個人事業税が非課税となる業種一覧と経費算入の方法

個人事業税が非課税となる業種一覧と経費算入の方法
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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「自分の業種は個人事業税がかかるの?」と気になっている個人事業主に向けて、非課税業種15種の完全一覧・開業届の職業欄の書き方・経費算入の仕訳方法を解説します。この記事を読めば、自分が非課税に該当するかを判断し、正しく手続きできます。

🏆 結論:法定70業種に該当しなければ個人事業税はかからない

個人事業税は地方税法で定められた70の「法定業種」にのみ課税されます。文筆業・漫画家・プログラマー・翻訳業・スポーツ選手・農業などは法定業種に含まれず、事業所得がいくら高くても個人事業税は非課税です。ただし、実際の業務内容が「請負業」や「デザイン業」と判断されると課税される可能性があるため、開業届の職業欄の書き方と契約形態に注意が必要です。

個人事業税の非課税業種とは?基本的なしくみ

個人事業税が非課税となる業種とは、地方税法第72条の2で定められた「法定業種」70種に該当しない事業のことです。法定業種に含まれなければ、所得金額にかかわらず個人事業税は一切かかりません。

個人事業税の課税・非課税の判断基準

個人事業税が課税されるかどうかは、以下の2つの条件を両方満たした場合に限られます。

条件 内容
条件①法定業種70種のいずれかに該当する事業を営んでいる
条件②事業所得(青色申告特別控除前)が290万円(事業主控除)を超えている

つまり、法定業種に該当しない業種であれば、条件①を満たさないため、年間所得が1,000万円でも5,000万円でも個人事業税は非課税です。

💡 実務のポイント

実務では、非課税業種のはずなのに個人事業税の納付書が届くケースが年に数件あります。原因の多くは開業届の「職業」欄の書き方にあります。たとえば、プログラマーなのに「IT業」と書いたために「コンサルタント業」と判定されたケースがありました。後述する「開業届の職業欄の書き方」を参考にしてください。

非課税業種15種の完全一覧【判定表付き】

法定業種70種に含まれない代表的な非課税業種を、「課税されるリスク」と「安全な開業届の書き方」の3軸でまとめました。

非課税業種 課税リスク 安全な職業欄の記載例
文筆業(作家・小説家・ライター)低:請負契約だと「請負業」認定の可能性「文筆業」「著述業」
漫画家中:イラスト制作がメインだと「デザイン業」認定リスク「漫画家」
画家・彫刻家中:受注制作がメインだと「デザイン業」認定リスク「画家」「造形美術家」
音楽家(作曲・作詞・演奏)低:コンサート主催は「演劇興行業」に該当「音楽家」「作曲家」
プログラマー・SE高:請負契約だと「請負業」認定リスク大「プログラマー」「システムエンジニア」
翻訳・通訳「翻訳業」「通訳業」
スポーツ選手「プロスポーツ選手」
芸能人・俳優低:雇用契約なら個人事業主に非該当「芸能人」「俳優」
農業「農業」
林業(造林〜伐採)中:伐採のみは対象外にならない「林業」
声優・ナレーター「声優」「ナレーター」
YouTuber(動画配信)高:広告代理業やコンサル業と判定されるリスク「動画制作業」「映像クリエイター」
Webライター中:請負契約だと課税リスク「文筆業」「Webライター」
社会保険診療の医師低:自由診療部分は課税「医師」(社会保険診療分のみ非課税)
漁業(自家労力主体)低:雇用者が多いと水産業に該当「漁業」

参考: 東京都主税局「個人事業税」

⚠️ 注意:業種名ではなく「実態」で判断される

都道府県税事務所は開業届の職業名だけでなく、確定申告書や収支内訳書の「業種欄」「取引内容」を見て業種を判定します。たとえば、プログラマーと名乗っていても、SES契約ではなく成果物の完成を約束する請負契約で仕事をしていれば「請負業(第1種・5%)」と判定される可能性があります。

