【税理士監修】事業計画書の書き方|基本構成・記載項目と融資審査に通る3つのポイント

【税理士監修】事業計画書の書き方|基本構成・記載項目と融資審査に通る3つのポイント
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

事業計画書の書き方|基本構成・記載項目と融資審査に通る3つのポイント

「事業計画書を作りたいが、何をどう書けばいいかわからない」という創業者・経営者に向けて、事業計画書の基本構成10項目、売上予測の積み上げ計算3手法、融資審査で減点されないためのチェックリストを解説します。この記事を読めば、金融機関が「貸したい」と思える事業計画書を作成できるようになります。

🏆 結論:融資審査は「減点法」。穴を塞げば通過率は大幅に上がる

事業計画書は「加点法」ではなく「減点法」で審査されます。華やかなビジョンよりも、売上予測の根拠・返済可能性の数字・経営者の業界経験が矛盾なく記載されていることが重要です。よくある失敗は「売上の根拠が曖昧」「資金繰りの考慮不足」「書類と面談の説明のズレ」の3つ。この3つを潰すだけで審査通過率は大きく改善します。

事業計画書とは?創業計画書・経営計画書との違い

事業計画書とは、事業の目的・戦略・収支見通しを体系的にまとめた文書です。融資審査、投資家への説明、補助金の申請など、さまざまな場面で使われます。

書類名 主な用途 特徴
事業計画書融資・投資・補助金・社内説明汎用的な構成。提出先に合わせてカスタマイズ
創業計画書日本政策金融公庫の創業融資公庫所定のフォーマット(A3用紙1枚)
経営計画書既存事業の改善・経営改善計画過去の実績データを基にした改善計画が中心

💡 実務のポイント

公庫の創業融資を申し込む場合は、公庫所定の「創業計画書」(A3用紙1枚のフォーマット)の提出が必須です。ただし、このフォーマットだけでは伝えきれない情報が多いため、別紙として詳細な事業計画書を添付するのが実務上のスタンダードです。別紙をつけた方が審査担当者の理解が深まり、面談もスムーズに進みます。

事業計画書の基本構成【10項目】

事業計画書に決まったフォーマットはありませんが、融資審査で求められる要素を網羅した標準的な構成は以下の10項目です。

# 項目 記載内容 審査での重要度
1事業概要何を・誰に・どのように提供するか★★★☆☆
2経営者の経歴業界経験・資格・実績★★★★★
3市場・競合分析ターゲット市場の規模・競合との差別化★★★☆☆
4商品・サービス提供内容・価格設定・セールスポイント★★★☆☆
5販売・集客戦略どうやって顧客を獲得するか★★★★☆
6売上予測根拠のある売上見込み(月次・年次)★★★★★
7収支計画売上−経費=利益の月次推移★★★★★
8必要資金と調達方法設備資金+運転資金の内訳と調達先★★★★★
9返済計画月々の返済額と返済原資の確保方法★★★★★
10リスクと対策想定されるリスクと対応策★★★☆☆

参考: 日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード」

提出先別の事業計画書のカスタマイズ方法

事業計画書は提出先によって強調すべきポイントが異なります。同じ事業でも、読み手に合わせてアピールポイントを変えることが重要です。なお、中小企業等経営強化法第17条に基づく「経営力向上計画」の認定を受けている企業は、融資審査で加点評価されることがあります。

提出先 重視されるポイント カスタマイズの方向性
融資(公庫・銀行)返済可能性・安全性売上予測の根拠、資金繰り表、返済シミュレーションを充実
投資家(VC・エンジェル)成長性・市場規模・EXIT戦略TAM/SAM/SOM、競合優位性、3〜5年の成長曲線を重視
補助金申請事業の革新性・地域経済への貢献公募要領の審査基準に沿った構成。加点項目を意識

売上予測の立て方【3つの積み上げ手法】

融資審査で最も厳しくチェックされるのが売上予測の根拠です。「月商100万円の見込み」と書くだけでは審査は通りません。以下の3つの手法で、根拠のある売上予測を立てましょう。

手法①:客単価法(ボトムアップ)

最も一般的で説得力のある手法です。「客単価×1日の客数×営業日数」で月商を算出します。

🧮 シミュレーション

例:カフェの場合
・客単価800円×1日40名×月25日=月商80万円
・ランチタイム(1,200円×20名)+カフェタイム(600円×20名)で算出するとより精緻

