【4士業ワンストップ解説】会社設立後に出す税務届出7種と期限|青色申告・源泉特例・棚卸資産評価方法を完全攻略

【4士業ワンストップ解説】会社設立後に出す税務届出7種と期限|青色申告・源泉特例・棚卸資産評価方法を完全攻略
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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会社設立後に出す税務届出7種と期限|青色申告・源泉特例・棚卸資産評価方法を完全攻略

「設立登記が終わったあとに税務署へ何を出せばいいか分からない」という創業者に向けて、税務署7種・地方税1種・社会保険3種の提出書類を期限順に整理します。この記事を読めば、青色申告承認申請書(3か月以内)の期限を逃さず、源泉所得税の納期特例で事務負担を軽減でき、棚卸資産・減価償却の評価方法を有利に選択できます。

🏆 結論:「設立後2か月以内に届出ラッシュ」を乗り切ることが創業期の最重要タスク

会社設立後の届出は、税務署への必須3種(法人設立届出書・青色申告承認申請書・給与支払事務所等の開設届出書)を中心に、最大で税務署7種+地方税1種+年金事務所3種=11種の提出が必要です。最も期限が厳しいのは青色申告承認申請書で、設立日から3か月以内(または1期目終了日のいずれか早い日)。これを逃すと欠損金10年繰越・少額減価償却資産特例など主要な節税策がすべて使えなくなり、創業期で500万円以上の損失につながるケースもあります。設立登記完了後すぐに届出スケジュールを組むことが必須です。

設立後の届出スケジュール【全体マップ】

提出先別の届出一覧

設立後の届出は、提出先によって大きく4グループに分かれます。

提出先 届出書 区分
税務署法人設立届出書必須
税務署青色申告の承認申請書必須(推奨)
税務署給与支払事務所等の開設届出書役員報酬支払う場合必須
税務署源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書任意(小規模法人は推奨)
税務署棚卸資産の評価方法の届出書任意(在庫業ある場合は推奨)
税務署減価償却資産の償却方法の届出書任意
税務署消費税課税事業者選択届出書設備投資型は検討
都税・県税事務所法人設立届出書(地方税用)必須
市町村役場法人設立届出書(市町村用)必須(東京23区を除く)
年金事務所健康保険・厚生年金保険新規適用届必須
労働基準監督署・ハローワーク労働保険関係(従業員雇用時)従業員雇用時のみ

期限順タイムライン

設立後の届出は、期限が短いものから片付けていくのが鉄則です。

期限 届出書 提出先
5日以内健康保険・厚生年金保険新規適用届年金事務所
10日以内労働保険関係成立届(従業員雇用時)労働基準監督署
1か月以内給与支払事務所等の開設届出書税務署
15日以内法人設立届出書(地方税)都税・県税事務所
2か月以内法人設立届出書(国税)税務署
3か月以内青色申告の承認申請書税務署
確定申告書提出期限まで棚卸資産の評価方法の届出書税務署
確定申告書提出期限まで減価償却資産の償却方法の届出書税務署

※「設立日から〇日/〇か月以内」が原則。青色申告は「設立日から3か月以内」または「1期目終了日の前日」のいずれか早い日。

⚠️ 注意

最も早い「健康保険・厚生年金保険新規適用届(5日以内)」は実務上ほぼ守れません。法律上の期限と運用実態にズレがあり、年金事務所も柔軟に対応してくれますが、目安としては設立後2週間以内には提出するのが望ましいです。一方、青色申告承認申請書の3か月以内は厳格運用で、1日遅れたら絶対に救済されません。優先順位は「期限が短い順」ではなく「逃すと損失が大きい順」で動くべきです。

【届出1】法人設立届出書(税務署)

概要と期限

法人設立届出書は、会社を設立したことを管轄税務署に届け出る書類です。提出期限は設立日から2か月以内(法人税法第148条)。

添付書類

  1. 定款のコピー
  2. 設立時の貸借対照表(任意。簡易な開業時BSでも可)
  3. 株主名簿のコピー
  4. 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)のコピー(不要としている税務署もある)

提出しないとどうなるか

法人設立届出書の未提出に直接的な罰則はありません。ただし、税務署に設立情報が伝わらないため、確定申告書類の送付が来ず、申告書類を自力で取得する必要があります。実務的にはほぼデメリットしかないため、必ず提出します。

参考: 国税庁「内国普通法人等の設立の届出」

【届出2】青色申告の承認申請書(税務署)

