【税理士監修】記帳代行の費用相場(仕訳数別)と自計化との比較

【税理士監修】記帳代行の費用相場(仕訳数別)と自計化との比較
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

記帳代行の費用相場(仕訳数別)と自計化との比較

「記帳代行を頼みたいけど、いくらかかるの?」「自分でやるのと外注するのとどっちが得?」とお悩みの経営者・個人事業主に向けて、仕訳数別の費用相場と自計化との年間コスト比較を完全ガイドします。この記事を読めば、自社に最適な記帳方法を判断できます。

🏆 結論:月間仕訳100件以下なら自計化、200件以上なら記帳代行が有利

記帳代行の費用相場は1仕訳あたり50〜100円、月額では6,000〜20,000円が目安です。ただし「外注費」だけで比較するのは危険で、自計化の場合の「自分の時間コスト」を含めた年間総額で判断する必要があります。月間仕訳100件以下で会計ソフトに慣れている方は自計化が有利、200件以上もしくは記帳に月5時間以上かかっている方は記帳代行への移行を検討すべきです。

記帳代行とは?自計化との違いを整理する

記帳代行とは、日々の取引を仕訳して会計帳簿に記録する作業を、税理士や記帳代行業者などの外部に委託するサービスです。領収書・請求書・通帳コピーなどの資料を渡すだけで、仕訳帳・総勘定元帳・試算表などの帳簿を作成してもらえます。

一方、自計化とは、自社で会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生会計など)を使って記帳する方法です。経理担当者を雇うか、経営者自身が入力を行います。

所得税法では、個人で事業を行う全ての方に帳簿の記帳と保存が義務付けられています(所得税法第148条・第232条)。法人も法人税法の規定により帳簿の備付け・保存義務があります。つまり記帳は「やるかやらないか」を選ぶものではなく、「誰がやるか」を選ぶものです。

参考: 国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」

💡 実務のポイント

記帳代行は税理士でなくても行えます。しかし、消費税の課税区分の判定や税務上の判断(交際費の区分、貸倒処理の可否など)は税理士法第2条の「税務相談」に該当するため、税理士資格を持たない記帳代行業者は対応できません。安さだけで選ぶと、税務判断の部分で結局税理士に二重コストが発生するケースがあります。

参考: 国税庁「税理士の業務」

記帳代行の費用相場|仕訳数別の料金表

1仕訳あたりの相場

記帳代行の費用は仕訳数(領収書・伝票の枚数に対応する仕訳の件数)で決まるのが一般的です。1仕訳あたりの相場は依頼先によって異なります。

依頼先 1仕訳あたり単価 特徴
税理士事務所80〜120円税務判断を含む記帳が可能。顧問契約とセットが多い
記帳代行専門業者50〜100円記帳特化で安価。税務判断は対象外
クラウドソーシング(個人)40〜80円最安だが品質のばらつきが大きい

仕訳数帯別の月額費用相場

月間仕訳数 税理士事務所 記帳代行業者 想定事業規模
〜50件5,000〜8,000円3,000〜5,000円フリーランス・副業
51〜100件8,000〜12,000円5,000〜10,000円個人事業主・小規模法人
101〜200件12,000〜20,000円10,000〜15,000円従業員5〜10名の法人
201〜300件20,000〜30,000円15,000〜20,000円従業員10〜30名の法人
301件以上30,000〜50,000円20,000〜35,000円従業員30名以上の法人

※上記は記帳代行単体の費用です。税理士事務所に依頼する場合、顧問料(月額2〜5万円)と決算料(別途10〜30万円)が別途かかるのが一般的です。

⚠️ 注意:「月額○○円〜」の表示に騙されない

記帳代行業者の中には「月額3,980円〜」と低価格を打ち出しているケースがありますが、実際には仕訳数の上限が30件程度に設定されていたり、超過分の単価が割高だったりすることがあります。見積もり時には「自社の月間仕訳数を伝えた上での総額」を確認してください。

記帳代行 vs 自計化|年間総コストシミュレーション

「記帳代行の月額費用」と「自計化の会計ソフト代」だけを比較するのは不十分です。自計化には経営者やスタッフの「時間コスト」が発生します。この隠れたコストを含めた年間総額で比較することが重要です。

