【税理士×行政書士のダブル監修】飲食店開業に必要な届出一覧|食品衛生・深夜酒類・開業届・青色申告を時系列で整理

【税理士×行政書士のダブル監修】飲食店開業に必要な届出一覧|食品衛生・深夜酒類・開業届・青色申告を時系列で整理
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

飲食店開業に必要な届出一覧|食品衛生・深夜酒類・開業届・青色申告を時系列で整理

飲食店の開業準備で届出の順番がわからず不安な方に向けて、全届出を時系列で整理し、食品衛生責任者・営業許可・深夜酒類届出・開業届・青色申告・内装工事の減価償却まで完全ガイドします。この記事を読めば、いつまでに何を提出すべきかが一目でわかります。

🏆 結論:飲食店の開業届出は「6ヶ月前から段階的に」進める

飲食店の開業には、保健所・消防署・警察署・税務署・労働基準監督署など複数の届出先があります。最も重要なのは、内装工事の着工前に保健所へ事前相談すること。検査で不合格になると追加工事で数十万円の出費と開業遅延が発生します。届出のスケジュールは「6ヶ月前=資格取得→3ヶ月前=保健所事前相談→1ヶ月前=営業許可申請→開業後=税務届出」の流れで進めましょう。

飲食店開業に必要な届出の全体像【一覧表】

飲食店を開業する際に必要な届出は、業態や規模によって異なりますが、最大で10種類以上になります。まず全体像を一覧表で把握しましょう。

届出・手続き 届出先 期限 必須/条件付き
食品衛生責任者の資格取得食品衛生協会営業許可申請前全店舗必須
防火管理者の資格取得防火・防災協会開業前収容人員30人以上
飲食店営業許可申請保健所工事完了予定日の10日以上前全店舗必須
防火管理者選任届消防署営業開始前収容人員30人以上
深夜酒類提供飲食店営業開始届出警察署営業開始の10日前深夜0時以降に酒類を提供する店
風俗営業許可申請警察署営業開始前(審査2ヶ月程度)接待を伴う店舗のみ
個人事業の開業届出書税務署開業日から1ヶ月以内全店舗必須
青色申告承認申請書税務署開業日から2ヶ月以内 or 3月15日青色申告を選択する場合(強く推奨)
給与支払事務所等の開設届出書税務署開設日から1ヶ月以内従業員を雇う場合
労働保険の保険関係成立届労働基準監督署雇用日の翌日から10日以内従業員を雇う場合
雇用保険適用事業所設置届ハローワーク設置日の翌日から10日以内週20時間以上・31日以上雇用する場合

参考: 東京都福祉保健局「食品営業はじめてナビ」

開業スケジュール:時系列で見る届出のタイムライン

飲食店開業の届出は、いつ何をすべきかが重要です。以下のタイムラインで開業日から逆算して計画を立てましょう。

時期 やること 届出先
6ヶ月前食品衛生責任者の養成講習会を受講(予約が取りづらいので早めに)食品衛生協会
6ヶ月前防火管理者の講習を受講(甲種2日・乙種1日)防火・防災協会
3〜4ヶ月前保健所へ事前相談(設計図面を持参)← 最重要保健所
3ヶ月前内装工事着工(保健所の事前相談結果を反映した設計で)
1ヶ月前飲食店営業許可の申請(工事完了予定日の10日以上前)保健所
2〜3週間前保健所の施設検査(工事完了後に立ち入り検査)保健所
10日前深夜酒類提供飲食店営業開始届出(該当する場合)警察署
開業前防火管理者選任届(収容30人以上の場合)消防署
開業後1ヶ月以内開業届・青色申告承認申請書・給与支払事務所等の開設届出書税務署
従業員雇用後10日以内労災保険・雇用保険の手続き労基署・ハローワーク

⚠️ 着工前の保健所事前相談を絶対に省略しないでください

飲食店開業で最も高額な失敗は「内装工事完了後に保健所の検査で不合格」になることです。手洗い場が2ヶ所必要なのに1ヶ所しかない、厨房と客席を仕切るドアがない、排水設備が基準を満たしていない——これらの不備は内装工事のやり直しで数十万円〜100万円以上の追加費用が発生します。必ず着工前に設計図面を持参して保健所に相談しましょう。

