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総額表示義務とは?消費税の価格表示ルールと対応方法
「値札はどう書けばいい?」「税抜表示だけだと違法?」と迷っている経営者に向けて、総額表示義務のルール・OK/NGパターン・業種別チェックリスト・テイクアウト時の表示方法を具体例で解説します。この記事を読めば、自社の全ての価格表示を正しく対応できます。


「値札はどう書けばいい?」「税抜表示だけだと違法?」と迷っている経営者に向けて、総額表示義務のルール・OK/NGパターン・業種別チェックリスト・テイクアウト時の表示方法を具体例で解説します。この記事を読めば、自社の全ての価格表示を正しく対応できます。
🏆 結論:総額表示義務の3つの基本ルール
①消費者向けの価格表示には、消費税額(地方消費税額を含む)を含んだ税込価格の表示が必須。②税込価格が明瞭に表示されていれば、税抜価格や消費税額の併記はOK。③事業者間取引(BtoB)や、見積書・請求書・契約書は対象外。ポイントは「税込の支払総額が一目でわかるかどうか」です。
総額表示義務とは、事業者が消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合に、消費税額(地方消費税額を含む)を含めた価格(税込価格)を表示することを義務付けるものです。消費税法第63条に規定されており、令和3年4月1日から完全義務化されています。
この制度は、消費者が値札を見ただけで実際に支払う金額がわかるようにすることが目的です。それまで税抜表示と税込表示が混在していたため、消費者が支払金額を把握しにくく、商品の価格比較もしにくい状況でした。
| 区分 | 具体例 | 総額表示 |
|---|---|---|
| 対象:消費者向けの価格表示 | 値札、店頭表示、チラシ、広告、メニュー、カタログ、ECサイト、ホームページ | 必須 |
| 対象外:事業者間取引 | BtoB取引のカタログ、業者向け卸売価格表 | 不要 |
| 対象外:個別の取引書類 | 見積書、請求書、契約書、インボイス | 不要 |
| 対象外:口頭での価格提示 | 電話や対面での口頭見積もり | 不要 |
| 対象外:価格表示をしない場合 | オーダーメイドで都度見積もりの商品 | 不要 |
| 対象外:免税事業者 | 消費税の納税義務が免除されている事業者 | 不要(※) |
※免税事業者は消費税法第63条の「事業者」から除かれているため義務の対象外です。ただし、免税事業者であっても消費者の誤認を避けるため、わかりやすい価格表示を行うことが望ましいとされています。
税抜価格10,000円の商品(標準税率10%適用)の場合、以下の表示パターンのうちどれがOKでどれがNGかを確認します。
| 表示パターン | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 11,000円 | ⭕ | 税込価格が表示されている |
| 11,000円(税込) | ⭕ | 「税込」の記載は任意。あってもなくてもOK |
| 11,000円(税抜価格10,000円) | ⭕ | 税込価格が明瞭+税抜価格の併記もOK |
| 11,000円(うち消費税額等1,000円) | ⭕ | 税込価格が明瞭+消費税額の併記もOK |
| 10,000円(税込11,000円) | ⭕ | 税込価格が明瞭に表示されている |
| 10,000円+税 | ❌ | 税込価格が表示されていない |
| 10,000円(税別) | ❌ | 税込価格が表示されていない |
| 10,000円(本体価格) | ❌ | 税込価格が表示されていない |
💡 実務のポイント
飲食店の顧問先で実際に多いのが「10,000円(税込11,000円)」と表示しているが、「(税込11,000円)」の文字が極端に小さいケースです。税込価格が「明瞭に」表示されている必要があるため、税抜価格が大きく、税込価格が読み取りにくいほど小さい場合は、総額表示義務を果たしていないと判断される可能性があります。
総額表示義務は、表示媒体を問わず適用されます。消費者に対して価格を表示する場合はすべて対象です。
| 媒体の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 店頭の表示 | 値札、POP、商品陳列棚の価格表示、看板 |
| 飲食店の表示 | メニューブック、店頭メニュー、ドリンクメニュー |
| 広告 | 新聞折込チラシ、DM、新聞・雑誌・テレビの広告 |
| Web | ECサイト、ホームページ、Web広告、SNS投稿 |
| カタログ | 商品カタログ、サービスメニュー表 |
| 商品本体 | 商品パッケージの価格表示、貼付ラベル |
業種によって、総額表示が必要な媒体と注意すべきポイントが異なります。
| 業種 | 確認すべき媒体 | 特に注意すべきポイント |
|---|---|---|
| 小売業 | 値札、POP、棚札、チラシ、ECサイト | メーカーの「希望小売価格」が税抜の場合、店舗側で税込表示が必要 |
| 飲食業 | メニューブック、店頭看板、ホームページ、食べログ等の掲載価格 | テイクアウトとイートインで税率が異なる場合の表示方法(後述) |
| EC事業 | 商品ページ、カート画面、検索結果の価格、広告バナー | 送料が別途表示の場合、商品価格のみ総額表示(送料は合算不要) |
