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未成年者控除・障害者控除・相次相続控除|計算方法と適用要件
相続人に未成年者や障害をお持ちの方がいる場合、または10年以内に相続が続いた場合に使える3つの税額控除を、計算式・早見表・シミュレーションでわかりやすく解説します。この記事を読めば、自分が対象になるか・いくら控除できるかを判断できます。


相続人に未成年者や障害をお持ちの方がいる場合、または10年以内に相続が続いた場合に使える3つの税額控除を、計算式・早見表・シミュレーションでわかりやすく解説します。この記事を読めば、自分が対象になるか・いくら控除できるかを判断できます。
🏆 結論:3つの税額控除は「相続税額から直接差し引ける」強力な節税手段
未成年者控除は「10万円×(18歳−年齢)」、障害者控除は「10万円(特別障害者は20万円)×(85歳−年齢)」、相次相続控除は「前回の相続税額の一定割合」を相続税額から直接控除できます。いずれも税額控除のため、所得控除よりもダイレクトに税負担を減らせます。控除しきれない金額は扶養義務者の税額から差し引ける制度もあり、家族全体の税負担を最適化できます。
相続税の計算では、まず相続税の総額を算出し、各相続人の取得割合に応じて按分した後に「税額控除」を差し引きます。税額控除は課税価格から引く「所得控除」と異なり、計算された税額から直接差し引くため、節税効果がダイレクトに表れます。
この記事で解説する3つの税額控除は、いずれも一定の条件を満たす相続人が利用できる制度です。まずは全体像を比較表で把握しましょう。
| 比較項目 | 未成年者控除 | 障害者控除 | 相次相続控除 |
|---|---|---|---|
| 対象者 | 18歳未満の法定相続人 | 85歳未満の障害者である法定相続人 | 10年以内に相続が2回以上発生した場合の法定相続人 |
| 計算式 | 10万円×(18歳−年齢) | 10万円(特別障害者:20万円)×(85歳−年齢) | A×C/(B−A)×D/C×(10−E)/10 |
| 控除上限 | 最大180万円(0歳の場合) | 一般:最大850万円 / 特別:最大1,700万円 | 前回の相続税額が上限 |
| 扶養義務者への移転 | ○ 引き切れない分は移転可能 | ○ 引き切れない分は移転可能 | × 按分のため移転不可 |
| 申告要件 | 控除適用後0円なら申告不要 | 控除適用後0円なら申告不要 | 控除適用後0円なら申告不要(当初申告要件なし) |
| 根拠法令 | 相続税法第19条の3 | 相続税法第19条の4 | 相続税法第20条 |
| 申告書 | 第6表 | 第6表 | 第7表 |
💡 実務のポイント
3つの控除は全て「税額控除」です。たとえば相続税額が100万円のところ、未成年者控除で120万円の控除を受けられる場合、本人の税額はゼロとなり、引き切れない20万円は扶養義務者(親や兄弟姉妹)の税額から差し引けます。実務では、この「扶養義務者への控除移転」を見落とすケースが意外と多いため注意が必要です。
相続人の属性に応じて利用できる控除は異なります。以下の判定表で、自分がどの控除を使えるかを確認しましょう。複数の控除を併用できるケースもあります。
| 質問 | はい | いいえ |
|---|---|---|
| ①相続人は法定相続人ですか? | ②へ進む | 3つとも適用不可 |
| ②相続人は18歳未満ですか? | → 未成年者控除の対象 | ③へ進む |
| ③相続人は障害者(身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳等の交付あり)で85歳未満ですか? | → 障害者控除の対象 | ④へ進む |
| ④被相続人は10年以内に相続で財産を取得し、相続税を納付していますか? | → 相次相続控除の対象 | 相次相続控除は適用不可 |
⚠️ 注意
②と③は両方「はい」となる場合があります(たとえば15歳で障害のある相続人)。この場合、未成年者控除と障害者控除の両方を併用できます。ただし、相次相続控除は被相続人側の要件であるため、①〜③とは別に判定が必要です。
未成年者控除とは、相続や遺贈で財産を取得した相続人が18歳未満の場合に、相続税額から一定額を差し引ける制度です。相続税法第19条の3に規定されています。適用を受けるには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
| 要件 | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| ① | 法定相続人であること | 相続放棄した人・相続権を失った人は対象外。遺贈のみで取得した非相続人も対象外 |