食品衛生責任者の資格取得

飲食店を営業するには、1店舗につき最低1名の食品衛生責任者を配置する義務があります(食品衛生法第51条)。食品衛生責任者は、店舗の衛生管理を担当する責任者です。

取得方法と費用

項目 内容
講習内容衛生法規・公衆衛生学・食品衛生学の3科目(計6時間程度)
受講費用約10,000〜12,000円(地域により異なる)
取得できるまでの期間講習1日で修了。ただし予約が混雑するため1〜2ヶ月前の申込みが必要
講習免除者調理師・栄養士・製菓衛生師・食品衛生管理者等の有資格者
有効期限なし(全国共通で一度取得すれば有効)

💡 実務のポイント

「飲食店を開業するには調理師免許が必要」と思っている方がいますが、調理師免許は不要です。必要なのは食品衛生責任者の資格だけで、1日の講習で取得できます。ただし、講習の予約が1〜2ヶ月先まで埋まっていることが珍しくないため、開業を決めたらすぐに申し込みましょう。

飲食店営業許可の申請手順

飲食店営業許可は、食品衛生法に基づき保健所が発行する許可です。この許可がなければ飲食店を営業できません。

申請の流れ

順序 手順 ポイント
1保健所へ事前相談(着工前)設計図面を持参。手洗い・排水・仕切りの基準を確認
2内装工事の実施保健所の指導を反映した設計で施工
3営業許可申請書の提出工事完了予定日の10日以上前に提出
4保健所の施設検査担当者が店舗に立ち入り検査。合格すれば許可証発行
5営業許可証の交付有効期間5〜8年(更新手続きが必要)

申請に必要な書類

営業許可申請書、店舗の図面(厨房・客席のレイアウト)、食品衛生責任者の資格を証する書類、水質検査成績書(貯水槽使用の場合)、手数料(16,000〜19,000円程度・自治体により異なる)が必要です。

業態別の必要届出マトリクス

飲食店の業態によって必要な届出が異なります。自分の店舗に必要な届出を確認しましょう。

届出 居酒屋・バー カフェ ラーメン・定食 テイクアウト専門
飲食店営業許可
食品衛生責任者
深夜酒類提供飲食店営業届出○(深夜0時以降営業)△(深夜バー営業の場合)××
菓子製造業許可×△(菓子のテイクアウトがある場合)×△(菓子類を製造販売する場合)
防火管理者選任届○(30人以上)○(30人以上)○(30人以上)×(客席なし)
風俗営業許可△(接待を伴う場合)×××

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深夜酒類提供飲食店営業の届出

深夜0時以降もお酒を提供する飲食店(バー・居酒屋・スナック等)は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)第33条の規定により、所轄警察署への届出が必要です。

届出が必要な店舗の判断基準

条件 届出の要否
深夜0時以降に酒類を提供+酒類がメイン必要
深夜0時以降に営業+主食(米・麺・パン等)を提供している原則不要(所轄警察署の判断による)
0時前に閉店する居酒屋不要
接待(ホステスによる接客等)を伴う店舗深夜酒類届出ではなく、風俗営業許可が必要

📝 行政書士の視点

深夜酒類提供飲食店営業の届出には、客席の照度(10ルクス以上)や店舗の設備要件があります。また、住居専用地域では営業できないなど、用途地域の制限もあるため、物件を契約する前に所轄警察署で営業の可否を確認しておくことが重要です。届出を行わずに深夜営業すると50万円以下の罰金が科される可能性があります。

参考: 警察庁「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」

税務署への届出:開業届と青色申告

開業届(個人事業の開業届出書)

個人事業主として飲食店を開業する場合、開業日から1ヶ月以内に所轄税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。提出しなくても罰則はありませんが、青色申告が選択できない・屋号入り口座が開設できないなどのデメリットがあります。

参考: 国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」

青色申告承認申請書(強く推奨)

飲食店経営者にとって青色申告の65万円控除は非常に大きい節税効果です。所得税率20%の場合、65万円×30%(所得税+住民税)=約19.5万円の節税になります。開業届と同時に提出するのが最も効率的です。

開業届と同時に提出すべき書類チェックリスト

書類名 対象 期限
個人事業の開業届出書全員開業日から1ヶ月以内
青色申告承認申請書青色申告を選択する場合開業日から2ヶ月以内
給与支払事務所等の開設届出書従業員を雇う場合開設日から1ヶ月以内
源泉所得税の納期の特例の承認申請書従業員10人未満の場合随時
青色事業専従者給与に関する届出書家族に給与を払う場合経費算入する年の3月15日まで

💡 実務のポイント

飲食店の開業相談を受けていて最も多い後悔は「青色申告承認申請書を出し忘れた」です。開業の忙しさで税務届出を後回しにした結果、期限を過ぎてしまい初年度は白色申告になってしまうケースを毎年見かけます。開業届と青色申告承認申請書は同日にセットで提出するのが鉄則です。

