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フリーランス新法(特定受託事業者保護法)の影響と実務対応ガイド
「フリーランス新法で何が変わったの?」「発注者としても受注者としても対応が必要?」そんな疑問に、行政書士・税理士がワンストップで回答します。この記事を読めば、新法の義務内容から契約書の見直し方、税務への影響まで具体的に把握できます。


「フリーランス新法で何が変わったの?」「発注者としても受注者としても対応が必要?」そんな疑問に、行政書士・税理士がワンストップで回答します。この記事を読めば、新法の義務内容から契約書の見直し方、税務への影響まで具体的に把握できます。
🏆 結論:フリーランス新法は「受注者の保護」と「発注者の義務」を定めた法律
2024年11月1日に施行されたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、発注事業者に対し「取引条件の書面明示」「報酬の60日以内支払い」「7つの禁止行為」などを義務付けています。下請法と異なり資本金要件がないため、従業員を使用するすべての事業者が対象です。フリーランス側も、契約条件の確認・保存を徹底し、自分の権利を守る姿勢が重要になります。
フリーランス新法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和5年法律第25号)です。2023年4月28日に国会で成立し、2024年11月1日に施行されました。この法律は、フリーランスと発注事業者間の取引の適正化と、フリーランスの就業環境の整備を2本柱としています。
従来、フリーランスの取引を保護する法律としては下請法(下請代金支払遅延等防止法)がありましたが、下請法は発注者の資本金が1,000万円超の場合に限定されていました。フリーランス新法はこの資本金要件を撤廃し、従業員を使用するすべての発注事業者を規制対象としたことが最大の特徴です。
| 用語 | 定義 | 具体例 |
|---|---|---|
| 特定受託事業者(受注者=フリーランス) | 従業員を使用しない個人事業主、または役員1名のみの一人法人 | フリーランスエンジニア、デザイナー、ライター、コンサルタント等 |
| 特定業務委託事業者(発注者) | 従業員を使用する事業者(法人・個人事業主) | Web制作会社、広告代理店、コンサルファーム等 |
| 業務委託事業者(発注者・小規模) | 従業員を使用しない発注事業者 | 個人事業主が別のフリーランスに再委託するケース |
※「従業員」とは、週20時間以上かつ31日以上の継続雇用が見込まれる労働者を指します。短時間パート等は含みません。
📝 行政書士の視点
実務でよく誤解されるのが「フリーランス同士の取引」です。発注者がフリーランス(従業員ゼロ)の場合、その取引はフリーランス新法の規制対象外です。ただし、取引条件の明示義務だけは従業員のいない発注者にも適用されます。フリーランスが別のフリーランスに仕事を再委託するケースは増えていますので、注意が必要です。
| No. | 義務の内容 | 適用対象 |
|---|---|---|
| 1 | 取引条件の明示 | 全ての業務委託事業者 |
| 2 | 報酬の60日以内支払い | 特定業務委託事業者 |
| 3 | 7つの禁止行為の遵守 | 特定業務委託事業者(1ヶ月超の委託) |
| 4 | 募集情報の的確な表示 | 特定業務委託事業者 |
| 5 | 育児・介護等への配慮 | 特定業務委託事業者(6ヶ月超の委託) |
| 6 | ハラスメント相談体制の整備 | 特定業務委託事業者(6ヶ月超の委託) |
| 7 | 中途解除の事前予告(30日前) | 特定業務委託事業者(6ヶ月超の委託) |
特定業務委託事業者が1ヶ月以上の業務委託を行う場合、以下の行為が禁止されます。
| 禁止行為 | 具体例 |
|---|---|
| ①受領拒否 | 発注した成果物を正当な理由なく受け取らない |
| ②報酬の減額 | 事前の取り決めなく、後から報酬を引き下げる |
