個人事業主の減価償却|定額法・定率法の計算方法と実務ポイント

個人事業主の減価償却|定額法・定率法の計算方法と実務ポイント
鮎澤パートナーズ|公認会計士・税理士・社会保険労務士・行政書士
公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)・社会保険労務士(第13240067号)・行政書士(第24061284号)が監修。年間100社以上の法人決算・会社設立を支援。
📋 税理士監修 🆕 令和8年40万円特例対応 📊 計算例3パターン

個人事業主・フリーランス向けに、減価償却の基本を完全ガイド。定額法・定率法の違い、耐用年数表、令和8年改正の少額減価償却資産40万円特例、中古資産・業務用転用・資本的支出の取扱いまで現役税理士が実務目線で解説します。

🏆 結論:個人事業主は原則「定額法」で減価償却・少額減価償却資産特例は令和8年4月から40万円未満に拡大

減価償却とは、長期にわたり使用する固定資産の取得価額を、使用期間にわたって費用化する会計処理です(所得税法第49条・所得税法施行令第120条)。個人事業主は原則として「定額法」を採用しますが、届出により「定率法」も選択可能(平成19年4月1日以後取得分)。耐用年数は資産の種類により2年〜50年と幅広く設定されています。10万円未満の少額資産は取得時に全額経費、10万円以上20万円未満は「一括償却資産」として3年均等償却、青色申告者は10万円以上の資産も「少額減価償却資産特例」で年間300万円まで全額経費可。令和8年(2026年)4月1日以後取得分から、少額減価償却資産特例の上限が30万円未満→40万円未満に引上げられる予定です。中古資産は耐用年数の短縮計算、業務用転用や資本的支出には特殊な計算ルールがあります。本記事では定額法・定率法の計算方法・耐用年数・3パターンの計算例・実務上の注意点まで完全解説します。

減価償却とは|基本の仕組み

減価償却は、建物・機械・車両・備品など、長期にわたって使用する固定資産の取得価額を、その使用期間(耐用年数)にわたって毎年費用配分する会計処理です(所得税法第49条)。一度に全額を経費にせず、利益を平準化する効果があります。

減価償却の3つの目的

目的 内容
①費用の期間配分使用期間に応じて経費を配分し、年度ごとの利益を適正に計算
②税負担の平準化一括経費にすると赤字となるリスクを回避
③資産価値の表示減価償却累計額を控除した帳簿価額で資産価値を表示

減価償却の対象になる資産・ならない資産

対象 具体例
減価償却対象(有形固定資産)建物・機械装置・車両運搬具・工具器具備品・パソコン・事務机等
減価償却対象(無形固定資産)ソフトウェア・特許権・営業権・商標権等
対象外土地・借地権・電話加入権・棚卸資産・美術品(取得価額100万円以上)
対象外(消耗品)10万円未満の物品・1年未満の使用予定物品

💡 実務のポイント

減価償却の判定で実務上多いミスは「土地は減価償却の対象外」を見落とすケース。建物と土地を一括購入した場合は、契約書・固定資産税評価額等で建物部分のみを区分する必要があります。実務では「建物価格5,000万円+土地価格3,000万円=合計8,000万円」のように区分し、減価償却の対象は建物5,000万円のみとなります。土地と建物を区分できない場合は固定資産税評価額の比率で按分する方法も認められます。

個人事業主の償却方法|定額法が原則

個人事業主は、平成10年4月1日以後取得の建物、平成28年4月1日以後取得の建物附属設備・構築物について、定額法による減価償却が義務付けられています(所得税法施行令第120条)。それ以外の資産は届出により定率法も選択可能です。

定額法と定率法の特徴比較

項目 定額法 定率法
計算方法取得価額×定額法償却率未償却残高×定率法償却率
減価償却額の推移毎年同額初年度多く、徐々に減少
早期の節税効果小さい大きい
個人事業主のデフォルト定額法(原則)届出制(任意)
建物・建物附属設備必須(定率法選択不可)選択不可

償却方法の届出

手続き 期限
届出書名所得税の減価償却資産の償却方法の届出書
提出期限(新規開業時)確定申告期限まで(翌年3月15日)
提出期限(資産取得時)取得年度の確定申告期限まで
提出しない場合定額法(法定償却方法)が適用される

定額法の計算方法

定額法は、取得価額に定額法の償却率を乗じて毎年同額の減価償却費を計算する方法です(所得税法施行令第120条の2)。計算がシンプルで、個人事業主の標準的な償却方法です。

定額法の計算式

🧮 定額法の計算式(平成19年4月1日以後取得)

