事業所税とは?対象となる都市・計算方法(資産割・従業者割)

事業所税とは?対象となる都市・計算方法(資産割・従業者割)
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

「事業所税って法人事業税とは別物?」「うちの会社は対象?」と疑問を持つ法人経営者に向けて、事業所税の対象となる都市・免税点の判定方法・資産割と従業者割の計算方法を完全ガイドします。

🏆 結論:事業所税は大都市の「規模の大きい事業所」だけに課される目的税

事業所税は、東京23区や政令指定都市など約80の都市のみで課税される目的税です。課税されるのは、床面積の合計が1,000㎡超(資産割)または従業者数の合計が100人超(従業者割)の事業所を持つ法人・個人です。税率は資産割が1㎡あたり年600円、従業者割が給与総額の0.25%。すべての市町村で課税されるわけではなく、小規模な事業所には免税点が設けられています。

事業所税とは?法人事業税との違い

事業所税とは、都市環境の整備・改善(道路、公園、学校、病院など)に使う財源を確保するための目的税です。法人事業税と名前が似ていますが、まったく別の税金です。

項目 事業所税 法人事業税
課税標準床面積・従業者給与所得(+付加価値+資本)
課税対象指定都市のみ(約80都市)全国すべての法人
免税点床面積1,000㎡超 / 従業者100人超なし
納付先市町村(23区は都税事務所)都道府県
損金算入可(租税公課)
使途都市環境整備(目的税)一般財源

法人事業税の詳細は「法人事業税と外形標準課税|計算方法・分割基準・特別法人事業税」をご覧ください。

事業所税が課税される都市一覧

事業所税は地方税法で定められた都市のみで課税されます。すべての市町村で課税されるわけではありません。

対象都市の3カテゴリ

カテゴリ 主な都市
東京都(特例で都税)23区+武蔵野市・三鷹市・八王子市・町田市
政令指定都市(20市)札幌・仙台・さいたま・千葉・横浜・川崎・相模原・新潟・静岡・浜松・名古屋・京都・大阪・堺・神戸・岡山・広島・北九州・福岡・熊本
人口30万人以上の指定都市等旭川・宇都宮・所沢・船橋・柏・川口・越谷・市川・松戸・川越・藤沢・横須賀・豊橋・岐阜・姫路・尼崎・西宮・長崎・鹿児島 等

💡 実務のポイント

事業所を移転する際に見落とされがちなのが事業所税です。たとえば、事業所税が課税されない市から東京23区内に本社を移転すると、新たに事業所税が発生します。移転前に事業所税の有無と年間コストを確認しておきましょう。

免税点の判定方法

事業所税には中小企業の負担を排除するために免税点が設けられています。免税点以下であれば課税されません。

区分 免税点 超えた場合
資産割指定都市内の合計床面積が1,000㎡以下全床面積に課税(超えた部分だけではない)
従業者割指定都市内の従業者数が100人以下全従業者の給与に課税

⚠️ 注意:資産割と従業者割は別々に判定

資産割と従業者割の免税点判定は独立して行います。たとえば、床面積が1,200㎡(1,000㎡超で課税)だが従業者が80人(100人以下で非課税)の場合、資産割のみ課税され、従業者割は非課税です。また、免税点を超えると「超えた分だけ」ではなく、全額が課税対象になる点に注意してください。

免税点判定で見落としやすいポイント

免税点の判定は事業年度末日の現況で行います。判定時に注意すべき3つのポイントがあります。

ポイント 内容
同一指定都市内の合算同じ指定都市内に複数の事業所がある場合、床面積・従業者数を合算して判定
みなし共同事業親族や同族会社(特殊関係者)と同一家屋で事業を行っている場合、合算して判定
パート・アルバイト免税点判定では正社員のみカウント。パート・アルバイトは除外

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資産割の計算方法

資産割は事業所の床面積に対して課税されます。計算式はシンプルです。

資産割 = 事業所床面積(㎡) × 600円

床面積に含まれるもの・含まれないもの

含まれる 含まれない(非課税) グレーゾーン
事務所・執務スペース食堂(福利厚生施設)休憩室が会議室を兼ねる → 課税
店舗・工場売店(福利厚生施設)制服更衣室 → 課税(業務上必要)
倉庫(無人倉庫含む)時間貸し駐車場(一般公開)月極専用駐車場 → 課税
共用部分(按分)教育施設・医療施設等モデルハウス → 原則非課税

年度途中の新設・廃止の月割計算

事業年度の途中で事業所を新設・廃止した場合は月割計算します。

🧮 シミュレーション:年度途中の新設

3月決算法人が9月15日に1,500㎡の事業所を新設した場合
新設月の翌月(10月)から3月までの6ヶ月で月割計算
1,500㎡ × 6/12 = 750㎡(月割後の床面積)
資産割=750㎡ × 600円 = 45万円

