【税理士×公認会計士×行政書士が解説】事業承継時の経営者保証の取扱い|旧経営者の保証解除と新経営者の二重徴求問題

監
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
事業承継時の経営者保証の取扱い|旧経営者の保証解除と新経営者の二重徴求問題
事業承継を検討中の経営者・後継者候補向けに、事業承継時の経営者保証の取扱いを税理士×公認会計士×行政書士が解説します。2019年ガイドライン特則・事業承継特別保証制度・経営者保証コーディネーター制度の3本柱で、旧経営者の保証解除と新経営者への二重徴求回避を実現する実務ガイドです。
🏆 結論:二重徴求は原則禁止。旧経営者・新経営者とも保証解除が可能な時代
事業承継時の経営者保証は、後継者が承継を拒否する最大の理由の一つでした。2019年12月に策定されたガイドライン特則により「原則として前経営者・後継者の双方からの二重徴求を行わない」との取扱いが明確化され、2020年から経営者保証コーディネーター制度、2020年4月からは信用保証協会の「事業承継特別保証制度」も始まりました。現在では、3要件(区分分離・財務基盤・情報開示)を満たす企業なら、旧経営者の保証解除と新経営者への保証不要を同時に実現することが現実的な選択肢となっています。
事業承継時の経営者保証が抱える3つの課題
事業承継を進める際、経営者保証は避けて通れない重要論点です。後継者候補が保証を理由に承継を断るケースや、旧経営者がリタイア後も保証から抜けられないケースなど、典型的な3つの課題があります。
課題1|旧経営者が引退後も保証から抜けられない
事業承継を行っても、旧経営者が過去に結んだ経営者保証は自動的には解除されません。金融機関との個別協議が必要です。旧経営者がリタイア後も、会社の借入金に対する個人保証の責任を負い続けるケースが長年問題視されてきました。
課題2|後継者への二重徴求
旧経営者の保証を残したまま、新経営者にも新たに保証を求める「二重徴求」が慣習的に行われてきました。これは金融機関にとってリスク軽減策ですが、事業承継を阻害する最大の要因となっていました。
課題3|後継者が承継を拒否する
中小企業庁の調査によると、親族内承継を検討する後継者候補が承継を躊躇する理由の第1位が「経営者保証の引継ぎ」です。数千万円〜数億円規模の個人保証を引き受けることへの不安から、承継自体が進まないケースが多発していました。
⚠️ 事業承継の危機
中小企業庁の「中小企業白書」によると、中小企業経営者の平均年齢は60歳代半ばに達しており、今後10年以内に70代を迎える経営者が大量発生します。後継者不在による廃業予備軍は約127万社(日本の全企業の約3割)に上り、放置すれば地域経済・雇用への深刻な影響が予測されます。経営者保証は、この事業承継クライシスの主要な阻害要因です。
2019年ガイドライン特則|事業承継時の取扱い基本ルール
2019年12月、経営者保証ガイドライン研究会が「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」を公表しました。これは2014年の本体ガイドラインを事業承継の局面に特化して補完するものです。
特則の中心ルール|二重徴求原則禁止
特則の最大のポイントは、「原則として前経営者・後継者の双方からの二重徴求を行わない」という取扱いが明記された点です。金融機関はこれまでのような慣習的な二重徴求ができなくなりました。
金融機関が二重徴求を検討できる例外4類型
原則禁止とはいえ、以下の4類型の場合は二重徴求も正当化されうるとされています。
| 類型 |
具体的なケース |
| ①前経営者が実質的な経営権・支配権を有している |
代表退任後も大株主のまま実質的な経営判断に関与 |
| ②後継者の経営能力が十分でない |
経営経験が浅く、独立した経営判断に懸念がある |
| ③財務状況が著しく悪化 |
承継時点で債務超過や極度の経営悪化状態 |
| ④情報開示の透明性が不十分 |
月次試算表の提出や事業計画の開示が不徹底 |
これらの例外に該当しない限り、金融機関は二重徴求を避けるべきとされています。つまり「4要件のいずれにも該当しない場合は、原則として新経営者のみが保証する」という運用が原則となります。
参考: 中小企業庁「経営者保証」。2019年特則本文、廃業時の基本的考え方、経営者保証改革プログラムなどガイドライン関連資料が一覧で掲載されています。
旧経営者の保証解除の判断基準
旧経営者の保証解除について、特則は以下の2点を総合的に考慮することを金融機関に求めています。
