公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
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事業承継を検討中の経営者・後継者候補向けに、事業承継時の経営者保証の取扱いを税理士×公認会計士×行政書士が解説します。2019年ガイドライン特則・事業承継特別保証制度・経営者保証コーディネーター制度の3本柱で、旧経営者の保証解除と新経営者への二重徴求回避を実現する実務ガイドです。


事業承継を検討中の経営者・後継者候補向けに、事業承継時の経営者保証の取扱いを税理士×公認会計士×行政書士が解説します。2019年ガイドライン特則・事業承継特別保証制度・経営者保証コーディネーター制度の3本柱で、旧経営者の保証解除と新経営者への二重徴求回避を実現する実務ガイドです。
🏆 結論:二重徴求は原則禁止。旧経営者・新経営者とも保証解除が可能な時代
事業承継時の経営者保証は、後継者が承継を拒否する最大の理由の一つでした。2019年12月に策定されたガイドライン特則により「原則として前経営者・後継者の双方からの二重徴求を行わない」との取扱いが明確化され、2020年から経営者保証コーディネーター制度、2020年4月からは信用保証協会の「事業承継特別保証制度」も始まりました。現在では、3要件(区分分離・財務基盤・情報開示)を満たす企業なら、旧経営者の保証解除と新経営者への保証不要を同時に実現することが現実的な選択肢となっています。
事業承継を進める際、経営者保証は避けて通れない重要論点です。後継者候補が保証を理由に承継を断るケースや、旧経営者がリタイア後も保証から抜けられないケースなど、典型的な3つの課題があります。
事業承継を行っても、旧経営者が過去に結んだ経営者保証は自動的には解除されません。金融機関との個別協議が必要です。旧経営者がリタイア後も、会社の借入金に対する個人保証の責任を負い続けるケースが長年問題視されてきました。
旧経営者の保証を残したまま、新経営者にも新たに保証を求める「二重徴求」が慣習的に行われてきました。これは金融機関にとってリスク軽減策ですが、事業承継を阻害する最大の要因となっていました。
中小企業庁の調査によると、親族内承継を検討する後継者候補が承継を躊躇する理由の第1位が「経営者保証の引継ぎ」です。数千万円〜数億円規模の個人保証を引き受けることへの不安から、承継自体が進まないケースが多発していました。
⚠️ 事業承継の危機
中小企業庁の「中小企業白書」によると、中小企業経営者の平均年齢は60歳代半ばに達しており、今後10年以内に70代を迎える経営者が大量発生します。後継者不在による廃業予備軍は約127万社(日本の全企業の約3割)に上り、放置すれば地域経済・雇用への深刻な影響が予測されます。経営者保証は、この事業承継クライシスの主要な阻害要因です。
2019年12月、経営者保証ガイドライン研究会が「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」を公表しました。これは2014年の本体ガイドラインを事業承継の局面に特化して補完するものです。
特則の最大のポイントは、「原則として前経営者・後継者の双方からの二重徴求を行わない」という取扱いが明記された点です。金融機関はこれまでのような慣習的な二重徴求ができなくなりました。
原則禁止とはいえ、以下の4類型の場合は二重徴求も正当化されうるとされています。
| 類型 | 具体的なケース |
|---|---|
| ①前経営者が実質的な経営権・支配権を有している | 代表退任後も大株主のまま実質的な経営判断に関与 |
| ②後継者の経営能力が十分でない | 経営経験が浅く、独立した経営判断に懸念がある |
| ③財務状況が著しく悪化 | 承継時点で債務超過や極度の経営悪化状態 |
| ④情報開示の透明性が不十分 | 月次試算表の提出や事業計画の開示が不徹底 |
これらの例外に該当しない限り、金融機関は二重徴求を避けるべきとされています。つまり「4要件のいずれにも該当しない場合は、原則として新経営者のみが保証する」という運用が原則となります。
参考: 中小企業庁「経営者保証」。2019年特則本文、廃業時の基本的考え方、経営者保証改革プログラムなどガイドライン関連資料が一覧で掲載されています。
旧経営者の保証解除について、特則は以下の2点を総合的に考慮することを金融機関に求めています。
💡 実務のポイント
実務では、事業承継を契機に「経営者保証の全面的な見直し」を金融機関に求めるケースが増えています。承継時は金融機関との再契約のタイミングとなるため、3要件の充足状況と合わせて保証解除を交渉するのに最適なタイミングです。特に、旧経営者の保証解除は「承継と同時」が最も交渉しやすく、後から単独で解除するより大幅に有利です。詳細は「経営者保証ガイドラインの活用法|3要件と手続き」もご参照ください。
