【税理士が解説】IT導入補助金で会計ソフトを導入する方法|対象ソフト・申請手順

【税理士が解説】IT導入補助金で会計ソフトを導入する方法|対象ソフト・申請手順
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

IT導入補助金で会計ソフトを導入する方法|対象ソフト・申請手順

「会計ソフトの導入費用を補助金で抑えたい」という中小企業経営者・個人事業主に向けて、IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)の申請枠の選び方、対象ソフト、申請手順、採択率を上げるコツを解説します。

🏆 結論:会計ソフト導入なら「インボイス枠」が最も使いやすい

会計ソフトの導入にIT導入補助金を活用するなら、「インボイス枠(インボイス対応類型)」がおすすめです。補助額の下限がなく安価なクラウド会計ソフトでも申請でき、補助率は小規模事業者で最大4/5、中小企業で最大3/4です。さらに、パソコンやタブレットの同時購入も補助対象になります。ただし、交付決定前に契約・支払いをすると補助対象外になるため、申請スケジュールの管理が最も重要です。

IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)とは

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者がITツールを導入する際の費用の一部を国が補助する制度です。2026年度からは「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更されていますが、制度の基本的な仕組みは同じです。

会計ソフト・請求書作成ソフト・給与計算ソフトなどのバックオフィス系ツールは、この補助金の主要な対象です。申請にあたっては、事務局に登録されたITツールを、同じく登録された「IT導入支援事業者」と連携して導入する必要があります。

💡 実務のポイント

「IT導入補助金」という名称で検索すると過年度の情報が多数表示されるため、最新年度の公募要領を必ず確認してください。補助率・補助額・スケジュールは毎年変更されます。公式サイト(it-shien.smrj.go.jp)が最も信頼できる情報源です。

参考: デジタル化・AI導入補助金 制度概要(公式)

会計ソフト導入に使える申請枠【判定フロー付き】

IT導入補助金には複数の申請枠がありますが、会計ソフトの導入に使えるのは主に「インボイス枠(インボイス対応類型)」と「通常枠」の2つです。以下の判定フローで、どちらの枠が最適かを確認してください。

ステップ 判定質問 Yes → 次へ No → 結果
1インボイス制度に対応した会計ソフトを導入しますか?→ ステップ2へ→ 通常枠で申請
2導入する機能は「会計」のみですか?(受発注・決済機能は不要)→ インボイス枠(補助上限50万円以下)→ ステップ3へ
3会計+受発注 or 会計+決済の2機能以上を導入しますか?→ インボイス枠(補助上限350万円以下)→ 通常枠を検討

インボイス枠と通常枠の違い

比較項目 インボイス枠(インボイス対応類型) 通常枠
補助率(小規模事業者)4/5以内1/2以内
補助率(中小企業)3/4以内1/2以内
補助額の下限なし5万円以上
補助額の上限50万〜350万円(機能数による)5万〜450万円(プロセス数による)
対象ソフトの条件インボイス制度対応の会計・受発注・決済ソフト業務プロセスに対応したITツール全般
ハードウェア補助PC・タブレットの同時購入も補助対象対象外
おすすめの事業者会計ソフトを初めて導入する中小企業・個人事業主複数業務プロセスのIT化を一括で行いたい企業

📝 補足:「小規模事業者」の定義

IT導入補助金における小規模事業者とは、常時雇用の従業員数が「商業・サービス業で5人以下」「製造業・建設業等で20人以下」の事業者を指します。この区分に該当すると、インボイス枠の補助率が4/5(80%)に引き上げられます。

申請手順【6ステップ】

IT導入補助金の申請は、全体で6つのステップに分かれます。特に重要なのは「交付決定前に契約・支払いをしないこと」です。順番を間違えると補助金の対象外になります。

ステップ1:事前準備(申請の2〜4週間前まで)

準備項目 内容 所要期間
GビズIDプライムの取得電子申請に必要な法人・個人事業主の認証ID。オンラインまたは郵送で申請オンライン:即日〜数日。郵送:2〜3週間
SECURITY ACTION宣言情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度。IPA(情報処理推進機構)のサイトから申請即日〜数日
IT導入支援事業者の選定導入したい会計ソフトのベンダーまたは認定パートナーが「IT導入支援事業者」として登録されているか確認1〜2週間

⚠️ GビズIDプライムの取得は早めに

GビズIDプライムの取得に時間がかかり、申請締切に間に合わなかったケースが毎年多発しています。特に郵送申請の場合は2〜3週間かかるため、申請を検討し始めた段階で即座に取得手続きを開始してください。

ステップ2:ITツールと支援事業者の選定

導入したい会計ソフトが事務局の「ITツール検索」に登録されていることを公式サイトで確認します。freee・マネーフォワード・弥生の主要プランはいずれも登録されていますが、プランによっては対象外の場合もあるため、必ず確認してください。会計ソフトの選び方については「会計ソフトの選び方完全ガイド」も参考にしてください。