| ③返品 | 納品後に不当に成果物を返品する |
| ④買いたたき | 類似取引の相場に比べ著しく低い報酬を設定する |
| ⑤購入・利用の強制 | 発注者指定の商品やサービスの購入を強要する |
| ⑥不当な経済上の利益提供の要請 | 無償で追加の作業を求める |
| ⑦不当な給付内容の変更・やり直し | 一度OKを出した成果物のやり直しを費用負担なしで要求 |
💡 実務のポイント
フリーランスから「一度納品OKをもらった後で、追加の修正を無料で求められた」という相談を受けることがあります。フリーランス新法の施行後は、このような行為は⑦の「不当な給付内容の変更・やり直し」に該当する可能性があります。受注者としては、納品時に「検収完了」の記録をメール等で残しておくことが重要です。
フリーランス新法第3条により、発注事業者は業務委託をした際、「直ちに」以下の事項を書面またはメール・SNS等で明示しなければなりません。
| No. | 明示事項 | 記載例 |
|---|---|---|
| 1 | 業務委託事業者の名称 | 株式会社○○ 代表取締役 △△ |
| 2 | 業務の内容 | Webサイトのデザイン制作(トップページ+下層5ページ) |
| 3 | 報酬の額 | 税込330,000円(税抜300,000円+消費税30,000円) |
| 4 | 支払期日 | 検収完了月の翌月末日 |
| 5 | 業務委託をした日 | 2026年4月1日 |
| 6 | 成果物の納期または業務完了日 | 2026年5月31日 |
| 7 | 検査を行う場合はその完了期日 | 納品日から10営業日以内 |
| 8 | 現金以外の方法で支払う場合はその方法 | 銀行振込(振込手数料は発注者負担) |
⚠️ 注意:口頭だけの発注はNG
「電話で仕事を頼んで、金額は後で決める」という従来のやり方は、フリーランス新法に違反します。書面・メール・チャットツール(Slack、Chatwork等)のいずれかで8項目を明示する必要があります。ただし、正当な理由がある場合は、未定事項について「決まる予定期日」を先に明示し、確定後に改めて通知することも認められています。
フリーランス新法第4条により、特定業務委託事業者は、成果物を受け取った日(または役務の提供を受けた日)から起算して60日以内のできる限り短い期間内に報酬を支払わなければなりません。
| 支払条件 | 納品日4月15日の場合 | 適法か |
|---|---|---|
| 月末締め翌月末払い | 支払日:5月31日(46日後) | ✅ 適法 |
| 月末締め翌々月15日払い | 支払日:6月15日(61日後) | ❌ 違反 |
| 月末締め翌々月末払い | 支払日:6月30日(76日後) | ❌ 違反 |
| 15日締め翌月15日払い | 支払日:5月15日(30日後) | ✅ 適法 |
💡 実務のポイント
「翌々月末払い」の支払サイトを設定している企業は少なくありませんが、フリーランス新法の施行により60日を超える支払サイトは違法となりました。発注者として該当する場合は、支払条件の見直しが必要です。なお、検収期間を設定している場合は「検収完了日」ではなく「成果物を受け取った日」が起算日となる点にも注意してください。
| 比較項目 | フリーランス新法 | 下請法(取適法) | 独占禁止法 |
|---|---|---|---|
| 発注者の要件 | 従業員を使用する事業者 | 資本金1,000万円超(2026年1月〜は従業員数基準も追加) | 要件なし(全事業者) |
| 受注者の要件 | 従業員を使用しない個人・一人法人 | 資本金規模に応じて決定 | 要件なし |
| 支払期日 | 60日以内 | 60日以内 | 規定なし |
| 罰則 | 勧告・命令・50万円以下の罰金 | 勧告・公表・50万円以下の罰金 | 排除措置命令・課徴金 |
| 担当省庁 | 公正取引委員会・中小企業庁・厚労省 | 公正取引委員会・中小企業庁 | 公正取引委員会 |
📢 2026年1月施行:取適法(改正下請法)の影響
