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設立1〜2期目の消費税免税の条件と注意点|資本金・特定期間・特定新規設立法人を完全攻略
「設立2年間は消費税が免税」と聞いて起業した経営者に向けて、免税を逃す4つの落とし穴と判定フローを完全ガイドします。この記事を読めば、自社が1期目・2期目に免税事業者になれるか判断でき、インボイス登録の有無を含めた最適戦略を選べます。
🏆 結論:免税を勝ち取るには「4つの関門」をすべて通過する必要がある
設立1〜2期目の消費税免税は、①資本金1,000万円未満、②特定期間の課税売上高または給与等支払額のいずれかが1,000万円以下、③特定新規設立法人に該当しない、④インボイス登録をしていない、の4つすべてを満たして初めて成立します。1つでも欠ければ即課税事業者です。さらに2026年10月以降は2割特例も終了し、課税事業者になった場合の負担は確実に増えます。設立前の設計が決定的に重要です。
設立1〜2期目に消費税が免税になる「基本のしくみ」
原則:基準期間がない法人は免税
消費税の納税義務は、原則として「基準期間における課税売上高が1,000万円超」の事業者にあります。基準期間とは、法人の場合「その事業年度の前々事業年度」を指します(消費税法第9条第1項)。 新設法人には設立1期目・2期目に前々事業年度が存在しません。基準期間そのものが存在しないため、原則として消費税の納税義務は免除されます。これが「設立後2年間は消費税が免税」と一般に言われている根拠です。💡 実務のポイント
実務では、創業者から「2年は絶対免税ですよね?」と確認される場面が頻繁にあります。残念ながら答えはNoです。原則は免税でも、後述する4つの例外規定のいずれかに該当した瞬間に課税事業者になります。年間100社の設立支援をしている肌感では、何も意識せずに設立すると約3割が初年度から課税事業者になっています。
免税のメリットは最大いくらか
設立1〜2期目で年商3,000万円のEC事業者を想定すると、課税事業者と免税事業者の差は概算で次のようになります。📐 シミュレーション前提条件
- 年間課税売上高 3,000万円(税抜)、消費税10%
- 課税仕入 1,500万円(税抜)、消費税10%
- 本則課税(原則課税)で試算
- 地方消費税を含む
| 区分 | 売上税額 | 仕入税額控除 | 納付税額 |
|---|---|---|---|
| 課税事業者(本則) | 300万円 | 150万円 | 150万円 |
| 免税事業者 | 0円 | 0円 | 0円 |
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
2年間免税であれば、上記の年商規模で最大300万円の差が生まれます。設立直後の手元資金が薄い時期にこの金額は決定的に大きく、運転資金や追加投資に振り向けられます。免税を逃す4つの落とし穴
設立1〜2期目で免税を逃すパターンは、実務では大きく4つに分類できます。| 落とし穴 | 判定基準 | 影響期 |
|---|---|---|
| ①資本金1,000万円 | 設立時または2期目期首の資本金が1,000万円以上 | 1〜2期目 |
| ②特定期間 | 1期目上半期6か月の課税売上高と給与等支払額がともに1,000万円超 | 2期目 |
| ③特定新規設立法人 | 親会社等の課税売上高が5億円超または収益合計50億円超 | 1〜2期目 |
| ④インボイス登録 | 適格請求書発行事業者の登録申請を行った | 登録日以降 |
落とし穴①:資本金1,000万円以上で設立した場合
資本金1,000万円ルールの内容
ひとことで言えば、事業年度開始日の資本金が1,000万円以上の新設法人は、基準期間がなくても1期目から課税事業者となります(消費税法第12条の2)。これを「新設法人の納税義務の特例」と呼びます。 判定は「事業年度開始日」の状態で行われるため、設立日に資本金1,000万円以上であれば1期目が課税事業者、2期目期首に資本金1,000万円以上であれば2期目が課税事業者になります。資本金1,000万円「ちょうど」は課税事業者