ステップ3:交付申請の作成・提出

IT導入支援事業者と連携して、電子申請システム上で交付申請を作成・提出します。申請には事業計画(現状の課題・導入するツール・期待される効果)の記載が必要です。

ステップ4:交付決定の通知

申請締切日の翌月末頃に、採択・不採択の結果が通知されます。交付決定通知を受け取ってから、ITツールの契約・導入を行います。

ステップ5:ITツールの導入・支払い

交付決定後に、会計ソフトの契約・支払いを行います。この順番を守ることが絶対条件です。

ステップ6:事業実績報告・補助金の受取

導入後、事業実績報告書を提出し、審査を経て補助金が交付されます。交付までに申請から3〜4ヶ月程度かかるため、その間の資金繰りは自社で確保する必要があります。

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対象となる主要会計ソフトと実質負担額シミュレーション

主要3社の会計ソフトでインボイス枠を利用した場合の、実質負担額をシミュレーションします。

📐 シミュレーション前提条件

  • インボイス枠(インボイス対応類型)で申請
  • クラウド利用料2年分が補助対象
  • 小規模事業者=補助率4/5、中小企業=補助率3/4で計算
  • 金額は税抜。概算値のため実際は変動する場合あり
ソフト・プラン 年額(税抜目安) 2年分 小規模事業者の実質負担 中小企業の実質負担
freee スタンダード(法人)約5.7万円約11.4万円約2.3万円約2.9万円
MFクラウド スモールビジネス約3.3万円約6.6万円約1.3万円約1.7万円
弥生会計オンライン ベーシック約3.0万円約6.0万円約1.2万円約1.5万円

※概算値です。補助対象経費の範囲・プラン改定により変動します。最新の料金・補助額は公式サイトで確認してください。

💡 実務のポイント

会計ソフト単体の場合は補助額が数万円程度と少額に見えますが、インボイス枠ではパソコンやタブレットの同時購入も補助対象(補助率50%、上限10万円)になります。会計ソフトとPC購入を合わせて申請すると、トータルの補助額が大きくなり、申請の手間に対する費用対効果が向上します。

採択率を上げる事業計画書の書き方

IT導入補助金の採択審査では、事業計画書の内容が重要な判断材料になります。採択率を上げるためには、「課題→原因→導入内容→効果」の4段階ストーリーを一貫して描くことが鍵です。

4段階ストーリーのテンプレート

段階 記載内容 会計ソフト導入の記載例
1. 課題現在の業務で抱えている具体的な問題経理業務に月20時間を費やしており、本業の営業活動に充てる時間が不足している
2. 原因課題が発生している根本原因Excelでの帳簿管理により手入力作業が多く、銀行明細の転記に月8時間、レシート整理に月5時間を要している
3. 導入内容課題を解決するために導入するITツールの具体的内容クラウド会計ソフト○○を導入し、銀行口座の自動連携とAI-OCRによるレシート読み取りで入力作業を自動化する
4. 効果(数値)導入後に期待される具体的な数値効果経理業務を月20時間→月5時間に削減(75%削減)。削減した15時間を営業活動に充て、売上10%増加を目指す

💡 実務のポイント

事業計画書で最も重要なのは「効果の数値」と「現場の業務フローとの結びつき」です。「売上10%向上」だけでは説得力がありません。「経理作業を月15時間削減→営業訪問を月10件増加→成約率20%として月2件の新規顧客獲得→月売上30万円増加」のように、数字の根拠を業務フローに基づいて示すことで採択率が上がります。

申請時の注意点と失敗パターン

No. 失敗パターン 対策
1交付決定前に契約・支払いをしてしまった交付決定通知を受け取るまでは絶対にソフトの契約・支払いを行わない
2GビズIDプライムの取得が間に合わなかった申請を検討し始めた段階で即座にGビズIDの取得手続きを開始する
3対象外のITツールを選んでしまった公式サイトの「ITツール検索」で登録状況を必ず確認する
4事業計画書の効果数値に根拠がない現在の作業時間と導入後の作業時間を具体的に算出して記載する
5既に導入済みのソフトで遡及申請しようとした既存契約のソフトは補助対象外。新規導入が原則

導入後に活用すべき「部門別損益管理」機能

IT導入補助金で会計ソフトを導入したら、ぜひ活用したいのが「部門別損益管理」機能です。仕訳にタグ(部門)を設定することで、事業部門ごと・店舗ごと・プロジェクトごとの採算を自動で把握できるようになります。

部門別損益管理ができると、「全体では黒字だが、A店舗は赤字」「新規事業の粗利率が既存事業より低い」といった情報がリアルタイムに可視化され、経営判断のスピードが上がります。

この機能は、IT導入補助金の事業計画書で「導入効果」として記載する際にも有効です。「部門別損益を可視化することで、不採算部門の早期発見と対策が可能になり、全社の営業利益率を○%改善する」のように、定量的な効果として説明できます。簿記の基礎知識が必要な場合は「簿記・帳簿の基礎知識ガイド」を参考にしてください。

