公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
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DES(デットエクイティスワップ)の税務処理をめぐる判例
「社長貸付金をDESで解消したいが、税務上の問題はないか?」「DESで債務消滅益が出るとどれだけ課税されるのか?」とお悩みの経営者に向けて、DESの税務処理を判例とともに完全ガイドします。この記事を読めば、DESのスキーム選択で失敗しない判断ができるようになります。


DES(デットエクイティスワップ)の税務処理をめぐる判例
「社長貸付金をDESで解消したいが、税務上の問題はないか?」「DESで債務消滅益が出るとどれだけ課税されるのか?」とお悩みの経営者に向けて、DESの税務処理を判例とともに完全ガイドします。この記事を読めば、DESのスキーム選択で失敗しない判断ができるようになります。
🏆 結論:DESの税務リスクは「債務消滅益」の発生と「債権の時価評価」にある
DES(デットエクイティスワップ)とは、債権者が保有する債権を債務者の株式に転換する手法です。税務上の最大のポイントは、非適格現物出資に該当するDESでは、債権の額面と時価の差額が「債務消滅益」として課税対象になることです。平成18年度税制改正により、税務上は「評価額説」が採用され、債権は時価で評価されます。判例(東京地裁平成21年判決)でも、DESによる債務消滅益は益金に算入すべきとされました。ただし、企業再生の場面では期限切れ欠損金の活用により課税を回避できる余地があります。
DES(Debt Equity Swap)とは、債権者が保有する貸付金などの債権を、債務者会社の株式に振り替える手法です。債務が資本に変わるため、債務者のバランスシートが改善され、債務超過の解消や財務体質の強化に活用されます。
| ステップ | 債権者 | 債務者 |
|---|---|---|
| DES前 | 貸付金1,000万円を保有 | 借入金1,000万円を計上 |
| DES実行 | 貸付金1,000万円を現物出資 → 株式を取得 | 借入金1,000万円が消滅 → 資本金が増加 |
| DES後 | 貸付金なし → 株式を保有 | 借入金なし → 資本増強 |
DESと単純な債務免除はどちらも債務者の負債を減少させますが、決定的な違いがあります。DESでは債権者が株式を取得するため、将来の配当や株式価値の上昇によるリターンの可能性が残ります。一方、債務免除では債権者は一方的に債権を放棄するだけです。
| 比較項目 | DES | 債務免除 |
|---|---|---|
| 債権者の対価 | 株式を取得(リターンの可能性あり) | なし(一方的な放棄) |
| 債務者の課税 | 債務消滅益(額面−時価)に課税 | 債務免除益(全額)に課税 |
| 債権者の課税 | 債権の帳簿価額と時価の差額が譲渡損 | 債権放棄損(寄附金認定リスクあり) |
債権放棄による寄附金認定のリスクについては「寄附金の認定をめぐる判例」で詳しく解説しています。
DESの税務処理は、「適格現物出資」に該当するか「非適格現物出資」に該当するかによって全く異なります。
| 項目 | 適格現物出資 | 非適格現物出資 |
|---|---|---|
| 該当ケース | 100%グループ内のDES等 | 金融機関等の第三者によるDES |
| 債権の受入価額 | 帳簿価額(簿価) | 時価 |
| 資本金等の増加額 | 債権の帳簿価額=額面 | 債権の時価 |
| 債務消滅益 | 発生しない | 額面−時価の差額が発生 |
| 債権者の譲渡損益 | 繰延べ | 帳簿価額−時価=譲渡損 |
⚠️ 注意
通常、100%グループ内のDESのみが適格現物出資に該当します。金融機関などの第三者がDESを行う場合は非適格現物出資となるため、債務者側で必ず債務消滅益の問題が生じます。中小企業で最も多い「社長個人の貸付金をDESで解消する」ケースも、社長個人と法人の間には100%グループ関係が成立しないため非適格となる可能性が高く、注意が必要です。
非適格現物出資によるDESでは、債権の額面と時価の差額が債務消滅益として認識されます。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 消滅する債務(借入金) | 1,000万円 |
| 増加する資本金等の額(=債権の時価) | 400万円 |
| 債務消滅益(益金算入) | 600万円 |
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 現物出資した債権の帳簿価額 | 1,000万円 |
| 取得した株式の取得価額(=債権の時価) | 400万円 |
| 譲渡損(損金算入の可否は個別判断) | 600万円 |
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
📊 公認会計士の視点
会計上は「券面額説」も認められており、借入金1,000万円がそのまま資本金等に振り替わるだけで、債務消滅益は認識しません。しかし、税務上は平成18年度改正以降「評価額説」が採用されているため、額面1,000万円と時価400万円の差額600万円が債務消滅益として課税されます。この会計と税務のギャップが実務上の混乱の原因になっています。
この判決は、DESによる債務消滅益の益金算入の可否が正面から争われた重要な事例です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事案概要 | 関連会社から債権の現物出資を受け新株を発行(DES)。納税者は「資本等取引」として債務消滅益を益金に算入せず申告 |