条文は「1,000万円以上」のため、ちょうど1,000万円も該当します。資本金を1,000万円未満にする場合は、999万円や990万円など、明確に下回る金額に設定する必要があります。⚠️ 注意
実務でよくある事故が「キリのいい数字にしたい」という理由で資本金1,000万円に設定するケースです。新規設立法人で年商3,000万円の規模なら、この設定だけで2年間で最大300万円の納税義務が発生します。許認可業種で資本金要件がある場合を除き、999万円以下に設定するのが原則です。
資本金と資本準備金の使い分け
会社法上、出資額の2分の1までを「資本準備金」として計上することが認められています(会社法第445条第2項)。例えば自己資金1,500万円を全額入れたい場合は、次のように分けます。| 設計 | 資本金 | 資本準備金 | 消費税 |
|---|---|---|---|
| 全額資本金 | 1,500万円 | 0円 | 1期目から課税 |
| 分割設計 | 750万円 | 750万円 | 免税維持可能 |
落とし穴②:特定期間の判定で1,000万円を超えた場合
特定期間とは何か
特定期間とは、法人の場合「その事業年度の前事業年度開始の日以後6月の期間」をいいます(消費税法第9条の2)。設立2期目で言えば、1期目の最初の6か月間が特定期間です。 特定期間における「課税売上高」と「給与等支払額」のいずれかが1,000万円以下であれば、2期目も免税事業者でいられます。逆に両方とも1,000万円を超えると課税事業者になります。💡 実務のポイント
「いずれかが1,000万円以下」というのが鍵です。売上が急成長して上半期で1,500万円に達しても、給与等が1,000万円以下であれば免税を維持できます。逆もまた然り。実務では、創業期は急成長すれば売上は超えやすいので、給与等支払額のコントロールが免税維持の要になります。
給与等支払額の判定範囲
国税庁の質疑応答事例によれば、給与等支払額に含まれるものと含まれないものは次の通りです。| 含まれるもの | 含まれないもの |
|---|---|
| 役員報酬、従業員給与、パート・アルバイト給与 | 所得税が非課税の通勤手当 |
| 賞与(ボーナス) | 所得税が非課税の旅費・日当 |
| 事前確定届出給与 | 未払額(実際に支払った金額のみカウント) |
| 使用人兼務役員の使用人分給与 | 出向先が出向元に支払う給与負担金(出向先側で) |
特定期間の調整テクニック「上半期は給与を抑える」
実務でよく使う設計が、「1期目上半期は給与を抑えて、下半期に賞与でまとめて支給する」という方法です。 例えば役員報酬を月50万円、従業員2名を月30万円ずつで設定した場合、上半期6か月の給与等支払額は (50+30+30)×6=660万円となり、1,000万円以下に収まります。下半期に役員賞与(事前確定届出給与)を一括で支給すれば、年間総額を増やしつつも特定期間の判定をクリアできます。📢 令和8年度税制改正の動向
特定期間の判定における給与等支払額の取扱いについて、令和8年度税制改正大綱では大きな変更は予定されていません。ただし、2026年10月以降に2割特例が終了することにより、設立後の消費税戦略全体の見直しが必要です。本記事末尾で詳述します。
短期事業年度(1期目を7か月以下にする)の特例
1期目を7か月以下に設定すると、特定期間の判定対象から外れます(消費税法施行令第20条の5)。これを「短期事業年度」と呼びます。 例えば設立日を9月20日、初回決算月を3月にすれば、1期目は約6か月で終了します。この場合、2期目の特定期間判定は不要となり、資本金等の他要件をクリアしていれば2期目も自動的に免税となります。💡 実務のポイント
短期事業年度のテクニックは、設立月の選択で対処できます。決算月を3月にしたい場合、設立日を9月以降にすれば1期目を6か月強に収められます。設立日の選択ミスで特定期間判定の対象になってしまうと、給与調整のオペレーションが必要になり、後から取り戻せない論点なので、設立前の段階で必ず検討すべきです。
