【税理士×公認会計士が解説】経営者保証ガイドラインの活用法|個人保証なしで融資を受けるための3つの要件と手続き

監
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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経営者保証ガイドラインの活用法|個人保証なしで融資を受けるための3つの要件と手続き
金融機関から融資を受ける際、経営者個人の保証を求められることを「当然」と思っていませんか?経営者保証ガイドライン(GL)の活用により、3要件を満たせば個人保証なしで融資を受けられ、万一の際も個人破産を回避できます。2022年の改革プログラム以降、政府の後押しで保証解除が加速しています。本記事では税理士×公認会計士が、3要件・解除手続き・最新制度を実務ベースで解説します。
🏆 結論:経営者保証は「外せる」時代。3要件を段階的に満たせば保証解除は現実的
経営者保証ガイドライン(平成26年2月1日適用開始)により、中小企業でも3要件(①法人と経営者の区分分離、②財務基盤の強化、③適時適切な情報開示)を満たせば、個人保証なしの融資や既存保証の解除が可能です。2022年の経営者保証改革プログラム、2024年4月からの信用保証料上乗せ制度により、政府・金融機関とも保証解除の方向に大きく舵を切っています。新規融資の約37%(金融庁2024年公表)が経営者保証なしで実行されており、環境は劇的に改善中。自社が3要件を満たせるか、今すぐチェックすべきです。
経営者保証ガイドラインとは|中小企業経営者を守る自主的ルール
経営者保証ガイドラインは、中小企業の経営者個人が金融機関と結ぶ個人保証(いわゆる連帯保証)について、保証契約の締結時と保証債務の整理時のルールを定めた、中小企業・経営者・金融機関の自主的な取り決めです。2013年12月に策定され、2014年2月1日から運用が始まりました。
ガイドラインの3つの目的
- 新規融資時の経営者保証を不要にする:3要件を満たす企業への融資では保証を求めない
- 既存の経営者保証を解除する:既存借入についても条件を満たせば保証契約を見直す
- 保証履行時の経営者の生活を守る:破産ではなくガイドラインに基づく保証債務整理で華美でない自宅や一定の自由財産を残す
ガイドラインの法的性質
💡 ガイドラインの特徴
ガイドラインは法律ではなく、中小企業・経営者・金融機関が自発的に尊重・遵守することが期待される「自主的なルール」です。法的拘束力はありませんが、①金融庁の監督指針に組み込まれている、②活用実績が各金融機関で公表されている、③2022年以降は政府が積極活用を強く要請している、という実務上強力な背景があります。金融機関は「3要件を満たすか」を真摯に判断することが求められています。
経営者保証ガイドラインの3要件|金融機関が見るチェックポイント
経営者保証を不要にするには、企業が以下の3要件をすべて満たす必要があります。それぞれ「内部統制」「財務状況」「情報開示」の側面から企業のガバナンスが問われます。
3要件の概要
| 要件 |
内容 |
チェックの観点 |
要件① 法人・経営者の 区分分離 |
資産の所有・お金のやりとりが法人と経営者個人で明確に区分されている |
貸借対照表、役員貸付金・借入金、個人資産の混在 |
要件② 財務基盤の 強化 |
法人のみの資産・収益力で借入金の返済が可能である |
自己資本比率、債務償還年数、利益剰余金 |
要件③ 適時適切な 情報開示 |
金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている |
月次試算表、決算書、事業計画書、経営情報の透明性 |
3要件のチェックリスト(自己診断)
以下のチェック項目に半分以上「Yes」となれば、3要件充足に向けて現実的な位置にあります。「No」が多い場合は、まず該当項目の改善から着手すべきです。
🧮 要件①のチェック(法人・経営者の区分分離)
☐ 役員貸付金(法人→経営者)の残高がないか、ごく少額