📐 シミュレーション前提条件

  • 経営者の時間単価: 5,000円/時間(年商1,000万円規模の個人事業主の目安)
  • 会計ソフト: freeeスタンダードプラン 月額2,680円(年額26,136円)
  • 記帳代行: 税理士事務所に依頼(顧問料含まず、記帳代行部分のみ)
  • 自計化の記帳時間: 仕訳100件あたり月5時間(慣れている方の目安)

パターン別の年間コスト比較

項目 A: 自計化
(月50件)
B: 自計化
(月200件)
C: 記帳代行
(月50件)
D: 記帳代行
(月200件)
会計ソフト代(年額)26,136円26,136円0円0円
記帳代行費(年額)0円0円72,000円192,000円
自分の時間コスト(年額)150,000円600,000円12,000円12,000円
年間総コスト176,136円626,136円84,000円204,000円

※自分の時間コスト:自計化は月2.5時間(50件)〜10時間(200件)、記帳代行は資料整理に月0.2時間を想定

このシミュレーションからわかるのは、仕訳数が少ない場合(月50件)は自計化と記帳代行のコスト差が約9万円、仕訳数が多い場合(月200件)は記帳代行の方が約42万円も安くなるということです。

📊 公認会計士の視点

経営者の時間単価は事業規模によって大きく変わります。年商3,000万円の経営者なら時間単価は約1.5万円になるため、自計化の隠れたコストはさらに跳ね上がります。「経営者が記帳に使う1時間は、営業に使えば売上につながる1時間」と考えると、記帳代行は「経費」ではなく「投資」です。

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記帳代行と経理代行の違い|業務範囲を比較する

「記帳代行」と「経理代行」は混同されがちですが、業務範囲が大きく異なります。現場では「記帳代行だけ頼んだつもりが、請求書発行や入金管理は自分でやらなければならなかった」という相談をよく受けます。

業務内容 記帳代行 経理代行
仕訳入力・帳簿作成
試算表・総勘定元帳の作成
請求書の発行・送付×
入金管理・売掛金消込×
給与計算・年末調整×○(オプション)
消費税の課税区分判定税理士のみ税理士のみ
費用相場(月額)5,000〜30,000円30,000〜100,000円

記帳代行は「帳簿の作成」に特化したサービスであり、経理業務の全般をカバーするものではありません。経理業務を丸ごと外注したい場合は経理代行を検討する必要があります。詳しくは「経理アウトソーシングのメリット・デメリット」で解説しています。

記帳代行を依頼する際の隠れた追加費用

見積もり時の月額だけで判断すると、実際の請求額が想定を超えるケースがあります。実務で経営者からよく聞く「思ったより高かった」の原因は、以下の追加費用です。

追加費用の名目 相場 発生条件
初期設定料10,000〜20,000円契約時の初回のみ
仕訳数超過の追加料金1件50〜150円基本プランの上限を超えた場合
証憑整理料3,000〜5,000円/月領収書が未整理の場合
部門別管理料1,500〜3,000円/月店舗・部門ごとの管理が必要な場合
納期短縮料3,000〜5,000円/回急ぎの依頼をした場合
繁忙期割増通常料金の20〜50%増確定申告期(1〜3月)・決算期

実務では、見積もり段階で「自社の月間仕訳数の実績値」と「領収書の整理状態」を正直に伝えることが、想定外の追加費用を防ぐ最善策です。

自計化の費用内訳|会計ソフト別コスト比較

自計化を選ぶ場合の直接費用は、主に会計ソフトの月額料金です。主要3ソフトの料金を比較します。

会計ソフト 月額(税込) 年額(税込) 特徴
freee スタンダード2,680円26,136円銀行連携の自動仕訳に強み
マネーフォワード スモールビジネス3,278円35,760円請求書・経費・給与が連携
弥生会計オンライン セルフ2,316円28,600円税理士事務所の対応率が高い