| ② | 財産取得時に18歳未満であること | 令和4年3月31日以前に開始した相続では「20歳未満」が基準 |
| ③ | 財産取得時に日本国内に住所があること | 住所がなくても日本国籍があり一定の条件を満たせば適用可 |
控除額の計算式はシンプルです。年齢は満年齢で計算し、1歳未満の端数は切り捨てます。たとえば15歳9か月の場合は15歳として計算します。
📐 計算式
未成年者控除額 = 10万円 ×(18歳 − 相続開始時の年齢)
| 相続開始時の年齢 | 控除額 | 相続開始時の年齢 | 控除額 |
|---|---|---|---|
| 0歳 | 180万円 | 10歳 | 80万円 |
| 3歳 | 150万円 | 13歳 | 50万円 |
| 5歳 | 130万円 | 15歳 | 30万円 |
| 8歳 | 100万円 | 17歳 | 10万円 |
未成年者が相続人になった場合、遺産分割協議に直接参加することはできません。親権者が代理しますが、親権者自身も相続人の場合は利益相反(りえきそうはん)が生じるため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要があります。
実務では、特別代理人の選任手続きに1〜2か月かかることも珍しくありません。遺産分割協議を急ぐ必要がある場合は、早めに家庭裁判所へ申立てを行いましょう。なお、特別代理人の候補者は親族でも弁護士でも構いませんが、利害関係のない第三者が望ましいとされています。
💡 実務のポイント
相続人に未成年者がいる場合、「未成年者だから財産を相続させなくていい」と考える方がいらっしゃいます。しかし、特別代理人を選任せずに親権者だけで遺産分割協議を行うと、その協議は無効になる可能性があります。後日、未成年者が成年に達してから「やり直し」を求めるトラブルも実務では経験しています。
障害者控除とは、障害をお持ちの方が相続人として財産を取得した場合に、85歳に達するまでの年数に応じた金額を相続税額から差し引ける制度です。相続税法第19条の4に規定されています。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① | 法定相続人であること |
| ② | 相続または遺贈により財産を取得したこと |
| ③ | 財産取得時に障害者であること(一般障害者または特別障害者) |
| ④ | 財産取得時に日本国内に住所があること |
なお、相続開始時点で手帳の交付を受けていなくても、申告書の提出時までに交付を受けている場合や交付を申請中の場合は、障害者控除の適用が認められます(相続税法基本通達19の4-3)。
障害者控除の控除額は「一般障害者」と「特別障害者」で異なります。主な区分は以下のとおりです。
| 区分 | 一般障害者 | 特別障害者 |
|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 3級〜6級 | 1級・2級 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 2級・3級 | 1級 |
| 知的障害 | 軽度〜中度 | 重度 |
| 控除額(1年あたり) | 10万円 | 20万円 |
📐 計算式
一般障害者:10万円 ×(85歳 − 相続開始時の年齢)
特別障害者:20万円 ×(85歳 − 相続開始時の年齢)
| 相続開始時の年齢 | 一般障害者 | 特別障害者 |
|---|---|---|
| 30歳 | 550万円 | 1,100万円 |
| 40歳 | 450万円 | 900万円 |
| 50歳 | 350万円 | 700万円 |
| 60歳 | 250万円 | 500万円 |
| 70歳 | 150万円 | 300万円 |
| 80歳 | 50万円 | 100万円 |
実務では、特別障害者の控除額は非常に大きく、50歳の特別障害者であれば700万円もの税額控除が受けられます。相続税額そのものがゼロになるケースも珍しくありません。
65歳以上の方で障害者手帳の交付を受けていなくても、市区町村長等から「障害者に準ずる者」として認定を受ければ、障害者控除の対象になります。具体的には、要介護認定を受けている方が対象となる場合があります。
現場でよくあるのが、高齢の親御さんが要介護3以上の認定を受けているにもかかわらず、「障害者手帳を持っていないから障害者控除は使えない」と思い込んでいるケースです。市区町村に「障害者控除対象者認定書」の交付を申請すれば適用できる可能性があるため、必ず確認しましょう。
