顧問契約なしで決算だけ依頼する場合の費用と注意点|スポット決算の相場と判断基準

顧問契約なしで決算だけ依頼する場合の費用と注意点|スポット決算の相場と判断基準
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

顧問契約なしで決算だけ依頼する場合の費用と注意点

「毎月の顧問料は払えないが、決算・申告だけはプロに任せたい」という経営者に向けて、スポット決算の費用相場・メリット・デメリット・顧問契約との比較を解説します。この記事を読めば、スポット決算と顧問契約のどちらが自社に合うかを判断できます。

🏆 結論:決算のみの費用は15〜30万円が相場。ただし記帳の品質次第で大きく変動する

顧問契約なしで法人の決算・申告だけを税理士に依頼する場合(スポット決算)の費用相場は15〜30万円です。ただし、自社の帳簿が整理されていない場合は記帳代行費用が加算され、50万円以上になるケースもあります。年間の総コストで比較すると、売上3,000万円以下の小規模法人ではスポット決算の方が安く、売上3,000万円超の法人では節税効果を含めると顧問契約の方がコストパフォーマンスが高くなる傾向があります。

決算だけ依頼する「スポット決算」とは?

スポット決算とは、税理士と毎月の顧問契約を結ばず、年に1回の決算・申告業務だけを単発で依頼する契約形態です。「年1決算型」「決算申告のみ契約」とも呼ばれます。

法人税の確定申告書は、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に提出する必要があります(法人税法第74条)。例えば3月決算の法人であれば、5月31日が申告期限です。この申告書の作成・提出は税理士法第2条第1項第1号・第2号に基づく税理士の独占業務であり、税理士以外が代行することはできません。

参考: 国税庁「法人税及び地方法人税の申告」

スポット決算の費用相場【売上規模別】

スポット決算の費用は、会社の売上規模・仕訳数・記帳状況・消費税の課税事業者かどうかによって大きく変わります。以下の表は、自社で記帳が完了している場合(経理処理済み)の費用相場です。

年間売上 法人税申告のみ 法人税+消費税 記帳丸投げ+決算
〜1,000万円10〜15万円15〜20万円20〜30万円
1,000万〜3,000万円15〜20万円20〜28万円30〜45万円
3,000万〜5,000万円20〜25万円25〜35万円40〜60万円
5,000万〜1億円25〜35万円30〜45万円50〜80万円

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な金額は税理士にお見積もりください。

💡 実務のポイント

実際にスポット決算を受ける立場の経験上、「記帳丸投げ+決算」の費用が最も読みにくいです。「領収書を袋にまとめて渡す」状態だと、仕訳の整理だけで数十時間かかることがあり、想定以上の費用になるケースが少なくありません。スポット決算を安く抑えるコツは、自社で記帳を完了させてデータを渡すことです。

スポット決算と顧問契約の年間コスト比較【3パターン】

📐 シミュレーション前提条件

  • 法人(売上3,000万円)、消費税課税事業者
  • 月間仕訳数:100件
  • 自社でクラウド会計ソフト(月額3,000円)を使用して記帳済み
費用項目 A: スポット決算のみ B: 年1訪問の顧問 C: 月次顧問(月1訪問)
月額顧問料0円月1万円×12=12万円月3万円×12=36万円
決算申告料25万円10万円15万円
消費税申告料5万円3万円含む
会計ソフト費用3.6万円3.6万円3.6万円
年間合計約33.6万円約28.6万円約54.6万円
節税アドバイスなし年1回の決算前毎月の試算表ベース
税務調査対応対象外が一般的対応可対応可

※概算値です。個別の状況により異なります。

実務では、スポット決算の方が表面上のコストは安く見えますが、年間を通じた節税アドバイスを受けられないため、「払わなくてよかった税金を払ってしまう」隠れコストが発生することがあります。顧問税理士の費用相場について詳しくは「顧問税理士の費用相場」をご覧ください。

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スポット決算の4つのメリット

毎月の固定費を削減できる

最大のメリットはコスト面です。顧問料(月額2〜5万円)が不要になるため、年間24〜60万円の固定費を削減できます。創業直後で資金に余裕がない時期や、取引がシンプルで税務上の論点が少ない小規模法人に適しています。

