【社労士×税理士が解説】ストレスチェック制度の実施義務と実務対応|50人未満も2028年までに義務化

【社労士×税理士が解説】ストレスチェック制度の実施義務と実務対応|50人未満も2028年までに義務化
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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🔷 社労士監修 📋 税理士監修

2015年から始まったストレスチェック制度が、2025年5月公布の改正労働安全衛生法により、50人未満の事業場にも義務化されることが決定。経営者・人事担当者向けに、実施プロセス・産業医連携・高ストレス者対応・労基署報告・費用相場まで完全ガイド。この記事を読めば、中小企業でもストレスチェックを適切に導入・運用できるようになります。

🏆 結論:50人未満も2028年までに義務化。早期準備で「高ストレス者ゼロ」体制を構築

ストレスチェック制度は労働安全衛生法第66条の10に基づく制度で、現行では常時50人以上の事業場に年1回実施義務があります。2025年5月14日公布の改正労働安全衛生法により、50人未満の事業場も3年以内(最長2028年5月)に義務化されます。制度の流れは「実施→結果通知→高ストレス者への面接指導申出→医師面接→就業上の措置」の5ステップ。50人以上の事業場は労基署への結果報告義務もあります。産業医の選任も必要で、未実施には労安衛法第120条により50万円以下の罰金が科されます。中小企業は、改正施行に向けて今から体制整備を進めることが推奨されます。

ストレスチェック制度とは|制度の目的と法的根拠

ストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした一次予防の制度です。2014年の労働安全衛生法改正により導入され、2015年12月から施行されました。

制度の法的根拠

📜 労働安全衛生法第66条の10(心理的な負担の程度を把握するための検査等)

「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。」

この検査が「ストレスチェック」です。事業者は年1回以上の実施が義務付けられており、検査結果は本人に通知されます。高ストレス者には、本人の申出により医師による面接指導が行われます。

制度の目的(一次予防・二次予防・三次予防)

予防段階 内容 該当制度
一次予防 未然防止(メンタル不調を発生させない) ストレスチェック、職場環境改善
二次予防 早期発見・早期対応 産業医面談、健康相談窓口
三次予防 休業者の復職支援、再発防止 休職制度、職場復帰支援

ストレスチェックは一次予防に位置づけられ、早期の気づきと職場環境改善のための基礎データ収集が主目的です。

🆕 2025年改正|50人未満の事業場も義務化

2025年5月14日に公布された改正労働安全衛生法により、現在努力義務となっている50人未満の事業場にもストレスチェック実施が義務化されることが決まりました。

改正の概要

📢 2025年5月14日公布の改正法

「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」により、労働者数50人未満の事業場についてもストレスチェックの実施が義務化されます。
施行日:公布後3年以内に政令で定める日(最長で2028年5月までに施行)
50人未満の事業場の実施率は約32%と低く、精神障害による労災認定件数の増加を背景に、全事業場での実施が必須となります。厚生労働省は2026年2月25日に「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表し、円滑な導入を支援しています。

50人未満の事業場が今から準備すべきこと

2028年までに義務化されることを見越し、以下の準備を段階的に進めることが推奨されます。

  • 地域産業保健センターの活用計画(50人未満は無料で産業保健サービスを利用可能)
  • 外部ストレスチェックサービスの比較検討
  • 衛生推進者・安全衛生推進者の選任(10人以上50人未満で義務)
  • 実施体制・情報管理体制の整備
  • 従業員への制度説明と周知

ストレスチェックの実施対象者|含む/含まない労働者

実施義務の対象となる労働者

ストレスチェックは、常時使用する労働者が対象です。雇用形態(正社員・契約社員・パート・アルバイト)を問わず、以下の条件を両方満たす労働者が対象となります。

要件 内容
契約期間要件 期間の定めのない契約、または1年以上の継続雇用(見込み含む)
労働時間要件 週の所定労働時間が通常労働者の4分の3以上

対象外となる労働者

  • 派遣社員(派遣元企業の責任で実施)
  • 役員(取締役・監査役)
  • 短時間労働者(週所定労働時間が正社員の3/4未満)
  • 継続雇用予定が1年未満の短期労働者

