【社労士×税理士が解説】教育訓練給付金の種類と申請方法|一般・特定一般・専門実践の違いと最大80%給付

監
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
教育訓練給付金の種類と申請方法|一般・特定一般・専門実践の違いと最大80%給付
資格取得・キャリアアップのために学びたい社会人、従業員のリスキリングを支援したい経営者に向けて、教育訓練給付金3種類の違い・給付率・申請手順・2024年10月改正の拡充内容を完全ガイド。この記事を読めば、自分に合った制度を選んで受講料の最大80%を取り戻せます。
🏆 結論:3種類の給付金を使い分け、専門実践なら受講料の最大80%(上限年64万円)が戻る
教育訓練給付金は「一般(給付率20%・上限10万円)」「特定一般(40%・上限20万円)」「専門実践(最大80%・年上限64万円)」の3種類があります。2024年10月改正で専門実践は資格取得+賃金上昇で最大80%、特定一般は資格取得+就職で最大50%に拡充されました。受給には雇用保険被保険者期間(初回1年以上、2回目以降3年以上)が必要。2024年2月から電子申請が誰でも可能になり、手続きが簡便化しました。
教育訓練給付金とは?制度の全体像
教育訓練給付金は、雇用保険法第60条の2に基づく給付で、働く人が主体的にキャリアアップやスキル習得に取り組む費用を国が支援する制度です。厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講・修了した場合、受講料の一部がハローワークから支給されます。
参考:厚生労働省「教育訓練給付金」|e-Gov法令検索「雇用保険法」
給付の種類は「一般教育訓練給付金」「特定一般教育訓練給付金」「専門実践教育訓練給付金」の3種類あり、講座のレベル・期間・社会的ニーズの高さによって区分されています。国家資格取得など長期的なキャリア形成に資する訓練ほど給付率が高い設計です。
🔷 社労士の視点
実務でご相談が多いのは「子育てで退職した方が復職準備で保育士資格を取りたい」というケースです。弊所が支援した30代女性(前職は営業職)の事例では、専門実践教育訓練指定の保育士養成講座(2年間・受講料約150万円)を受講。訓練中の給付50%に加え、資格取得+就職で70%、さらに賃金上昇で80%、最終的に約120万円の給付を受けました。費用面の不安が再就職への障壁になっているケースで、給付金は大きなサポートになります。
3種類の教育訓練給付金【一覧表で比較】
まず、3種類の制度の違いを俯瞰できる比較表を示します。
| 項目 |
一般教育訓練 |
特定一般教育訓練 |
専門実践教育訓練 |
| 対象となる訓練 | 雇用の安定や就職促進に資する一般的な訓練 | 速やかな再就職・早期のキャリア形成に資する訓練 | 中長期的キャリア形成に資する専門的・実践的な訓練 |
| 講座例 | 簿記、TOEIC、英検、情報処理技術者等 | 介護職員初任者研修、宅建、社労士、ITパスポート等 | 看護師、保育士、美容師、MBA、Web高度訓練等 |
| 基本給付率 | 20% | 40% | 50% |
| 追加給付 | なし | 資格取得+就職で+10% | 資格取得+就職で+20%、賃金上昇で+10% |
| 最大給付率 | 20% | 50% | 80% |
| 支給上限 | 10万円 | 25万円 | 年64万円×最大3年 |
| 支給下限 | 4,000円超 | 4,000円超 | 4,000円超 |
| 受給要件(初回) | 被保険者期間1年以上 | 被保険者期間1年以上 | 被保険者期間2年以上 |
| 受給要件(2回目以降) | 被保険者期間3年以上 | 被保険者期間3年以上 | 被保険者期間3年以上 |
| 事前キャリアコンサルティング | 不要 | 必要 | 必要 |
| 受講前の手続き | 不要 | 受講開始2週間前まで | 受講開始2週間前まで |
一般教育訓練給付金【最も利用しやすい制度】
対象者
- 雇用保険の一般被保険者(在職中)または被保険者だった方(離職後1年以内)
- 初回利用:受講開始日に雇用保険の被保険者期間が1年以上あること
- 2回目以降:前回受給から3年以上経過、かつ被保険者期間が3年以上あること
給付内容
📐 一般教育訓練給付金の計算式
支給額 = 受講料 × 20%(上限 10万円)
支給額が4,000円を超える場合のみ支給
たとえば受講料30万円の簿記講座を受講した場合、支給額は6万円です。受講料80万円以上の場合は上限10万円がキャップとして効きます。
対象講座の例
- 簿記検定(日商2級、1級対策講座)
- TOEIC・英検対策講座
- 基本情報技術者、応用情報技術者講座
- 行政書士、FP技能士2級対策講座
- MOS(Microsoft Office Specialist)
