【税理士が解説】個人事業税とは?計算方法・税率・事業主控除290万円を完全解説

【税理士が解説】個人事業税とは?計算方法・税率・事業主控除290万円を完全解説
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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個人事業税とは?計算方法・税率・事業主控除290万円を完全解説

「個人事業税って何?所得税と何が違うの?」「事業所得がいくらを超えたら払うの?」という個人事業主に向けて、個人事業税の計算方法・70業種の税率一覧・事業主控除290万円のしくみを事業所得別シミュレーション付きで解説します。この記事を読めば、自分の個人事業税額を正確に把握し、節税の方法がわかります。

🏆 結論:事業所得290万円以下なら個人事業税はゼロ

個人事業税は、法定業種(70業種)を営む個人事業主に課される都道府県税です。事業主控除として一律290万円が差し引かれるため、青色申告特別控除前の事業所得が290万円以下なら課税されません。税率は業種により3%・4%・5%の3段階で、大半の業種は5%です。所得税と異なり、個人事業税は全額を経費(租税公課)に計上できます。

個人事業税とは?所得税・住民税との違い

個人事業税とは、事業を営む個人に対して都道府県が課する地方税です。道路や上下水道、消防など、事業活動に必要な行政サービスの経費を分担する目的で設けられています。地方税法第72条の2に規定されており、法定業種に該当する事業を営む個人事業主が対象です。

個人事業税と所得税・住民税の比較

比較項目 個人事業税 所得税 住民税
課税主体都道府県市区町村+都道府県
税率3%〜5%(業種別)5%〜45%(累進課税)一律10%
青色申告特別控除適用なし最大65万円適用最大65万円適用
事業主控除290万円なしなし
経費計上可能(租税公課)不可(事業主貸)不可(事業主貸)
納付時期8月・11月の年2回3月15日(確定申告)6月〜翌1月の年4回
申告確定申告していれば不要確定申告が必要確定申告していれば不要

💡 実務のポイント

個人事業税の最大の特徴は「青色申告特別控除が適用されない」点です。確定申告書の事業所得が435万円で、65万円の青色申告特別控除を受けている場合、所得税の計算では435万円が課税ベースですが、個人事業税の計算では65万円を足し戻した500万円がスタート地点になります。この違いを知らないと「計算が合わない」と混乱する経営者が多いです。

個人事業税の計算方法【5ステップ】

個人事業税の計算は、都道府県税事務所が確定申告の情報をもとに行うため、自分で申告する必要はありません。ただし、計算方法を理解しておくことで、事前に納税額を把握し、資金繰りの計画を立てやすくなります。

ステップ 内容 具体例(事業所得500万円・青色65万円控除)
確定申告書の事業所得を確認500万円(青色申告特別控除後の金額)
青色申告特別控除額を加算500万円 + 65万円 = 565万円
各種控除(繰越控除等)を差し引く繰越控除なし → 565万円
事業主控除290万円を差し引く565万円 − 290万円 = 275万円
業種ごとの税率を掛ける275万円 × 5% = 137,500円

🧮 計算式まとめ

個人事業税 =(事業所得 + 青色申告特別控除額 − 繰越控除 − 事業主控除290万円)× 税率

法定業種70種と税率一覧

個人事業税の対象となるのは、地方税法で定められた70の法定業種です。第1種事業(37業種・5%)、第2種事業(3業種・4%)、第3種事業(30業種・3%または5%)の3区分に分かれています。

第1種事業(37業種・税率5%)

物品販売業、運送取扱業、料理店業、遊覧所業、保険業、船舶定係場業、飲食店業、商品取引業、金銭貸付業、倉庫業、周旋業、不動産売買業、物品貸付業、駐車場業、代理業、広告業、不動産貸付業、請負業、仲立業、興信所業、製造業、印刷業、問屋業、案内業、電気供給業、出版業、両替業、冠婚葬祭業、土石採取業、写真業、公衆浴場業(むし風呂等)、電気通信事業、席貸業、演劇興行業、運送業、旅館業、遊技場業

第2種事業(3業種・税率4%)

畜産業、水産業、薪炭製造業

第3種事業(30業種・税率3%または5%)

税率 業種
5%医業、歯科医業、薬剤師業、獣医業、弁護士業、司法書士業、行政書士業、公証人業、弁理士業、税理士業、公認会計士業、計理士業、社会保険労務士業、コンサルタント業、設計監督者業、不動産鑑定業、デザイン業、諸芸師匠業、理容業、美容業、クリーニング業、公衆浴場業(銭湯)、歯科衛生士業、歯科技工士業、測量士業、土地家屋調査士業、海事代理士業、印刷製版業
3%あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業、装蹄師業

