公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
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副業ECの確定申告|所得20万円超の申告義務と雑所得・事業所得の判定基準
「メルカリで月5万円ほど稼いでいるけど確定申告は必要?」「副業のネットショップは雑所得?事業所得?」とお悩みの会社員に向けて、所得20万円ルールの正しい理解、雑所得と事業所得の判定基準、副業EC事業者が計上できる経費を解説します。この記事を読めば、自分に確定申告が必要かどうかと、最適な申告方法を判断できます。


副業ECの確定申告|所得20万円超の申告義務と雑所得・事業所得の判定基準
「メルカリで月5万円ほど稼いでいるけど確定申告は必要?」「副業のネットショップは雑所得?事業所得?」とお悩みの会社員に向けて、所得20万円ルールの正しい理解、雑所得と事業所得の判定基準、副業EC事業者が計上できる経費を解説します。この記事を読めば、自分に確定申告が必要かどうかと、最適な申告方法を判断できます。
🏆 結論:副業EC所得が年間20万円を超えたら確定申告が必要
会社員が副業でEC・ネットショップを運営し、年間の所得(売上−経費)が20万円を超えた場合は所得税の確定申告が必要です。所得区分は多くの場合「雑所得」ですが、年間収入300万円超で帳簿を備えている場合や、社会通念上「事業」と認められる規模であれば「事業所得」として申告でき、青色申告特別控除や損益通算などの税メリットを受けられます。なお、所得20万円以下で確定申告が不要でも、住民税の申告は別途必要です。
副業ECの確定申告が必要かどうかを決めるのは、「収入」ではなく「所得」です。所得とは、売上(収入)から必要経費を差し引いた金額を指します。会社員(年末調整を受けている給与所得者)の場合、給与以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になります(所得税法第121条)。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間売上(メルカリ+Amazon等の合計) | 120万円 |
| 仕入原価 | −70万円 |
| 経費(送料・手数料・梱包材等) | −25万円 |
| 所得(=確定申告の判定基準) | 25万円 → 申告必要 |
⚠️ 注意
「所得20万円以下なら申告不要」は所得税に限った話です。住民税にはこの特例がないため、所得が1円でも住民税の申告義務があります。お住まいの市区町村の役所で住民税の申告を忘れないでください。また、医療費控除やふるさと納税で確定申告をする場合は、副業所得がたとえ20万円以下でも申告書に記載が必要です。
以下に該当する場合は、所得税の確定申告は原則不要です。ただし、住民税の申告は必要です。
| ケース | 理由 |
|---|---|
| 副業ECの所得が年間20万円以下 | 給与所得者の少額副業免除(所得税法第121条) |
| 生活用動産(不用品)の売却のみ | 所得税法第9条により非課税。ただし30万円超の貴金属等は課税対象 |
| 赤字(所得がマイナス)で他の副業所得もない | 雑所得の赤字は他の所得と通算できない |
実務では、「メルカリで自分の服を売っただけ」という方が心配して相談に来られることがありますが、着なくなった服や不要な家電を売った収入は生活用動産の譲渡として非課税です。ただし、転売目的で仕入れた商品を販売している場合は、たとえ1点でも事業性のある売上として扱われます。
副業ECの所得が「雑所得」と「事業所得」のどちらになるかは、税額に大きな影響を与えます。令和4年10月の所得税基本通達改正(所基通35-2)により、判定基準が明確化されました。
判定の核心は「その所得に係る取引を記録した帳簿書類を保存しているかどうか」と「収入金額が300万円を超えるかどうか」の2点です。
| 判定ステップ | 質問 | Yes | No |
|---|---|---|---|
| ① | その副業の収入金額は年間300万円を超えていますか? | → ②へ | → ③へ |
| ② | 帳簿書類を作成・保存していますか? | → 事業所得(概ね認められる) | → 雑所得 |
| ③ | 帳簿書類を作成・保存していますか? | → ④へ | → 雑所得 |
| ④ | 社会通念上「事業」と認められる規模ですか?(継続性・反復性・独立性・営利性) | → 事業所得 | → 雑所得 |
参考: 国税庁「所得税基本通達35-2(事業所得と業務に係る雑所得の判定)」
💡 実務のポイント
「帳簿書類を保存している=自動的に事業所得」ではありません。収入が300万円以下の場合は、帳簿の保存に加えて「社会通念上の事業性」が求められます。年間収入50万円程度の副業メルカリ転売で「事業所得」として青色申告し、赤字を給与所得と通算して還付を受ける——これは否認されるリスクが高いです。
副業ECには様々な形態があります。形態ごとの所得区分の目安を整理します。