事業承継時の保証解除を後押しするため、信用保証協会が2020年4月に「事業承継特別保証制度」を創設しました。一定要件を満たす企業は、新規・借換えの融資について経営者保証なしで信用保証協会の保証が受けられる画期的な制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保証限度額 | 2億8,000万円(組合4億8,000万円) |
| 保証期間 | 10年以内(うち据置期間1年以内) |
| 保証料率 | 0.45〜1.90%(通常より0.2%程度減免) |
| 対象資金 | 事業承継時に必要な事業資金(借換え含む) |
| 経営者保証 | 不要 |
参考: 中小企業庁「事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策」
🧮 借換え活用の実例
旧経営者が2億円の経営者保証を負っている状態で事業承継を実施する場合、この2億円の借入を「事業承継特別保証」で借換えすれば、旧経営者の保証は完全に外れます。新たな借入には経営者保証が不要なため、新経営者も保証を負いません。借換えに伴う保証料や手数料は発生しますが、旧経営者・新経営者ともに個人保証から完全に解放される価値は大きく、事業承継の決定打となる制度です。
2020年度から、全国の事業承継・引継ぎ支援センターに「経営者保証コーディネーター」が配置されました。中小企業診断士・税理士・弁護士等の専門家が、事業承継時の経営者保証解除に向けた支援を無料で提供します。
経営者保証コーディネーターが用いる「事業承継時判断材料チェックシート」は、3要件を具体的な項目に落とし込んだ客観的評価ツールです。このシートの確認結果を金融機関に提示することで、「第三者の専門家が3要件を満たすと判定している」という客観性が担保され、保証解除交渉が大きく前進します。
💡 経営者保証コーディネーター利用のメリット
コーディネーターの支援は無料です。自社だけで金融機関と交渉するより、専門家が中立的立場から関与することで交渉が大きく進みます。特に、3要件のうち「財務基盤の強化」に課題がある場合、コーディネーターが経営改善計画の策定を助言し、金融機関から見た信用力を高める支援も受けられます。事業承継を本格的に検討する経営者は、まず地元の事業承継・引継ぎ支援センターに相談することをお勧めします。
AYUSAWA PARTNERS
事業承継・経営者保証解除のご相談は鮎澤パートナーズへ
公認会計士・税理士の代表が、記帳代行から決算・税務申告・年末調整まで一括で直接対応します。初回相談無料。
鮎澤パートナーズに相談する事業承継には大きく3つのパターン(親族内承継・社内承継・M&A)があり、それぞれで経営者保証の取扱いが異なります。
| 承継パターン | 旧経営者の保証 | 新経営者の保証 | 活用しやすい制度 |
|---|---|---|---|
| 親族内承継 | 解除交渉が必要 | 原則不要(二重徴求禁止) | 事業承継特別保証、GL特則 |
| 社内承継(MBO) | 解除交渉が必要 | MBO資金の保証は別途検討 | 事業承継特別保証、DDS |
| M&A(第三者承継) | M&A契約で解除 | 買い手企業の信用力による | 買い手企業の与信枠 |
親族内承継(親→子、配偶者・兄弟等)は、事業承継特別保証制度と2019年特則の適用を最も受けやすいパターンです。3要件を満たし、前経営者が実質的な経営関与から退く場合、旧経営者の保証解除と新経営者への保証不要を同時に実現できます。
従業員や役員が経営者を引き継ぐMBO(Management Buyout)では、後継者が自社株を買い取るための資金が必要となり、個人で借入をして保証を負うケースがあります。この場合、事業承継特別保証制度の活用や、DDS(資本性劣後ローン)の組み合わせで保証負担を最小化する設計が有効です。
M&Aで株式を第三者(企業や個人)に譲渡する場合、旧経営者の保証は通常、M&A契約の条件として買い手負担で解除されます。買い手企業の信用力や担保提供、保証交代で対応するのが一般的です。詳細は「事業再生のスキームを比較」で関連する論点を整理しています。
特則では、一律に保証を徴求する「二択」ではなく、柔軟な条件設定による中間的な選択肢も推奨されています。
通常時は保証が発動せず、一定の財務悪化条件(例:債務超過・2期連続赤字・債務償還年数15年超等)が発生した場合に初めて保証が有効になる契約形態です。経営が順調な間は実質的に保証なしの状態を維持できます。
承継時点では保証を締結するものの、一定の財務改善条件(例:自己資本比率30%達成・5期連続黒字等)を満たした時点で保証が自動解除される契約形態です。事業の立ち上がり期は保証を残しつつ、安定後に解除する設計に向いています。
| 保証形態 | 契約時の扱い | 向くケース |
|---|---|---|
| 通常の保証 | 契約時から有効 | 従来型、3要件を満たさない場合 |
| 停止条件付保証 | 通常時は無効、悪化時に発動 | 3要件は満たすが金融機関が慎重 |