課税リスクが高い業種の判定フロー

非課税業種のうち、課税リスクが「中」「高」の業種については、以下のフローで自分のケースを判定してください。

プログラマー・SE・Webエンジニアの判定

判定項目 非課税 課税リスクあり
契約形態準委任契約・業務委託(時間報酬型)請負契約(成果物納品型)
報酬の決め方稼働時間×単価成果物完成で一括支払い
瑕疵担保責任なしあり(バグ修正義務)
判定結果非課税の可能性が高い請負業として課税される可能性

漫画家・イラストレーターの判定

漫画の原稿やオリジナル作品の制作が主たる業務であれば非課税です。ただし、クライアントの指示に基づくロゴデザインやWebデザインの受注が売上の大半を占める場合は「デザイン業(第3種・5%)」と判定されるリスクがあります。

YouTuber・動画クリエイターの判定

YouTuberは比較的新しい職業であり、都道府県によって判断が分かれています。広告収入が主であれば非課税の可能性が高いですが、企業案件(PR動画の制作請負)が売上の中心になると「請負業」や「広告業」に該当する可能性があります。

💡 実務のポイント

現場で最も多い相談が「フリーランスエンジニアの課税リスク」です。SES(客先常駐)で準委任契約なら非課税ですが、Webサイト制作を丸ごと請け負う場合は要注意です。複数の契約形態が混在する場合は、主たる収入がどの契約形態かで判断されます。管轄の都道府県税事務所に事前確認することをおすすめします。

開業届の「職業」欄の書き方で非課税を確実にする方法

開業届や確定申告書の「職業」欄は、都道府県税事務所が個人事業税の課税・非課税を判断する重要な情報です。記載の仕方一つで課税されるか非課税になるかが変わる場合があります。

書き方のOK例・NG例

業種 ✅ OK(非課税になりやすい) ❌ NG(課税リスクあり)
プログラマープログラマー、システムエンジニアIT業、情報サービス業、Web制作業
ライター文筆業、著述業編集業、コンテンツ制作業
漫画家漫画家イラストレーター、デザイナー
翻訳者翻訳業語学サービス業
YouTuber映像制作業、動画クリエイター広告業、コンサルタント業

⚠️ 注意

開業届の職業欄を変更したい場合は、新しい開業届を提出し直すことで修正できます。税務署に「訂正」ではなく「新規提出」として出せば受理されます。ただし、過去に課税された分を遡って非課税にすることはできないため、できるだけ最初から適切な職業名を記載しましょう。

個人事業税の基本的な計算方法や法定業種70種の全リストについては、「個人事業税とは?計算方法・税率・事業主控除290万円を完全解説」で詳しく解説しています。

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確定申告書第二表の「事業税」欄の記入方法

非課税業種の個人事業主は、確定申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」欄に非課税であることを記入する必要があります。この記載を忘れると、税事務所が課税対象と誤認して納付書を送ってくるケースがあります。

非課税番号の選び方

確定申告書第二表には「非課税所得など」として番号を記入する欄があります。主な番号区分は以下のとおりです。

番号 対象 該当する業種例
1畜産業のうち非課税となるもの自家労力主体の畜産業
2水産業のうち非課税となるもの自家労力主体の漁業
3薪炭製造業のうち非課税となるもの薪炭製造業
4医業に類する事業のうち非課税あんま・はり・きゅう等
5装蹄師業のうち非課税装蹄師
10上記以外の非課税所得文筆業・漫画家・プログラマー・翻訳業・音楽家・農業等

ほとんどの非課税業種の方は「10」を選択し、所得金額を記入します。

💡 実務のポイント

確定申告書のこの欄を空欄にしたまま提出してしまうケースは非常に多いです。空欄だと都道府県税事務所は「法定業種に該当する」と推定して納付書を発送することがあります。申告時に必ず「10」と所得金額を記入してください。e-Taxで電子申告する場合も同様に入力欄があります。

参考: 国税庁「確定申告書の記載要領」

個人事業税の納付時期とスケジュール

個人事業税は賦課課税方式(都道府県が税額を計算して通知する方式)を採用しており、自分で計算して申告する必要はありません。確定申告の内容をもとに都道府県税事務所が税額を算出し、納付書を郵送します。