💡 派遣社員の扱い

派遣社員のストレスチェック実施義務は派遣元企業にあります。派遣先企業は、派遣元が実施するストレスチェックに協力し、集団分析(職場単位の分析)については派遣先が実施します。派遣社員を多く受け入れている企業は、派遣元との協力体制の構築が重要です。

ストレスチェックの実施フロー|5ステップ

ステップ1:実施体制の整備

ストレスチェックを実施するには、以下の体制を整えます。

  • 実施者:医師、保健師、厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師・精神保健福祉士・歯科医師・公認心理師
  • 実施事務従事者:実施者の指示で調査票の配布・回収・データ入力等を担当
  • 衛生委員会での審議:実施方法、使用する調査票、結果の取り扱いなどを審議・決定
  • 実施規程の策定:社内規程として明文化し、従業員に周知

ステップ2:調査票の配布・回答

従業員に調査票を配布し、回答してもらいます。一般的には以下の方法があります。

  • 紙の調査票:記入後、封筒に密封して提出
  • オンラインシステム:専用システムで回答(多数の企業で採用)
  • 外部サービス:サービス事業者が調査票・集計・分析を代行

使用する調査票

厚生労働省が推奨する標準的な調査票は、「職業性ストレス簡易調査票」(57項目版または23項目版)です。

  • 57項目版:より詳細な分析が可能(推奨)
  • 23項目版:簡易版、短時間で回答可能
  • 評価する3領域:①仕事のストレス要因、②ストレス反応、③周囲のサポート

ステップ3:結果の判定・本人への通知

実施者が結果を判定し、本人に直接通知します。

⚠️ 結果の会社への提供は本人同意が必須

ストレスチェックの結果は本人のプライバシー保護が原則で、会社(事業者)への提供には本人の同意が必要です(労安衛法第66条の10第2項但書)。同意を得ずに会社が結果を閲覧することは法令違反となります。実施者は本人同意のない結果を、会社に伝えてはなりません。

ステップ4:高ストレス者への対応

結果判定の結果、「高ストレス者」に該当した労働者への対応は以下の流れとなります。

  1. 実施者が本人に「医師面接指導の申出勧奨」を実施
  2. 本人が会社に医師面接指導の申出を行う
  3. 会社は申出から1ヶ月以内に医師面接指導を実施(産業医)
  4. 医師から意見聴取(1ヶ月以内)
  5. 医師意見に基づく就業上の措置の決定・実施
  6. 実施結果の記録・保存(5年間)

ステップ5:集団分析・職場環境改善

個人結果を集計し、部署・職場単位での「集団分析」を行います(努力義務)。

  • 10人以上の集団を単位として分析
  • 部署ごとのストレス要因を可視化
  • 衛生委員会で議論し、職場環境改善策を策定
  • 改善策の実施と効果測定

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高ストレス者の判定基準|厚労省推奨の基準

高ストレス者の判定方法

厚生労働省が推奨する判定基準は、以下のいずれかに該当する者です。

  • 評価基準A:ストレス反応の評価点の合計が高い者
  • 評価基準B:ストレス反応の評価点が一定以上、かつストレス要因および修飾要因(周囲のサポート等)の評価点の合計が著しく高い者

判定結果、全労働者のおおむね10%程度が高ストレス者となることが多いとされています。

高ストレス者の面接指導申出率の実態

高ストレス者に該当しても、医師面接指導を申し出る労働者は約1割以下が実態です。申出率が低い理由は以下です。

  • 「会社に知られたくない」というプライバシー懸念
  • 「不利益取扱いを受けるのでは」という不安
  • 「忙しくて時間が取れない」
  • 「自分で何とかできる」という自負

申出率を高めるには、プライバシー保護の徹底と、申出しやすい環境作り(上司に知らせず直接実施者に連絡できる仕組み等)が重要です。

労基署への報告義務|常時50人以上の事業場

報告義務の内容

常時50人以上の労働者を使用する事業場は、ストレスチェック実施後、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書を所轄労働基準監督署長に提出する義務があります(安衛則第52条の21)。