- 前経営者が引き続き実質的な経営権・支配権を有しているか否か:代表退任後も株主として影響力を持つか、役員として経営判断に関与するか
- 法人の資産・収益力による借入返済能力があるか:3要件(区分分離・財務基盤・情報開示)を満たしているか
💡 実務のポイント
実務では、事業承継を契機に「経営者保証の全面的な見直し」を金融機関に求めるケースが増えています。承継時は金融機関との再契約のタイミングとなるため、3要件の充足状況と合わせて保証解除を交渉するのに最適なタイミングです。特に、旧経営者の保証解除は「承継と同時」が最も交渉しやすく、後から単独で解除するより大幅に有利です。詳細は「経営者保証ガイドラインの活用法|3要件と手続き」もご参照ください。
事業承継特別保証制度|2020年4月からの新制度
事業承継時の保証解除を後押しするため、信用保証協会が2020年4月に「事業承継特別保証制度」を創設しました。一定要件を満たす企業は、新規・借換えの融資について経営者保証なしで信用保証協会の保証が受けられる画期的な制度です。
事業承継特別保証制度の5要件
- 3年以内に事業承継を予定する中小企業者または2020年4月1日以降に事業承継を実施した中小企業者(承継後3年以内)
- 資産超過であること(純資産がプラス)
- EBITDA有利子負債倍率10倍以内:有利子負債÷(営業利益+減価償却費)
- 法人と経営者の分離がなされている(役員貸付金・役員借入金なし等)
- 返済緩和中ではない(リスケ中は対象外)
保証限度額と保証料
| 項目 |
内容 |
| 保証限度額 |
2億8,000万円(組合4億8,000万円) |
| 保証期間 |
10年以内(うち据置期間1年以内) |
| 保証料率 |
0.45〜1.90%(通常より0.2%程度減免) |
| 対象資金 |
事業承継時に必要な事業資金(借換え含む) |
| 経営者保証 |
不要 |
参考: 中小企業庁「事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策」
既存借入の借換えで旧経営者の保証を一気に外せる
🧮 借換え活用の実例
旧経営者が2億円の経営者保証を負っている状態で事業承継を実施する場合、この2億円の借入を「事業承継特別保証」で借換えすれば、旧経営者の保証は完全に外れます。新たな借入には経営者保証が不要なため、新経営者も保証を負いません。借換えに伴う保証料や手数料は発生しますが、旧経営者・新経営者ともに個人保証から完全に解放される価値は大きく、事業承継の決定打となる制度です。
経営者保証コーディネーター制度|2020年度開始の専門家支援
2020年度から、全国の事業承継・引継ぎ支援センターに「経営者保証コーディネーター」が配置されました。中小企業診断士・税理士・弁護士等の専門家が、事業承継時の経営者保証解除に向けた支援を無料で提供します。
経営者保証コーディネーターが提供する支援
- 事業承継時判断材料チェックシートの活用支援:3要件の充足度を客観的に診断
- 金融機関との交渉支援:専門家の第三者的な関与で交渉を円滑化
- 経営改善の助言:3要件を満たすための財務改善提案
- 専門家への橋渡し:税理士・中小企業診断士・弁護士の紹介
事業承継時判断材料チェックシートの活用
経営者保証コーディネーターが用いる「事業承継時判断材料チェックシート」は、3要件を具体的な項目に落とし込んだ客観的評価ツールです。このシートの確認結果を金融機関に提示することで、「第三者の専門家が3要件を満たすと判定している」という客観性が担保され、保証解除交渉が大きく前進します。
💡 経営者保証コーディネーター利用のメリット
コーディネーターの支援は無料です。自社だけで金融機関と交渉するより、専門家が中立的立場から関与することで交渉が大きく進みます。特に、3要件のうち「財務基盤の強化」に課題がある場合、コーディネーターが経営改善計画の策定を助言し、金融機関から見た信用力を高める支援も受けられます。事業承継を本格的に検討する経営者は、まず地元の事業承継・引継ぎ支援センターに相談することをお勧めします。
AYUSAWA PARTNERS
事業承継・経営者保証解除のご相談は鮎澤パートナーズへ
初回相談無料。認定経営革新等支援機関として、事業承継計画の策定から経営者保証解除、事業承継特別保証制度の活用までワンストップでサポート。旧経営者・新経営者双方の利益を守る最適な承継スキームを提案します。
鮎澤パートナーズに相談する
承継パターン別の経営者保証の取扱い|親族内・社内・M&Aの比較