年間スケジュール

時期 内容
2月16日〜3月15日所得税の確定申告(個人事業税の申告も兼ねる)
8月頃都道府県税事務所から納付書が届く(第1期
8月31日第1期の納付期限
11月頃第2期の納付書が届く
11月30日第2期の納付期限

税額が1万円以下の場合は、8月に一括で納付します。

個人事業税の経費算入と仕訳方法【3パターン】

個人事業税は所得税や住民税と異なり、全額を必要経費として計上できます。勘定科目は「租税公課(そぜいこうか)」を使います。これは個人事業税が「事業を行うための行政サービスの対価」という性格を持つためです。

経費にできる税金・できない税金の比較

税金 経費計上 勘定科目
個人事業税○ できる租税公課
固定資産税(事業用)○ できる租税公課
印紙税○ できる租税公課
自動車税(事業用)○ できる(按分必要)租税公課
所得税✗ できない事業主貸
住民税✗ できない事業主貸
国民健康保険料✗ できない(所得控除で対応)事業主貸
延滞税・加算税✗ できない事業主貸

仕訳パターン①:事業用口座から納付

借方 金額 貸方 金額
租税公課55,000普通預金55,000

仕訳パターン②:個人口座から納付

借方 金額 貸方 金額
租税公課55,000事業主借55,000

仕訳パターン③:現金で納付

借方 金額 貸方 金額
租税公課55,000現金55,000

💡 実務のポイント

個人事業税の経費算入のタイミングは「納付した年」です。たとえば令和7年分の所得に対する個人事業税は、令和8年8月と11月に納付するため、令和8年分の経費として計上します。令和7年分の経費にはできない点に注意してください。消費税区分は「不課税(対象外)」です。

なお、この記事では「非課税業種」と「経費算入」に焦点を当てていますが、個人事業税を含む税金の全体像については「加算税の全体像を完全解説」もあわせてご覧ください。

廃業年の個人事業税の見込控除

個人事業を廃業した年には、通常の経費算入タイミング(翌年の納付時)ではなく、廃業年の経費として「見込控除」を計上できる特例があります。

見込控除の仕組み

廃業した翌年には事業所得がないため、通常のルールでは個人事業税を経費にできなくなります。そこで、廃業年に翌年の個人事業税額を「見込み」で計算し、未払計上することが認められています。

🧮 シミュレーション:廃業年の見込控除

例:12月31日に廃業。事業所得500万円(青色65万円控除前=565万円)、第1種事業(税率5%)の場合
見込み事業税=(565万円 − 290万円)× 5% = 13万7,500円
この13万7,500円を廃業年(=当年)の租税公課として経費計上できます。廃業後1ヶ月以内に事業税の申告と納税を行ってください。

非課税のはずなのに納付書が届いた場合の対処法

非課税業種にもかかわらず個人事業税の納付書が届くケースがあります。慌てて納付する前に、以下の手順で対処しましょう。

対処の5ステップ

ステップ 内容 注意点
管轄の都道府県税事務所に電話納付書に記載の連絡先に問い合わせ
自分の業務内容と契約形態を説明契約書や業務委託契約書を手元に用意
法定業種に該当しない旨を主張開業届の職業欄のコピーがあると有効
非課税と認められた場合、課税取消口頭で認められることが多い
既に納付済みなら還付請求5年以内であれば遡って還付可能

⚠️ 注意

納付期限を過ぎると延滞金が発生します。「非課税のはず」と思っても、まずは納付期限までに管轄の税事務所に連絡してください。相談中であれば通常は延滞金の発生を猶予してもらえます。

個人事業税の節税シミュレーション

法定業種に該当する場合でも、個人事業税を合法的に節税する方法があります。事業所得300万・500万・800万円の3パターンで、節税効果を確認しましょう。

📐 シミュレーション前提条件

  • 第1種事業(税率5%)
  • 青色申告特別控除65万円を適用
  • 事業主控除290万円
  • 繰越損失なし
項目 事業所得300万円 事業所得500万円 事業所得800万円
青色控除前の所得365万円565万円865万円
事業主控除▲290万円▲290万円▲290万円
課税所得75万円275万円575万円
個人事業税(5%)37,500円137,500円287,500円
経費算入による所得税節税効果※約3,750円約27,500円約66,125円

