YouTuberの経費はどこまで認められる?「動画に映れば経費」は嘘、否認されやすい5項目

YouTuberの経費はどこまで認められる?「動画に映れば経費」は嘘、否認されやすい5項目
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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「撮影で着た服は経費?」「ゲーム実況のソフト代は?」——YouTuber・インフルエンサーの経費はどこまで認められるのか。否認されやすい5項目の判定基準と、税務調査で証拠として有効な書類をチェックリスト形式で解説します。

🏆 結論:「動画に映れば経費」は嘘

YouTuberの経費の判定基準は「動画に映ったかどうか」ではなく、所得税法第37条の「収入を得るために直接必要な支出かどうか」です。衣装代・美容代・食事代・旅行代・ゲーム代の5項目は、プライベートとの線引きが曖昧なため税務調査で最も狙われるポイントです。経費として認められるには、事業との直接的な関連性を「客観的な証拠」で説明できることが必須です。

YouTuberの経費の基本ルール:所得税法第37条の判定基準

経費(必要経費)として認められるかどうかは、所得税法第37条に基づいて判断されます。条文の要件を噛み砕くと、次の2つの条件を両方満たす必要があります。

第一に、その支出が「収入を得るために直接必要な費用」であること。第二に、事業との関連性を「客観的に説明できる」ことです。

💡 実務のポイント:「必要性」と「関連性」の2軸で判定する

税務調査の現場では、調査官は「この支出がなくても動画は作れたか?」「プライベートでも同じものを使っていないか?」の2点を確認します。撮影専用の照明機材は「なければ動画が作れない」ので経費として認められやすい。一方、普段着としても着られる服は「なくても動画は作れる」ので否認されやすいのです。

参考: 国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」

否認されやすい経費5項目の判定マトリクス

YouTuberの経費で最もトラブルになりやすい5項目について、「経費OK」「グレーゾーン」「経費NG」の3段階で判定基準をまとめました。

【項目1】衣装代

判定 具体例 理由
⭕ 経費OKコスプレ衣装、着ぐるみ、ステージ衣装日常では着用しない撮影専用品
△ グレーファッション系YouTuberの最新トレンド服レビュー後にプライベートで着用する可能性
❌ 経費NG普段着にも使えるTシャツ、ジーンズプライベートでも着用可能な汎用品

【項目2】美容代・エステ代

判定 具体例 理由
⭕ 経費OK撮影用の特殊メイク(傷メイク等)、ヘアセット(撮影当日のみ)撮影なければ発生しない費用
△ グレー美容系YouTuberがレビューする化粧品レビュー後にプライベートで使用する可能性
❌ 経費NG定期的なエステ、ネイルサロン、日常の化粧品個人の容姿を整える費用は「家事費」

【項目3】食事代・食材費

判定 具体例 理由
⭕ 経費OK料理動画の食材費(撮影で消費した分のみ)撮影目的で購入し、動画内で使い切った
△ グレー食レポ動画のレストラン代取材目的なら経費だが、個人の食事も兼ねている
❌ 経費NG日常の食事代、コンビニ弁当、撮影後の余った食材生活に不可欠な支出は「家事費」

【項目4】旅行代・宿泊費

判定 具体例 理由
⭕ 経費OK特定の場所を紹介する動画のためのロケ旅行旅行の主目的が撮影であることを説明できる
△ グレー家族旅行のついでにVlog撮影主目的がプライベートなら按分が必要
❌ 経費NGプライベート旅行で数分だけ撮影「ついで撮影」は事業目的として認められにくい

【項目5】ゲームソフト・アプリ課金

判定 具体例 理由
⭕ 経費OK実況動画で使用するゲームソフト購入費実況チャンネルの主たるコンテンツ素材
△ グレー配信外でもプレイするゲームの課金事業用と私用の按分が必要
❌ 経費NG動画に使わないゲームの購入費事業との関連性なし

⚠️ 実際の追徴事例:美容系インフルエンサー9人・3億円の申告漏れ

2023年3月、東京国税局が美容系インフルエンサーの女性9人に対する税務調査を行い、6年間で合計約3億円の申告漏れを指摘しました。追徴税額は約8,500万円にのぼります。商品紹介の報酬を申告していなかったことに加え、経費計上の妥当性も争点になりました。「動画で紹介した化粧品はすべて経費」という認識は通用しません。

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撮影機材・編集ソフトの経費処理と金額別の減価償却ルール

撮影機材やPCは金額によって処理方法が変わります。2026年4月以降は少額減価償却資産の特例の上限が40万円未満に引き上げられているため、YouTuberにとって有利な改正です。