3か月以内ルールが最重要

青色申告の承認申請書は、設立日から3か月以内(または1期目終了日の前日のいずれか早い日)に提出しなければ、その期は青色申告できません(法人税法第122条)。

例えば9月20日設立で1期目が3月末決算の場合、提出期限は12月19日です。9月20日設立で1期目が翌年8月末決算の場合は、同じく12月19日が期限(3か月以内が短い方)です。

青色申告のメリット(白色申告と比較)

特典 青色申告 白色申告
欠損金の繰越控除(10年)×
少額減価償却資産の即時償却(40万円未満)×
中小企業投資促進税制×
賃上げ促進税制×
推計課税の禁止×
更正の理由付記×

⚠️ 青色申告を逃すと500万円超の損失も

創業期は赤字になりやすく、青色申告なら欠損金10年繰越で将来の黒字年と相殺できます。創業1期目に500万円の赤字が出た場合、青色申告なら翌期以降10年間で利益と相殺し最大175万円(500万円×35%)の税金が減ります。一方、白色申告では繰越できず、創業期の赤字は丸ごと税金的にムダになります。青色申告承認申請書1枚で生まれる節税効果は、創業期で500万〜数千万円規模になり得ます。

参考: 国税庁「青色申告の承認申請書」

【届出3】給与支払事務所等の開設届出書(税務署)

概要と期限

役員報酬または従業員給与を支払う場合、給与支払事務所等の開設届出書を設立日から1か月以内に提出します(所得税法第230条)。

法人設立届出書で「給与支払事務所等の開設」欄に記載した場合は、本届出書の別途提出は不要とする運用が多くなっています。実務上は両方提出しておけば確実です。

提出しないとどうなるか

源泉所得税の徴収義務は届出書の提出有無に関わらず発生するため、未提出でも納付義務は残ります。ただし、未提出のままだと税務署からの納付書送付がなく、納付期限を失念しやすくなります。

【届出4】源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(税務署)

事務負担を軽減する強力な特例

源泉所得税は原則として、給与等を支払った月の翌月10日までに納付しなければなりません。年12回の納付が必要となり、創業期の経理担当にとって大きな負担です。

源泉所得税の納期の特例を申請すると、給与支払い対象者が常時10人未満の場合、納付を年2回(1月20日と7月10日)にまとめられます(所得税法第216条)。

区分 納付回数 納付期限
原則年12回支払月の翌月10日
納期特例年2回1〜6月分→7月10日/7〜12月分→翌年1月20日

適用開始タイミング

💡 実務のポイント

納期特例は「申請書を提出した月の翌月に支払う給与」から適用されます。例えば10月に申請書を提出した場合、11月支払い分の源泉所得税から年2回まとめ納付が可能。10月支払い分は11月10日までに納付する必要があります。設立後すぐに提出するのが事務負担最小化のコツです。なお、納期特例の対象は給与・退職金・税理士等への報酬の3種類のみで、原稿料・講演料等は除外される点も実務上の落とし穴です。

参考: 国税庁「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」

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【届出5】棚卸資産の評価方法の届出書(税務署)

提出しないと自動で「最終仕入原価法」

商品・製品の在庫を持つ法人は、棚卸資産の評価方法を税務署に届け出ます(法人税法施行令第29条)。提出期限は1期目の確定申告書の提出期限まで。

届出をしないと、自動的に「最終仕入原価法」が適用されます(法人税法施行令第31条)。これは法定評価方法と呼ばれます。

評価方法の選択肢

評価方法 特徴 向いている業種
最終仕入原価法(法定)期末に最も近い仕入の単価を採用少品種・単価変動小
個別法個々の商品ごとに原価を管理高額商品(不動産・宝石等)
先入先出法先に仕入れたものから順に売上原価食品・日用品
総平均法期中の仕入を全体で平均大量取扱い品
移動平均法仕入の都度に平均単価を更新在庫システム導入企業
低価法原価法と時価のいずれか低い額節税効果あり・要届出

低価法を選ぶメリット

📊 公認会計士の視点

在庫が値下がりするリスクのある業種では、低価法を選択しておくことで、時価が原価を下回った時点で評価損を計上できます。例えば、アパレル業や電子部品商社など、季節性・トレンドで在庫価値が下落する業種では、低価法を選択しないと「売れ残った旧モデル在庫」が評価減できず、税負担が重くなります。設立期にあらかじめ低価法を届け出ておくことで、将来の評価減リスクに備えられます。

参考: 国税庁「棚卸資産の評価方法の届出書」

【届出6】減価償却資産の償却方法の届出書(税務署)