☐ 役員借入金(経営者→法人)が適切な契約書に基づいて処理されている
☐ 法人の不動産・車両が経営者個人名義になっていない
☐ 経営者個人の費用を法人経費で処理していない
☐ 役員報酬が適正水準(過大・過少でない)
☐ 法人の口座と経営者個人の口座が明確に分離
☐ 法人の取引と個人の取引が混在していない
🧮 要件②のチェック(財務基盤の強化)
☐ 自己資本比率が20%以上(業種により30%以上推奨)
☐ 債務償還年数が10年以内(有利子負債÷減価償却後経常利益等)
☐ 直近3年間、営業利益が黒字継続
☐ 繰越欠損金がない、または解消間近
☐ 内部留保(利益剰余金)が純資産の大半を占める
☐ キャッシュフローが安定してプラス
☐ 純資産額が借入金残高と比較して十分
🧮 要件③のチェック(適時適切な情報開示)
☐ 月次試算表を翌月末までに金融機関へ提出できる
☐ 年次決算書を3ヶ月以内に提出している
☐ 事業計画書(3〜5年)を策定し、更新している
☐ 金融機関からの質問に対し、速やかに回答できる
☐ 重要な経営情報(人事・設備・契約)を事前共有している
☐ 税務申告書別表を金融機関へ開示している
☐ 会計基準(中小企業の会計に関する基本要領)に準拠
要件①|法人・経営者の区分分離の実務
3要件のうち、最も多くの中小企業がつまずくのが「要件①法人・経営者の区分分離」です。中小企業ではワンマン経営が多く、法人と経営者個人の財布が曖昧になりがちだからです。
金融機関がチェックする具体ポイント
| 項目 |
NG例 |
OK例 |
| 役員貸付金 |
BS上に「役員貸付金 500万円」計上 |
役員貸付金ゼロ、または返済計画あり |
| 役員借入金 |
契約書なしで役員から借入、金利計上なし |
金銭消費貸借契約書あり、適正金利計上 |
| 経営者の私的経費 |
経営者の自宅ガソリン代、自宅家賃を法人で処理 |
事業利用分のみ計上、家賃は適切に按分 |
| 資産の名義 |
法人事業用の車両が経営者個人名義 |
法人事業用資産は法人名義で統一 |
| 役員報酬 |
業績に関係なく過大な役員報酬 |
定期同額給与、業績連動で合理的 |
役員貸付金の解消が最優先
⚠️ 役員貸付金は保証解除の最大の障害
中小企業の決算書でよく見かけるのが「役員貸付金」(法人が経営者個人に金を貸している状態)です。これは法人と経営者の財布の混在を示す典型例で、金融機関は「個人の事情で法人資金が流用されている」と判断します。役員貸付金がある状態では、ほぼ確実に保証解除は認められません。まず役員報酬で一括または分割で返済し、役員貸付金をゼロにすることが保証解除の第一歩です。
役員貸付金の解消方法
- 役員報酬からの分割返済:毎月の役員報酬から一定額を返済(最も一般的)
- 退職金との相殺:退任時に退職金と相殺(税務上のメリットあり)
- 役員賞与の返戻:過大な役員賞与を返戻させる形で解消
- 個人資産の現金化:経営者の個人資産(預金・有価証券等)から返済
要件②|財務基盤の強化の実務
要件②「財務基盤の強化」は、「法人だけの資産・収益力で借入金を返済できる」ことを意味します。金融機関は以下の財務指標で判断します。
財務基盤の主要指標
| 指標 |
計算式 |
合格ライン |
| 自己資本比率 |
純資産÷総資産×100 |
20%以上(30%以上が理想) |
| 債務償還年数 |
有利子負債÷(営業CF) |
10年以内 |
| 経常利益 |
営業利益+営業外収益−営業外費用 |
直近3期すべて黒字 |
| インタレストカバレッジレシオ |
(営業利益+受取利息配当)÷支払利息 |
2倍以上 |
| 現預金月商比率 |
現預金÷(売上高÷12) |
1.5ヶ月以上 |
日本政策金融公庫の経営者保証免除特例制度の要件
日本政策金融公庫では、独自の「経営者保証免除特例制度」を設けており、以下の要件を満たせば既存融資も含めて保証免除が可能です。
- 税務申告を2期以上実施:創業2年未満は対象外
- 事業資金融資取引が1年以上:既存取引実績が必要
- 直近1年間、返済遅延なし:約定通りの返済実績