⚠️ 注意:法定業種に該当しない=非課税とは限らない

プログラマー・ライター・翻訳家・漫画家などは法定業種に含まれていませんが、業務の実態によっては「請負業」「コンサルタント業」「デザイン業」などに該当すると判断されるケースがあります。都道府県税事務所の判断は自治体によって異なるため、「自分は法定業種に該当しない」と自己判断せず、事前に確認することをお勧めします。

法定業種に該当するかの判定表|グレーゾーン業種

ITフリーランスやクリエイティブ職など、法定業種への該当が曖昧な業種の判定基準を整理します。実務では都道府県税事務所の判断が分かれることがあるため、あくまで一般的な目安としてご活用ください。

業種 法定業種への該当 判定のポイント
システムエンジニア(受託開発)△ 請負業に該当する可能性成果物の納品があれば請負業(5%)と判断されやすい
フリーランスプログラマー(SES)△ 請負業の可能性準委任契約でも実態が請負に近ければ該当する場合あり
ライター・翻訳家✗ 非課税が多い文筆業は法定業種に含まれない。ただし「請負」要素が強いと課税されることも
漫画家・イラストレーター✗ 非課税が多い芸術的創作活動は非課税。ただし「デザイン業」に近い業務は課税の可能性
Webデザイナー○ デザイン業(5%)法定業種の「デザイン業」に該当
ITコンサルタント○ コンサルタント業(5%)継続的な助言・指導が主業務なら該当
YouTuber・インフルエンサー△ 広告業の可能性広告収入が主であれば広告業(5%)と判断される場合あり

個人事業税が非課税となる業種の詳細については、「個人事業税が非課税となる業種一覧と経費算入の方法」で詳しく解説しています。

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事業所得別シミュレーション|個人事業税はいくら?

事業所得(青色申告特別控除後)の金額別に、個人事業税額と3税(所得税・住民税・個人事業税)の合計負担額をシミュレーションします。

📐 シミュレーション前提条件

  • 第1種事業(税率5%)
  • 青色申告特別控除65万円適用済み
  • 社会保険料控除80万円、基礎控除48万円
  • 他の所得控除なし、繰越控除なし
項目 事業所得300万円 事業所得500万円 事業所得800万円
事業所得(青色控除後)300万円500万円800万円
個人事業税の課税ベース(+65万−290万)75万円275万円575万円
個人事業税(5%)37,500円137,500円287,500円
所得税(概算)約8.6万円約24.3万円約60.2万円
住民税(概算)約17.2万円約37.2万円約67.2万円
3税合計約29.6万円約75.3万円約156.3万円

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

事業所得300万円の段階では個人事業税は37,500円と負担は小さいですが、事業所得800万円になると約28.8万円に増えます。「事業税が急に高くなった」と感じるのは、事業主控除290万円を超えた部分の全額に5%が課税されるためです。

事業主控除290万円のしくみと月割計算

事業主控除は、個人事業税の課税対象者に一律で適用される控除で、年額290万円です。年の途中で開業・廃業した場合は、事業を行った月数に応じた月割額が控除されます。

事業主控除の月割額一覧

事業月数 事業主控除額 事業月数 事業主控除額
1ヶ月242,000円7ヶ月1,692,000円
2ヶ月484,000円8ヶ月1,934,000円
3ヶ月726,000円9ヶ月2,176,000円
4ヶ月968,000円10ヶ月2,418,000円
5ヶ月1,210,000円11ヶ月2,660,000円
6ヶ月1,450,000円12ヶ月2,900,000円

💡 実務のポイント

7月に開業した場合、その年の事業月数は6ヶ月です。事業主控除は145万円になるため、事業所得(青色申告特別控除前)が145万円以下であれば個人事業税はかかりません。開業初年度は事業主控除が月割で小さくなるため、所得の水準によっては初年度から課税される可能性がある点に注意してください。

個人事業税の納付方法と経費計上

納付の時期と方法

個人事業税は、毎年8月頃に都道府県税事務所から納税通知書が届きます。納付は年2回(第1期:8月末日、第2期:11月末日)に分けて行います。年税額が1万円以下の場合は8月に一括納付です。

個人事業税の仕訳(経費計上の方法)