| 副業ECの形態 | 想定所得区分 | 判定のポイント |
|---|---|---|
| メルカリで不用品を売却 | 非課税(生活用動産) | 転売目的でなく、自分が使っていた物を売る場合 |
| メルカリで仕入れ品を転売 | 雑所得(小規模)/ 事業所得(継続的かつ大規模) | 仕入行為があれば非課税ではない |
| Amazon FBAでせどり | 雑所得 / 事業所得 | FBA利用は事業性を推認させる要素 |
| 自社ブランド商品をShopifyで販売 | 事業所得(高い事業性) | 商品開発・ブランディング・在庫リスクを負っている |
| ドロップシッピング | 雑所得(小規模)/ 事業所得 | 在庫を持たないが継続的な運営なら事業性あり |
| ハンドメイド作品をminneで販売 | 雑所得 / 事業所得 | 制作に時間を費やし反復継続していれば事業性あり |
| Amazonアソシエイト(アフィリエイト) | 雑所得 | 商品販売ではなく広告収入のため |
| サブスクリプション型ECサービス | 事業所得(高い事業性) | 定期的な顧客基盤と継続収入がある |
| 輸入転売(越境EC) | 雑所得 / 事業所得 | 海外仕入れのリスクを負う点で事業性が高い |
| デジタルコンテンツ販売(note・BOOTHなど) | 雑所得 / 事業所得 | 継続的にコンテンツを制作・販売していれば事業性あり |
経営者から「ドロップシッピングは在庫を持たないから申告不要では?」という質問をよく受けますが、在庫リスクの有無は所得区分の判定要素の一つに過ぎません。継続的に収入を得ていれば、在庫の有無に関わらず申告義務があります。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 雑所得(白色申告) | 事業所得(青色申告55万円控除) |
|---|---|---|
| 副業所得 | 120万円 | 120万円 |
| 青色申告特別控除 | なし | −55万円 |
| 課税される副業所得 | 120万円 | 65万円 |
| 合計課税所得 | 約418万円 | 約363万円 |
| 所得税+住民税の増加額(概算) | 約36万円 | 約20万円 |
| 税額差 | 事業所得(青色)の方が約16万円少ない | |
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
💡 実務のポイント
事業所得にはこのほかにも「損益通算」(赤字を給与所得と相殺できる)、「純損失の繰越控除」(3年間赤字を繰り越せる)、「30万円未満の少額減価償却資産の一括経費化」などのメリットがあります。ただし、事業所得として認められるには、実態としての事業性が必要です。税メリットだけを目的に事業所得を選ぶと、税務調査で否認されるリスクがあります。
副業ECでも、事業に必要な支出は経費として認められます。雑所得であっても経費の計上は可能です(事業所得との違いは青色申告特別控除の有無と損益通算の可否です)。
| 経費項目 | 具体例 | 自宅按分の目安 |
|---|---|---|
| 仕入原価 | 商品の仕入れ代金 | 全額 |
| 荷造運賃 | 配送料・梱包材・段ボール | 全額 |
| 支払手数料 | プラットフォーム販売手数料・決済手数料 | 全額 |
| 通信費 | インターネット回線・スマホ料金 | 20〜50%(業務利用割合) |
| 地代家賃 | 自宅の家賃(作業・在庫保管スペース分) | 10〜30%(面積割合) |
| 水道光熱費 | 電気代(PC・プリンター利用分) | 10〜30% |
| 消耗品費 | 10万円未満のPC・プリンター・カメラ | 業務利用割合 |
| 広告宣伝費 | SNS広告・Google広告・楽天スーパーSALE広告費 | 全額 |
| 車両費 | 仕入れ・発送のための交通費・ガソリン代 | 業務利用割合 |
| ソフトウェア利用料 | 会計ソフト・在庫管理ツール・ECカート月額費 | 全額 |
| 外注費 | 商品写真撮影・LP制作・商品説明文ライティング | 全額 |
| 図書費 | 仕入れや販売に関する書籍・セミナー参加費 | 全額 |
| 保険料 | 商品の損害保険・PL保険 | 全額 |
| 減価償却費 | 10万円以上のPC・カメラ等(耐用年数で按分) | 業務利用割合 |
| 雑費 | 銀行振込手数料・撮影用小物 | 全額 |
現場で最も多い相談は「自宅の家賃をどこまで経費にできるか」です。副業ECの場合、自宅の一室を作業場や在庫保管場所として使っている場合は、その面積割合を家賃に乗じた金額を経費計上できます。ただし、按分の合理的な根拠(部屋の面積図・利用時間の記録等)を残しておくことが重要です。
まず、利用している全プラットフォームの年間売上を集計します。メルカリ・Amazon・楽天・自社サイトなど、複数チャネルで販売している場合はすべてを合算します。プラットフォームごとの年間レポートをCSVでダウンロードしておくと、後の作業が楽になります。