法定償却方法は資産区分で異なる

減価償却資産の償却方法も、届出をしない場合は自動的に「法定償却方法」が適用されます。法定方法は資産区分によって異なります。

資産区分 法定方法 選択可能な方法
建物定額法定額法のみ
建物附属設備・構築物定額法定額法のみ
機械装置・車両・器具備品定率法定額法・定率法から選択
無形固定資産(ソフトウェア等)定額法定額法のみ

定率法を選ぶメリット

機械装置・車両・器具備品は法定で定率法が適用されますが、定額法も選択可能です。

  • 定率法:初年度に多く償却し、年々減少。創業期の節税向き
  • 定額法:毎年同額を償却。計画的・安定志向

実務上、機械装置等は法定の定率法をそのまま使うケースが多く、特に届出をしないことも一般的です。創業期で大型設備投資がある場合、定額法と定率法のどちらが有利かをシミュレーションして選択します。

参考: 国税庁「減価償却資産の償却方法の届出書」

【届出7】消費税課税事業者選択届出書(税務署・該当する場合のみ)

あえて課税事業者を選ぶケース

設立1〜2期目は原則として消費税の免税事業者ですが、大型設備投資の還付を受けたい場合などは、課税事業者選択届出書を提出します。

提出期限は「課税事業者となろうとする課税期間の初日の前日まで」ですが、新設法人の場合は1期目から課税事業者になりたい場合、1期目末日までに提出すれば1期目から適用されます(消費税法第9条第4項、第5項)。

⚠️ 2年縛りに注意

課税事業者選択届出書を提出すると、2年間は免税事業者に戻れません(消費税法第9条第6項)。設備投資の還付目的で1期目に課税事業者を選択する場合、2期目も課税事業者として申告する必要があります。2期目の課税仕入が少ない場合、1期目で受けた還付額を上回る納税が発生することもあるため、トータルで損益判定が必要です。

詳細は子記事1の「設立1〜2期目の消費税免税の条件と注意点」をご覧ください。

地方税・社会保険の届出

地方税の届出(都税・県税事務所・市町村)

提出先 書類名 期限
都税事務所(東京)事業開始等申告書15日以内
県税事務所(東京以外)法人設立届出書15日〜1か月以内(都道府県による)
市町村役場(東京23区を除く)法人設立届出書市町村による(多くは1か月以内)

東京23区内に本店を置く法人は、都税事務所のみで完結し、区役所への提出は不要です。

社会保険の届出(年金事務所)

🔷 社労士の視点

法人は役員1人でも社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務付けられています。年金事務所への新規適用届は設立日から5日以内が法律上の期限ですが、実務上はほぼ守れません。設立後2週間以内には提出するのが望ましく、提出が遅れると遡って保険料を徴収されます。役員報酬を0円に設定した場合は社会保険の対象外となるため、加入義務もありません。創業期にあえて報酬を0円とすることで社保負担を回避する戦略もあります。

書類 期限 必要なケース
健康保険・厚生年金保険新規適用届設立日から5日以内役員報酬支給時必須
被保険者資格取得届資格取得日から5日以内役員・従業員ごと
健康保険被扶養者届事実発生から5日以内扶養家族がいる場合

労働保険の届出(従業員雇用時のみ)

従業員(役員以外)を雇用する場合、労働保険の加入手続きが必要です。

書類 提出先 期限
労働保険関係成立届労働基準監督署保険関係成立日から10日以内
労働保険概算保険料申告書労働基準監督署保険関係成立日から50日以内
雇用保険適用事業所設置届ハローワーク設置日から10日以内
雇用保険被保険者資格取得届ハローワーク資格取得日の翌月10日まで

e-Taxによる電子申請の活用

創業期からe-Tax導入を推奨

法人設立後の届出は、e-Tax(電子申告・申請)で提出できます。e-Tax利用には電子証明書(マイナンバーカード等)と利用者識別番号の取得が必要ですが、一度設定すれば以降の届出・申告がオンラインで完結します。

💡 実務のポイント

創業期からe-Taxを使えるよう設定しておくと、税務調査の連絡や納税証明書の発行も電子化できます。資本金1億円超の大法人は電子申告が義務化されていますが、中小法人も早めに導入するメリットは大きいです。電子証明書を法人として取得する場合、商業登記電子証明書(法務省)またはマイナンバーカード(代表者個人)の選択肢があります。