税理士との相性を試せる

1回の決算でその税理士の対応品質を確認でき、満足すれば翌年から顧問契約に移行するという段階的な進め方ができます。

必要な時だけ専門家の力を借りられる

自社で記帳ができている法人であれば、年に1回の決算・申告だけプロに任せることで、最小限のコストで法的義務を果たせます。

税理士を比較検討しやすい

顧問契約のような長期拘束がないため、複数の税理士に見積もりを取って比較しやすいです。

スポット決算の5つのデメリット・リスク

節税対策が手遅れになる

決算直前に税理士に帳簿を渡す時点では、その期の節税対策はほぼ打てません。実務では、決算月の2ヶ月前に相談があればまだ間に合う対策も、決算後に渡されると一切できないケースが大半です。例えば、役員報酬の変更は期首から3ヶ月以内でなければ損金算入できません(法人税法第34条第1項第1号)。年1回の決算依頼では、こうしたタイミングを逃します。

税務調査に対応してもらえない

スポット決算の場合、税務調査への対応は契約範囲外とされるのが一般的です。税務調査への対応は税理士法第2条第1項第1号の「税務代理」に該当し、日頃からクライアントの経理状況を把握していなければ十分な対応ができないためです。万が一税務調査が入った場合、自社だけで対応するか、別途高額な費用で立会いを依頼することになります。

⚠️ 注意

税務調査で追徴課税を受けたケースでは、「顧問税理士がいなかったため、経営者が税務署の質問に適切に回答できず、本来認められるはずの経費まで否認された」という事態を実際に目にしています。税務調査の立会い費用は1日あたり5〜20万円が相場であり、スポット決算で節約した顧問料を上回ることも珍しくありません。

記帳の誤りが決算時まで放置される

顧問契約があれば月次でチェックが入るため、消費税の課税区分ミスや勘定科目の誤りが早期に発見されます。スポット決算では1年分の帳簿をまとめてチェックすることになるため、修正作業に時間と追加費用がかかります。

費用が予想外に膨らむことがある

帳簿の状態が悪い場合、見積もり時の想定を超える修正作業が発生し、追加費用を請求されることがあります。実務では、当初15万円の見積もりが最終的に40万円になったケースも経験しています。

引き受けてもらえないケースがある

決算直前(申告期限まで1ヶ月未満)の依頼、帳簿が全く未整理の状態、過去に申告漏れがある場合などは、引き受けを断られることがあります。

スポット決算を断られる5つのパターンと対策

断られるパターン 理由 対策
申告期限まで1ヶ月未満物理的に作業が間に合わない決算月の3ヶ月前から税理士を探し始める
帳簿が全く未整理仕訳の整理から必要で工数が読めない最低限クラウド会計ソフトに入力を完了させてから依頼する
過年度の無申告がある過去の申告書作成から必要でリスクが高い過年度の申告も含めてセットで依頼する
税務上のグレーゾーンが多い年間の取引を把握していないと判断できない問題のある取引を事前にリスト化して共有する
繁忙期(2〜5月)に依頼3月決算法人が集中し受付枠がない繁忙期を避けるか、早めに予約する

スポット決算 vs 顧問契約:あなたの会社はどちらが合う?

条件 スポット決算が向いている 顧問契約が向いている
売上規模1,000万円以下3,000万円以上
取引の複雑さシンプル(売上+経費が中心)複雑(海外取引・不動産・M&A等あり)
記帳能力自社で会計ソフト入力が完了できる記帳に自信がない・兼務で時間がない
節税ニーズ特にない・利益が小さい節税対策を積極的に行いたい
融資ニーズ当面予定なし金融機関からの融資を検討中
消費税免税事業者課税事業者(インボイス対応が必要)

📊 公認会計士の視点

融資を検討している法人は、顧問税理士がいる方が圧倒的に有利です。金融機関は「顧問税理士の有無」を審査のチェック項目の一つとしているケースがあり、税理士の書面添付(税理士法第33条の2)がある申告書は信頼度が格段に上がります。スポット決算ではこの書面添付が行われないことがほとんどです。

決算だけ依頼する前に準備すべきこと【チェックリスト】

スポット決算をスムーズに進め、追加費用を抑えるためのチェックリストです。決算月の2ヶ月前から準備を始めてください。

No チェック項目 ポイント
1会計ソフトへの記帳が完了しているか未入力の取引がないか総勘定元帳で確認
2預金残高と帳簿残高が一致しているか全口座の通帳残高を確認
3売掛金・買掛金の残高が正しいか取引先別の残高明細を作成
4固定資産台帳を更新しているか当期に購入・処分した資産を反映
5消費税の課税区分が正しいか非課税・不課税・免税の区分を確認
6領収書・請求書を時系列で整理してあるか月別にファイリング。電帳法対応も確認
7前期の申告書・決算書のコピーがあるかスポット依頼では前期データがないと作業できない
8定款のコピーを用意できるか事業目的・決算期・役員構成の確認に必要

