【税理士×公認会計士が解説】ネットショップの棚卸完全マニュアル|FBA在庫・未着品・低価法による節税まで

【税理士×公認会計士が解説】ネットショップの棚卸完全マニュアル|FBA在庫・未着品・低価法による節税まで
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

ネットショップの棚卸完全マニュアル|FBA在庫・未着品・低価法による節税まで

「FBAに預けた在庫も棚卸しないといけないの?」「売れ残りは評価を下げて節税できる?」と悩んでいるEC事業者に向けて、棚卸の全対象・評価方法・低価法の活用・せどりの在庫管理・ポイント処理まで完全ガイドします。この記事を読めば、決算・確定申告で在庫の計上漏れや評価ミスを防げます。

🏆 結論:EC事業者の棚卸は「6つの在庫」を全て数えるのが基本

ネットショップの棚卸では、自社倉庫の在庫だけでなく、FBAに預けた在庫・配送中の商品・仕入れたが届いていない未着品・返品処理中の商品・委託先にある在庫の6カ所を全て数える必要があります。在庫の評価は「最終仕入原価法」が最も簡単ですが、値下がりした商品は「低価法」で評価損を計上して節税できます。

EC事業者の棚卸対象一覧【見落としやすい6カ所】

棚卸とは、期末時点で手元にある商品の数量と金額を確認する作業です。EC事業者の場合、在庫が複数の場所に分散しているため、「自社倉庫を数えて終わり」ではありません。

在庫の場所 具体例 棚卸方法 証跡
①自社倉庫・自宅自分で保管している商品実地棚卸(目視で数える)棚卸表(品名・数量・単価)
②FBA倉庫(Amazon)Amazonに預けた在庫セラーセントラルの在庫レポート期末日の在庫レポートをPDF保存
③配送中の商品出荷済み・まだ届いていない商品出荷データから抽出配送業者の追跡番号リスト
④未着品(仕入先から届いていない)発注済み・まだ届いていない仕入品発注書・請求書で確認発注書のコピー+入金証明
⑤返品処理中返品されて検品待ちの商品返品データから抽出返品受付リスト
⑥委託先(外部倉庫)3PL業者に預けた在庫委託先の在庫レポート委託先発行の残高証明

⚠️ 注意:FBA在庫の計上漏れは税務調査で最も指摘されるポイント

FBAに預けた在庫は自分の手元にないため、棚卸で数え忘れるEC事業者が非常に多いです。しかし、FBA倉庫にある商品は法的にはあなたの在庫です。期末にセラーセントラルから在庫レポートをダウンロードして、棚卸表に含めてください。

💡 実務のポイント

EC事業者の顧問先で棚卸の計上漏れが発覚するケースの8割は「FBA在庫」と「未着品」です。特に海外から商品を仕入れている場合、期末前に発注した商品が翌期に届くと「未着品」として当期の在庫に含める必要があります。仕入先への代金支払い済みであれば、その商品の所有権は自分にあります。

在庫評価方法の比較【EC事業者向け】

棚卸資産の評価方法は事前届出が必要

在庫の評価方法は、税務署に届け出る必要があります。届出をしない場合は「最終仕入原価法」が自動的に適用されます(法定評価方法)。変更する場合は「棚卸資産の評価方法の変更承認申請書」を、変更する事業年度の開始日の前日までに提出します。

EC事業者に適した評価方法4選

評価方法 計算のしくみ EC事業での使いやすさ メリット デメリット
最終仕入原価法期末に最も近い仕入単価で全在庫を評価◎ 最も簡単計算が楽・届出不要仕入単価の変動が大きいと不正確
総平均法期首在庫+当期仕入の平均単価で評価○ 仕入頻度が高い場合に有効仕入単価の変動を平準化期末まで単価が確定しない
移動平均法仕入れるたびに平均単価を再計算○ リアルタイム管理に適する随時正確な原価がわかる仕入のたびに計算が必要
個別法商品1点ずつの実際仕入価格で評価△ 高単価・少量品向け最も正確SKUが多いと運用困難
⭐ EC事業者のおすすめは「最終仕入原価法」+「低価法」の組み合わせ

SKUが数百〜数千点に及ぶEC事業者にとって、個別法や移動平均法は運用負荷が高すぎます。最終仕入原価法で基本の評価を行い、値下がりした商品には低価法を適用して評価損を計上するのが、実務的なベストプラクティスです。

低価法による評価損の計上と節税効果

低価法とは何か

低価法とは、仕入原価と期末時点の時価(正味売却価額)を比較し、低い方を在庫の評価額とする方法です。仕入原価500円の商品が、期末時点で300円でしか売れない場合、300円で評価し、差額200円を「商品評価損」として費用に計上します。

低価法の節税シミュレーション

📐 シミュレーション前提条件

  • 在庫100点、仕入原価500円/点、期末時価300円/点
  • 法人税等の実効税率30%と仮定
項目 原価法の場合 低価法の場合 差額
期末在庫評価額50,000円30,000円▲20,000円
商品評価損0円20,000円+20,000円
売上原価への影響20,000円増加利益20,000円減少
節税効果(税率30%)6,000円