落とし穴③:特定新規設立法人に該当する場合
特定新規設立法人とは
平成26年4月1日以後に設立された法人で、次の両方を満たすものは「特定新規設立法人」となり、設立1〜2期目から課税事業者になります(消費税法第12条の3)。- 特定要件:他の者(個人または法人)が、その新規設立法人の発行済株式の50%超を直接または間接に保有している
- 基準期間相当期間の課税売上高:その他の者またはその者と特殊関係にある法人のうちいずれかが、基準期間相当期間において課税売上高5億円超または収益額50億円超である
典型的な該当パターン
実務で該当しやすいパターンは次のとおりです。| パターン | 該当例 |
|---|---|
| 大企業の100%子会社 | 親会社の課税売上高が5億円超なら該当 |
| 資産管理会社(個人オーナー設立) | 個人オーナーの不動産賃貸収入で課税売上高5億円超なら該当 |
| グループ会社の兄弟法人 | 同一オーナーが既に大企業を保有している場合に注意 |
| M&Aで子会社化した直後の新設会社 | 買収後の事業切り出し新会社などで該当 |
⚠️ 注意
弊所が支援したケースで、個人オーナーが既存の不動産賃貸事業(年商6億円)を持ったまま新規にEC法人を設立し、消費税免税を期待していた事例があります。特定新規設立法人に該当するため初年度から課税事業者となり、想定していた免税メリットがゼロになりました。グループ全体で課税売上高を把握しておく必要があります。
落とし穴④:インボイス登録をした場合
登録した瞬間に免税のメリットは消える
適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けると、基準期間の課税売上高に関係なく、登録日から課税事業者となります。設立直後にインボイス登録すれば、1期目から消費税の納税義務が発生します。 これは制度上やむを得ない設計です。インボイスを発行できる事業者は課税事業者でなければならないためです。免税のメリット vs インボイス登録のメリット
設立直後の経営者が悩む最大の論点が、「免税のまま行くか、インボイス登録して課税事業者になるか」の判断です。判断軸は次のとおりです。| 取引先の構成 | 推奨戦略 | 理由 |
|---|---|---|
| BtoB(取引先が課税事業者中心) | インボイス登録を検討 | 取引先が仕入税額控除できないと取引縮小リスク |
| BtoC(最終消費者が顧客) | 免税維持を優先 | 消費者はインボイス不要なので影響なし |
| BtoB(取引先が免税事業者中心) | 免税維持を優先 | 取引先もインボイス不要 |
| 混在型 | 主要取引先の意向で判断 | 売上構成比の上位取引先がカギ |
2割特例の終了と3割特例の新設(令和8年度改正)
インボイス登録の判断に大きく影響するのが、令和8年度税制改正です。📢 令和8年度税制改正(2026年4月成立)
インボイスの「2割特例(小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置)」は2026年9月30日を含む課税期間で終了します。後継として個人事業主限定の「3割特例」が新設されますが、法人は対象外です。設立後の法人が課税事業者になる場合、2026年10月以降は本則課税または簡易課税のいずれかで申告することになります。
| 期間 | 2割特例 | 免税事業者からの仕入控除 |
|---|---|---|
| 2023年10月〜2026年9月 | 適用可能(売上税額の2割) | 80%控除 |
| 2026年10月〜2029年9月 | 法人は終了(個人事業主のみ3割特例) | 50%控除 |
| 2029年10月以降 | 完全終了 | 控除不可 |
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会社設立のサポートを見る免税判定フローチャート【設立1期目用】
設立1期目に消費税が免税になるか、上から順にチェックします。| 手順 | 判定項目 | Yesの場合 |
|---|---|---|