項目 内容
報告書名 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書(様式第6号の2)
提出内容 検査実施年月日、受検者数、面接指導実施者数、集団分析実施の有無等
提出頻度 検査実施後、1年以内ごとに1回
提出方法 書面または電子申請(e-Gov)

50人未満の事業場への義務化後も、労基署報告の対象範囲がどうなるかは、施行政令で定められる予定です。

産業医の選任義務|常時50人以上の事業場

ストレスチェック制度と密接に関連するのが、産業医の選任義務です。労働安全衛生法第13条により、常時50人以上の労働者を使用する事業場は産業医を選任する必要があります。

産業医選任の要件

事業場の規模 産業医の要件 選任期限
50〜499人 嘱託産業医(1名以上) 事由発生から14日以内
500〜999人(有害業務なし) 嘱託産業医(1名以上) 事由発生から14日以内
500〜999人(有害業務あり) 専属産業医(1名以上) 事由発生から14日以内
1,000〜3,000人 専属産業医(1名以上) 事由発生から14日以内
3,001人以上 専属産業医(2名以上) 事由発生から14日以内

産業医の職務

産業医の職務は、労働安全衛生規則第14条に規定されており、ストレスチェック関連では以下が中心となります。

  • 健康診断の実施・結果に基づく措置
  • ストレスチェックの実施・高ストレス者の面接指導
  • 長時間労働者への面接指導
  • 衛生教育
  • 職場巡視(月1回以上)
  • 労働者の健康管理等に関する助言・指導

産業医の費用相場

契約形態 月額費用 備考
嘱託(月1回・2時間) 5〜15万円 50〜200人規模の標準
嘱託(月2回・2時間×2) 10〜25万円 200〜500人規模
専属産業医 80〜150万円 1000人以上規模

※ 医師の経験・地域・業務内容により変動します。

ストレスチェックの費用相場|1人あたり300〜2,000円

実施方法別の費用

実施方法 1人あたり費用 特徴
自社実施(紙の調査票) 500〜1,500円 実施者人件費が別途必要
外部委託(オンライン) 300〜1,000円 集計・分析まで含むパッケージ
外部委託(集団分析あり) 800〜2,000円 部署単位の分析レポート付き
医師面接指導(1件) 15,000〜30,000円 別途発生(高ストレス者の申出)

50人未満事業場への支援制度

50人未満の事業場は、地域産業保健センターの無料サービスを利用できます。

  • 産業保健相談(健康管理相談):無料
  • 高ストレス者の医師面接指導:無料
  • メンタルヘルスに関する相談:無料
  • 事業所訪問による健康相談:無料

地域産業保健センターは全国に約350ヶ所設置されており、都道府県産業保健総合支援センター(さんぽセンター)が統括しています。

不利益取扱いの禁止|ストレスチェック結果を理由とする扱い

ストレスチェック制度では、労働者保護のための厳格な規定が設けられています。

禁止される不利益取扱い

労働安全衛生法第66条の10第3項により、以下の不利益取扱いは禁止されています。

  • 面接指導の申出を理由とする解雇
  • 期間雇用者に対する雇用契約の不更新
  • 退職勧奨
  • 不当な配置転換・職位変更
  • 労働者の意に反する措置

違反時の罰則

不利益取扱いは労働契約法上の無効事由となり、民事上の損害賠償責任も発生します。悪質な場合は、企業名公表や司法処分の対象となり得ます。

ストレスチェック実施時の税務・経理処理

📊 税務上の取扱い

実施費用の損金処理:ストレスチェック実施費用は、福利厚生費または衛生管理費として全額損金算入可能。
産業医報酬:支払報酬として源泉徴収(10.21%)が必要。給与所得ではなく報酬として処理。
面接指導費用:衛生管理費または福利厚生費として損金算入。
従業員の受検時間:労働時間として扱う場合は通常給与として処理(時間外の場合は割増賃金)。

よくある質問(FAQ)