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

低価法を適用するための要件

低価法を適用するには、以下の2つの要件を満たす必要があります。第一に、税務署に「棚卸資産の評価方法の届出書」で低価法を届け出ていること。第二に、期末時点の正味売却価額(販売予定価格−販売にかかる費用)が取得原価を下回っている客観的な証拠があることです。

EC事業の場合、Amazonや楽天での販売価格が客観的な「時価」の根拠になります。期末日のスクリーンショットを保存しておけば、税務調査でも対応できます。

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FBA在庫の棚卸方法【Amazon出品者向け】

FBA在庫レポートの取得手順

Amazonセラーセントラルの「在庫」→「在庫レポート」→「全在庫の管理」から、期末日時点の在庫データをダウンロードできます。レポートにはSKU別の数量が記載されているため、これに単価を掛けて在庫金額を算出します。

FBA在庫で注意すべき3つの区分

FBA在庫の区分 内容 棚卸への計上
販売可能在庫すぐに販売できる状態の商品通常の在庫として計上
予約在庫(出荷準備中)注文を受けて出荷準備に入った商品出荷基準なら売上計上済み→在庫から除外
返品処理中返品されてAmazonが検品中の商品検品完了まで在庫に含める

💡 実務のポイント

FBAの在庫レポートは期末日の翌日にダウンロードするのがベストです。期末日当日だと出荷処理中のデータがリアルタイムで変動するため、翌日にダウンロードして「期末日時点の在庫」として確定させます。レポートのPDFとCSVの両方を保存しておけば、税務調査でも対応できます。

不良在庫の処分と評価損の計上

在庫処分の3つの方法

売れ残った在庫を放置すると、在庫金額が資産として計上され続け、利益(課税所得)が実態より大きくなります。不良在庫の処分方法は主に3つあります。

処分方法 会計処理 税務上の取扱い
値下げ販売通常の売上として計上(低い売価で)売上原価との差額が実質的な損失に反映
廃棄棚卸資産廃棄損として費用計上廃棄の事実を証明する書類が必要
低価法で評価損計上商品評価損として費用計上低価法の届出+時価の客観的根拠が必要

廃棄する場合は、廃棄した日付・商品名・数量・金額を記録した「廃棄証明書」を自社で作成し、廃棄の写真も残しておくのが安全です。FBAの場合はAmazonの「所有権の放棄依頼」レポートが廃棄証明になります。

せどり・転売事業者の在庫評価と確定申告

せどりの在庫評価で押さえるべき3つのポイント

せどり・転売事業は仕入先が多岐にわたり、商品の単価もバラバラなため、在庫評価が複雑になりがちです。以下の3点を意識してください。

第一に、仕入金額の記録を徹底することです。ブックオフやメルカリで仕入れた場合でも、レシートやスクリーンショットを必ず保存します。仕入金額が不明だと、税務調査で売上原価が認められないリスクがあります。

第二に、個人用と事業用の在庫を明確に分離することです。自分が使うために買った本やゲームと、転売目的で仕入れた商品は別物です。「後から転売目的に変更した」は通用しません。

第三に、年末の在庫を必ず数えることです。12月31日時点(個人事業主の場合)で手元にある未販売の商品は全て棚卸資産です。在庫を数えないと、仕入れた分が全て経費になり、税務調査で全額否認される可能性があります。

せどり事業者の確定申告チェックリスト

チェック項目 具体的な対応 証跡
全仕入先のレシート・領収書を保存したか実店舗→レシート、ネット仕入→注文履歴のスクリーンショットレシート原本 or 画像ファイル
12月31日の在庫を数えたか品名・数量・仕入単価を一覧表にまとめる棚卸表(手書き or Excel)
FBA・メルカリの在庫も含めたか各プラットフォームの在庫レポートをダウンロード在庫レポートのPDF
送料・手数料を仕入原価に含めたか商品ごとの仕入原価=本体価格+送料仕入先からの請求書
個人使用分と事業用在庫を分離したか転売目的の商品だけを棚卸資産に計上仕入帳の備考欄に用途を記載

フリーランス・個人事業主の確定申告全般については「フリーランスの確定申告基礎知識」で解説しています。

ポイント付与・ポイント利用の会計処理

ポイント付与の処理

自社ECサイトで購入者にポイントを付与する場合、付与時点ではまだ費用は発生しません。ポイントが使われた時点で「売上値引き」として処理するのが一般的です。ただし、期末時点で未使用のポイントが大量にある場合は「ポイント引当金」として負債に計上することも検討します。

ポイント利用の処理(購入者がポイントで支払った場合)

購入者がポイントを使って商品を購入した場合、ポイント利用分は売上値引きとして扱います。たとえば10,000円の商品を1,000ポイント(1,000円分)使って9,000円で購入した場合、売上は10,000円を計上し、ポイント値引き1,000円を差し引く方法が一般的です。