| 解除条件付保証 | 契約時は有効、改善時に解除 | 承継時は不安、将来の改善期待 |
| 保証なし | 契約時から保証不要 | 3要件完全充足、事業承継特別保証 |
📊 公認会計士の視点
3要件が完全に整っていない段階の企業にとって、停止条件付保証は有効な選択肢です。例えば、承継直後で財務基盤がまだ脆弱な場合でも、「債務超過になった時点で保証が発動する」という条件付なら、金融機関のリスクは担保されつつ、経営者の心理的・経済的負担が大幅に軽減されます。金融機関との交渉で「保証なしは難しくとも、条件付保証なら」という妥協点を見出せるケースが増えています。実務では、承継後3年間は停止条件付、その後は自動解除といった時間的な組み合わせもあり得ます。
事業承継に向けて経営者保証を解除するプロセスを、実務的な8ステップで整理します。標準的には承継準備から保証解除完了まで1〜2年を要します。
| ステップ | 内容 | 期間目安 |
|---|---|---|
| ①事業承継準備 | 後継者確定、承継計画策定、スケジュール化 | 3〜6ヶ月 |
| ②支援センターへ相談 | 事業承継・引継ぎ支援センターで初回相談 | 1ヶ月 |
| ③コーディネーター活用 | 判断材料チェックシートで3要件充足度を診断 | 1〜2ヶ月 |
| ④財務改善実行 | 役員貸付金解消、内部留保拡充、情報開示体制構築 | 6〜12ヶ月 |
| ⑤金融機関への事前相談 | メインバンクに承継計画と保証解除方針を共有 | 1〜2ヶ月 |
| ⑥事業承継の実行 | 株式譲渡・代表交代・登記変更 | 1〜3ヶ月 |
| ⑦保証解除の申込 | 3要件自己評価書と必要書類を金融機関へ提出 | 1〜2ヶ月 |
| ⑧合意・契約変更 | 旧経営者の保証解除、新経営者への保証不要契約 | 1ヶ月 |
保証解除後も、3要件の充足を維持する努力が必要です。月次試算表の提出、事業計画の更新、金融機関への定期報告などを継続することで、保証解除が再徴求されない状態を保ちます。
経営者保証の取扱いと並行して、事業承継税制(非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予及び免除)の活用も検討すべきです。一定要件を満たす事業承継で、非上場株式に係る贈与税・相続税が猶予・免除される制度です(租税特別措置法第70条の7の5等)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 非上場株式の贈与・相続 |
| 猶予・免除割合 | 100%(特例措置) |
| 適用期限 | 2027年12月31日までの贈与・相続(特例措置) |
| 事前要件 | 特例承継計画を2027年9月30日(令和8年度改正で延長)までに提出 |
| 事後要件 | 5年間の事業継続、雇用維持要件等 |
📢 特例承継計画の提出期限に注意
事業承継税制の特例措置を活用するためには、事前に「特例承継計画」を都道府県に提出する必要があります。提出期限は2026年3月31日で、これを過ぎると100%納税猶予の特例が受けられず、一般措置(80%猶予)しか適用されません。事業承継を検討している企業は、経営者保証の解除交渉と並行して、この提出期限にも注意が必要です。
3要件の充足度が不十分などの理由で、承継時に経営者保証を解除できなかった場合でも、以下の代替策で個人の負担を軽減できます。
金融機関が無条件の保証解除に応じない場合、停止条件付保証で交渉することで、通常時は保証が発動しない状態にできます。事業が順調なら実質的な保証なしと同じ効果が得られます。
既存借入を事業承継特別保証制度で借り換えることで、旧経営者の保証を外せる可能性があります。信用保証協会への保証料は発生しますが、経営者保証からの解放は大きな価値があります。
承継直後は保証を残し、1〜3年後に財務改善が確認できた段階で保証解除する段階的なアプローチもあります。金融機関との合意書面に「一定条件を満たした時点で保証解除する」と明記しておくことが重要です。
万一、事業がうまくいかず返済困難になった場合でも、経営者保証ガイドラインに基づく保証債務整理を選択すれば、個人破産を回避しながら華美でない自宅や最大月収2年分の自由財産を残すことができます。詳細は「経営者保証ガイドラインの活用法|3要件と手続き」で解説しています。
📋 この記事のポイント
事業承継と経営者保証の解除は、別々に進めるのではなく、セットで設計するのが実務上最も効率的です。事業承継税制・事業承継特別保証・ガイドライン特則の3つを組み合わせることで、旧経営者は保証から完全に解放され、新経営者は保証負担なしで事業を引き継ぐことが現実的に可能です。後継者不在の廃業を防ぎ、事業を次世代に引き継ぐために、いま行動を起こすべきです。
AYUSAWA PARTNERS
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