※経費算入の所得税節税効果は概算です。所得税率(事業所得300万円=10%、500万円=20%、800万円=23%)を適用した目安です。個別の状況により異なります。

📊 公認会計士の視点

個人事業税は経費になるため、翌年の所得税・住民税が減少する「二重の節税効果」があります。とくに所得が高い方ほど効果が大きく、事業所得800万円で個人事業税28万7,500円を経費にすると、所得税23%+住民税10%で約9万5,000円の税負担軽減が見込めます。

よくある質問(FAQ)

プログラマーは個人事業税がかかりませんか?
プログラマーは法定業種に含まれていないため、準委任契約や業務委託(時間報酬型)で働いている場合は原則非課税です。ただし、成果物の完成を約束する「請負契約」で仕事をしている場合は、「請負業」(第1種事業・税率5%)として課税される可能性があります。契約書の形態を確認し、不安な場合は管轄の都道府県税事務所に相談してください。
ライターやWebライターは個人事業税がかかりますか?
文筆業(著述業)は法定業種に含まれないため、原則として非課税です。ただし、企業から記事制作を請け負う形態が中心で、納品物の完成責任を負う契約の場合は「請負業」と判定されるリスクがあります。開業届の職業欄には「文筆業」「著述業」と記載するのが安全です。
個人事業税を経費にするときの勘定科目は何ですか?
「租税公課」です。個人事業税は事業を営むことに対して課される税金であるため、全額を必要経費に算入できます。消費税区分は「不課税(対象外)」です。なお、所得税や住民税は経費にできず、「事業主貸」で処理します。
個人事業税はいつ経費に計上しますか?
原則として「納付した年」に経費計上します。たとえば令和7年分の所得に対する個人事業税は令和8年8月と11月に納付するため、令和8年分の経費です。ただし、廃業年には「見込控除」として廃業年の経費に計上できます。
非課税業種なのに納付書が届きました。どうすればよいですか?
まず管轄の都道府県税事務所に電話で連絡してください。業務内容と契約形態を説明し、法定業種に該当しない旨を主張します。非課税と認められれば課税は取り消され、既に納付済みであれば5年以内なら還付請求が可能です。納付期限前に連絡すれば延滞金の発生も猶予されます。
副業の所得にも個人事業税はかかりますか?
副業であっても、法定業種に該当し、事業所得が290万円を超えれば個人事業税の課税対象です。会社員の給与所得は合算されません。副業が「事業所得」ではなく「雑所得」として申告されている場合は、個人事業税の対象外です。
農業や林業は個人事業税がかかりませんか?
農業は法定業種に含まれないため非課税です。林業も造林から伐採までを一貫して行う場合は非課税ですが、伐採業のみ、またはシイタケ栽培などの林産業は法定業種に該当する場合があります。畜産業・漁業は、主として自家労力を用いて行うもののみ非課税です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 個人事業税は法定業種70種に該当しない業種なら、所得に関係なく非課税
  • 文筆業・漫画家・プログラマー・翻訳業・音楽家・農業などが代表的な非課税業種
  • 開業届の職業欄の書き方で課税・非課税が変わる場合がある(「文筆業」は非課税だが「編集業」は課税リスク)
  • 確定申告書第二表の事業税欄に非課税番号「10」と所得金額を記入すること
  • 個人事業税は「租税公課」として全額を経費に算入できる(所得税・住民税は不可)
  • 経費計上のタイミングは「納付した年」。廃業年は見込控除で当年計上が可能
  • 非課税のはずなのに納付書が届いたら、納付期限前に都道府県税事務所に連絡

個人事業税の基本的な計算方法や法定業種70種の全リストは、「個人事業税とは?計算方法・税率・事業主控除290万円を完全解説」をご覧ください。

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