります。申告時に必要な書類は自治体により異なりますが、一般的には以下の書類が求められます。

必要書類 備考
固定資産税非課税申告書各自治体所定の様式
登記簿謄本(履歴事項証明書)法人の目的に社会福祉事業が記載されていること
定款事業内容の確認
事業所の設置認可書介護保険事業者の指定通知書等
財産目録対象資産の特定
平面図用途の確認(社会福祉事業と管理部門の区分等)

賦課期日(1月1日)時点で社会福祉事業の用に供されていない資産は課税対象です。建築中の建物で賦課期日に事業が開始されていない場合も課税されますが、賦課期日後に事業を開始した場合は減免申請ができる自治体もあります。

固定資産税・不動産取得税・登録免許税を支払った場合の会計処理

社会福祉法人が収益事業用の資産について固定資産税や不動産取得税を支払った場合、その金額は収益事業の経費(租税公課)として損金に算入できます。一方、非課税対象の社会福祉事業用資産に誤って課税された場合は、還付請求を行います。

不動産取得税や登録免許税は、取得した資産の取得価額に算入するか、支払時の租税公課として費用計上するかを選択できます(法人税法基本通達7-3-3の2)。社会福祉法人の場合は取得価額に算入しない処理が一般的です。

固定資産税の取扱いや不動産に関する税務については「不動産賃貸所得の計算方法」でも解説しています。

法人形態別の税制比較:株式会社・NPO法人・社会福祉法人

介護事業の法人形態選択に役立つ比較

介護事業を開始する際の法人形態選択の参考として、税制面の比較を示します。

比較項目 株式会社 NPO法人 社会福祉法人
法人税全所得に課税収益事業のみ課税収益事業のみ課税
法人税率(年800万円以下)15%(中小法人)15%15%
みなし寄付金なし所得の20%(上限200万円)所得の50%(上限200万円とのいずれか大)
固定資産税課税原則課税社会福祉事業用は非課税
不動産取得税課税原則課税社会福祉事業用は非課税
印紙税課税課税受取書は非課税
設立の難易度低い(約2週間)中程度(約4ヶ月)高い(6ヶ月〜1年以上)
残余財産の帰属株主に分配定款で定めた団体等他の社会福祉法人等 or 国庫

税制面だけを見れば社会福祉法人が最も有利ですが、設立のハードルが非常に高く、資産要件(原則として不動産の自己所有)や行政の認可手続きに1年以上かかるケースもあります。小規模な訪問介護やデイサービスであれば株式会社や合同会社で開業し、事業規模の拡大に合わせて法人形態の変更を検討するのが現実的です。

介護事業の開業手続きの全体像については「介護事業の開業届と指定申請」で詳しく解説しています。消費税の取扱いについては「介護事業の消費税と処遇改善加算の会計処理」もあわせてご参照ください。

📝 行政書士の視点

社会福祉法人の設立は、定款の作成→所轄庁への事前相談→認可申請→認可→設立登記という流れになります。認可までの期間は自治体によって異なり、事前相談から設立登記まで6ヶ月〜1年以上かかるケースもあります。設立後は毎年度の事業報告・計算書類の届出義務があり、運営の透明性確保も求められます。税制優遇のメリットと運営負荷を比較検討した上で法人形態を選択しましょう。

よくある質問(FAQ)

社会福祉法人は法人税が完全に非課税ですか?
社会福祉事業から生じた所得には法人税は課税されませんが、法人税法施行令に定められた34業種に該当する「収益事業」を行う場合は、その収益事業から生じた所得に法人税が課税されます。たとえば福祉用具貸与は物品貸付業に該当するため課税対象です。ただし、みなし寄付金制度を活用して税負担を軽減することが可能です。
固定資産税の非課税を受けるにはどうすればよいですか?
市区町村に「固定資産税・都市計画税非課税申告書」を提出する必要があります。自動的に非課税になるわけではありません。申告時には登記簿謄本、定款、事業所の設置認可書、平面図等の書類を添付します。なお、非課税の判定は賦課期日(1月1日)時点の用途で行われるため、建築中の建物で事業が開始されていない場合は課税対象となります。
株式会社が社会福祉法人に変更することはできますか?
株式会社を直接「社会福祉法人に変更」する制度はありません。社会福祉法人は社会福祉法に基づく認可法人であり、別途新たに社会福祉法人を設立する必要があります。既存の株式会社の介護事業を社会福祉法人に移管する場合は、事業譲渡や介護保険事業者の指定の変更手続き等が必要になります。
みなし寄付金制度の限度額はいくらですか?
社会福祉法人のみなし寄付金の損金算入限度額は、収益事業にかかる所得金額の50%と年200万円のいずれか大きい金額です。NPO法人の場合は所得の20%(上限200万円との選択)であるため、社会福祉法人の方が有利です。適用を受けるには、事業年度中に収益事業から非収益事業への資金繰入れの経理処理を行う必要があります。
社会福祉法人が所有する管理事務所にも固定資産税の非課税は適用されますか?
管理事務所など、社会福祉事業に直接使用されていない資産は固定資産税の非課税対象外です。非課税の判定は「社会福祉法人が所有しているか」ではなく「社会福祉事業の用に供しているか」で決まります。1つの建物内で社会福祉事業部門と管理部門が混在する場合は、用途に応じた按分が必要になることがあります。詳細は管轄の自治体にご確認ください。
社会福祉法人に土地を無償で貸した場合、貸主の固定資産税はどうなりますか?
個人が所有する土地を社会福祉法人に無償で貸し付けて社会福祉事業に使用している場合、その土地の固定資産税は非課税になり得ます。ただし有償(賃料を受け取る)で貸し付けている場合は非課税の対象外です。空き家・遊休不動産の活用として、社会福祉法人への無償貸付けは固定資産税の節税にもなります。
社会福祉法人の設立にはどのくらいの期間がかかりますか?
事前相談から設立登記まで、一般的に6ヶ月〜1年以上かかります。所轄庁との事前協議、定款の認可申請、資産の確認等の手続きが複雑なためです。株式会社の設立が約2週間で完了するのに比べて大幅に時間がかかります。設立を検討する場合は、少なくとも1年前から準備を始めることをおすすめします。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 社会福祉法人は法人税法上の「公益法人等」で、収益事業以外の所得は非課税
  • 法人税法上の収益事業(34業種)に該当する事業には法人税が課税される
  • みなし寄付金制度で収益事業の課税所得を最大50%削減可能
  • 固定資産税は「社会福祉事業の用に供する」資産が非課税(所有者は問わない)
  • 固定資産税の非課税には市区町村への申告手続きが必要
  • 不動産取得税・登録免許税・印紙税にも非課税規定がある
  • 設立のハードルが高く6ヶ月〜1年以上かかるため、税制メリットと運営負荷を比較検討する

📝 次のアクション

現在株式会社で介護事業を運営している方は、まず自社の固定資産の規模と法人税の負担額を確認しましょう。不動産を自己所有しており、固定資産税・法人税の合計負担が大きい場合は、社会福祉法人への転換を検討する価値があります。転換には1年以上の準備期間が必要なため、まずは社会福祉法人の設立支援に対応できる税理士・行政書士に相談してください。

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