個人事業税は事業に関する税金であるため、全額を経費として計上できます。勘定科目は「租税公課」を使用します。

借方 金額 貸方 金額
租税公課137,500円普通預金137,500円

⚠️ 注意:所得税と住民税は経費にできない

個人事業税は「租税公課」で経費計上できますが、所得税と住民税は経費にできません。事業用の口座から所得税や住民税を支払った場合は「事業主貸」で処理します。「税金は全部経費になる」と思い込んでいる方が多いので注意してください。

個人事業税の節税方法

個人事業税の計算ベースは「事業所得 + 青色申告特別控除額 − 事業主控除290万円」であるため、節税の基本は「課税ベースを下げること」です。

経費を漏れなく計上する

必要経費を正確に計上して事業所得を下げれば、個人事業税も減ります。見落としやすい経費として、自宅兼事務所の家賃按分、通信費の按分、交通費、書籍代、セミナー参加費などがあります。経験上、「これも経費になるの?」と驚かれるのが事業に関連する新聞・雑誌の購読料や、取引先との食事代(会議費)です。

法人化のタイミングを検討する

個人事業税(3〜5%)は法人化すると法人事業税に変わりますが、中小法人の場合は法人事業税の実効税率が低くなるケースがあります。事業所得が800万円を超えるあたりから、所得税+住民税+個人事業税の合計が法人税等の合計を上回り始めるため、法人化の検討時期の目安になります。

加算税・延滞税の全体像については「加算税・延滞税の全体像」をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

個人事業税はいくらから払うのですか?
青色申告特別控除前の事業所得が290万円を超える場合に課税されます。たとえば、青色申告特別控除65万円を適用して確定申告書の事業所得が300万円の場合、個人事業税の計算では300万円+65万円=365万円がスタートとなり、事業主控除290万円を引いた75万円が課税対象です。
青色申告特別控除は個人事業税の計算に適用されますか?
適用されません。個人事業税の計算では、確定申告書の事業所得に青色申告特別控除額を足し戻して計算します。これは個人事業税が所得税とは異なる独自の控除体系を持っているためです。事業主控除290万円は適用されます。
プログラマーやライターは個人事業税がかかりますか?
法定業種に含まれない文筆業やプログラミングは原則として非課税ですが、業務の実態によって判断が分かれます。受託開発で成果物を納品する形態は「請負業」と判断される可能性があり、その場合は5%が課税されます。自治体の判断が異なるため、事前に都道府県税事務所に確認することをお勧めします。
個人事業税の納付を忘れるとどうなりますか?
納期限を過ぎると延滞金が発生します。延滞金の利率は年度によって異なりますが、納期限の翌日から1ヶ月以内は年2.4%程度、それ以降は年8.7%程度です。滞納が長期化すると督促状が届き、最終的には財産の差押えもあり得ます。
個人事業税は確定申告以外に申告が必要ですか?
所得税の確定申告をしていれば、個人事業税の別途申告は不要です。確定申告の情報が都道府県税事務所に共有され、事業税が計算されます。ただし、年の途中で事業を廃止した場合は、廃止日から1ヶ月以内に個人事業税の申告書を提出する必要があります。
個人事業税は経費にできますか?
はい。個人事業税は全額を「租税公課」として経費計上できます。これは所得税や住民税とは異なる扱いです。支払った年度の確定申告で経費にすることで、翌年の所得税・住民税の節税にもつながります。
個人事業税を減らすにはどうすればいいですか?
基本的な方法は3つあります。第一に、必要経費を漏れなく計上して事業所得を下げること。第二に、前年の赤字がある場合は繰越控除を適用すること。第三に、事業所得が一定額を超えたら法人化を検討すること。特に事業所得が800万円を超えるあたりから、法人化による税負担の軽減効果が出やすくなります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 個人事業税は法定業種(70業種)を営む個人事業主に課される都道府県税
  • 事業主控除290万円があるため、青色申告特別控除前の所得が290万円以下なら非課税
  • 青色申告特別控除は個人事業税の計算に適用されない(足し戻して計算)
  • 税率は業種により3%・4%・5%の3段階。大半の業種は5%
  • プログラマー・ライター等は法定業種に含まれないが、業務実態で課税される可能性あり
  • 個人事業税は全額「租税公課」として経費計上できる(所得税・住民税は不可)
  • 納付は8月末と11月末の年2回。確定申告していれば別途の申告は不要

個人事業税は、事業が成長して所得が290万円を超えた段階で初めて課税される税金です。「事業軌道に乗った証拠」ともいえますが、所得税・住民税に加えて個人事業税もかかると手元資金が想定以上に減る可能性があります。事前にシミュレーションをして、納税資金を確保しておきましょう。

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参考: 東京都主税局「個人事業税」