【税理士×行政書士のダブル監修】創業計画書の書き方(公庫テンプレート活用)|業種別記載例と経営計画書との違い

【税理士×行政書士のダブル監修】創業計画書の書き方(公庫テンプレート活用)|業種別記載例と経営計画書との違い
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

創業計画書の書き方(公庫テンプレート活用)|業種別記載例と経営計画書との違い

日本政策金融公庫の創業融資に挑戦したいけれど、創業計画書の書き方がわからない創業者に向けて、公庫テンプレート8項目の記入ポイント・業種別の記載例・審査に通るコツを完全ガイドします。この記事を読めば、自信を持って公庫に提出できる創業計画書を作成できます。

🏆 結論:公庫テンプレートの8項目を埋めるだけでOK。ただし「差がつく」のは別紙の添付

日本政策金融公庫の創業計画書はA3用紙1枚と非常にコンパクトですが、それだけでは審査担当者に事業の将来性を十分に伝えることが困難です。テンプレートの8項目を確実に埋めたうえで、「月次収支計画」「競合分析」「写真付き資料」を別紙として添付することで、融資審査の通過率を大きく高められます。

創業計画書とは?事業計画書・経営計画書との違い

創業計画書の位置づけ

創業計画書とは、これから事業を始める人が「どんな事業を・どんな計画で・いくら必要か」を1枚にまとめた書類です。日本政策金融公庫の創業融資に申し込む際に提出が求められる公式書式であり、創業前〜創業直後の段階で作成します。

よく混同される「事業計画書」や「経営計画書」とは、作成時期・目的・分量が異なります。実務では、融資先から求められる書式に合わせて使い分けることが大切です。

3つの計画書の違い【比較表】

比較項目 創業計画書 事業計画書 経営計画書
作成時期創業前〜創業直後創業後(実績あり)事業安定後
主な提出先日本政策金融公庫銀行・VC・補助金社内・金融機関
分量A3用紙1枚(+別紙)10〜30ページ数十ページ
数値の根拠見込み・想定が中心過去実績+予測PL/BS/CF連動
重点ポイント動機・経歴・自己資金市場分析・収益モデル中長期戦略・KPI
フォーマット公庫指定あり自由形式自由形式

💡 実務のポイント

実務では、公庫の創業計画書を「概要版」として提出し、別紙に詳細な事業計画書を添付するのがベストプラクティスです。公庫も公式に「この書類に代えて、お客さまご自身が作成された計画書をご提出いただいても結構です」と明記しています。テンプレートは最低限の枠組みであり、別紙で差をつけるのが審査通過のカギです。

事業計画書の基本構成や融資審査に通る3つのポイントについては、「事業計画書の書き方|基本構成・記載項目と融資審査に通る3つのポイント」で詳しく解説しています。

公庫テンプレート8項目の書き方【項目別攻略ガイド】

公庫テンプレートの全体構成

日本政策金融公庫の創業計画書は、以下の8項目で構成されています。公庫の各種書式ダウンロードページからExcel版・PDF版ともに入手できます。

項目番号 項目名 審査重要度 記入のコツ
1創業の動機★★★「なぜ今・なぜ自分が」を具体的に
2経営者の略歴等★★★★★業界経験年数と実績を数字で示す
3取扱商品・サービス★★★★セールスポイント=差別化要因を明記
4取引先・取引関係等★★★★具体的な販売先・仕入先名を記載
5従業員★★パート含む人件費計画と整合させる
6お借入れの状況★★★★住宅ローン含め全て正直に申告
7必要な資金と調達方法★★★★★設備資金と運転資金の合計=調達額
8事業の見通し(月平均)★★★★★売上根拠を積み上げ計算で示す

項目別のOK記載例とNG記載例

項目 OK記載例 NG記載例
1. 創業の動機飲食業界で15年間勤務し、店長として年商8,000万円の店舗を運営。独立後は前職で培った仕入ルートを活かし、原価率30%以下の運営を実現する昔からラーメンが好きで、いつか自分の店を持ちたいと思っていた
2. 経営者の略歴2010年4月〜2025年3月 ○○株式会社 営業部→店長→エリアマネージャー。店長時代に売上を前年比120%に成長させた実績あり飲食店に勤務。いろいろな経験を積んだ
3. 取扱商品ランチ定食(客単価900円×30食/日)、ディナーコース(客単価3,500円×15組/日)。セールスポイント:地元農家から直接仕入れによる鮮度と原価低減和食全般を提供する
7. 必要な資金設備資金800万円(内装500万+厨房機器200万+什器100万)+運転資金200万円(仕入・人件費・家賃3ヶ月分)=合計1,000万円開業に必要なお金として1,000万円
8. 事業の見通し【創業当初】売上120万/月(客単価1,200円×席数20×回転率1.5×稼働25日×客席稼働率67%)。【軌道に乗った後】売上180万/月(稼働率100%)月商200万円を目標にがんばる