プラットフォームのポイント還元と仕入原価

仕入時にポイントを使った場合の扱いには注意が必要です。たとえば、メルカリで5,000円の商品を500ポイント使って4,500円で購入した場合、仕入原価は4,500円(実際に支出した金額)とする方法と、5,000円(ポイント使用前の金額)とする方法の2つが考えられます。実務上は「実際の支出額」で仕入原価を計上する方法が一般的です。

売上計上の基本ルールについては「ECサイトの売上計上ガイド」で詳しく解説しています。飲食店を兼業している場合は「飲食店開業の届出ガイド」も参考にしてください。不動産収入がある場合は「不動産賃貸所得の計算方法」もあわせてご覧ください。

棚卸の実施スケジュールと作業手順

期末棚卸の5ステップ

棚卸作業は以下の5ステップで進めます。個人事業主は12月31日、法人は決算月末が棚卸日です。

ステップ 作業内容 タイミング
①出荷停止棚卸日の出荷を一時停止(数え間違い防止)期末日当日
②実地棚卸自社倉庫の商品を全数カウント期末日当日〜翌日
③外部在庫の確認FBA・3PL・配送中・未着品のデータ取得期末日翌日
④金額の算出数量×評価単価で在庫金額を確定期末後1週間以内
⑤帳簿との照合帳簿上の在庫数量と実地棚卸数量の差異を確認期末後1週間以内

📊 公認会計士の視点

帳簿在庫と実地在庫の差異(棚卸差異)が発生した場合、その原因を調査し記録しておくことが重要です。差異の原因が「記帳漏れ」なのか「盗難・紛失」なのかによって会計処理が変わります。差異が売上の1%を超える場合は、在庫管理体制の見直しが必要です。

よくある質問(FAQ)

FBA倉庫にある在庫は自分の棚卸資産ですか?
はい。FBA倉庫に預けた商品の所有権はあなたにあります。Amazonは保管・配送の代行をしているだけで、在庫の所有者は出品者です。期末にセラーセントラルの在庫レポートをダウンロードして、棚卸表に含めてください。
在庫の評価方法を届け出ていない場合、どの方法が適用されますか?
届出をしない場合は「最終仕入原価法」が法定評価方法として自動的に適用されます。期末に最も近い時期の仕入単価で全在庫を評価する方法で、計算は最も簡単です。低価法を使いたい場合は別途届出が必要です。
売れ残った商品を値下げ販売した場合、在庫の評価は下がりますか?
値下げ販売は「売上が低い金額で計上される」だけで、期末在庫の評価には直接影響しません。期末在庫の評価を下げるには、低価法を届け出た上で、期末時点の正味売却価額が取得原価を下回っていることを証明する必要があります。
せどりの仕入れでレシートをもらえなかった場合はどうすればよいですか?
出金伝票(自分で作成するメモ)に日付・仕入先・品名・金額を記録し、支払った証拠(銀行振込明細やクレジットカード明細)とセットで保管してください。ネット仕入れの場合は注文確認メールや購入履歴のスクリーンショットが証跡になります。
廃棄した在庫は経費にできますか?
はい。廃棄した在庫は「棚卸資産廃棄損」として費用計上できます。ただし、税務調査で廃棄の事実を証明できる書類(廃棄日・品名・数量・金額を記録した廃棄証明書)が必要です。廃棄する前の写真を撮影しておくとさらに安全です。
ポイントで仕入れた商品の原価はいくらですか?
実務上は「実際に支出した金額」を仕入原価とするのが一般的です。5,000円の商品を500ポイント使って4,500円で購入した場合、仕入原価は4,500円です。ポイント分500円は過去の購入で付与された値引きの後払いと考えます。
配送中の商品は在庫に含めますか?
出荷基準を採用している場合、出荷済みの商品は売上計上済みのため在庫には含めません。一方、仕入先から自分に向けて配送中の商品(未着品)は、代金支払い済みであれば自分の在庫として棚卸に含めます。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • EC事業者の棚卸は6カ所を全て数える。自社倉庫・FBA在庫・配送中・未着品・返品処理中・委託先
  • FBA在庫の計上漏れは税務調査で最も指摘される項目。期末日にセラーセントラルの在庫レポートを保存
  • 評価方法は「最終仕入原価法」+「低価法」の組み合わせが実務的。値下がり商品の評価損で節税可能
  • 低価法の適用には税務署への届出と、期末時価の客観的根拠が必要。販売価格のスクリーンショットを保存
  • せどり事業者は仕入レシートの保存・年末の在庫カウント・個人用との分離が確定申告の生命線
  • ポイントで仕入れた場合の原価は「実際に支出した金額」で計上するのが一般的

ネットショップの棚卸は、在庫が分散しているEC事業特有の難しさがあります。FBA在庫や未着品の計上漏れを防ぎ、低価法を活用して適正な節税を行うために、EC事業に詳しい税理士のサポートを受けることをおすすめします。

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