減価償却費 = 取得価額 × 定額法償却率

計算式の補足:
・期中取得の場合は月割計算(年税額×取得月数÷12)
・耐用年数経過後は備忘価額1円まで償却
・定額法償却率は耐用年数別の表で確認(国税庁)

定額法の計算例

🧮 計算例①:200万円のパソコン(耐用年数4年・10月取得)

前提:取得価額200万円・耐用年数4年・定額法償却率0.250・10月取得

初年度(10月〜12月の3か月分):
200万円 × 0.250 × 3/12 = 12.5万円

2〜4年目(各12か月):
200万円 × 0.250 = 50万円/年

5年目(残り3か月分+備忘価額1円控除):
50万円 × 9/12 = 37.5万円
残額:200万円 − 12.5万 − 50万×3 = 37.5万円
5年目の減価償却費:37万4,999円(備忘価額1円を残す)

定率法の計算方法

定率法は、未償却残高に定率法の償却率を乗じて、初年度に多く、徐々に減少する減価償却費を計算する方法です(所得税法施行令第120条の2)。早期に多くの減価償却費を計上できる節税効果があります。

定率法の計算式(200%定率法)

🧮 定率法の計算式(平成24年4月1日以後取得・200%定率法)

減価償却費 = 未償却残高 × 定率法償却率

償却保証額の計算(切替判定):
償却保証額 = 取得価額 × 保証率

切替判定:償却費が償却保証額を下回ったら定額法切替
切替後:減価償却費 = 改定取得価額 × 改定償却率

定率法の計算例

🧮 計算例②:100万円の機械装置(耐用年数5年・1月取得・定率法届出済)

前提:取得価額100万円・耐用年数5年・定率法償却率0.400・保証率0.108・改定償却率0.500

1年目:100万円 × 0.400 = 40万円
2年目:60万円 × 0.400 = 24万円
3年目:36万円 × 0.400 = 14.4万円
4年目:21.6万円 × 0.400 = 8.64万円
償却保証額:100万円 × 0.108 = 10.8万円
8.64万円 < 10.8万円 → 定額法切替
4年目:21.6万円 × 0.500 = 10.8万円
5年目:残額10.8万円−1円 = 10万7,999円

耐用年数の調べ方

耐用年数は、資産の種類・構造・用途別に「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められています。建物は20〜50年、車両は2〜6年、パソコンは4年が代表的です。

主な資産の耐用年数

資産 耐用年数
建物(木造・住宅用)22年
建物(鉄筋コンクリート造・住宅用)47年
建物(鉄筋コンクリート造・事務所用)50年
自動車(一般用)6年
自動車(軽自動車)4年
パソコン4年
サーバー5年
事務机・椅子(金属製)15年
事務机・椅子(木製)8年
ソフトウェア(自社利用)5年
ソフトウェア(販売用)3年
特許権8年

取得価額別の処理方法|10万・20万・30万・40万円の節税ライン

取得価額により減価償却の処理方法が異なります。少額の資産は減価償却せず一括経費にできる特例があり、節税の重要なポイントです。

取得価額別の処理方法

取得価額 処理方法 対象者
10万円未満取得時に全額経費(消耗品費等)全事業者
10万円以上20万円未満一括償却資産(3年均等償却)or 通常の減価償却全事業者
10万円以上30万円(令和8年4月以後40万円)未満少額減価償却資産特例(取得時全額経費・年300万円まで)青色申告者(従業員400人以下)
30万円以上(令和8年4月以後40万円以上)通常の減価償却(定額法・定率法)全事業者

令和8年4月改正:少額減価償却資産特例の40万円拡大

📢 令和8年度改正:少額減価償却資産特例の上限引上げ

令和8年(2026年)4月1日以後に取得する減価償却資産から、少額減価償却資産特例の上限が「30万円未満」から「40万円未満」に引き上げられる予定です(令和8年度税制改正大綱)。改正により、35万円のパソコン・プリンタ等も取得時に全額経費計上が可能に。また、対象事業者の従業員数要件も「500人以下」から「400人以下」に変更されます。物価高への対応として制度を実態に合わせる改正です。

10万円以上20万円未満の一括償却資産

項目 内容
償却期間3年(均等償却・月割計算なし)
計算式取得価額 × 1/3
償却資産税対象外(課税されない)
対象者全事業者(青色申告・白色申告問わず)

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少額減価償却資産特例の活用方法

青色申告者が利用できる少額減価償却資産特例は、最も使いやすい節税策の一つです。年間300万円までという上限と、青色申告という要件があります。

少額減価償却資産特例の要件

要件 内容
①青色申告者青色申告承認申請書を提出済み
②取得価額30万円未満(令和8年4月以後40万円未満)
③年間限度額300万円(超過分は通常の減価償却)
④従業員数400人以下(令和8年3月までは500人以下)
⑤確定申告書への明細添付「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」を添付
⑥事業供用取得年度内に事業に使用開始