従業員を雇う場合の届出

アルバイト1名でも雇用する場合、労災保険の加入手続きが必要です。労災保険は雇用形態(正社員・パート・アルバイト)を問わず全員が対象です。

保険 対象 届出先 期限
労災保険1人でも雇用したら全員労働基準監督署雇用翌日から10日以内
雇用保険週20時間以上+31日以上雇用ハローワーク雇用翌日から10日以内
社会保険(健保・厚生年金)法人は全従業員/個人は常時5人以上年金事務所事業開始から5日以内

内装工事費の減価償却と勘定科目

飲食店の開業で最も高額な支出は内装工事費です。内装工事費は一括で経費にはできず、耐用年数に応じて減価償却する必要があります。

内装工事費の3分類

勘定科目 具体例 耐用年数(飲食店用)
建物(内部造作)壁・床・天井の仕上げ工事、間仕切り(固定式)木造20年/RC造34〜41年(自社所有)。賃貸は合理的見積り10〜15年
建物附属設備電気設備・給排水設備・空調設備・ガス設備電気15年/給排水・ガス15年/空調13年
器具備品厨房機器・テーブル・椅子・冷蔵庫・製氷機飲食店用冷蔵庫6年/テーブル・椅子5年/レジ5年

賃貸テナントの内装工事の耐用年数

飲食店の多くは賃貸テナントで開業するため、内装工事の耐用年数の判断が重要です。国税庁の耐用年数取扱通達では、他人の建物に施した内部造作は「合理的に見積もった耐用年数」で償却することとされています。

実務では、賃貸借期間の定めがあり更新不可の場合はその賃貸期間を、それ以外の場合は10〜15年を耐用年数とするのが一般的です。ただし、建物附属設備(電気・給排水・空調等)に該当する部分は、内部造作とは分けて各設備ごとの法定耐用年数で個別に償却します。

節税シミュレーション:内装工事1,000万円の場合

📐 シミュレーション前提条件

  • 内装工事費1,000万円(賃貸テナント)
  • 内訳:建物(内部造作)600万円、建物附属設備200万円、器具備品200万円
  • 耐用年数:内部造作15年、建物附属設備15年(平均)、器具備品5年(平均)
  • 定額法で償却
区分 取得価額 年間償却費 償却期間
建物(内部造作)600万円40万円15年
建物附属設備200万円約13.3万円15年
器具備品200万円40万円5年
合計1,000万円約93.3万円

※概算値です。工事内容や物件の構造により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

📊 公認会計士の視点

内装工事費を全額「建物」で一括計上すると耐用年数が長くなり、年間の償却費が少なくなります。建物附属設備や器具備品に該当するものを適切に分離して計上することで、より早く経費化できます。特に器具備品(耐用年数5年前後)は初期の節税効果が大きいため、工事見積書を確認して正確に分類することが重要です。内装工事業者からの見積書が一式計上になっている場合は、項目別の明細を依頼しましょう。

飲食店の棚卸しの方法については「飲食店の棚卸完全ガイド」で詳しく解説しています。また、税務調査のポイントについては「飲食店の税務調査対策」もあわせてご確認ください。

居抜き物件 vs スケルトンの開業費用比較

比較項目 居抜き物件 スケルトン(空っぽの状態から)
内装工事費の目安100〜500万円500〜2,000万円
開業までの期間1〜2ヶ月3〜6ヶ月
保健所検査設備が揃っていれば通りやすい設計段階から保健所の基準に合わせる必要あり
減価償却取得価額が低い→年間償却費も小さい取得価額が高い→年間償却費も大きい(節税効果大)
注意点前オーナーの営業許可は使えない。新規申請が必要設計の自由度は高いが初期投資が大きい

開業費の処理と繰延資産

開業前に支出した費用(市場調査費・研修費・広告宣伝費・物件探しの交通費等)は「開業費」として繰延資産に計上し、開業後に任意の時期に全額または一部を償却できます。赤字の年は償却せず、黒字になった年にまとめて償却するという節税テクニックが使えます。

💡 実務のポイント

飲食店の開業1年目は赤字になることが多いです。開業費を初年度にすべて償却すると赤字がさらに膨らむだけですが、2年目以降の黒字が出た年に償却すれば、その年の所得を圧縮して節税できます。ただし、内装工事費や厨房機器など10万円以上の固定資産は開業費に含めず、別途減価償却資産として計上する必要があるので注意してください。