2026年1月1日から下請法が「取適法(取引適正化法)」として改正され、資本金基準に加えて従業員数基準が導入されます。これにより、フリーランス新法と取適法の両方が適用されるケースが増える見込みです。両法が重複適用される場合、より厳しい方の規制が優先されるため、発注者は両法を踏まえた対応が必要です。
フリーランス新法に違反した場合、以下の手順で行政処分が行われます。
| 段階 | 内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| ①申出 | フリーランスが公正取引委員会・中小企業庁・厚労省に違反の申出 | 第6条 |
| ②調査 | 行政機関が発注事業者に対して報告徴収・立入検査 | 第11条 |
| ③指導・助言 | 是正を求める指導・助言 | 第8条 |
| ④勧告 | 指導に従わない場合、是正勧告(公表あり) | 第9条 |
| ⑤命令・罰則 | 勧告に従わない場合、命令。違反には50万円以下の罰金 | 第10条・第24条 |
フリーランスが違反を申し出る窓口として、厚生労働省の「フリーランス・トラブル110番」(0120-532-110)が設置されています。弁護士による無料相談が可能です。
| No. | チェック項目 | 対応のポイント |
|---|---|---|
| 1 | 業務開始前に取引条件の書面(8項目)を受け取ったか | 口頭のみなら書面化を依頼 |
| 2 | 報酬額は税込・税抜の両方が明記されているか | 消費税の扱いを確認 |
| 3 | 支払期日は納品日から60日以内か | 翌々月末払いは違反の可能性 |
| 4 | 検収完了の通知をもらっているか | メール等で記録を残す |
| 5 | 追加作業の要請があった場合、別途報酬が提示されたか | 無償の追加作業は禁止行為の可能性 |
| 6 | 契約書面をPDF等で保存しているか | 7年間保存が望ましい(税務上の帳簿保存期間に合わせる) |
| 7 | トラブル時の相談窓口を把握しているか | フリーランス・トラブル110番(0120-532-110) |
フリーランス新法では契約書面の保存義務について具体的な年数は定められていませんが、税務上の観点からは、取引関係書類の保存期間に合わせて7年間の保存が推奨されます。所得税法施行規則第63条により、青色申告者は帳簿書類を7年間保存する義務があるため、契約書面もこれに合わせて管理するのが合理的です。
💡 実務のポイント
フリーランス新法の施行により、メールやチャットでの発注でも取引条件の明示が義務化されました。これは確定申告にも良い影響を与えます。売上の計上時期(発生主義)の根拠資料として、受注日・納品日・検収完了日が明確になるためです。取引条件の書面をクラウドストレージに整理して保存しておけば、帳簿記帳の精度も向上します。
フリーランス新法の8項目のうち「報酬の額」には消費税の扱いも含まれます。インボイス制度と併せて、以下の点を確認しましょう。
| 確認項目 | フリーランス新法の規定 | インボイス制度との関係 |
|---|---|---|
| 報酬の表示 | 報酬額を明示(税込・税抜の別も) | 適格請求書に税率・税額の記載が必要 |
| 免税事業者への影響 | 消費税分を報酬から差し引くことは「買いたたき」の可能性 | 経過措置で仕入税額控除は段階的に縮小 |
| 登録番号の扱い | 取引条件の明示事項には含まれない | 適格請求書への記載が必要 |
確定申告の基礎知識については、「フリーランスの確定申告の基礎と必要書類|小規模企業共済・iDeCoの活用まで完全ガイド」で詳しく解説しています。経費管理や節税制度の活用方法もあわせてご確認ください。
📋 この記事のポイント
フリーランス新法の施行により、フリーランスの取引環境は大きく改善されました。受注者としては自分の権利を正しく理解し、契約条件の書面化と保存を徹底すること。発注者としては支払サイトの見直しと禁止行為の確認を行うこと。これらの対応を進めることで、フリーランスも発注企業も安心して取引できる関係を築けます。
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