| STEP1 | 資本金(または出資金)が1,000万円以上か? | 課税事業者 |
| STEP2 | 特定新規設立法人に該当するか?(親会社等の課税売上高5億円超など) | 課税事業者 |
| STEP3 | インボイス発行事業者の登録を受けているか? | 課税事業者 |
| STEP4 | 課税事業者選択届出書を提出しているか? | 課税事業者 |
| 最終 | すべてNoの場合 | 免税事業者 |
免税判定フローチャート【設立2期目用】
2期目は1期目の特定期間判定が加わるため、より複雑になります。| 手順 | 判定項目 | Yesの場合 |
|---|---|---|
| STEP1 | 2期目期首の資本金が1,000万円以上か? | 課税事業者 |
| STEP2 | 特定新規設立法人に該当するか? | 課税事業者 |
| STEP3 | 1期目が7か月超か?(7か月以下なら短期事業年度でSTEP4スキップ) | STEP4へ |
| STEP4 | 特定期間(1期目の最初の6か月)の課税売上高と給与等支払額がともに1,000万円超か? | 課税事業者 |
| STEP5 | インボイス登録または課税事業者選択届出書の提出があるか? | 課税事業者 |
| 最終 | すべてNoの場合 | 免税事業者 |
あえて課税事業者を選ぶべきケース
免税は得とは限りません。次の3パターンでは、あえて課税事業者を選択するメリットがあります。ケース1:設備投資が大きい初期投資型ビジネス
機械装置や店舗内装などへの大型投資を行う場合、課税仕入にかかる消費税が大きくなります。本則課税を選択すれば仕入税額控除を受けられ、納付税額がマイナスになって還付を受けられる可能性があります。🧮 シミュレーション
初年度に店舗内装で2,000万円投資した飲食店の場合。売上が500万円なら売上税額50万円、課税仕入の消費税が200万円超で、差引150万円の還付が見込めます。この場合、免税より課税事業者選択届出書を出して本則課税で還付を受ける方が有利です。
ケース2:輸出取引が中心のビジネス
輸出売上は消費税が免税(輸出免税)ですが、課税仕入にかかる消費税は控除対象になります。結果として常に還付申告となるため、課税事業者になった方が有利です。ケース3:取引先が大企業中心のBtoB
主要取引先が大企業の場合、インボイス未対応では取引縮小・取引停止のリスクがあります。免税のメリット(最大数百万円)よりも、取引継続の重要性が上回るケースが多いです。設立前にやるべきチェックリスト
設立前に以下を確認しておけば、免税の落とし穴は概ね回避できます。- 資本金は1,000万円未満(推奨:999万円以下)に設定する
- 自己資金が多い場合は資本準備金との分割設計を検討する
- 親会社・既存事業がある場合、特定新規設立法人の判定を行う
- 設立月を選んで1期目を7か月以下にできるか検討する
- 取引先構成からインボイス登録の要否を判断する
- 設備投資が大きい場合、課税事業者選択の損益を試算する
- 1期目上半期の給与等支払額をシミュレーションする
- 2026年10月以降の2割特例終了を見据えた中期戦略を立てる
よくある質問
📋 この記事のポイント
- 設立1〜2期目の消費税免税には、資本金・特定期間・特定新規設立法人・インボイス登録の4つの関門がある
- 資本金は999万円以下に設定する。多額の自己資金がある場合は資本準備金との分割で対応
- 特定期間(1期目上半期6か月)は給与等支払額を1,000万円以下に抑えるのが最も実務的
- 1期目を7か月以下にすると短期事業年度として特定期間判定を回避できる
- 親会社等の課税売上高が5億円超の場合は特定新規設立法人に該当し、初年度から課税
- インボイス登録はBtoB取引の構成次第。BtoCなら免税維持を優先
- 2割特例は2026年9月で法人は終了。2026年10月以降は本則課税または簡易課税の選択
- 設備投資が大きい場合は、あえて課税事業者を選択して還付を受ける戦略もある
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