個人事業主がIT導入補助金を申請する際のポイント

IT導入補助金は法人だけでなく個人事業主も申請できます。ただし、いくつか法人と異なるポイントがあります。

まず、個人事業主の場合は「GビズIDプライム」の取得に必要な書類が法人と異なります。法人は法人番号で認証されますが、個人事業主は本人確認書類の提出が必要です。

また、個人事業主はインボイス枠の「小規模事業者」に該当するケースが多く、補助率が4/5(80%)に引き上げられる可能性が高いです。たとえば、年額3万円のクラウド会計ソフトを2年分(6万円)申請した場合、補助額は4.8万円、実質負担は1.2万円で済みます。

なお、「確定申告のみのために会計ソフトを使いたい」という個人事業主には、個人事業主向けプランが用意されているソフトを選ぶことをおすすめします。法人向けプランは不要な機能が多く、料金も割高です。

申請から補助金受取までのスケジュール

時期(目安) やること ポイント
申請2〜4週間前GビズIDプライム取得・SECURITY ACTION宣言・支援事業者選定最優先で着手。ここが遅れると全体が遅延
申請締切日まで交付申請の作成・提出支援事業者と連携して電子申請
申請締切の翌月末頃交付決定通知の受取採択結果を確認。不採択の場合は次回申請を検討
交付決定後ITツールの契約・支払い・導入この順番を必ず守る。先に契約すると補助対象外
導入完了後事業実績報告書の提出導入証拠(契約書・領収書・画面スクリーンショット等)を添付
実績報告の約1ヶ月後補助金の交付指定口座に振込。申請から受取まで通常3〜4ヶ月

📊 公認会計士の視点

IT導入補助金は「後払い」の制度です。まず自社で費用を支払い、審査後に補助金が振り込まれます。そのため、申請から補助金受取までの3〜4ヶ月間は自社で資金を立て替える必要があります。資金繰りに余裕がない場合は、キャッシュフロー計画を事前に確認してください。記帳代行で経理コストを最適化する方法は「記帳代行の費用相場ガイド」で解説しています。

よくある質問(FAQ)

IT導入補助金は毎年申請できますか?
異なるITツールの導入であれば、過去に採択された事業者でも再度申請可能です。ただし、同じツールの重複申請はできません。また、年度ごとに申請要件が変更されるため、最新の公募要領を必ず確認してください。
すでに導入済みの会計ソフトの利用料に補助金を使えますか?
既に契約・導入済みのソフトは補助対象外です。IT導入補助金は「新規導入」が原則で、遡及申請は認められません。新しいソフトへの乗り換えを検討している場合は、交付決定後に乗り換え契約を行えば補助対象になります。
税理士の顧問料はIT導入補助金の対象になりますか?
税理士の顧問料自体は補助対象外です。ただし、IT導入支援事業者が提供する「導入コンサルティング」「初期設定サポート」「操作研修」の費用は、対象経費に含まれる場合があります。税理士事務所がIT導入支援事業者として登録されている場合は、導入支援の役務費として申請できる可能性があります。
パソコンの購入費用だけでIT導入補助金を申請できますか?
パソコン単体の購入では申請できません。インボイス枠では、インボイス対応のソフトウェアを導入するために必要なハードウェアとして、ソフトウェアとセットで申請する必要があります。パソコンだけの補助を受けたい場合は、別の補助金制度を検討してください。
freee・マネーフォワード・弥生のうち、IT導入補助金で最もお得なのはどれですか?
補助率はどのソフトを選んでも同じです。補助額の絶対値は年額料金に比例するため、高額なプランほど補助額は大きくなりますが、自己負担額も大きくなります。「お得さ」よりも「自社の業務に合ったソフトを選ぶ」ことを優先してください。
申請が不採択になった場合、再度申請できますか?
不採択になっても、次回の公募回に再度申請することは可能です。その場合、不採択の理由を踏まえて事業計画書を改善することが重要です。特に「効果の数値が具体的でない」「課題と導入内容の関連性が不明」が不採択の主な理由であるため、数値の根拠を強化して再申請してください。
電子帳簿保存法への対応もIT導入補助金の対象になりますか?
クラウド会計ソフトの導入自体が電子帳簿保存法の対応手段になるため、事業計画書に「電子帳簿保存法への対応」を導入目的の1つとして記載することは有効です。電子帳簿保存法の詳細は「電子帳簿保存法の概要ガイド」をご覧ください。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 会計ソフト導入には「インボイス枠(インボイス対応類型)」が最適。補助率は小規模事業者で最大4/5
  • 2026年度は「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更。制度の基本的な仕組みは同じ
  • 交付決定前に契約・支払いをすると補助対象外。この順番を守ることが最重要
  • 申請前にGビズIDプライム・SECURITY ACTION宣言・IT導入支援事業者の選定を済ませる
  • 事業計画書は「課題→原因→導入内容→効果(数値)」の4段階ストーリーで記載
  • 補助金は後払い。申請から受取まで3〜4ヶ月の資金立替が必要
  • 導入後は部門別損益管理機能を活用し、補助金申請時の「導入効果」を実現する

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