- 債務償還年数10年未満:有利子負債÷{減価償却後経常利益×1/2+減価償却費}
- 自己資本比率20%以上:または自己資本額20百万円以上
参考: 日本政策金融公庫「経営者保証免除特例制度」
財務基盤を強化する実務施策
📊 公認会計士の視点
財務基盤の強化は、短期的には内部留保(利益の内部蓄積)が最も効果的です。「役員報酬を下げて利益を残す→法人税を納める→純資産を積み上げる」の繰り返しで、自己資本比率が徐々に上がります。税務面では役員報酬を減らすと法人税負担が増えますが、経営者保証解除で個人破産リスクがゼロになる価値はそれを大きく上回ります。実務では、3年計画で自己資本比率を10%→20%→30%と段階的に上げるロードマップを作るのが効果的です。
要件③|適時適切な情報開示の実務
要件③は、金融機関から「この会社は透明性が高く、信頼できる」と評価されるための情報開示の体制です。
情報開示に求められる3段階
| 段階 |
開示内容 |
頻度 |
| 基本レベル |
年次決算書、税務申告書別表 |
年1回(決算後3ヶ月以内) |
| 標準レベル |
月次試算表、月次資金繰り表、受注残 |
月1回(翌月末まで) |
| 高度レベル |
事業計画書、KPIダッシュボード、経営会議資料 |
四半期または事業上のイベント時 |
情報開示のチェック項目
- 月次試算表の提出:翌月末までに金融機関へ提出する体制がある
- 決算書の早期提出:決算日から3ヶ月以内に提出
- 事業計画書の策定:3〜5年の事業計画があり、定期的に更新
- 中小会計要領への準拠:「中小企業の会計に関する基本要領」に基づく決算
- 金融機関との定期面談:四半期ごとに対面で報告・質疑応答
- 事前相談の習慣:重要な経営判断(設備投資・人事)を事前に共有
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経営者保証解除の8ステップ実務フロー
保証解除は、以下の8ステップで進めます。自己診断から合意まで、標準的には6ヶ月〜1年程度かかります。
| ステップ |
内容 |
期間目安 |
| ①自己診断 |
3要件の充足度を自己確認、不足項目の特定 |
1ヶ月 |
| ②改善施策の実行 |
役員貸付金解消、月次試算表運用開始など |
3〜12ヶ月 |
| ③金融機関選定 |
メイン・準メイン・サブバンクを整理、優先順位決定 |
1週間 |
| ④申込資料作成 |
決算書3期分、月次試算表、事業計画書、3要件自己評価書 |
2〜4週間 |
| ⑤金融機関へ申込 |
対面説明、3要件充足の根拠を提示 |
1回〜 |
| ⑥金融機関の審査・協議 |
金融機関内部での審査、追加資料提出、条件協議 |
1〜3ヶ月 |
| ⑦条件合意 |
保証解除の可否、代替条件(保証料上乗せ等)の合意 |
2週間 |
| ⑧契約変更 |
保証契約の解除、継続的なモニタリング体制 |
1週間 |
金融機関への申込時に準備する資料
- 決算書(直近3期分:BS、PL、CF、販管費内訳、税務申告書別表)
- 月次試算表(直近12ヶ月分)
- 事業計画書(3〜5年、PL計画・投資計画・資金計画)
- 3要件の自己評価書(どの要件をどう満たしているかの説明書)
- 役員貸付金・借入金の推移表(解消済みであることの証跡)
- 株主構成・役員構成
- 経営者の個人信用情報(必要に応じて)
💡 実務のポイント
保証解除の申込時は、「3要件をどう満たしているか」を会社側から能動的に説明する姿勢が重要です。金融機関任せにすると、書類を待つだけの消極的な審査になり、判断に時間がかかります。自己評価書に「要件①:役員貸付金ゼロ、役員報酬は業績連動、経営者個人の住居費は按分計上」のように具体的な根拠を書くと、審査がスムーズに進みます。経営者保証改革プログラムにより金融機関への説明責任も強化されており、これまでより交渉が進めやすくなっています。
2024年4月開始|信用保証料上乗せによる保証解除制度
2024年4月から、「経営者の取組次第で達成可能な要件」を充足すれば、信用保証料の上乗せ負担により経営者保証の解除を選択できる新制度が始まりました。これは中小企業の保証解除を加速させる画期的な制度です。