- 医療事務講座、調剤事務講座
対象講座は厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システムで確認できます。講座によっては短期(3か月未満)のオンライン講座も指定されており、利用ハードルは低めです。
特定一般教育訓練給付金【速やかな再就職に直結する中級制度】
対象者
一般教育訓練と受給要件は同じ(初回1年以上、2回目以降3年以上)ですが、受講前のキャリアコンサルティングが必須です。
給付内容
📐 特定一般教育訓練給付金の計算式
基本:受講料 × 40%(上限 20万円)
追加:資格取得+修了後1年以内に就職で+10%(合計50%、上限25万円)
※2024年10月改正で追加給付が新設
対象講座の例
- 介護職員初任者研修、実務者研修
- 宅地建物取引士対策講座
- 社会保険労務士対策講座
- 大型自動車第一種免許、大型特殊免許
- 税理士試験科目合格(日商簿記2級以上の一部科目)
- ITパスポート、情報セキュリティマネジメント
💡 実務のポイント:キャリアコンサルティングの予約は早めに
特定一般・専門実践ではキャリアコンサルティングが必須で、受講開始2週間前までにジョブ・カードを作成する必要があります。ハローワークのキャリア・コンサルタントは予約制で、繁忙期には1か月先まで埋まることがあります。弊所が支援した従業員15名のIT企業から離職した方の事例では、受講希望日の3週間前に予約を取りに行ったところ、希望日に間に合わず受講開始日を1か月後ろ倒しにしたことがあります。受講スケジュールが決まり次第、即予約が原則です。
専門実践教育訓練給付金【最大80%給付の最強制度】
対象者
- 初回利用:受講開始日に雇用保険の被保険者期間が2年以上あること
- 2回目以降:前回受給から3年以上経過、かつ被保険者期間が3年以上あること
- 離職者は離職の日の翌日から1年以内(妊娠・出産・育児・疾病等による延長は最大20年)
- 事前にキャリアコンサルティングを受けジョブ・カードを作成(受講開始2週間前まで)
給付内容(2024年10月改正後)
📐 専門実践教育訓練給付金の計算式
ステップ1:基本給付(訓練中に6か月ごと支給)
受講料 × 50%(年間上限40万円)
ステップ2:資格取得+就職で追加給付
受講料 × +20%(合計70%、年間上限56万円)
※修了後1年以内に資格取得かつ一般被保険者として雇用
ステップ3:賃金上昇で追加給付(2024年10月新設)
受講料 × +10%(合計80%、年間上限64万円)
※訓練前より賃金が5%以上上昇した場合
対象講座の例
- 看護師、保健師、助産師、看護学校
- 保育士、幼稚園教諭(専門学校・大学)
- 介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士
- 美容師、理容師(専門学校)
- 税理士、公認会計士、弁理士、司法書士
- MBA(経営学修士)、MOT(技術経営修士)
- AI・データサイエンス高度人材養成プログラム
- クラウド・セキュリティ・Webデザイン高度訓練
🧮 専門実践の給付シミュレーション(看護学校・3年制の場合)
受講料総額:300万円(3年分、年100万円)
ステップ1:基本給付
100万円 × 50% × 3年 = 150万円(年上限40万円以内に収まる)
ステップ2:資格取得+就職
300万円 × 20% = 60万円(年間上限56万円×3で収まる)
ステップ3:賃金5%以上上昇
300万円 × 10% = 30万円
合計支給額:240万円(受講料300万円の80%)
教育訓練支援給付金【専実と併給の生活保障】
専門実践教育訓練を初めて受講する離職者で、45歳未満かつ一定要件を満たす方には、訓練中の生活を支援する「教育訓練支援給付金」が別途支給されます。失業中の基本手当受給が終了した後も、訓練期間中は給付が継続します。
📐 教育訓練支援給付金の計算式
基本手当日額 × 60% × 支給日数
※2025年4月改正以降は60%に引き下げ(従来80%)
※2027年3月31日まで暫定措置として延長
たとえば基本手当日額6,000円の方が2年間の専門実践訓練を受講する場合、2年目以降は基本手当を消化した後も1日3,600円(月約11万円)の支援給付金が訓練修了まで支給されます。
申請手続き【5ステップ】
ステップ1:対象講座を検索する
「厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム」で受講したい講座が給付金対象かを確認します。同システムには全国の対象講座が収録されており、キーワード・資格名・地域で絞り込み検索できます。
ステップ2:受給資格があるか確認する
ハローワークで「教育訓練給付金支給要件照会票」を提出すると、被保険者期間・過去の給付金受給歴をもとに受給資格の有無を確認してもらえます。受講申込み前の確認を強く推奨します。