金額別の処理方法比較表

取得価額 処理方法 初年度の経費額 適用条件
10万円未満全額を消耗品費全額(例:9万円)なし(全事業者OK)
10万円以上20万円未満一括償却資産(3年均等)取得価額の1/3なし(全事業者OK)
40万円未満少額減価償却の特例(即時償却)全額(例:35万円)青色申告の個人事業主(年間合計300万円まで)
40万円以上通常の減価償却耐用年数に応じた額なし(全事業者)

YouTuberがよく購入する機材の耐用年数

機材 勘定科目 耐用年数 家事按分の目安
デジタルカメラ器具備品5年撮影専用なら100%
PC(デスクトップ/ノート)器具備品4年50〜80%
照明・三脚・マイク器具備品5〜6年撮影専用なら100%
動画編集ソフト(買い切り)ソフトウェア3年事業100%
動画編集ソフト(サブスク)通信費 or 支払手数料—(費用処理)事業100%

参考: 国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」

機材の金額別処理方法や少額減価償却の特例について詳しくは「ソフトウェア・IT機器の勘定科目と減価償却の実務」も参考にしてください。

家事按分の計算方法と3パターン別シミュレーション

自宅で撮影・編集をしているYouTuberにとって、家賃・電気代・通信費の家事按分は最も重要な節税ポイントです。按分方法は大きく「面積法」と「時間法」の2つがあります。

面積法 vs 時間法の使い分け

按分方法 向いているケース 計算例
面積法専用の撮影部屋がある場合撮影部屋10㎡÷全体40㎡=25%
時間法リビングで作業し専用スペースがない場合1日8時間作業÷24時間=33%

3パターン別シミュレーション

📐 シミュレーション前提条件

  • 家賃10万円/月、電気代1万円/月、ネット回線5,000円/月
  • 年間の合計固定費:186万円(家賃120万+電気12万+通信6万)
パターン 按分率 年間経費額 節税効果(税率20%想定)
A:専用撮影部屋あり(面積法25%)25%46.5万円約9.3万円
B:リビング兼用(時間法33%)33%61.4万円約12.3万円
C:撮影は外、編集のみ自宅(時間法15%)15%27.9万円約5.6万円

※節税効果は所得税率20%(課税所得330万〜695万円)で概算。住民税10%を加えると効果はさらに大きくなります。

💡 実務のポイント:間取り図の保存がカギ

税務調査で家事按分の根拠を問われた際に最も有効なのは、間取り図に「撮影・編集スペース」をマークした資料です。面積法を使う場合は間取り図を保存しておき、時間法を使う場合は作業ログ(Google Calendarの記録など)を残しておきましょう。按分率を「なんとなく30%にした」では認められないことがあります。

税務調査で経費として認められるための証拠書類チェックリスト

経費の計上は「記録を残した者が勝つ」世界です。以下の10項目のチェックリストで、普段から証拠書類を整備しておきましょう。

No. 証拠書類 保存すべき内容 有効な経費例
1領収書・レシート日付・金額・店名・品名機材・消耗品全般
2領収書の裏書きメモ「何のために」「誰と」飲食代・交際費
3動画URL一覧購入品が使われた動画のURL衣装・食材・ゲームソフト
4企画書・台本撮影目的と使用予定の品名旅行代・食材費
5間取り図(面積マーク入り)作業スペースの面積家賃の家事按分
6作業ログ(Googleカレンダー等)撮影・編集の作業時間電気代・通信費の時間按分
7契約書(企業案件)業務内容・報酬額・納品条件企業案件関連の外注費
8クレジットカード明細事業用カードで分離管理サブスク・通信費全般
9銀行通帳(事業用口座)入出金の記録AdSense収入・外注費支払い
10家事按分の計算メモ按分率の根拠と計算式全ての按分経費

💡 実務のポイント:事業用クレジットカードの分離が最も効果的

YouTuber・インフルエンサーの確定申告でよく見かけるのが、プライベートと事業の支出が1枚のクレジットカードに混在しているケースです。事業用のカードを1枚作り、事業関連の支出はすべてそのカードで決済するだけで、帳簿付けの手間が大幅に減り、税務調査時の説明も格段に楽になります。

経費率の目安と「経費率が高すぎる」と疑われるライン

YouTuberの経費率は活動スタイルによって大きく異なりますが、一般的な目安を知っておくと、自分の経費率が適正かどうかの参考になります。

活動スタイル 経費率の目安 主な経費の内訳
自宅撮影メイン(トーク系・ゲーム実況)20〜30%家賃按分・通信費・機材・ソフト
ロケ撮影メイン(旅行・食レポ系)30〜45%交通費・宿泊費・食材費・機材
チーム制作(外注あり)40〜55%外注費・出演者ギャラ・スタジオ代