事業承継には大きく3つのパターン(親族内承継・社内承継・M&A)があり、それぞれで経営者保証の取扱いが異なります。
承継パターン別の保証取扱い比較表
| 承継パターン |
旧経営者の保証 |
新経営者の保証 |
活用しやすい制度 |
| 親族内承継 |
解除交渉が必要 |
原則不要(二重徴求禁止) |
事業承継特別保証、GL特則 |
| 社内承継(MBO) |
解除交渉が必要 |
MBO資金の保証は別途検討 |
事業承継特別保証、DDS |
| M&A(第三者承継) |
M&A契約で解除 |
買い手企業の信用力による |
買い手企業の与信枠 |
親族内承継の場合
親族内承継(親→子、配偶者・兄弟等)は、事業承継特別保証制度と2019年特則の適用を最も受けやすいパターンです。3要件を満たし、前経営者が実質的な経営関与から退く場合、旧経営者の保証解除と新経営者への保証不要を同時に実現できます。
社内承継(MBO)の場合
従業員や役員が経営者を引き継ぐMBO(Management Buyout)では、後継者が自社株を買い取るための資金が必要となり、個人で借入をして保証を負うケースがあります。この場合、事業承継特別保証制度の活用や、DDS(資本性劣後ローン)の組み合わせで保証負担を最小化する設計が有効です。
M&A(第三者承継)の場合
M&Aで株式を第三者(企業や個人)に譲渡する場合、旧経営者の保証は通常、M&A契約の条件として買い手負担で解除されます。買い手企業の信用力や担保提供、保証交代で対応するのが一般的です。詳細は「事業再生のスキームを比較」で関連する論点を整理しています。
停止条件付保証・解除条件付保証の活用
特則では、一律に保証を徴求する「二択」ではなく、柔軟な条件設定による中間的な選択肢も推奨されています。
停止条件付保証とは
通常時は保証が発動せず、一定の財務悪化条件(例:債務超過・2期連続赤字・債務償還年数15年超等)が発生した場合に初めて保証が有効になる契約形態です。経営が順調な間は実質的に保証なしの状態を維持できます。
解除条件付保証とは
承継時点では保証を締結するものの、一定の財務改善条件(例:自己資本比率30%達成・5期連続黒字等)を満たした時点で保証が自動解除される契約形態です。事業の立ち上がり期は保証を残しつつ、安定後に解除する設計に向いています。
| 保証形態 |
契約時の扱い |
向くケース |
| 通常の保証 |
契約時から有効 |
従来型、3要件を満たさない場合 |
| 停止条件付保証 |
通常時は無効、悪化時に発動 |
3要件は満たすが金融機関が慎重 |
| 解除条件付保証 |
契約時は有効、改善時に解除 |
承継時は不安、将来の改善期待 |
| 保証なし |
契約時から保証不要 |
3要件完全充足、事業承継特別保証 |
📊 公認会計士の視点
3要件が完全に整っていない段階の企業にとって、停止条件付保証は有効な選択肢です。例えば、承継直後で財務基盤がまだ脆弱な場合でも、「債務超過になった時点で保証が発動する」という条件付なら、金融機関のリスクは担保されつつ、経営者の心理的・経済的負担が大幅に軽減されます。金融機関との交渉で「保証なしは難しくとも、条件付保証なら」という妥協点を見出せるケースが増えています。実務では、承継後3年間は停止条件付、その後は自動解除といった時間的な組み合わせもあり得ます。
事業承継時の経営者保証解除の8ステップ実務フロー
事業承継に向けて経営者保証を解除するプロセスを、実務的な8ステップで整理します。標準的には承継準備から保証解除完了まで1〜2年を要します。
| ステップ |
内容 |
期間目安 |
| ①事業承継準備 |
後継者確定、承継計画策定、スケジュール化 |
3〜6ヶ月 |
| ②支援センターへ相談 |
事業承継・引継ぎ支援センターで初回相談 |
1ヶ月 |
| ③コーディネーター活用 |
判断材料チェックシートで3要件充足度を診断 |
1〜2ヶ月 |
| ④財務改善実行 |
役員貸付金解消、内部留保拡充、情報開示体制構築 |
6〜12ヶ月 |
| ⑤金融機関への事前相談 |
メインバンクに承継計画と保証解除方針を共有 |
1〜2ヶ月 |
| ⑥事業承継の実行 |
株式譲渡・代表交代・登記変更 |
1〜3ヶ月 |
| ⑦保証解除の申込 |
3要件自己評価書と必要書類を金融機関へ提出 |
1〜2ヶ月 |
| ⑧合意・契約変更 |
旧経営者の保証解除、新経営者への保証不要契約 |
1ヶ月 |
承継後に残る継続的な義務
保証解除後も、3要件の充足を維持する努力が必要です。月次試算表の提出、事業計画の更新、金融機関への定期報告などを継続することで、保証解除が再徴求されない状態を保ちます。