届出を逃した場合のリカバリー

青色申告承認申請書を3か月以内に出し忘れた場合

期限を過ぎてから提出すると、その期は白色申告として処理されます。翌期から青色申告に切り替える場合は、翌期開始日の前日までに改めて承認申請書を提出します。

ただし、創業1期目で大きな赤字が出た場合、青色申告でない以上は欠損金を繰り越せず、税務的に大損失となります。

提出書類のチェックリスト

設立後3か月以内に以下をチェックしてください。

  1. 法人設立届出書(税務署)→ 提出済みか、添付書類は揃っているか
  2. 青色申告承認申請書(税務署)→ 設立日から3か月以内に提出済みか
  3. 給与支払事務所等の開設届出書(税務署)→ 役員報酬支払前に提出済みか
  4. 源泉所得税の納期特例申請書(税務署)→ 10人未満なら提出推奨
  5. 棚卸資産の評価方法の届出書(税務署)→ 在庫業なら1期目確定申告まで
  6. 減価償却資産の償却方法の届出書(税務署)→ 必要に応じて1期目確定申告まで
  7. 消費税課税事業者選択届出書(税務署)→ 還付を受ける場合のみ
  8. 事業開始等申告書(都税事務所)→ 設立後15日以内
  9. 法人設立届出書(市町村)→ 東京23区以外は要提出
  10. 健康保険・厚生年金保険新規適用届(年金事務所)→ 設立後5日以内が原則
  11. 労働保険関係成立届(労基署・雇用時のみ)→ 雇用後10日以内
  12. 雇用保険適用事業所設置届(ハローワーク・雇用時のみ)→ 雇用後10日以内

よくある質問

青色申告承認申請書を3か月以内に提出し忘れました。救済はありますか?
残念ながら、期限経過後の救済規定はありません。1期目は白色申告として処理し、2期目から青色申告するしかありません。1期目に大きな赤字が出ても繰越控除できないため、創業期の最大の損失パターンの1つです。設立後、最優先で対応すべき届出です。
e-Taxではなく紙で提出しても問題ないですか?
中小法人は紙提出も認められています。ただし、創業時に税務署窓口で待つ時間や郵送コスト、提出書類のコピー保管を考えると、e-Tax導入は十分にメリットがあります。資本金1億円超の大法人は電子申告が義務化されています。
複数の届出を同時に1枚にまとめて提出できますか?
いいえ、それぞれ別々の書類として提出します。ただし、法人設立届出書には「給与支払事務所等の開設」のチェック欄があり、これにチェックすれば給与支払事務所等の開設届出書を別途提出する必要はなくなります(運用は税務署により異なる)。
源泉所得税の納期特例を申請後、従業員が11人以上になりました。どうすればよいですか?
「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を提出し、原則の月次納付に戻します。提出を怠ったまま納期特例で納付を続けると、延滞税の対象になります。
棚卸資産の評価方法を後から変更できますか?
「棚卸資産の評価方法の変更承認申請書」を提出し、税務署長の承認を得れば変更可能です。ただし、変更後3年間は再変更できないという制約があります(法人税法施行令第30条の2)。最初の選択時に慎重に判断する必要があります。
本店を別の都道府県に移転した場合、届出はどうなりますか?
税務署・都税事務所・年金事務所のいずれにも「異動届出書」または「事業所所在地変更届」を提出します。移転先の管轄税務署への新規届出は不要で、異動届で完結します。社会保険関係は移転先の年金事務所での手続きが必要です。
合同会社でも同じ届出が必要ですか?
はい、株式会社と合同会社で届出書類はほぼ同じです。法人として源泉徴収義務・社会保険加入義務が同様に発生するため、提出書類も基本的に同一と考えてよいです。
役員報酬を0円にした場合でも、給与支払事務所等の開設届出書は必要ですか?
役員報酬・従業員給与のいずれも支払わない期間は、提出の必要はありません。後日、役員報酬等を支払い始める時点で提出します。なお、報酬0円のため社会保険にも加入できない点に注意してください。

📋 この記事のポイント

  • 設立後の届出は税務署7種+地方税1〜2種+社会保険3種が基本構成
  • 最優先は青色申告承認申請書(設立日から3か月以内)。逃すと欠損金繰越等の節税策が全て使えない
  • 法人設立届出書(税務署)は設立日から2か月以内
  • 源泉所得税の納期特例は事務負担を年12回→年2回に圧縮できる強力な特例
  • 棚卸資産・減価償却の評価方法は1期目確定申告までに届出。未提出だと法定方法が自動適用
  • 消費税課税事業者選択届出書は2年縛りに注意。設備投資型のみ検討
  • 社会保険は設立後5日以内が原則だが、実務上は2週間以内目安で運用
  • e-Taxを創業期から導入すれば、税務調査連絡や納税証明書まで電子化できる

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