新制度の概要
📢 信用保証料上乗せで経営者保証を外せる新制度(2024年4月〜)
信用保証付融資で、従来なら経営者保証が必要だった場合でも、以下の要件を満たせば保証料の上乗せ(経営状態に応じて変動)により経営者保証を不要にできる制度です。
- 法人から代表者への貸付等がないこと(役員貸付金ゼロ)
- 決算書類等を金融機関に定期的に提出していること(月次試算表・決算書)
- その他の要件(各保証協会の運用)
上乗せ保証料と経営者保証解除のコスト比較
上乗せ保証料は、信用保証協会の審査により、会社の財務状況に応じて0.1〜0.5%程度が一般的です。借入1,000万円なら年1〜5万円の追加保証料となります。個人保証のリスクを考えると、年数万円の追加負担は十分ペイします。
経営者保証改革プログラム(2022年12月公表)の全体像
2022年12月に公表された「経営者保証改革プログラム」は、経営者保証に依存しない融資慣行の確立を加速させるための政府の包括的な政策パッケージです。4つの重点分野で改革が進められています。
改革プログラムの4つの重点分野
| 重点分野 |
主な施策 |
| ①スタートアップ・創業 |
日本政策金融公庫の創業5年以内への保証不要制度、商工中金スタートアップ向け融資の保証原則廃止 |
| ②民間金融機関による融資 |
監督指針改正、経営者保証依存解消に向けた金融機関の取組方針公表 |
| ③信用保証付融資 |
2024年4月からの保証料上乗せ制度、経営者保証解除の促進 |
| ④中小企業のガバナンス |
3要件充足支援、中小企業活性化協議会の「収益力改善支援」活用 |
金融機関の活用実績(金融庁公表データ)
🧮 最新の保証解除実績
金融庁が公表している直近の実績では、民間金融機関の新規融資のうち経営者保証なしの割合は約37%まで上昇しています(2014年の約12%から大幅増加)。特にメガバンクでは50%超、地銀でも30〜40%、信用金庫でも20〜30%の水準となっており、3要件を満たせば保証解除は現実的な選択肢となっています。各金融機関の実績は金融庁サイトで個別に公表されています。
参考: 金融庁「経営者保証に関するガイドラインの活用実績等について」。個別金融機関別・業態別の保証解除実績が公開されており、自社の取引金融機関の活用姿勢を確認できます。
保証解除がうまくいかない企業の3パターン
実務では、保証解除を申し込んだものの承認されないケースもあります。典型的な3つのパターンと対処法を解説します。
パターン1|役員貸付金が残っている
⚠️ パターン1の特徴
BS上に役員貸付金が残っている状態では、要件①「法人・経営者の区分分離」を満たさないため、保証解除は承認されません。対処法:役員報酬からの分割返済計画を立てて、1〜3年かけて完済する。退任時の退職金で相殺する方法もあります。役員貸付金ゼロを達成してから再申込みします。
パターン2|財務基盤が弱い
⚠️ パターン2の特徴
自己資本比率が10%未満、債務償還年数15年以上などの財務状況では、要件②「財務基盤の強化」を満たさないため保証解除は難しい状態です。対処法:3年計画で自己資本比率・債務償還年数を改善します。役員報酬を見直して利益を残す、不採算事業の整理、適切な借入規模への圧縮、などの施策を段階的に実行します。
パターン3|情報開示が不十分
⚠️ パターン3の特徴
月次試算表を作成していない、決算書の提出が遅い、事業計画書がない、という状態では要件③「適時適切な情報開示」を満たしません。対処法:会計ソフトの導入で月次試算表を自動化、税理士との顧問契約で月次報告体制を構築、事業計画書を3〜5年分策定。情報開示の体制作りは比較的短期(3〜6ヶ月)で整備可能です。
経営者保証ガイドラインに基づく保証債務整理|個人破産を回避する道
万一、会社が返済困難になった場合でも、経営者保証ガイドラインに基づく保証債務整理を選択すれば、個人破産を避けながら経営者の生活を守ることができます。
保証債務整理の適用要件