事業承継税制との組み合わせ活用
経営者保証の取扱いと並行して、事業承継税制(非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予及び免除)の活用も検討すべきです。一定要件を満たす事業承継で、非上場株式に係る贈与税・相続税が猶予・免除される制度です(租税特別措置法第70条の7の5等)。
事業承継税制(特例措置)の概要
| 項目 |
内容 |
| 対象 |
非上場株式の贈与・相続 |
| 猶予・免除割合 |
100%(特例措置) |
| 適用期限 |
2027年12月31日までの贈与・相続(特例措置) |
| 事前要件 |
特例承継計画を2026年3月31日までに提出 |
| 事後要件 |
5年間の事業継続、雇用維持要件等 |
📢 特例承継計画の提出期限に注意
事業承継税制の特例措置を活用するためには、事前に「特例承継計画」を都道府県に提出する必要があります。提出期限は2026年3月31日で、これを過ぎると100%納税猶予の特例が受けられず、一般措置(80%猶予)しか適用されません。事業承継を検討している企業は、経営者保証の解除交渉と並行して、この提出期限にも注意が必要です。
事業承継時に経営者保証を解除できなかった場合の対処法
3要件の充足度が不十分などの理由で、承継時に経営者保証を解除できなかった場合でも、以下の代替策で個人の負担を軽減できます。
代替策1|停止条件付保証で実質的な解除効果
金融機関が無条件の保証解除に応じない場合、停止条件付保証で交渉することで、通常時は保証が発動しない状態にできます。事業が順調なら実質的な保証なしと同じ効果が得られます。
代替策2|事業承継特別保証で借換え
既存借入を事業承継特別保証制度で借り換えることで、旧経営者の保証を外せる可能性があります。信用保証協会への保証料は発生しますが、経営者保証からの解放は大きな価値があります。
代替策3|段階的保証解除
承継直後は保証を残し、1〜3年後に財務改善が確認できた段階で保証解除する段階的なアプローチもあります。金融機関との合意書面に「一定条件を満たした時点で保証解除する」と明記しておくことが重要です。
代替策4|経営者保証GLに基づく保証債務整理
万一、事業がうまくいかず返済困難になった場合でも、経営者保証ガイドラインに基づく保証債務整理を選択すれば、個人破産を回避しながら華美でない自宅や最大月収2年分の自由財産を残すことができます。詳細は「経営者保証ガイドラインの活用法|3要件と手続き」で解説しています。
よくある質問(FAQ)
事業承継で後継者に保証を引き継がせずに済みますか?
はい、2019年のガイドライン特則により、原則として前経営者・後継者の双方からの二重徴求は禁止されています。3要件(区分分離・財務基盤・情報開示)を満たし、前経営者が実質的な経営関与から退くなら、後継者に保証を引き継がせずに済む可能性が高いです。ただし金融機関の最終判断であるため、事前準備(3要件の整備)と金融機関との綿密な交渉が必要です。
旧経営者が退任後も大株主のままだと保証解除はできませんか?
大株主であるだけで「実質的な経営関与」と判断されるわけではありません。判断基準は「実質的な経営権・支配権を有しているか」で、①代表権を持つか、②経営判断に関与するか、③株主総会で支配的な影響力を行使するか等を総合判断します。株主としての権利だけで経営判断に関与していない「純粋な株主」であれば、保証解除は可能性が残ります。事前に弁護士・税理士と相談し、金融機関への説明資料を整えることが重要です。
事業承継特別保証制度の借換えで手数料はどれくらいかかりますか?
信用保証協会への保証料(0.45〜1.90%/年・通常より0.2%減免)と、金融機関への事務手数料(借入額の1%前後)が発生します。借入1億円を10年借換える場合、保証料は年45万〜190万円(合計で450万円〜1,900万円)が目安です。一見高額ですが、旧経営者の2億円の個人保証を外す価値と比較すれば、十分ペイする投資と位置付けられます。
経営者保証コーディネーターの利用は有料ですか?
無料です。全国の事業承継・引継ぎ支援センター(47都道府県すべてに設置)に相談すれば、経営者保証コーディネーターが無料で事業承継時判断材料チェックシートを使った診断・助言を行います。必要に応じて、税理士・中小企業診断士・弁護士等の専門家の紹介も受けられます。まずは地元のセンターに電話予約することをお勧めします。
事業承継税制と経営者保証解除はどちらを先にやるべきですか?