| 争点 | DESによる債務消滅益は益金に算入すべきか(資本等取引か損益取引か) |
| 裁判所の判断 | DESによる債務消滅益は益金に算入する必要がある(国側勝訴) |
| 判断理由 | 現物出資された債権と債務が混同により消滅し、その際に生じた差額は資本等取引に該当せず、益金に算入すべき |
💡 実務のポイント
この判決の最大の教訓は、DESは「債権と引き換えに株式を発行する資本等取引だから課税されない」という納税者の主張が否定されたことです。税務上、DESによって消滅する債務の額面と債権の時価の差額は、あくまで損益取引として益金に算入されます。DESを検討する際は、債務消滅益への課税を前提としたキャッシュフロー計画が不可欠です。
行為計算否認の観点からのDESのリスクは「同族会社の行為計算否認をめぐる判例」もあわせてご確認ください。
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鮎澤パートナーズに相談するDESには法的形式の異なる2つの方法があり、税務上の取扱いが大きく異なります。
| 比較項目 | 現物出資型DES | 疑似DES(現金払込型) |
|---|---|---|
| しくみ | 債権を直接現物出資して株式を取得 | ①現金で増資 → ②増資で得た現金で債務を返済 |
| 債務消滅益 | 非適格の場合、額面−時価の差額が発生 | 原則として発生しない(現金による弁済) |
| 法的リスク | 法的安全性が高い | 「見せ金」リスク・差押えリスクあり |
| 税務リスク | 債務消滅益への課税リスク | 行為計算否認(132条)のリスク |
| 適用場面 | 企業再生・金融機関主導のDES | 社長貸付金の解消(中小企業で多い) |
⚠️ 注意
疑似DES(現金払込型)は債務消滅益が発生しないメリットがありますが、租税回避目的以外の経済合理性が認められない場合は、行為計算否認規定(法132条)が適用されるリスクがあります。現物出資型DESに代えて疑似DESを選択する場合は、なぜ現金払込型を選んだかの合理的な説明が必要です。
中小企業でDESが最も活用されるのが「社長貸付金(社長から法人への貸付金)の解消」です。社長が法人に対して多額の貸付金を持っている場合、社長の相続時に額面全額が相続財産に含まれるため、DESで株式に転換するニーズがあります。
社長個人から法人へのDESは非適格現物出資に該当する可能性が高く、債権の額面と時価の差額が債務消滅益として法人に課税されます。法人が債務超過であれば債権の時価は額面より大幅に低くなるため、多額の債務消滅益が発生します。
社長以外にも株主がいる場合、DESにより法人の純資産が増加することで、他の株主の保有株式の価値が上昇します。社長と他の株主が親族関係にある場合、この株式価値の増加分がみなし贈与として贈与税の課税対象になる可能性があります(相続税法9条)。
特に疑似DES(現金払込型)で社長貸付金を解消する場合、現物出資型に比べて税務メリットが大きいことから、行為計算否認(法132条)の適用リスクがあります。DESを行う合理的な事業目的(財務体質の改善・銀行格付けの向上等)を明確に文書化しておく必要があります。
💡 実務のポイント
社長貸付金のDESを検討する際は、まず「DESによって発生する債務消滅益」と「繰越欠損金で相殺できる金額」を試算してください。繰越欠損金が十分にあれば債務消滅益は課税されません。繰越欠損金が不足する場合は、DESではなく少額ずつの返済や相続時精算課税の活用など、別の方法を検討した方がよいケースも多いです。
法人設立時から社長貸付金を発生させない設計が重要です。「会社設立の流れ完全ガイド」や「法人成りのタイミング」で初期段階の注意点を確認してください。
企業再生の場面でDESが行われる場合、平成18年度税制改正により、債務消滅益を期限切れ欠損金(法人税法59条の適用対象)で相殺できるようになりました。
| 手続の種類 | 期限切れ欠損金の活用 |
|---|---|
| 会社更生法に基づく更生手続 | 可能 |
| 民事再生法に基づく再生手続 | 可能 |
| 特別清算・破産手続 | 可能 |
| 私的整理ガイドライン・事業再生ADR等の一定の私的整理 | 可能 |
| 上記以外の任意のDES | 不可(通常の繰越欠損金のみ使用可能) |
期限切れ欠損金とは、法人税法上の繰越期間(現行10年)を超えて控除できなくなった欠損金です。通常は使えませんが、企業再生税制の適用場面では青色欠損金に優先して債務消滅益から控除できます。DESで資本金が増加した場合の役員報酬への影響は「役員報酬の基礎知識」で確認できます。
非適格現物出資によるDESでは、債権の時価評価が税額を左右する最重要ポイントです。国税庁は経済産業省からの書面照会に対し、以下の方法を了承しています。
企業再生税制適用場面においては、債権の時価は「合理的に見積もられた回収可能額」に基づいて評価することが妥当とされています。具体的には、債務者の実態貸借対照表の債務超過額をベースに債権者調整が行われ、事業再生計画における損益見込等を考慮し、債務者及び債権者双方の合意のもとで算出された回収可能額を用います。
決算書の作成方法については「法人決算の流れ完全ガイド」で解説しています。減価償却資産の評価がDES時の時価算定に影響するケースは「減価償却の基礎知識」もご参照ください。
📋 この記事のポイント
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