少額減価償却資産特例の節税効果

🧮 節税効果シミュレーション

前提:25万円のパソコン3台を購入(計75万円・耐用年数4年)

パターン①:通常の減価償却(定額法)
1年目減価償却費:75万円÷4年 = 18.75万円
2〜4年目:75万円÷4年 = 18.75万円/年

パターン②:少額減価償却資産特例
1年目減価償却費:75万円(全額)
2年目以降:0円

節税効果:所得税率20%・住民税10%(計30%)の場合
パターン①初年度節税:18.75万円×30% = 5.6万円
パターン②初年度節税:75万円×30% = 22.5万円
差額:約16.9万円の即時節税効果

中古資産の減価償却|耐用年数の短縮

中古資産を取得した場合、新品と比べて短い「見積耐用年数」で減価償却できます(所得税法施行令第126条)。早期償却により節税効果が高い手法です。

中古資産の見積耐用年数の計算

経過年数 計算式
法定耐用年数を全て経過法定耐用年数 × 20%
法定耐用年数の一部経過(法定耐用年数 − 経過年数) + 経過年数 × 20%
計算結果が2年未満2年(最低耐用年数)
端数1年未満切り捨て

中古資産の計算例

🧮 計算例③:中古車(法定耐用年数6年・経過4年)を200万円で取得

計算:
(6年 − 4年) + 4年 × 20% = 2年 + 0.8年 = 2.8年
1年未満切り捨て → 2年(最低耐用年数)

定額法での減価償却(償却率0.500):
1年目:200万円 × 0.500 = 100万円
2年目:200万円 × 0.500 − 1円 = 99万9,999円

節税効果:新車(6年償却)と比べ約3倍の早期償却が可能

💡 4年落ち中古車の節税効果

「4年落ち中古車」は耐用年数が2年(法定上限・最低)となり、初年度に取得価額の50%(定額法)または100%(定率法・期首取得時)を償却できる節税策として有名です。実務では「ベンツや高級外車の4年落ち中古を購入して節税」というスキームが個人事業主・小規模法人で広く活用されてきました。ただし、業務用としての利用実態が必要で、私的利用が多い場合は家事按分の対象となります。

業務用転用と資本的支出の取扱い

個人的に使っていた資産を業務用に転用した場合や、修理・改良で資産価値が増加した場合(資本的支出)は、特殊な減価償却ルールが適用されます。

業務用転用時の減価償却

手順 内容
STEP1非業務用期間の減価償却額を計算(法定耐用年数×1.5倍の旧定額法)
STEP2非業務用期間の減価額を取得価額から控除
STEP3転用時の未償却残高を業務用資産の取得価額として減価償却
STEP4業務用後は通常の定額法・定率法で減価償却

資本的支出の取扱い

区分 取扱い
資本的支出(資産価値増加)既存資産の取得価額に加算(新規取得した資産として減価償却)
修繕費(原状回復)取得時に全額経費
区分不明・60万円未満修繕費として全額経費可
区分不明・修理周期(おおむね3年以内)修繕費として全額経費可

確定申告での減価償却の書き方

個人事業主の確定申告では、減価償却費を計算し青色申告決算書(白色申告は収支内訳書)の「減価償却費の計算」欄に記載します。

確定申告書類の記載手順

手順 内容
STEP1減価償却資産の一覧表を作成(資産名・取得日・取得価額・耐用年数)
STEP2各資産の本年の減価償却費を計算
STEP3青色申告決算書(または収支内訳書)の3ページ目に転記
STEP4減価償却費合計を1ページ目「減価償却費」欄に記入
STEP5少額減価償却資産特例の明細書を添付(青色申告者)

家事按分が必要な資産

資産 家事按分の方法
自宅兼事務所の建物業務専用面積÷総面積 × 減価償却費
自家用兼事業用車業務走行距離÷総走行距離 × 減価償却費
パソコン(兼用)業務使用時間÷総使用時間 × 減価償却費