例:美容室の場合
・客単価7,000円×1日4名×月24日=月商67.2万円
・カット5,000円×60%+カラー9,000円×30%+パーマ12,000円×10%で加重平均

手法②:市場シェア法(トップダウン)

ターゲット市場の規模から自社のシェアを推定する手法です。BtoB事業やIT事業で使われることが多いです。

計算式は「ターゲット市場規模×想定シェア=売上」です。例えば、「新宿区の税理士顧問市場が年間50億円と推定。そのうち0.1%のシェア(500万円)を3年で獲得する」のように使います。

手法③:類似企業比較法

同業種・同規模の既存企業の売上データを参考にする手法です。日本政策金融公庫の「小企業の経営指標」や中小企業庁の「中小企業実態基本調査」のデータが活用できます。

手法 向いている業種 審査での説得力 注意点
①客単価法BtoC全般(飲食・小売・美容・サービス)★★★★★客数の見込みが楽観的になりがち
②市場シェア法BtoB・IT・SaaS★★★☆☆市場規模の根拠データが必要
③類似企業比較法全業種(補助的に使用)★★★★☆「平均値=自社の売上」にはならない

💡 実務のポイント

審査担当者に最も好まれるのは「①客単価法をメインにしつつ、③類似企業比較法で妥当性を検証する」という二重チェックです。「客単価×客数で月商80万円と算出。これは同規模のカフェの平均月商70〜90万円の範囲内であり、妥当と考える」と書けば、説得力が大幅に増します。

収支計画の立て方【月次シミュレーション表の作成】

収支計画は「売上−経費=利益」の月次推移を1年分(できれば3年分)作成します。融資審査では「返済原資が確保できるか」が最重要チェックポイントです。

項目 1〜3月 4〜6月 7〜9月 10〜12月 年間合計
売上高180万円240万円270万円300万円990万円
原価(仕入等)54万円72万円81万円90万円297万円
粗利益126万円168万円189万円210万円693万円
人件費60万円60万円60万円60万円240万円
家賃30万円30万円30万円30万円120万円
その他固定費20万円20万円20万円20万円80万円
営業利益16万円58万円79万円100万円253万円
返済額(月8万円)24万円24万円24万円24万円96万円

※例示は飲食店(10坪・月商80〜100万円)を想定した概算値です。

📊 公認会計士の視点

収支計画で審査担当者が真っ先に見るのは「営業利益から返済額を引いても手元に残るか」です。上記の例では、開業直後の1〜3月は営業利益16万円に対して返済額が24万円で赤字になります。これを見て「ダメだ」と思うのではなく、開業前の運転資金として3ヶ月分の固定費を融資に含めることで対応する計画を示してください。1〜3月が苦しいのは当然で、4月以降に黒字化するシナリオが示せれば問題ありません。

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融資審査に通る3つのポイント

ポイント①:売上の根拠を「数字」で示す

「月商100万円を目指す」ではなく「客単価5,000円×1日8名×月25日=100万円」と書きます。さらに「見込み顧客として既に3社と商談中」「開業前のテスト販売で月5万円の売上実績あり」といった客観的な裏付けがあると、説得力が格段に増します。

ポイント②:「最悪のシナリオ」でも返済できることを示す

審査担当者は「計画通りに行った場合」だけでなく「計画の70%しか売上が立たなかった場合」も頭の中でシミュレーションしています。計画書に「保守的シナリオ(計画の70%)」の収支を併記し、そのシナリオでも返済に支障がないことを示すと、審査担当者に安心感を与えられます。

ポイント③:経営者の「業界経験」を具体的に書く

融資審査で最も評価されるのは経営者の業界経験です。「飲食業で10年勤務」だけでなく、「店長として月商300万円の店舗を運営。人件費率を35%から28%に改善した実績がある」のように、数字を交えた具体的な実績を書いてください。

審査担当者の「減点チェックリスト」【これで落ちる】

# 減点ポイント なぜ減点されるか
1売上予測に根拠がない「月商100万円」だけで計算過程がない
2初月から黒字の計画開業直後に計画通りいくとは思われない
3資金使途が曖昧「設備一式500万円」で内訳がない
4競合分析がゼロ市場を理解していないと判断される
5書類と面談の内容が矛盾「計画書を理解していない」と判断される
6リスクへの言及がない「リスクを考えていない=経営者としての資質に疑問」
7借入残高を隠している信用情報で判明するため即否決の原因に