未成年者控除と障害者控除には、本人の相続税額から控除しきれない金額を扶養義務者(配偶者・直系血族・兄弟姉妹など)の相続税額から差し引ける仕組みがあります。この「控除の移転」は相続税法上の大きな特典です。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 次男の計算 | 長男への移転 |
|---|---|---|
| 次男の相続税額 | 45万円 | — |
| 未成年者控除(10歳) | ▲80万円 | — |
| 障害者控除(10歳・特別障害者) | ▲1,500万円 | — |
| 控除合計 | ▲1,580万円 | — |
| 次男の税額控除後 | 0円 | — |
| 引き切れない控除額 | — | 1,535万円 |
| 長男の相続税額 | — | 45万円 |
| 長男の最終税額 | — | 0円 |
この例では、次男の控除額(1,580万円)が本人の税額(45万円)を大幅に上回るため、残り1,535万円が扶養義務者である長男に移転し、長男の相続税額45万円もゼロになります。結果として家族全体で90万円の節税が実現します。
💡 実務のポイント
扶養義務者への控除移転について、扶養義務者が複数いる場合(母・長男など)、移転先の配分は相続人間の協議で自由に決めることができます。実務では、最も税額の大きい相続人に優先的に移転させるのが一般的です。
相次相続控除とは、被相続人が過去10年以内に相続で財産を取得し相続税を納付していた場合に、今回の相続税額から一定額を控除できる制度です。同じ財産に対する二重課税の負担を軽減する趣旨で設けられています(相続税法第20条)。
| 要件 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| ① | 被相続人の法定相続人であること | 相続放棄した人は対象外。遺贈のみで取得した人も対象外 |
| ② | 相続開始前10年以内に被相続人が相続で財産を取得していること | 贈与で取得した財産は含まれない |
| ③ | その相続で被相続人に相続税が課税されていたこと | 配偶者控除で相続税が0円だった場合は適用不可 |
⚠️ 注意:配偶者の税額軽減との関係
一次相続(たとえば父の死亡)で配偶者の税額軽減を適用し、母の相続税が0円だった場合、母が亡くなる二次相続では相次相続控除を適用できません。「前回の相続で相続税を納付していること」が要件だからです。配偶者の税額軽減を「使いすぎる」と二次相続で不利になる典型的なパターンです。詳しくは「配偶者の税額軽減|1.6億円まで非課税の仕組みと二次相続リスク」をご覧ください。
相次相続控除の計算式は複雑に見えますが、各記号の意味を押さえれば理解できます。
📐 計算式
各人の相次相続控除額 = A × C ÷(B − A)× D ÷ C ×(10 − E)÷ 10
※ C÷(B−A)が1を超える場合は1とする
| 記号 | 意味 | 考え方 |
|---|---|---|
| A | 被相続人が前回の相続で納めた相続税額 | 控除の「原資」。この金額が大きいほど控除額が大きい |
| B | 被相続人が前回の相続で取得した純資産価額 | 前回取得した財産の規模 |
| C | 今回の相続で全員が取得した純資産価額の合計 | 今回の相続の規模 |
| D | その相続人が取得した純資産価額 | 各相続人への按分 |
| E | 一次相続から二次相続までの経過年数(1年未満切捨て) | 期間が短いほど控除額が大きい |
同じ条件でも経過年数が異なると控除額は大きく変わります。以下のシミュレーションで確認しましょう。
📐 シミュレーション前提条件
| 経過年数(E) | (10−E)/10 | 控除額 | イメージ |
|---|---|---|---|
| 1年 | 90% | 約368万円 | ほぼ全額に近い控除 |
| 3年 | 70% | 約286万円 | まだ大きな控除 |
| 5年 | 50% | 約204万円 | 半分程度の控除 |
| 8年 | 20% | 約82万円 | 控除額はかなり縮小 |
| 9年 | 10% | 約41万円 | わずかな控除 |
※概算値です。実際の計算では端数処理により若干異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
経過年数が1年の場合は約368万円もの控除が受けられますが、8年経過すると約82万円まで縮小します。前回の相続から日が浅いほど有利な制度設計です。
📊 公認会計士の視点
相次相続控除は未成年者控除・障害者控除と異なり、控除額を扶養義務者に移転することはできません。各相続人が取得した財産の価額に応じて自動的に按分される仕組みです。そのため、遺産分割の際に「誰がどの財産を取得するか」が控除額に影響します。