よくある質問

15万円のパソコンを購入したらどう処理しますか?
3つの選択肢があります。①一括償却資産(3年均等償却・年5万円ずつ)、②通常の減価償却(耐用年数4年・定額法で年3.75万円ずつ)、③少額減価償却資産特例(取得時全額経費・青色申告者のみ)。青色申告者なら③が最も節税効果が高く、初年度に15万円全額を経費にできます。実務では青色申告者の場合「少額減価償却資産特例」を選択するのが標準で、年間300万円までの上限内で活用するのが推奨です。
減価償却の計算を間違えるとどうなりますか?
過少申告した場合は修正申告で本税+加算税・延滞税が課されます。逆に過大に償却した場合は、その分が損金不算入として課税対象に。実務では「耐用年数の誤り」「償却率の取り違い」が頻繁に発生するミスで、税務調査で指摘されるケースが多いです。減価償却計算は会計ソフトの自動計算機能を活用するか、税理士に依頼することが推奨されます。耐用年数表の確認は国税庁ホームページの「耐用年数(器具・備品)(その1)」で資産別の検索が可能です。
減価償却費を計上しない年があってもいいですか?
個人事業主は減価償却が「強制償却」のため、毎年計上する義務があります。これは法人の「任意償却」と異なる重要なポイント。例えば赤字の年に「減価償却を見送りたい」と思っても、税務上は減価償却費が強制的に計上されます。実務では「赤字事業者が来年の黒字に備えて減価償却を抑える」ことはできず、決算に応じた確実な計上が必要となります。
中古資産の耐用年数はどう調べますか?
①法定耐用年数を確認、②経過年数を確認、③簡便法または見積法で計算します。簡便法では「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」で計算し、1年未満切り捨て・2年未満は2年。例えば法定6年・経過3年なら「(6-3)+3×0.2=3.6年→3年」となります。実務では「中古車の購入時に経過年数を販売店に確認」「中古不動産の場合は登記事項証明書で建築年を確認」することが重要です。
青色申告と白色申告で減価償却に違いはありますか?
最も大きな違いは「少額減価償却資産特例」が青色申告者のみ利用できる点です。白色申告者は10万円以上の資産は通常の減価償却または一括償却資産処理のみ。実務では「青色申告で少額減価償却資産特例(30万円未満・令和8年4月以後40万円未満)」を活用するのが圧倒的に有利で、青色申告承認申請書を税務署に提出して切り替えるべきです。青色申告には最大65万円の青色申告特別控除等のメリットもあるため、個人事業主にはほぼ必須の選択肢です。
パソコンや事務机を購入したら経費になりますか?
業務専用なら全額、家庭兼用なら家事按分で経費になります。10万円未満なら「消耗品費」で取得時全額経費、10万円以上なら減価償却または少額減価償却資産特例。実務では「自宅で仕事をしているフリーランス」は、業務使用時間や面積で家事按分(業務使用比率)を計算し、業務分のみを経費計上。例えば「20万円のパソコンを業務80%・私的20%で使用」なら、20万円×80%=16万円が業務用取得価額となります。
減価償却資産の取得価額に含めるものは何ですか?
取得価額には「資産購入代金+付随費用」を含めます。具体的には①購入代金、②運送費・据付費、③消費税(税抜経理なら除外)、④関税、⑤試運転費等。実務では「200万円の機械装置+据付費20万円+運送費5万円」なら取得価額は225万円となり、これを基に減価償却を計算します。一方、「自動車の自賠責保険料」「自動車税」「登録免許税」等の租税公課は取得価額に含めず、別途経費計上できます。
少額減価償却資産特例の300万円の上限を超えたらどうなりますか?
300万円を超える部分は通常の減価償却の対象となります。年間の取得価額合計が300万円に達するまで特例を選択し、それ以降は減価償却または一括償却資産で処理。実務では「年初から大型投資の時期」「月次でどの程度の枠が残っているかを管理」することが重要で、300万円を超えると分かったら「年内取得を分散する」「翌年に取得を繰り延べる」等の戦略も検討します。

📋 この記事のポイント

  • 個人事業主は原則「定額法」で減価償却・建物は定額法必須
  • 定額法は毎年同額・定率法は初年度多く徐々に減少
  • 耐用年数は資産別に「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で確認
  • 10万円未満は取得時全額経費・10〜20万円は一括償却資産も選択可
  • 青色申告者は少額減価償却資産特例で30万円未満を全額経費(年300万円まで)
  • 令和8年4月から特例上限が40万円未満に拡大予定
  • 中古資産は耐用年数短縮で早期償却が可能(4年落ち中古車=2年償却)
  • 個人事業主は強制償却(計上見送り不可)

📋 まとめ

  • 減価償却は固定資産を耐用年数で費用配分する会計処理
  • 個人事業主は定額法が原則、定率法は届出制
  • 取得価額別の処理方法(10万・20万・30万・40万円)で節税効果が変わる
  • 少額減価償却資産特例(青色申告者・年300万円まで)が最大の節税ツール
  • 令和8年4月から特例上限40万円未満へ拡大予定
  • 中古資産・業務用転用・資本的支出は特殊な計算ルール
  • 家事按分(自宅兼事務所等)は業務使用比率で計算
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