並行して進めるのが最も合理的です。事業承継税制(特例措置)は2026年3月31日までに特例承継計画の提出が必要で、経営者保証解除は金融機関との交渉に6ヶ月〜1年を要します。両者は別プロセスですが、いずれも事業承継を円滑に進めるための重要な要素です。税理士・認定支援機関と相談し、両方を含む統合的な事業承継計画を策定することをお勧めします。
停止条件付保証の具体的な発動条件はどう決めますか?
発動条件は金融機関との個別交渉で決定しますが、一般的には以下のような条件が使われます:①債務超過(純資産マイナス)、②2期連続赤字、③債務償還年数15年超、④インタレストカバレッジレシオ1倍未満、⑤主要財務指標の大幅な悪化(自己資本比率10%未満等)。条件の数と厳しさにより、実質的な保証発動リスクが変わります。実務では、2〜3つの条件のAND条件にすることで、発動リスクを小さく抑えるケースが多いです。
M&Aで売却する場合、旧経営者の保証はどうなりますか?
M&A契約の条件として、買い手企業が旧経営者の保証を肩代わり(保証交代)するか、借入を一括返済して保証契約自体を終了させるのが一般的です。M&A契約の交渉段階で「表明保証」および「承継後の保証解除」を必須条件として明記します。株式譲渡対価の一部が旧経営者の保証解除にあたる対価に充当されるケースもあります。M&A専門のアドバイザー・弁護士と相談しながら進めるのが実務です。
社内承継(MBO)では経営者保証はどうなりますか?
MBO(Management Buyout)では、後継者が自社株を取得するための資金が必要となり、個人が借入を行うケースが多いです。この場合、借入資金に対する保証は必要となりますが、本業の借入(法人名義)については事業承継特別保証制度で保証不要にできる可能性があります。MBO資金とコーポレート資金を分けて考え、後者は保証解除、前者は必要最小限の保証、という設計が実務的です。
事業承継時に経営者保証を解除できなかった場合、再挑戦は可能ですか?
可能です。1〜3年の財務改善後に再申請することで、保証解除が認められるケースが多々あります。承継直後は3要件が不十分でも、内部留保の拡充・役員貸付金の解消・情報開示体制の構築により段階的に3要件を満たしていけば、再度の交渉で保証解除が可能になります。実務では「承継時+3年後」のタイミングで再交渉する企業が増えています。
旧経営者が高齢で亡くなった場合、保証はどうなりますか?
経営者保証は被相続人の一般の相続財産として、相続人に承継されるのが原則です(民法第896条)。ただし、相続放棄(民法第915条)や限定承認(民法第922条)を行えば、保証債務から逃れることができます。事業承継を計画的に行い、承継時に旧経営者の保証を解除しておけば、こうした相続トラブルを予防できます。高齢の経営者ほど、早めの保証解除と事業承継の実行が重要です。
まとめ|事業承継は「経営者保証解除と同時」が最適なタイミング
📋 この記事のポイント
- 事業承継時の経営者保証は、後継者が承継を拒否する最大の理由の一つ
- 2019年ガイドライン特則により、原則として前経営者・後継者の双方からの二重徴求は禁止
- 例外4類型(前経営者の経営関与・後継者の能力不足・財務悪化・情報開示不足)以外では二重徴求は避けるべき
- 2020年4月開始の事業承継特別保証制度で既存借入の借換えと経営者保証解除が同時に可能
- 経営者保証コーディネーター制度で無料の専門家支援が受けられる
- 親族内承継・社内承継(MBO)・M&Aで保証取扱いが異なる
- 停止条件付保証・解除条件付保証で中間的な柔軟な対応も可能
- 事業承継税制の特例承継計画は2026年3月31日までの提出が必要
- 事業承継は経営者保証解除の最適なタイミング。承継時に解除できないと後から単独解除は難航
事業承継と経営者保証の解除は、別々に進めるのではなく、セットで設計するのが実務上最も効率的です。事業承継税制・事業承継特別保証・ガイドライン特則の3つを組み合わせることで、旧経営者は保証から完全に解放され、新経営者は保証負担なしで事業を引き継ぐことが現実的に可能です。後継者不在の廃業を防ぎ、事業を次世代に引き継ぐために、いま行動を起こすべきです。
AYUSAWA PARTNERS
事業承継と経営者保証解除のワンストップ対応は鮎澤パートナーズへ
初回相談無料。認定経営革新等支援機関として、事業承継計画の策定、経営者保証コーディネーターとの連携、事業承継特別保証制度の活用、事業承継税制の特例承継計画提出まで、4士業連携でサポートします。旧経営者・新経営者の双方にとって最適な承継スキームを設計します。
鮎澤パートナーズに相談する