従業者割の計算方法

従業者割は、従業者に支払った給与の総額に対して課税されます。

従業者割 = 従業者給与総額 × 0.25%

従業者給与総額に含まれるもの・含まれないもの

含まれる 含まれない
基本給・賞与・各種手当退職金
時間外手当・住居手当非課税通勤手当
現物給与年金・恩給
パート・アルバイトの給与(税額計算時)65歳以上の従業者(役員除く)の給与

💡 実務のポイント

免税点判定ではパート・アルバイトを除外して100人以下かを判定しますが、税額計算ではパート・アルバイトの給与も給与総額に含めます。この「判定」と「計算」で対象者が異なる点は、実務で最もよく間違えるポイントです。また、65歳以上の従業者と障害者の給与は給与総額から控除できますが、役員は年齢にかかわらず控除できません。

事業所税の合計額シミュレーション【3パターン】

📐 シミュレーション前提条件

  • 東京23区内の1事業所
  • 65歳以上の従業者なし
  • 非課税施設なし
項目 パターンA パターンB パターンC
床面積1,200㎡3,000㎡5,000㎡
従業者数120人200人500人
給与総額6億円12億円30億円
資産割72万円180万円300万円
従業者割150万円300万円750万円
合計222万円480万円1,050万円

※概算値です。非課税施設や課税標準の特例の適用により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

事業所税の申告・納付の手順

項目 内容
申告期限事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内(延長制度なし)
納付先市町村役場(23区は都税事務所)
申告書様式第44号様式+別表1〜4
会計処理販売費及び一般管理費の「租税公課」(未払分は「未払金」)
届出義務事業所の新設・廃止から1ヶ月以内に届出

⚠️ 注意:法人事業税と違い申告期限の延長制度がない

法人事業税は法人税の申告期限延長に合わせて延長できますが、事業所税には延長制度がありません。3月決算の場合、法人税の申告期限は延長により6月末まで伸ばせますが、事業所税は5月31日が期限です。事業所税の申告を忘れないよう、法人税とは別にスケジュール管理してください。

法人住民税の均等割やスケジュールは「法人住民税のしくみ|法人税割・均等割の計算と申告方法」をご覧ください。その他の税金の全体像は「加算税の全体像を完全解説」で紹介しています。

よくある質問(FAQ)

事業所税はすべての市町村で課税されますか?
いいえ。東京23区、政令指定都市(20市)、人口30万人以上の指定都市等、合計約80の都市のみで課税されます。それ以外の市町村に事業所があっても事業所税はかかりません。
床面積が1,000㎡ちょうどの場合、資産割は課税されますか?
課税されません。免税点は「1,000㎡超」です。1,000㎡ちょうどであれば免税点以下のため非課税です。1,001㎡になると、超えた1㎡分だけでなく全1,001㎡が課税対象になります。
パート・アルバイトは従業者数100人に含まれますか?
免税点判定では含まれません。正社員のみでカウントします。ただし、税額を計算する際の給与総額にはパート・アルバイトの給与も含まれます。また、免税点判定では役員もカウントに含めます。
事業所税は経費(損金)になりますか?
はい。事業所税は損金算入が可能です。会計上は販売費及び一般管理費の「租税公課」に計上し、未払分は貸借対照表の「未払金」に計上します。「法人税、住民税及び事業税」には含めません。
賃貸オフィスでも事業所税はかかりますか?
はい。事業所税は事業所の「使用者」に課税されます。自己所有でも賃貸でも、その場所で事業を営んでいれば課税対象です。なお、ビルのオーナー(貸主)にはテナントの床面積等を申告する義務(事業所用家屋の貸付申告)があります。
免税点以下でも申告が必要ですか?
前事業年度に納税義務者だった場合、または床面積が800㎡超・従業者数が80人超の場合は、免税点以下であっても申告が必要です。また、事業所の新設・廃止があった場合は1ヶ月以内に届出が必要です。
事業所税と法人事業税は同じものですか?
まったく別の税金です。法人事業税は法人の所得に対して全国の法人に課される都道府県税です。事業所税は事業所の床面積と従業者給与に対して、指定都市のみで課される市町村税(目的税)です。計算方法も申告先も異なります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 事業所税は東京23区・政令指定都市など約80都市のみで課税される目的税
  • 資産割=床面積×600円/㎡(免税点:1,000㎡超)、従業者割=給与総額×0.25%(免税点:100人超)
  • 資産割と従業者割は別々に免税点を判定。片方だけ超えた場合は片方のみ課税
  • 免税点を超えると「超えた分」ではなく全額が課税対象
  • 免税点判定ではパート・アルバイトを除外するが、税額計算では給与に含める
  • 申告期限は事業年度終了日から2ヶ月以内。延長制度がないため法人税とは別に管理が必要
  • 会計処理は「租税公課」。損金算入可能

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