公庫融資の審査基準と面談対策の詳細は「公庫融資の審査基準と通過のポイント」をご覧ください。資金調達手段の全体像は「中小企業の資金調達の全体像」で解説しています。

参考: 中小企業庁「経営計画つくるくん」

事業計画書の自己診断スコアカード

完成した事業計画書を提出前にセルフチェックしてください。8項目中6項目以上クリアできていれば、審査に通る可能性が高いです。

チェック項目 合格基準
売上予測の根拠がある「客単価×客数×営業日数」で積み上げ計算している
保守的シナリオを併記計画の70%でも返済可能なことを示している
経営者の業界経験を具体的に記載年数だけでなく役職・実績・数字が含まれている
設備資金に見積書がある各設備の見積書を取得済み
運転資金の計算根拠がある月次の固定費×3〜6ヶ月分で算出
競合との差別化を記載近隣の競合3社以上を調査し、自社の強みを明記
リスクと対策を記載想定リスク3つ以上と具体的な対策を記述
自分の言葉で説明できる計画書の全項目を第三者に口頭で説明してテスト済み

よくある質問(FAQ)

事業計画書は何ページくらいが適切ですか?
公庫の創業計画書はA3用紙1枚ですが、別紙として添付する事業計画書は10〜15ページが目安です。長すぎると読んでもらえず、短すぎると情報不足です。要約(エグゼクティブサマリー)を冒頭1ページにまとめ、詳細は後続ページで補足する構成が効果的です。
事業計画書は自分で作るべきですか?税理士に頼むべきですか?
理想は「自分で作り、税理士にレビューしてもらう」です。自分で作ることで事業への理解が深まり、面談でも自信を持って説明できます。税理士に丸投げすると、面談で突っ込まれたときに答えに詰まるリスクがあります。数字の部分(収支計画・資金繰り表)は税理士のサポートを受けると精度が上がります。
創業前で実績がない場合、売上予測はどうすればいいですか?
テスト販売やプレオープンで小さな実績を作るのが最善です。それが難しい場合は、「客単価法」で積み上げ計算し、「類似企業比較法」で妥当性を検証するという二重チェックが有効です。さらに、見込み顧客リスト(商談中の企業名・紹介元など)を別紙で添付すると説得力が増します。
事業計画書の売上予測が達成できなかった場合、問題になりますか?
計画との多少のズレは問題になりません。融資は計画書通りの売上を「保証」するものではなく、「返済可能性が高い」と判断されれば実行されます。ただし、計画と実績が大きく乖離すると、追加融資の際に「計画の精度が低い経営者」と判断されるリスクはあります。保守的な売上予測を立てておくのが賢明です。
補助金申請用の事業計画書と融資用は同じでいいですか?
ベースとなる事業内容は同じでも、強調するポイントが異なります。融資用は「返済可能性」、補助金用は「事業の革新性・地域経済への貢献」がポイントです。1つの事業計画書をベースに、提出先に合わせて構成と表現をカスタマイズするのが効率的です。中小企業庁の「経営計画つくるくん」(中小企業等経営強化法に基づく支援ツール)を活用すると、補助金申請に適した構成で計画書を作成できます。
事業計画書に使える無料テンプレートはありますか?
日本政策金融公庫のWebサイトから「創業計画書」のフォーマットと業種別の記入例を無料でダウンロードできます。また、中小企業庁の「経営計画つくるくん」はWeb上で事業計画書を作成できる無料ツールです。これらを出発点にして、自社の事業に合わせてカスタマイズしてください。
銀行融資の場合も事業計画書は必要ですか?
銀行融資の場合、既存企業であれば決算書が主な審査資料になるため、事業計画書が必須でないケースもあります。ただし、新規の設備投資や大きな借入の場合は、資金使途と返済計画を示す事業計画書の提出を求められることが一般的です。創業融資の場合は、実績がないため事業計画書の提出はほぼ必須です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 事業計画書の基本構成は10項目。融資審査では売上予測・収支計画・返済計画が最重要
  • 融資審査は「減点法」。穴を塞ぐことで通過率が大幅に上がる
  • 売上予測は「客単価法」で積み上げ計算し、「類似企業比較法」で妥当性を検証する二重チェック
  • 保守的シナリオ(計画の70%)でも返済可能なことを示す
  • 計画書と面談での説明が矛盾しないよう、提出前に口頭説明のリハーサルを行う
  • 提出先(融資・投資家・補助金)によって強調ポイントをカスタマイズする
  • 自己診断スコアカード8項目中6項目以上クリアを目標にする

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