上記の経費15項目に該当する支出を、領収書やクレジットカード明細をもとに集計します。自宅按分がある項目は、按分計算の根拠をメモとして残しておきましょう。
12月31日時点で手元に残っている在庫は、経費にはなりません。仕入れた商品のうち未販売のものは「棚卸資産」として翌年に繰り越します。在庫を経費に含めてしまうと、所得が少なく計算されてしまい、後で修正が必要になります。
在庫の評価方法や棚卸の実務については、「ネットショップの棚卸完全マニュアル|FBA在庫・未着品・低価法による節税まで」で詳しく解説しています。
年間売上 − 仕入原価(期首在庫+当期仕入−期末在庫)− 経費 = 所得金額。この金額が20万円を超えていれば確定申告が必要です。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」でe-Taxを使って申告するのが最も簡単です。雑所得の場合は確定申告書第一表・第二表に金額を記入し、前々年の雑所得の収入金額が300万円を超える場合は領収書等の5年間保存、1,000万円を超える場合は収支内訳書の添付が必要です。
確定申告の全般的な手順については、「フリーランスの確定申告完全ガイド」でもステップ別に解説しています。
副業が会社にバレる最も多い原因は、住民税の金額の変化です。通常、会社員の住民税は給与から天引き(特別徴収)されますが、確定申告で副業所得が加算されると住民税額が増え、会社の経理部門に「給与以外の所得がある」と気づかれる可能性があります。
これを防ぐには、確定申告書の第二表の「住民税に関する事項」欄で、「自分で納付(普通徴収)」を選択します。こうすることで、副業分の住民税は自宅に届く納付書で自分で支払うことになり、会社には通知されません。
⚠️ 注意
普通徴収を選択しても、お住まいの市区町村によっては特別徴収に一本化する方針をとっている場合があります。確定申告後に市区町村の住民税担当窓口に「副業分を普通徴収にしてほしい」と念のため連絡を入れることをおすすめします。なお、副業が給与所得(アルバイト等)の場合は普通徴収を選択できません。
ドロップシッピングとは、自分で在庫を持たず、注文を受けたらメーカーや卸業者が顧客に直接発送するビジネスモデルです。在庫を持たないため棚卸は不要ですが、税務上は以下の点に注意が必要です。
| 論点 | 正しい処理 | 注意点 |
|---|---|---|
| 売上計上のタイミング | 商品が顧客に発送された時点 | 注文時点ではなく発送時点で計上 |
| 総額処理vs純額処理 | 販売の主体者なら総額処理 | 単なる仲介なら純額処理も可 |
| 海外ドロップシッピングの消費税 | 国内顧客への販売は課税売上 | 海外サプライヤーへの支払いは不課税仕入れ |
月額課金やサブスクリプションボックスを副業で運営している場合、年払いで受け取った代金のうち翌年分は「前受金」として処理する必要があります。たとえば、12月に翌年1月〜3月分の3ヶ月分をまとめて受け取った場合、12月時点では1ヶ月分だけが売上、残り2ヶ月分は前受金(負債)として計上します。
売上計上のルールについてさらに詳しくは、「EC事業者の売上計上基準完全ガイド」をご覧ください。
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除 | 最大55万円(e-Taxなら65万円)の控除 | 複式簿記の記帳が必要 |
| 損益通算 | 赤字を給与所得と相殺できる | 赤字目的の経費計上は否認リスクあり |
| 屋号付き銀行口座 | 事業用口座を開設しやすくなる | — |
| 失業保険への影響 | — | 会社を退職した際に失業給付の受給が制限される可能性 |
| 会社の就業規則 | — | 副業を禁止している会社では問題になる可能性 |
💡 実務のポイント
開業届を出すべきかの判断は「年間の副業所得が安定的に100万円を超えている」「今後も継続・拡大する意思がある」「帳簿を付けられる環境がある」の3つを満たす場合に検討するのが実務上の目安です。年間所得が数十万円程度の段階で無理に開業届を出す必要はありません。
開業届の提出方法については、「飲食店の開業届出ガイド」で業種を問わない共通の手順を解説しています。
「副業程度で税務調査は来ないだろう」と考える方は多いですが、国税庁は電子商取引専門調査チーム(PROTECT)を設置し、EC事業者の取引データを広範囲に収集しています。特に無申告の副業EC事業者は重点的な調査対象です。
実務で見た副業EC事業者の税務調査事例では、「メルカリの年間売上が200万円を超えていたにもかかわらず、3年間無申告だった」というケースがありました。プラットフォームの取引記録と銀行口座の入金記録から売上を把握され、3年分の所得税+住民税+無申告加算税+延滞税で合計約100万円の追徴となりました。
電子商取引専門調査チームの具体的な情報収集手法については、「EC事業者が税務調査で指摘される5大ポイント」で詳しく解説しています。
📋 この記事のポイント
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