経費率が60%を超えると税務署から注目されやすくなります。ただし、経費率が高い=問題というわけではなく、各経費に合理的な根拠があれば認められます。重要なのは「なぜその経費率になったか」を説明できることです。

YouTuber・インフルエンサーの確定申告の全体像については「YouTuber・インフルエンサーの確定申告|広告収入・企業案件・投げ銭の所得区分と申告方法」で詳しく解説しています。また、フリーランス全般の確定申告については「フリーランスの確定申告の基礎知識」もあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

「動画に映ったものは全部経費」というのは本当ですか?
嘘です。経費の判定基準は「動画に映ったかどうか」ではなく「収入を得るために直接必要な支出かどうか」です。動画に映っていても、プライベートでも使えるものは全額経費にはなりません。普段着にも使える服、プライベートでも着用する靴などは、動画で着用していても経費として認められにくいのが実態です。
ゲーム実況チャンネルなら、ゲームソフトは全額経費にできる?
実況動画で使用するソフトの購入費は経費として認められます。ただし、配信外でもプライベートでプレイしている場合は事業用の按分が必要です。また、実況動画に使っていないゲームの購入費は経費にできません。購入したゲームと使用した動画のURLを記録しておくことが重要です。
食レポ動画の食事代は全額経費にできる?
食レポ動画で紹介したレストランの食事代は「取材費」として経費にできる可能性があります。ただし、食事は個人の生活にも必要な支出(家事費)であるため、税務調査では厳しく見られます。企画書や動画URLと紐づけた記録を残し、レシートの裏に「取材先・動画企画名」をメモしておくことが必須です。撮影後に余った食材を自分で食べた場合、その分は経費にはなりません。
高額カメラ(30万円)は一括で経費にできる?
青色申告の個人事業主であれば、40万円未満(2026年4月以降)の資産は少額減価償却資産の特例を使って全額を購入年の経費にできます。ただし、年間合計300万円が上限です。白色申告の場合は、10万円以上の資産は減価償却が必要です(カメラの耐用年数は5年)。
美容系YouTuberの化粧品代は経費になる?
レビュー動画で紹介する化粧品の購入費は、動画のコンテンツ素材として経費計上の余地があります。ただし、レビュー後にプライベートでも使用する場合は全額経費にはなりません。事業用と私用の按分が必要です。日常的に使う基礎化粧品や、動画で紹介していない化粧品は経費にはなりません。
プライベート旅行のついでにVlog撮影した場合の旅費は?
旅行の「主目的」がプライベートなら、Vlog撮影は「ついで」に過ぎず、旅費を全額経費にすることはできません。事業目的の部分がある場合は按分が必要ですが、「主目的が撮影」と説明できる客観的な証拠(企画書・撮影スケジュール等)がなければ、税務調査で全額否認されるリスクがあります。
税務調査でYouTuberが特に見られるポイントは?
経費の中でも「衣装代」「美容代」「食事代」「旅行代」「ゲーム代」の5項目は、プライベートとの線引きが曖昧なため最も厳しくチェックされます。また、収入の無申告や過少申告も重点的に調査されます。国税庁は電子商取引専門調査チームを設置しており、AdSenseの送金記録や動画の再生回数から収入を推定できるため、収入を隠すことは困難です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 「動画に映れば経費」は嘘。判定基準は「収入を得るために直接必要かどうか」
  • 否認されやすい5項目:衣装代・美容代・食事代・旅行代・ゲーム代
  • 撮影機材は金額別に4パターンの処理方法がある(40万円未満は即時償却可能)
  • 家事按分は「面積法」「時間法」を使い分け、間取り図や作業ログを保存する
  • 経費率60%超は税務署から注目されやすいが、根拠があれば問題ない
  • 証拠書類チェックリスト10項目で日常的に記録を整備しておくことが最大の税務調査対策
  • 事業用クレジットカードを分離するだけで帳簿と説明が格段に楽になる

YouTuberの経費判定は「動画に映ったかどうか」ではなく「事業との直接的な関連性を客観的に証明できるかどうか」で決まります。日頃から領収書への裏書き、動画URLの記録、間取り図の保存といった証拠書類の整備を習慣にしておけば、税務調査が入っても慌てずに対応できます。経費の判断に迷ったら、「この支出がなくても動画は作れたか?」を自分に問いかけてみてください。

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