記帳代行の費用や自計化との比較については「記帳代行の費用相場(仕訳数別)と自計化との比較」を、経理業務全般の外注を検討している方は「経理アウトソーシングのメリット・デメリット」をご参照ください。

スポット決算の依頼から完了までの流れ【タイムライン】

決算月の3ヶ月前:税理士を探す

見積もりを2〜3社から取得します。この段階で帳簿の状態を伝え、追加費用が発生する条件を確認してください。

決算月の2ヶ月前:契約・資料の共有開始

契約書を締結し、前期の申告書・決算書・定款のコピーを税理士に共有します。会計ソフトのログイン情報も必要です。

決算月:帳簿の最終入力・残高確認

決算月中に全ての取引を入力し、預金残高・売掛金・買掛金の残高を確認します。

決算月の翌月:税理士が決算書・申告書を作成

税理士が帳簿を確認し、決算整理仕訳(減価償却・引当金・未払費用等)を計上して決算書と申告書を作成します。不明点があれば質問が来るので、速やかに回答してください。

決算月の翌々月の期限日まで:申告・納税

法人税・消費税・地方税の申告書を提出し、納税を完了します。申告期限は事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内です。

参考: 国税庁「申告と納税」

スポット決算の費用を抑える3つのコツ

自社で記帳を完了させてから渡す

記帳丸投げとデータ渡しでは費用に2倍以上の差が出ます。クラウド会計ソフトを使えば、簿記の知識が少なくても仕訳の自動取り込み機能で記帳を効率化できます。

繁忙期を避けて依頼する

3月決算法人の確定申告が集中する4〜5月は税理士事務所の繁忙期です。9月決算や12月決算の法人は比較的受けてもらいやすく、費用交渉の余地もあります。

複数の税理士から見積もりを取る

同じ業務内容でも税理士事務所によって費用は2〜3倍の開きがあります。最低3社から見積もりを取り、「基本料金+追加費用の条件」を比較してください。

よくある質問(FAQ)

決算だけ依頼する場合、記帳は自分でやる必要がありますか?
必ずしも自分でやる必要はありません。記帳代行も含めて依頼できますが、その場合は「記帳代行費用+決算申告費用」で合計額が高くなります。自社で記帳を完了させてデータを渡す方が費用を大幅に抑えられます。
決算のみの依頼でも消費税の申告はしてもらえますか?
はい。消費税の確定申告も法人税と同じく税理士に依頼できます。ただし、消費税申告は法人税申告とは別料金になるケースが多く、相場は3〜10万円程度の加算です。課税事業者でインボイス制度に対応している場合は、事前にその旨を税理士に伝えてください。
決算の依頼はいつまでにすべきですか?
決算月の3ヶ月前には税理士を探し始め、2ヶ月前には契約を済ませるのが理想です。申告期限(事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内)の直前では、引き受けてもらえないか、割増料金がかかることが多いです。
スポット決算で税務調査に対応してもらえますか?
一般的に、スポット決算の契約範囲に税務調査対応は含まれません。税務調査が入った場合、別途立会い費用(1日あたり5〜20万円が相場)で依頼するか、自社で対応する必要があります。税務調査リスクが気になる方は顧問契約を検討してください。
設立1期目で決算のやり方がわかりません。スポットでも対応してもらえますか?
対応可能な税理士は多いです。設立1期目は届出書類(青色申告承認申請書・給与支払事務所等の開設届出書等)の確認も含めて対応してもらえます。ただし、設立1期目は消費税の免税判定や役員報酬の設定など重要な税務判断が多いため、可能であれば顧問契約の方が安心です。
決算のみの依頼から顧問契約に切り替えることはできますか?
できます。多くの税理士事務所がスポット決算から顧問契約への移行を受け付けています。1回の決算で相性を確認してから顧問契約に移るのは合理的な進め方です。
法人税の申告を期限内にできなかった場合、どうなりますか?
期限後申告になると、無申告加算税(原則15〜20%、自主的な申告なら5%に軽減)と延滞税が課されます。さらに2期連続で期限内申告ができないと青色申告の承認が取り消されるリスクもあります。期限を守れるよう、早めの準備が不可欠です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • スポット決算の費用相場は15〜30万円。記帳丸投げだと50万円超の可能性も
  • 売上1,000万円以下・取引シンプル・自社記帳可能ならスポット決算が合理的
  • 売上3,000万円超・節税ニーズあり・融資予定ありなら顧問契約の方がコスパが高い
  • スポット決算で費用を抑えるコツは「自社で記帳を完了させてから渡す」こと
  • 税務調査対応はスポットでは対象外。リスクに備えるなら顧問契約を検討
  • 決算月の3ヶ月前から税理士を探し、2ヶ月前には契約を完了させるのが理想

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