会計ソフト代だけを見ると年間3万円前後で収まりますが、自計化の真のコストは「記帳に費やす時間」です。会計ソフトに慣れていない経営者が月200件の仕訳を入力する場合、月10〜15時間かかることも珍しくありません。

あなたはどちらを選ぶべき?|判定フローチャート

以下の5つの質問に順番に答えると、自計化と記帳代行のどちらが最適かを判定できます。

質問 はい いいえ
① 月間仕訳数は100件以下ですか?→②へ記帳代行推奨
② 会計ソフトの操作に抵抗はないですか?→③へ記帳代行推奨
③ 経理担当者(兼任含む)はいますか?→④へ記帳代行推奨
④ リアルタイムで数字を把握したいですか?自計化推奨→⑤へ
⑤ 記帳に月3時間以上かけていますか?記帳代行推奨自計化継続

このフローチャートの背景にあるのは、「記帳は手段であって目的ではない」という考え方です。現場で経営者にお伝えしているのは、記帳に使う時間は「売上を生まない時間」だということ。その時間を本業に使った方が収益性が高いなら、記帳代行を選ぶのが合理的です。

記帳代行を依頼する際の5つの注意点

① 税務判断ができるのは税理士だけ

記帳代行業者に依頼した場合、仕訳入力はしてもらえますが、消費税の課税・非課税・不課税の判定や、交際費と会議費の区分判断は税理士法第2条に基づき税理士しか行えません。インボイス制度においても、適格請求書の要件を満たしているかの判断は税務上の判断に該当します。

参考: 国税庁 タックスアンサー No.6621「帳簿の記載事項と保存」

② 帳簿の納品タイミングを確認する

記帳代行の納品は月末締め翌月納品が一般的ですが、業者によっては2〜3ヶ月遅れるケースがあります。リアルタイムで業績を把握したい場合は、納品スケジュールを契約前に必ず確認してください。

③ 守秘義務の有無を確認する

税理士には税理士法第38条で守秘義務が課されていますが、記帳代行業者には法律上の守秘義務がありません。契約書にNDA(秘密保持契約)が含まれているかを確認することが重要です。

④ 解約条件を事前に確認する

契約期間の縛り(半年・1年)がある業者があります。合わなかったときにスムーズに切り替えられるよう、解約条件と解約予告期間を契約書で確認しましょう。

⑤ 電子帳簿保存法への対応を確認する

電子帳簿保存法の改正により、電子取引のデータ保存が義務化されています。記帳代行業者がこの対応を行ってくれるのか、それとも自社側で別途対応が必要なのかを確認してください。

💡 実務のポイント

年間100社以上の決算を担当してきた経験上、記帳代行で最もトラブルになるのは「消費税の課税区分の誤り」です。記帳代行業者が機械的に入力した仕訳を税理士がチェックしたら、課税・非課税の区分が数十件間違っていた——というケースは珍しくありません。記帳代行を税理士以外に頼む場合は、別途税理士による月次チェックを入れることを強くおすすめします。

記帳代行の費用を安く抑える5つの方法

① 領収書を整理してから渡す

領収書が日付順に整理されていないと「証憑整理料」が追加されます。月次でクリアファイルに日付順に入れるだけでも、月3,000〜5,000円のコスト削減になります。

② 銀行口座・クレジットカードのデータ連携を活用する

会計ソフトの銀行連携を利用すれば、通帳の入出金データが自動取込されます。記帳代行業者の手入力が減る分、仕訳単価を下げてもらえる交渉材料になります。

③ 顧問契約とセットで交渉する

税理士に記帳代行を依頼する場合、顧問契約とセットにすることで記帳代行の費用が割引されるケースが多いです。記帳代行のみの単発依頼と比較して、年間で2〜5万円安くなることがあります。

④ 仕訳数を減らす工夫をする

毎日の少額経費をまとめて週1回の精算にする、現金払いを減らしてカード・振込に集約するなど、仕訳の発生件数そのものを減らすことで費用を抑えられます。

⑤ 自計化と記帳代行のハイブリッドを検討する

日常の売上・仕入の仕訳は自分で入力し、月末の経費精算や決算仕訳だけ税理士に任せる「ハイブリッド型」も有効です。年間コストを抑えつつ、税務判断が必要な部分をプロに任せられるバランスの取れた方法です。