⚠️ 注意

「6. お借入れの状況」は、事業用の借入だけでなく住宅ローン・自動車ローン・カードローン・奨学金なども含めて正直に記載してください。公庫は個人信用情報(CIC)を確認するため、記載漏れがあると「虚偽申告」とみなされ、その時点で審査が否決になるケースがあります。実務では、この項目の記載漏れが否決原因のトップ3に入ります。

業種別の創業計画書記載例【4業種】

業種別「事業の見通し」の売上予測根拠

審査で最も差がつくのが「8. 事業の見通し(月平均)」です。業種ごとに売上の計算方法が異なるため、以下の積み上げ計算を参考に、自分の業種に合った根拠を示してください。

業種 売上予測の計算式 創業当初(月額) 軌道後(月額)
飲食店客単価×席数×回転率×稼働日数×稼働率1,200円×20席×1.5回転×25日×67%=60万円同×100%=90万円
IT・Web制作月額単価×案件数 or 時間単価×稼働時間50万円×2件=100万円50万円×4件=200万円
小売店客単価×来店客数×稼働日数2,500円×20人×25日=125万円2,500円×35人×25日=219万円
建設業工事単価×受注件数150万円×1.5件=225万円150万円×3件=450万円

飲食店の創業計画書モデル

📐 モデル前提条件

  • 業態:ラーメン店(東京23区内・駅徒歩5分・15坪)
  • 業界経験:15年(うち店長経験5年)
  • 自己資金:300万円
  • 借入希望額:700万円(公庫・新規開業資金)
項目 創業当初(月平均) 軌道に乗った後(月平均)
売上高1,350,000円2,025,000円
売上根拠900円×20席×3回転×25日×稼働率100%=135万円同条件×回転率4.5回転=202.5万円
仕入高(原価率33%)445,500円668,250円
人件費250,000円350,000円
家賃200,000円200,000円
その他経費150,000円180,000円
借入返済105,000円105,000円
利益199,500円521,750円

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

💡 実務のポイント

審査担当者が見るのは「利益が出るか」ではなく「返済できるか」です。上記の例では、創業当初の利益19.9万円から借入返済10.5万円を差し引いても約9万円の余裕があるため、返済能力の説明がしやすくなっています。赤字予測の月がある場合は、その期間の運転資金を「必要な資金」に含めることで合理性が出ます。

IT・Web制作業の創業計画書モデル

IT・Web制作業は設備資金が少なく運転資金が中心のため、創業計画書では「案件獲得の見込み」が最重要です。具体的なクライアント候補名(前職からの紹介先など)を記載できると審査通過率が大きく上がります。

項目 飲食店 IT・Web制作 小売店 建設業
設備資金700万円100万円500万円400万円
運転資金200万円200万円300万円300万円
自己資金300万円100万円200万円200万円
借入希望額700万円200万円600万円500万円
特に重視される項目立地・業界経験・原価率案件獲得見込み・スキル立地・仕入ルート・在庫管理受注見込み・許可証・経験

なお、建設業で創業融資を申し込む場合は建設業許可の取得が前提となることが多く、許可申請の手続きについては行政書士がサポートできます。

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「事業の見通し」の売上予測を積み上げ計算で作る方法

3つの積み上げ手法

創業計画書の「事業の見通し」で審査担当者が最も注目するのは、売上予測の「根拠」です。「月商200万円を目標にがんばります」では審査に通りません。以下の3つの手法で根拠を積み上げましょう。

手法 計算式 向いている業種 注意点
客単価法客単価×客数×稼働日数飲食・小売・美容室稼働率は創業当初60〜70%で設定
案件単価法案件単価×月間受注件数IT・コンサル・建設受注見込みの具体的根拠が必要
市場シェア法商圏人口×利用率×自社シェア×単価新規性の高いサービスシェアの前提が過大にならないよう注意

📊 公認会計士の視点

売上予測の精度を高めるには、2つ以上の手法で計算し、その結果を「二重チェック」するのが効果的です。たとえば、客単価法で月商135万円と出たら、市場シェア法でも計算して大きな乖離がないか確認します。2つの手法の結果が±20%以内に収まっていれば、予測の信頼性が高いと判断できます。