- 法人の債務整理手続きの実施:法的整理または準則型私的整理(中小企業活性化協議会スキーム等)と同時
- 経済的合理性:金融機関が破産配当よりも多くの回収を得られる見込み
- 誠実な対応:経営者が弁済計画の作成に誠実に対応する
- 免責不許可事由がない:浪費・詐欺的行為がない
保証債務整理のメリット(個人破産との比較)
| 項目 |
個人破産 |
GL保証債務整理 |
| 自宅の残存 |
原則喪失 |
華美でない自宅は残存可 |
| 自由財産 |
99万円 |
最大月収の2年分(500〜1,000万円程度) |
| 信用情報 |
ブラックリスト(5〜10年) |
登録なし(原則) |
| 官報公告 |
掲載される |
掲載されない |
| 手続き |
裁判所関与、公的手続き |
金融機関との協議、非公開 |
| 資格制限 |
一部業種で制限 |
制限なし |
華美でない自宅の残存ルール
ガイドラインでは、保証人の生活維持に必要な「華美でない自宅」は原則として処分対象から除外できます。目安として、以下のような場合に該当します。
- 自宅の評価額が保証債務額に比べて過大でない
- 地域の標準的な規模・仕様の住宅
- 経営者と家族の生活の本拠となっている
- 住宅ローンの残高と評価額を考慮し、実質的な資産価値が小さい場合
事業承継時の経営者保証|二重徴求問題と解決策
事業承継時、旧経営者の保証を解除せず、新経営者にも新たに保証を求める「二重徴求」が問題となってきました。2020年4月からの「事業承継時の経営者保証解除に向けた専門家派遣」制度など、対策が進んでいます。
事業承継時の保証解除の詳細は、「事業承継時の経営者保証の取扱い|旧経営者の保証解除と新経営者の二重徴求問題」で詳しく解説します。
よくある質問(FAQ)
経営者保証を外すのに、どれくらい時間がかかりますか?
3要件をすべて満たしている企業なら、申込から承認まで2〜3ヶ月程度です。要件を満たしていない場合、改善(役員貸付金の解消、財務改善、情報開示体制構築)に1〜3年かかることもあります。標準的には、自己診断から保証解除完了まで6ヶ月〜1年が目安です。早期に着手し、段階的に3要件を整備することが重要です。
既存の経営者保証も外せますか?
はい、既存の保証契約も3要件を満たせば見直しが可能です。経営者保証ガイドラインは、新規融資時だけでなく、既存の保証契約についても「適切な見直し」を求めており、金融機関もこれに応じる体制を整えつつあります。日本政策金融公庫の「経営者保証免除特例制度」は、既存融資も対象です。メインバンクとの協議から始めるのが実務的です。
役員貸付金があると絶対に保証解除できないのですか?
原則として、役員貸付金が残っている状態では保証解除は困難です。金融機関は「法人と経営者の財布が分離されていない」と判断するためです。ただし、金額が小さい(例:10〜20万円程度)かつ明確な返済計画がある場合は、例外的に認められるケースもあります。確実な解除を目指すなら、役員貸付金ゼロを目標にすべきです。
創業したばかりで決算書がなくても保証なしで借りられますか?
はい、可能性があります。2022年12月の経営者保証改革プログラムにより、スタートアップ・創業支援が重点分野の一つとなり、日本政策金融公庫では創業5年以内の企業に対して経営者保証を求めない制度が拡充されています。また、商工中金のスタートアップ向け融資では、2022年10月から経営者保証が原則廃止されました。創業時から保証なしの融資を受けるチャンスは大きく広がっています。
3要件を満たしていても保証解除が断られることはありますか?
あります。最終的な判断は金融機関にゆだねられており、法的拘束力はないためです。断られる主な理由は、①業界全体のリスク認識(建設業・運送業等)、②金融機関側の内部方針、③担当者・支店長の保守的な判断、などです。断られた場合は、①別の金融機関に申込む、②信用保証協会の保証料上乗せ制度を利用、③中小企業活性化協議会の「収益力改善支援」を活用、などの選択肢があります。
保証料の上乗せと保証付きで個人保証どちらが得ですか?