なお、顧問税理士の費用全体については「顧問税理士の費用相場」で詳しく解説しています。記帳代行を含めた年間の税理士費用を把握するのに役立ちます。また、決算だけスポットで依頼する方法については「顧問契約なしで決算だけ依頼する場合の費用と注意点」もご参照ください。

よくある質問(FAQ)

記帳代行の費用相場はいくらですか?
1仕訳あたり50〜100円、月額では6,000〜20,000円が一般的な相場です。税理士事務所に依頼する場合は1仕訳80〜120円と若干高くなりますが、消費税の課税区分判定など税務上の判断も含まれるため、記帳代行業者に頼んで別途税理士チェックを入れるよりトータルでは安くなるケースがあります。
記帳代行と自計化はどちらがお得ですか?
月間仕訳100件以下で会計ソフトに慣れている方は自計化の方がコストを抑えられます。ただし、自計化には経営者の時間コストが含まれます。月200件以上の場合や記帳に月5時間以上かかっている場合は、記帳代行の方が総コストで有利になります。
記帳代行は税理士以外にも頼めますか?
仕訳の入力と帳簿の作成自体は税理士資格がなくても行えるため、記帳代行専門業者やクラウドソーシングの個人にも依頼できます。ただし、消費税の課税区分判定や税務上の判断は税理士法第2条に基づき税理士のみが行えます。税理士以外に記帳代行を頼む場合は、別途税理士による月次チェックを受けることをおすすめします。
記帳代行を頼んだ場合、帳簿はいつ届きますか?
月末締め翌月上旬の納品が一般的ですが、業者や繁忙期によっては2〜3ヶ月遅れるケースもあります。契約前に「資料を渡してから何営業日で納品されるか」を必ず確認してください。リアルタイムの数値把握が必要な場合は、クラウド会計ソフトを使った自計化の方が適しています。
確定申告だけ税理士に頼む場合、記帳代行もセットですか?
税理士事務所によって異なります。確定申告のスポット依頼には「自分で記帳したデータを渡す」タイプと「記帳代行込みで丸投げする」タイプがあり、後者の方が費用は高くなります。詳しくは「確定申告の税理士費用」をご参照ください。
記帳代行の費用は経費にできますか?
はい、記帳代行費用は「支払手数料」または「外注費」として全額経費(損金)に計上できます。税理士への顧問料も同様に「支払手数料」として経費処理が可能です。法人税法上も所得税法上も、事業に関連する費用として問題なく損金算入できます。
記帳代行から自計化に切り替えるタイミングはいつが良いですか?
決算直後のタイミングが最適です。期の途中で切り替えると、前半と後半で記帳方法や勘定科目の使い方にズレが生じるリスクがあります。切り替え時は、現在の税理士または記帳代行業者から会計データ(会計ソフトのバックアップファイル)を受領し、新しい会計ソフトにインポートできるか確認してから進めましょう。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 記帳代行の費用相場は1仕訳50〜100円、月額6,000〜20,000円(仕訳数による)
  • 税理士に頼むと1仕訳80〜120円と高めだが、税務判断を含むため総合的にはコスパが良いケースが多い
  • 自計化と記帳代行の比較は「外注費」だけでなく「自分の時間コスト」を含めた年間総額で判断する
  • 月間仕訳100件以下×会計ソフトに慣れている人は自計化、200件以上は記帳代行が合理的
  • 記帳代行業者に頼む場合、消費税の課税区分判定は税理士法により税理士しか行えない(要注意)
  • 見積もり時は「月間仕訳数の実績値」を伝え、初期設定料・超過料金・証憑整理料の有無を確認する
  • 帳簿の記帳・保存は所得税法・法人税法で全ての事業者に義務付けられている

記帳は事業を行う上で避けて通れない義務ですが、「誰がやるか」は選べます。自社の仕訳数・時間的余裕・会計ソフトへの慣れ度を総合的に判断し、最もコストパフォーマンスの高い方法を選んでください。

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