「創業当初」と「軌道に乗った後」の設定基準

公庫テンプレートでは「創業当初」と「軌道に乗った後(概ね1年後または目標月)」の2パターンを記載します。実務で推奨する設定基準は以下のとおりです。

項目 創業当初の設定 軌道に乗った後の設定
売上軌道後の60〜70%稼働率100%の水準
仕入業界標準の原価率×売上同左(率は一定)
人件費最低限の人員体制売上増に合わせて1〜2名増
利益返済額以上であること返済額の1.5倍以上が理想

創業時に必要な資金の業種別目安と所要運転資金の計算方法については、「創業時に必要な資金の目安と内訳|業種別の初期投資額と運転資金の計算方法」で詳しく解説しています。

審査通過率を上げる「別紙添付資料」一覧

添付すべき6つの別紙

公庫のテンプレートはA3用紙1枚とコンパクトなため、テンプレートだけでは事業の強みや将来性を十分に伝えきれません。以下の別紙を添付することで、審査担当者の理解が深まり、融資通過率が高まります。

別紙 内容 重要度 作成のコツ
月次収支計画書12ヶ月分の月次PL★★★★★季節変動を反映し、返済原資を明示
資金繰り表12ヶ月分の入出金★★★★残高がマイナスにならない計画に
競合分析シート商圏内の競合店比較★★★GoogleMapで半径500m〜1kmを調査
物件情報・写真賃貸契約書・内装図★★★「この場所で本気」を示す証拠
経歴詳細書職務経歴の詳細★★★★数字で実績を示す(売上〇%向上等)
見積書・契約書設備資金の見積★★★★複数社から取得して比較検討済みを示す

💡 実務のポイント

年間100社以上の創業支援に携わってきた経験上、月次収支計画書を添付した場合としなかった場合では、面談の進め方が大きく変わります。添付がある場合は「この計画のここを教えてください」と具体的な質問になり、ない場合は「月の売上はどのくらいを見込んでいますか?」と一から聞かれることになります。準備の差がそのまま印象に直結します。

公庫融資の審査基準と面談対策については、「日本政策金融公庫の融資審査と通過のポイント」で詳しく解説しています。

インボイス制度が創業計画書に与える影響

創業者がインボイスで判断すべきポイント

消費税法第9条の規定により、資本金1,000万円未満の新設法人は原則として設立後2年間は消費税の免税事業者となります。しかし、取引先が法人中心の場合はインボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)として課税事業者を選択しなければ、取引先が仕入税額控除を受けられず、取引機会を失う可能性があります。

判断基準 免税事業者のまま 課税事業者を選択
主な取引先個人消費者中心(飲食・小売・美容)法人取引中心(IT・建設・コンサル)
メリット消費税の納税義務なし取引先の仕入税額控除が可能
デメリット法人取引先から敬遠される可能性消費税の申告・納税が必要
創業計画書への反映経費欄に消費税納付を計上不要事業の見通しに消費税納付額を計上

📢 インボイス経過措置の段階的縮小

免税事業者からの仕入に対する仕入税額控除の経過措置は、2023年10月〜2026年9月は80%控除→2026年10月〜2029年9月は50%控除→2029年10月以降は控除不可と段階的に縮小されます。法人取引が中心の創業者は、創業計画書に経過措置の影響を織り込んで売上予測を立てることが重要です。

参考: 国税庁「インボイス制度の概要」

創業計画書の自己診断チェックリスト

提出前に必ず確認する8項目

創業計画書を公庫に提出する前に、以下のチェックリストで自己診断してください。6項目以上クリアしていれば審査に臨む準備は整っています。

No. チェック項目 確認ポイント
1創業の動機が具体的か「なぜ今」「なぜ自分が」を数字で説明できる
2経歴に業界経験が明記されているか年数・役職・実績が数字で示されている
3売上予測に積み上げ根拠があるか客単価×客数×日数の計算式が記載されている
4設備資金に見積書を添付しているか複数社の見積書で比較検討済み
5借入状況を全て正直に記載しているか住宅ローン・カードローン含む全額を記載
6利益から返済できる計画になっているか創業当初でも返済額以上の利益が確保されている
7月次収支計画書を別紙で添付しているか12ヶ月分の月次PLで季節変動を反映
8自己資金の出所が説明できるか通帳のコピーで貯蓄の過程を証明できる