ストレスチェックの結果、会社は誰がどんな結果だったか把握できますか?
いいえ。ストレスチェックの結果は本人のプライバシー保護が徹底されており、本人の同意がない限り会社(事業者)は個人別結果を知ることができません(労安衛法第66条の10第2項但書)。集団分析の結果(部署単位)は会社が把握可能ですが、誰がどの結果か特定できないよう処理されます。本人同意のない結果を会社が閲覧することは法令違反です。
従業員がストレスチェックの受検を拒否した場合、処分できますか?
ストレスチェックは事業者に実施義務があるものの、労働者の受検義務は健康診断と異なり法的に明確ではありません。厚生労働省の指針では「受検を強制することは好ましくない」とされています。ただし、受検を促す努力は必要です。就業規則に「受検義務」を明記する企業もありますが、拒否を理由とした処分は慎重に検討すべきです。
50人未満の事業場はいつから義務化されますか?
2025年5月14日公布の改正労働安全衛生法により、50人未満事業場への義務化が決定しました。施行日は「公布後3年以内に政令で定める日」で、最長で2028年5月までに施行されます。厚生労働省は2026年2月に「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表し、段階的な準備を支援しています。早期から体制整備を始めることが推奨されます。
ストレスチェックの実施者は誰が担当できますか?
実施者は以下の資格者に限定されます。①医師、②保健師、③厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師、④同精神保健福祉士、⑤同歯科医師、⑥同公認心理師。社内にいなければ外部の産業医や専門事業者に委託できます。実施事務従事者(調査票の配布・回収などの事務作業)は特別な資格は不要ですが、個人情報保護の研修を受けた者が担当すべきとされています。
集団分析は必須ですか?
現在、集団分析は努力義務です(安衛則第52条の14)。ただし、職場環境改善のための重要な指標であるため、多くの企業で実施されています。分析単位は10人以上の集団(個人が特定できないため)とし、部署・職種・年齢層などで分析します。2025年改正後は、集団分析の義務化も議論される可能性があります。
ストレスチェック実施後、社内で結果をどう活用すべきですか?
個人結果の活用は本人同意が必須で、集団分析結果の活用が中心となります。活用方法として、①衛生委員会での議論、②職場環境改善策の立案、③管理職への教育、④業務量・人員配置の見直し、⑤ハラスメント対策の強化などが挙げられます。結果を「見える化」して改善につなげる仕組み作りが重要です。
高ストレス者の医師面接指導は、業務時間内に実施すべきですか?
医師面接指導は、会社が実施義務を負う措置です。実施時間の賃金取扱いは労使協議で決定しますが、業務時間内に実施し、賃金を支給する企業が多数です。業務時間外に実施する場合でも、割増賃金の支給が必要となるケースがあります。実務上は、業務時間内に産業医訪問日を設定し、面接指導を実施するのが一般的です。
ストレスチェックの結果、長時間労働が問題と判明した場合の対応は?
長時間労働が問題の場合、以下の措置を検討します。①36協定の見直し、②業務量・人員配置の再検討、③残業削減目標の設定、④ノー残業デーの導入、⑤勤怠管理システムの強化。長時間労働は労働基準法第32条違反・過労死リスクにも直結するため、経営上の最優先課題として対応すべきです。詳細は「労基署への相談・申告と会社への影響」も参照してください。

📋 この記事のポイント

  • ストレスチェックは労安衛法第66条の10に基づく一次予防制度(メンタル不調の未然防止)
  • 2025年5月14日公布の改正法により、50人未満の事業場も2028年までに義務化
  • 実施対象は「契約期間1年以上+週所定労働時間が正社員3/4以上」の常時雇用労働者
  • 実施フローは「体制整備→調査票実施→結果通知→高ストレス者対応→集団分析」の5ステップ
  • 個人結果は本人同意なしに会社が閲覧不可。プライバシー保護が徹底されている
  • 常時50人以上の事業場は労基署への結果報告義務。産業医選任も必須
  • 実施費用相場は1人300〜2,000円。50人未満は地域産業保健センターで無料サポートあり
  • 不利益取扱い(面接指導申出を理由とする解雇・配置転換)は法令違反

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