ステップ3:受講前手続き(特定一般・専門実践のみ)
特定一般・専門実践の場合は、受講開始日の2週間前までに以下を完了します。
- ハローワークに訓練対応キャリア・コンサルティングを予約
- キャリア・コンサルタントと面談し、ジョブ・カードを作成
- 「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票」をハローワークに提出
- 受給資格決定通知を受領
ステップ4:講座を受講・修了
指定の出席率・カリキュラムを満たして修了します。出席率が一定以下(一般的に80%未満)の場合は給付金を受けられないため、注意が必要です。
ステップ5:支給申請
修了後、以下の書類をハローワークに提出します。提出期限は訓練修了日の翌日から1か月以内です(専門実践は6か月ごとに複数回)。
- 教育訓練給付金支給申請書
- 教育訓練修了証明書(教育訓練施設発行)
- 領収書(受講料・入学料)
- 本人・住所確認書類(マイナンバーカード等)
- (専門実践のみ)受給資格者証
- 振込先口座のわかるもの
💡 2024年2月から電子申請が可能に
2024年2月1日から、教育訓練給付金(一般・特定一般・専門実践)の支給申請と受給資格確認が、e-Gov電子申請システムから誰でも可能になりました。従来は「疾病等やむを得ない理由」に限定されていた電子申請が要件撤廃され、ハローワーク窓口に出向かなくても手続きが完結するようになっています。電子署名も不要です。
AYUSAWA PARTNERS
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自己都合退職の給付制限解除と組み合わせる戦略
2025年4月改正により、自己都合退職者が離職期間中または離職日前1年以内に教育訓練を受講した場合、基本手当の給付制限(1か月)が撤廃されます。自主的にキャリアアップを図る人への追い風となる制度変更です。
🧮 組み合わせシミュレーション(自己都合退職後に受講する場合)
通常の自己都合退職:待期7日+給付制限1か月=約1か月半後に基本手当開始
教育訓練受講で解除:待期7日のみ→離職後すぐに基本手当開始
基本手当日額5,000円・所定給付日数120日の場合:
通常:約60万円(1か月半後から受給開始)
解除:約60万円(離職直後から受給開始、さらに教育訓練給付も受給)
キャッシュフロー上、約15〜20万円の前倒し効果
税金・確定申告での取扱い【税理士の視点】
教育訓練給付金は非課税
教育訓練給付金は非課税所得(所得税法第9条第1項第6号イ)として規定されており、所得税・住民税はかかりません。確定申告での申告も不要です。
会社負担の受講料と給付金の関係
📊 税理士の視点:会社負担の場合の取扱い
会社が従業員の教育訓練費を負担した場合、その費用は会社の「研修費」または「福利厚生費」として損金算入できます。ただし、会社が負担した受講料について従業員が教育訓練給付金を受け取ることはできません(「本人が支出した」とは言えないため)。弊所が顧問を務める従業員20名のコンサルティング会社F社では、従業員が自腹で講座を受講し、教育訓練給付金を受給した後、残額を会社が補助金として支給する運用を採用しています。これにより従業員は国の給付金+会社補助の二重サポートを受けられる仕組みです。
特定支出控除との関係
サラリーマンの特定支出控除(所得税法第57条の2)で「職務に直接必要な資格取得費」や「研修費」を計上することもできますが、教育訓練給付金で補填された部分は特定支出から除外する必要があります。二重控除にならないように注意が必要です。
よくある失敗事例と対策
失敗事例1:指定講座ではなかった
受講料を支払った後、「実は厚生労働大臣指定講座ではなかった」と判明するケース。特に民間スクールの講座では、同じ資格を目指すコースでも指定を受けていないものがあります。申込前に必ず「教育訓練講座検索システム」で指定番号を確認します。
失敗事例2:受給要件期間が不足していた
被保険者期間が要件に満たず受給資格がなかったケース。特に転職直後の方は要件不足になりやすいです。事前にハローワークで支給要件照会を行うことで未然に防げます。
失敗事例3:キャリアコンサルティングを忘れた
特定一般・専門実践で、受講開始2週間前までのキャリアコンサルティングを忘れ、給付対象外になるケース。受講開始日が決まった時点で即予約するのが鉄則です。
失敗事例4:申請期限を過ぎた
修了後1か月の申請期限を過ぎてしまうケース。専門実践は6か月ごとに複数回申請が必要で、1回でも期限を逃すとその期間分が受けられません。カレンダーに支給申請期限を登録する、自動通知を設定するなどの対策が有効です。
よくある質問(FAQ)
在職中でも教育訓練給付金は受けられますか?