未成年者が過去にも未成年者控除を受けたことがある場合(たとえば祖父の相続で適用し、その後に父の相続が発生した場合)、2回目の控除額は制限されます。
具体的には、「今回の控除可能額」と「前回の控除可能額のうち今回の残額」のいずれか少ない方が控除額になります。
🧮 具体例:2回目の未成年者控除
1回目の相続(祖父死亡):10歳で適用 → 控除可能額80万円(うち30万円を使用)
2回目の相続(父死亡):14歳 → 通常の控除可能額は40万円
ただし、前回の控除可能額80万円から14歳までの経過4年分を差し引いた額(80万円−40万円=40万円)と比較し、いずれか少ない方が適用されます。結果:40万円が控除額。
障害者控除も同様に、過去に適用を受けた場合は2回目の控除額が制限されます。計算式は以下のとおりです。
2回目の控除額 = 以下のいずれか少ない方
実務では、一次相続で障害者控除を「使い切らなかった」場合と「全額使った」場合で、二次相続の控除額に差が出ます。一次相続で障害者への遺産配分を少なくして控除を余らせた場合、二次相続でその分が上乗せされる可能性がある点も考慮しましょう。
相続財産に海外の不動産や金融資産が含まれる場合、その国でも相続税に相当する税金が課される場合があります。この場合、日本の相続税と外国の税金で二重課税が生じるため、外国で納付した税額を日本の相続税から控除できます。これが外国税額控除です。
控除額は次の計算式で求めますが、実際の外国税額が控除限度額を超える場合は限度額までとなります。
📐 外国税額控除の限度額
控除限度額 = 日本の相続税額 ×(外国にある財産の価額 ÷ 相続税の課税価格)
海外財産を相続するケースでは、その国の税法の知識も必要になります。日本と租税条約を締結している国では条約に基づく調整が行われる場合もあります。海外財産がある場合は、国際税務に詳しい税理士への相談をお勧めします。
なお、相続税の計算の基本的なしくみについては「相続税の計算方法|税率・基礎控除・シミュレーション付きで解説」で詳しく解説しています。
📐 ケースの前提条件
長女に適用できる控除
| 控除の種類 | 控除額 | 計算根拠 |
|---|---|---|
| 未成年者控除 | 20万円 | 10万円×(18歳−16歳) |
| 障害者控除(一般) | 690万円 | 10万円×(85歳−16歳) |
| 控除合計 | 710万円 | 税額85万円を大幅に超過 |
| 長女の最終税額 | 0円 | 引き切れない625万円は扶養義務者へ |
長男に適用できる控除
| 控除の種類 | 控除額 | 計算根拠 |
|---|---|---|
| 長女からの控除移転 | 625万円 | 長女の引き切れない控除額 |
| 相次相続控除 | 約163万円 | 800万×1×3,750万/1億5,000万×5/10 |
| 長男の最終税額 | 0円 | 控除移転だけで税額超過のため0円 |
この結果、家族全体の相続税は0円となります。遺産総額1億5,000万円でも、3つの控除を組み合わせることで大幅な節税が可能です。
二次相続への影響については「二次相続対策|配偶者控除の使いすぎが危険な理由とシミュレーション」もあわせてご覧ください。
未成年者控除と障害者控除は、相続税申告書の第6表「未成年者控除額・障害者控除額の計算書」に記載します。手続きの流れは以下の4ステップです。
| STEP | 内容 | 必要書類 |
|---|---|---|
| 1 | 控除額を計算 | 戸籍謄本(年齢確認) |
| 2 | 扶養義務者への移転を決定 | 扶養義務者との協議書(任意) |
| 3 | 第6表に記入 | 障害者手帳のコピー(障害者控除の場合) |
| 4 | 申告書と共に提出 | 申告期限:相続開始日の翌日から10か月以内 |
相次相続控除は、第7表「相次相続控除額の計算書」に記載します。当初申告要件がないため、申告期限から5年以内であれば更正の請求で適用を受けることも可能です。
必要書類として、前回の相続(一次相続)の申告書の控え(第1表、第11表、第11の2表、第14表、第15表)を添付することが望ましいとされています。法令上の義務ではありませんが、計算根拠の確認のために提出を求められるのが一般的です。
相続税の基本的なしくみについては「相続税のしくみ|基礎控除・税率・計算の流れを初心者向けに解説」で詳しく解説しています。
📋 この記事のポイント
相続税の税額控除は、適用漏れがあると大きな損失につながります。特に障害者控除は控除額が非常に大きいため、該当する可能性がある場合は必ず確認しましょう。贈与税のしくみについては「贈与税のしくみ|基礎控除110万円と計算方法を初心者向けに解説」もあわせてご覧ください。
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