まかない(自家消費)の税務処理については「まかないの自家消費の取扱い」で解説しています。また、個人事業主の確定申告全般については「フリーランス・個人事業主の確定申告の基礎」もご参照ください。

よくある質問(FAQ)

飲食店の開業に最低限必要な届出は?
最低限必要なのは、食品衛生責任者の資格取得、飲食店営業許可の申請(保健所)、個人事業の開業届(税務署)の3つです。収容人員30人以上の店舗は防火管理者の選任届(消防署)も必要です。従業員を雇う場合は労災保険・雇用保険の手続きも加わります。
飲食店の営業許可の有効期間は何年?
一般的に5〜8年です(自治体により異なります)。有効期間の満了前1ヶ月以内に更新手続きを行う必要があり、更新を忘れて営業すると無許可営業(食品衛生法違反)になります。
居抜き物件でも営業許可の新規申請は必要?
はい。営業許可は前のオーナー個人に対して交付されたものなので、オーナーが変わる場合は新規申請が必要です。ただし、居抜き物件は設備が整っているため、スケルトンからの新規に比べて検査に通りやすく、開業期間も短縮できます。
食品衛生責任者の講習は何日かかる?
講習は1日(6時間程度)で修了します。ただし、人気が高く予約が1〜2ヶ月先まで埋まっていることが多いため、開業を決めたら早めに申し込みましょう。調理師・栄養士・製菓衛生師などの有資格者は講習なしで食品衛生責任者になれます。
深夜酒類提供飲食店営業の届出を出さないとどうなる?
風営法違反となり、50万円以下の罰金が科される可能性があります。また、無届での深夜営業が発覚した場合、営業停止処分を受けるリスクもあります。深夜0時以降に酒類を提供する予定がある場合は、必ず営業開始の10日前までに届出を行ってください。
法人で飲食店を開業する場合の届出は違う?
保健所・消防署・警察署への届出は個人・法人で同じです。税務署への届出が異なり、法人の場合は法人設立届出書・青色申告承認申請書(法人用)・給与支払事務所等の開設届出書を提出します。都道府県税事務所と市区町村への法人設立届出書も必要です。
飲食店の内装工事費は全額経費にできる?
一括では経費にできません。内装工事費は減価償却資産として資産計上し、耐用年数に応じて毎年少しずつ経費化します。ただし、40万円未満の少額減価償却資産は青色申告の特例で一括経費にできます(令和8年度〜)。
開業費はいつ経費にできる?
開業費は繰延資産として計上し、開業後に任意のタイミングで全額または一部を償却(経費化)できます。赤字の年は償却せず、黒字の年にまとめて償却することで効果的な節税が可能です。ただし、10万円以上の固定資産(内装工事費・厨房機器等)は開業費に含めず、別途減価償却資産として処理します。
飲食店の開業に調理師免許は必要?
不要です。飲食店開業に必要な資格は食品衛生責任者のみで、1日の講習で取得できます。調理師免許は名称独占資格(「調理師」と名乗れる資格)であり、営業許可の要件ではありません。
飲食店の消費税はいつから払う必要がある?
前々年の課税売上高が1,000万円を超えた場合に消費税の課税事業者になります。開業初年度と2年目は原則として免税事業者です。ただし、インボイス制度に登録した場合は売上に関係なく課税事業者となり、消費税の申告・納付が必要になります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 飲食店開業の届出は「6ヶ月前=資格取得→3ヶ月前=保健所事前相談→1ヶ月前=営業許可申請→開業後=税務届出」の順で進める
  • 最も重要な手続きは着工前の保健所事前相談。不備があると追加工事で数十万円の出費
  • 食品衛生責任者は1日の講習で取得可能。調理師免許は不要
  • 深夜0時以降に酒類を提供する店舗は警察署への届出が必要。無届は罰金50万円以下
  • 開業届と青色申告承認申請書は必ず同日に提出。65万円控除で年間約19.5万円の節税効果
  • 内装工事費は建物・建物附属設備・器具備品の3つに分類して減価償却。適切な分類で節税効果UP
  • 開業前の費用は「開業費」として繰延資産に計上。黒字の年にまとめて償却するのが節税の基本

飲食店の開業は、許認可(保健所・消防署・警察署)と税務届出(税務署)と労務手続き(労基署・ハローワーク)の3つの分野にまたがります。手続きの漏れや遅延を防ぐには、行政書士(許認可)・税理士(税務届出・減価償却・節税)・社労士(労務手続き)が連携して進めるのが理想的です。

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