📝 行政書士の視点

建設業や飲食業など許認可が必要な業種では、創業計画書に加えて許認可の申請状況を明記することが重要です。建設業許可の場合、中小企業等経営強化法第17条に基づく認定支援機関のサポートを受けることで、公庫の「中小企業経営力強化資金」の利用が可能になり、金利優遇を受けられるケースがあります。

認定支援機関を活用した創業計画書の作成支援

認定支援機関(認定経営革新等支援機関)とは

認定支援機関とは、中小企業等経営強化法第31条に基づき、中小企業庁が認定した税理士・公認会計士・弁護士・金融機関などの専門家のことです。認定支援機関に創業計画書の作成を相談することで、以下のメリットがあります。

メリット 具体的な内容
金利優遇公庫の「中小企業経営力強化資金」を利用可能(基準利率より0.4%程度優遇)
計画書の精度向上売上予測・収支計画の数値チェック、業界の財務指標との比較
面談対策想定質問への回答準備、模擬面談の実施
書類の不備防止必要書類の漏れチェック、追加書類の準備サポート

参考: 中小企業庁「認定経営革新等支援機関」

創業融資の3つのルート(公庫・保証協会・制度融資)の違いと選び方については、「創業融資の3ルート比較|公庫・保証協会・制度融資の選び方」をご覧ください。また、資金調達全体の戦略については「中小企業の資金調達の全体像」で包括的に解説しています。

よくある質問(FAQ)

創業計画書は自分で作れますか?税理士に依頼すべきですか?
公庫のテンプレートは記入項目がシンプルなため、自分で作成することは十分に可能です。ただし、売上予測の積み上げ計算や月次収支計画書の作成に不安がある場合は、認定支援機関である税理士に相談するのがおすすめです。認定支援機関を経由することで金利優遇も受けられるため、費用対効果は高いと言えます。
創業計画書と事業計画書は両方必要ですか?
公庫への提出は創業計画書(A3用紙1枚)だけで形式上は十分です。ただし、公庫自身が「お客さまご自身の計画書で代えても構いません」と明記しているため、テンプレートに加えて詳細な事業計画書を別紙で添付するのが実務上のベストプラクティスです。
売上予測が達成できなかった場合、融資はどうなりますか?
売上予測を下回ったからといって、融資が取り消されたり一括返済を求められたりすることは通常ありません。ただし、毎月の返済が滞ると信用情報に傷がつくため、創業計画書の段階で「最悪シナリオ(売上が予測の70%の場合)」でも返済できる計画にしておくことが重要です。
自己資金がゼロでも創業計画書を出せますか?
書類の提出自体は可能ですが、審査通過は非常に困難です。公庫は2024年の制度改正で自己資金要件を撤廃しましたが、実務上は創業資金総額の10分の1以上の自己資金がないと審査が厳しくなります。最低でも数十万円の自己資金を準備し、通帳のコピーでコツコツ貯めてきた過程を示すことが大切です。
法人設立前でも創業計画書は作成できますか?
はい、法人設立前の段階で作成・提出できます。むしろ、公庫への融資相談は法人設立前に行うのが一般的です。融資の内定を得てから法人を設立し、その後に融資が実行される流れが最もスムーズです。定款作成や法人設立の届出については行政書士がサポートできます。
創業計画書のテンプレートはどこでダウンロードできますか?
日本政策金融公庫の公式サイト「各種書式ダウンロード」ページからExcel版・PDF版ともに無料でダウンロードできます。業種別の記入例(洋風居酒屋・美容業・中古自動車販売業など)も公開されており、初めての方は記入例を参照しながら作成するのがおすすめです。
経営計画書も公庫に提出する必要がありますか?
創業段階では経営計画書の提出は求められません。経営計画書は、事業が安定してから中長期的な経営戦略を示す社内向けの文書です。ただし、中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画を策定すると税制優遇(固定資産税の軽減等)が受けられるため、創業後に検討する価値はあります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 創業計画書は公庫テンプレートの8項目を埋めるだけで作成できるが、別紙添付で差がつく
  • 創業計画書・事業計画書・経営計画書は作成時期・目的・分量が異なる別の書類
  • 売上予測は「客単価法」「案件単価法」「市場シェア法」の積み上げ計算で根拠を示す
  • 業種ごとに重視される項目が異なるため、業種別の記載例を参考にカスタマイズする
  • 月次収支計画書・資金繰り表・見積書の別紙添付が審査通過率を大きく高める
  • インボイス制度への対応方針は、主要取引先が法人か個人かで判断する
  • 認定支援機関を活用すると、計画書の精度向上+金利優遇の両方が得られる

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