受けられます。教育訓練給付金は雇用保険の被保険者(在職中)または被保険者だった方(離職後1年以内)が対象です。むしろ多くの受給者は在職中のキャリアアップのために利用しています。
過去に給付金を受けたことがあります。もう一度受けられますか?
前回の受給から3年以上経過し、その間に雇用保険被保険者期間が3年以上あれば再受給可能です。2回目以降は一般・特定一般・専門実践いずれも被保険者期間3年以上が要件となります。
通信講座やオンライン講座も対象になりますか?
対象になる講座があります。厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システムで「通信制」「オンライン」でフィルタリングして検索できます。ただし、指定講座でないオンライン講座は対象外のため、申込前に必ず確認が必要です。
教育訓練給付金を受けながら失業給付(基本手当)も受けられますか?
両方とも受給できます。さらに2025年4月改正で、自己都合退職者が教育訓練を受講すると基本手当の給付制限(1か月)も解除される仕組みが新設され、両制度の併用メリットが拡大しています。
出産・育児で退職した場合も受けられますか?
離職後1年以内が原則ですが、妊娠・出産・育児・疾病・負傷等で受講できない場合は、最大20年まで受給期間を延長できます。延長申請は離職日から1か月以内にハローワークで手続きします。
受講料を分割払いにしています。給付額はどう計算されますか?
実際に支払った受講料の合計額をもとに計算されます。専門実践は6か月ごとに支給申請を行うため、各期間に支払った金額に対して都度給付が行われます。
途中で講座を辞退した場合はどうなりますか?
修了しない限り給付金は支給されません。修了要件(出席率80%以上など)を満たさなかった場合も不支給となります。ただし、やむを得ない理由(疾病等)で中途退学した場合、一部例外的に支給される場合があります。
会社が費用を負担している研修でも給付金を受けられますか?
会社が全額負担した研修は対象外です。本人が実費負担した金額に対してのみ給付対象となります。会社負担部分と本人負担部分を分けて領収書を発行してもらえば、本人負担分は申請可能です。
特定一般と専門実践、どちらを選ぶべきですか?
同じ資格が両制度に指定されていることは稀で、通常はどちらか一方です。講座検索時に該当する制度を確認します。選択肢がある場合は、長期・高額な訓練なら専門実践(最大80%)、短期で速やかな再就職を狙うなら特定一般(最大50%)が目安です。
申請から振込までどれくらいかかりますか?
支給申請から約1か月で指定口座に振込されます。ハローワークで書類審査・教育訓練施設への確認等が行われるため、若干時間がかかります。電子申請でも処理期間は同程度です。
まとめ
📋 この記事のポイント
- 教育訓練給付金は「一般20%」「特定一般最大50%」「専門実践最大80%」の3種類
- 2024年10月改正で専門実践は最大70%から最大80%へ、特定一般も最大50%に拡充
- 受給要件は初回1〜2年、2回目以降3年以上の雇用保険被保険者期間
- 特定一般・専門実践は受講開始2週間前までのキャリアコンサルティングが必須
- 2024年2月から電子申請が要件撤廃され誰でも利用可能に
- 2025年4月改正で自己都合退職者が教育訓練受講で基本手当の給付制限解除
- 給付金は非課税所得、確定申告の申告不要
教育訓練給付金は、リスキリング時代にもっとも活用価値の高い制度のひとつです。特に2024年10月の拡充、2025年4月の失業給付との連携強化により、学び直しを後押しする仕組みがかつてないほど充実しています。自分が対象になる制度を正確に把握し、適切な手続きを踏むことで、受講料の最大80%を取り戻すことができます。
鮎澤パートナーズでは、社会保険労務士が個人・企業双方の教育訓練給付金活用をサポートしています。従業員のスキルアップ支援と人材開発支援助成金を組み合わせた企業向けの人材育成戦略も対応可能です。税理士が確定申告での特定支出控除との整理まで行うため、税務と労務を一体で最適化できます。