長期的には保証料上乗せで経営者保証を外す方が得になるケースが多いです。上乗せ保証料は借入1,000万円あたり年1〜5万円程度ですが、個人保証のリスクは数千万円〜の個人資産喪失です。また、事業の柔軟性(思い切った投資・事業再編)も個人保証があると制約されます。「コスト」より「リスクマネジメント」の観点で考えることをお勧めします。
事業がうまくいかなくなったら、本当に破産しなくて済みますか?
経営者保証ガイドラインに基づく保証債務整理を選択すれば、個人破産を回避できる可能性が高いです。適用要件は、①法人の債務整理手続きと同時に行う、②経済的合理性がある、③経営者が誠実に対応、④免責不許可事由がない、の4点です。華美でない自宅は残せ、最大月収2年分(500〜1,000万円程度)の自由財産も確保できるため、経営者の生活を守りながら再出発できます。中小企業活性化協議会や中小版GLと連動して進めるのが実務的です。
保証解除の申込は税理士に任せられますか?
はい、多くの場合、税理士が支援します。特に3要件の自己評価書の作成、財務分析、金融機関への説明資料作成は税理士・公認会計士の専門領域です。ただし、保証解除は金融機関との直接的な交渉が必要なため、税理士はあくまで「伴走役」として機能し、最終的には経営者が金融機関と合意する形になります。認定支援機関である会計士・税理士に相談するのが現実的です。
複数の金融機関と取引がある場合、一行だけ保証解除できますか?
はい、理論的には一行のみの保証解除も可能です。ただし、他の金融機関が「うちだけ保証を残すのは不公平」と主張するケースがあり、実務上は全取引先で足並みを揃えて進めることが多いです。まずメインバンクに相談し、保証解除の方針を固めた上で、他行にも同時に打診するのが一般的です。プロラタ原則(公平性の原則)を踏まえた交渉が必要です。
経営者保証解除に関するサポート制度はありますか?
複数あります。①中小企業庁「経営者保証解除支援事業」:専門家派遣の費用補助、②中小企業活性化協議会「収益力改善支援」:3要件充足に向けた計画策定支援、③信用保証協会「経営者保証コーディネーター」:専門家による相談・助言、④金融機関の「経営者保証なし融資」専用窓口、などです。地元の商工会議所・中小機構・よろず支援拠点でも無料相談可能です。自分で探すのが難しい場合は、認定支援機関の税理士・会計士に相談することをお勧めします。
まとめ|経営者保証解除は中小企業の経営者が最優先で取り組むべき課題
📋 この記事のポイント
- 経営者保証ガイドラインの3要件(区分分離・財務基盤・情報開示)を満たせば個人保証を外せる
- 2022年の経営者保証改革プログラム、2024年の保証料上乗せ制度で保証解除が加速
- 新規融資の約37%(2024年)が経営者保証なしで実行されている
- 要件①は役員貸付金ゼロが絶対条件、要件②は自己資本比率20%以上・債務償還年数10年以内、要件③は月次試算表の翌月提出体制
- 保証解除の8ステップフローで自己診断から合意まで6ヶ月〜1年で完了可能
- 信用保証付融資では2024年4月から保証料上乗せで経営者保証解除の新制度スタート
- 万一返済困難になっても、ガイドラインに基づく保証債務整理で個人破産を回避可能
- 華美でない自宅の残存、最大月収2年分の自由財産確保で経営者の生活を守れる
経営者保証は、もはや「やむを得ない必須条件」ではありません。3要件を計画的に整備し、金融機関と適切に交渉すれば、保証解除は現実的な選択肢となっています。政府・金融庁・金融機関とも保証解除の方向に舵を切っており、環境は劇的に改善しています。経営者個人の財産を守るため、そして思い切った事業展開を可能にするため、いま経営者保証解除に取り組むべきです。3要件の自己診断から始めて、必要なら専門家のサポートを受けながら段階的に進めましょう。
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