| サービス業 | サービスメニュー表、料金表、ホームページ | オプション料金も消費者向け価格表示なら総額表示が必要 |
| 不動産業 | 物件広告、ホームページ、チラシ | 居住用賃貸の家賃は非課税のため対象外。事業用賃貸の賃料は対象 |
💡 実務のポイント
EC事業者で見落とされがちなのが、Google広告やSNS広告に表示する商品価格です。広告内の価格表示も総額表示義務の対象になります。また、アフィリエイトサイトやポータルサイトに掲載される価格も、自社が管理できる範囲であれば総額表示が必要です。
飲食店でテイクアウト(8%)とイートイン(10%)の両方を提供している場合、税率が異なるため表示方法に工夫が必要です。以下の3つの方法から選択できます。
| 方法 | 表示例(税抜1,000円の商品) | メリット・デメリット |
|---|---|---|
| ①両方の税込価格を表示 | テイクアウト 1,080円 / イートイン 1,100円 | 消費者にとって最もわかりやすいが、メニュー表示が煩雑になる |
| ②どちらか一方の税込価格を表示 | 1,100円(イートイン)※テイクアウトの場合は1,080円 | メニューがシンプルになるが、もう一方の価格を注記で補足する必要がある |
| ③同じ税込価格に統一 | 1,080円(テイクアウト・イートインとも同一価格) | 消費者の混乱がないが、イートインでは実質値下げになる |
大手ファストフードチェーンでは③の方法を採用するケースが増えています。消費者の利便性を重視する場合は①、メニュー表のスペースが限られる場合は②が現実的です。
軽減税率の対象品目の判定については「消費税の軽減税率制度」で詳しく解説しています。
税抜価格に消費税率を掛けた場合に1円未満の端数が生じることがあります。この端数は「四捨五入」「切り捨て」「切り上げ」のいずれかの方法で処理できます。処理方法は事業者が任意に選択でき、法律上の指定はありません。
🧮 シミュレーション:端数処理の例
税抜価格298円の商品(標準税率10%の場合)
→ 消費税額:298 × 10% = 29.8円
→ 切り捨て:税込327円 / 四捨五入:税込328円 / 切り上げ:税込328円
税抜価格130円の商品(標準税率10%の場合)
→ 消費税額:130 × 10% = 13円
→ 端数なし:税込143円
総額表示義務は消費税の制度ですが、印紙税にも影響を与えるケースがあります。領収書や契約書に記載する金額が「税込金額」になることで、印紙税の課税文書の記載金額が変わる可能性があるためです。
| 領収書の記載方法 | 印紙税の判定金額 | 結果 |
|---|---|---|
| 55,000円(うち消費税額等5,000円) | 50,000円(消費税額を除いた金額) | 5万円未満のため非課税 |
| 55,000円(税込) | 55,000円(消費税額が区分されていない) | 5万円以上のため印紙税200円 |
| 55,000円 | 55,000円(消費税額が明示されていない) | 5万円以上のため印紙税200円 |
💡 実務のポイント
領収書に「うち消費税額等○○円」や「税抜金額○○円、消費税額等○○円」のように消費税額を区分して記載すれば、印紙税の判定金額は税抜金額になります。これにより5万円の境界付近では印紙税を節約できる場合があります。総額表示義務はあくまで消費者向けの価格表示の話であり、領収書は総額表示義務の対象外ですが、印紙税の節約を意識するなら消費税額を区分記載する習慣をつけておくとよいでしょう。消費税と印紙税の関係については「消費税と印紙税の関係」で詳しく解説しています。
現行法では、総額表示義務に違反した場合の直接的な罰則規定は設けられていません。ただし、以下のリスクがあります。
| リスクの種類 | 内容 |
|---|---|
| 景品表示法違反の可能性 | 税抜価格のみの表示で消費者が「税込金額」と誤認した場合、有利誤認表示として景品表示法第5条違反となる可能性。措置命令の対象になり得る |
| 消費者トラブル | 会計時に想定より高い金額を請求されたとクレームが発生するリスク |
| 信頼の喪失 | 「安く見せかけている」と消費者に思われ、リピート率が低下するリスク |
「100円ショップ」という屋号は、お店の名称であって価格表示ではないため、総額表示義務の対象にはなりません。ただし、店内の商品価格は消費税込みの支払総額を表示する必要があります。つまり、店内の値札には「110円」と表示する必要があります。
同様に、「1万円均一セール」などの販売促進イベントの名称は、総額表示義務の直接の対象ではありません。ただし、消費者に誤認を与えないよう、実際の支払金額がわかるような補足説明を行うことが望ましいとされています。
総額表示義務とインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、どちらも消費税に関する制度ですが、対象と目的が異なります。
| 比較項目 | 総額表示義務 | インボイス制度 |
|---|---|---|
| 目的 | 消費者が支払総額を一目でわかるようにする | 正確な仕入税額控除を行うための書類保存方式 |
| 対象 | 消費者向けの価格表示(BtoC) | 事業者間の取引書類(BtoB) |
| 根拠条文 | 消費税法第63条 | 消費税法第57条の4 |
| 税抜/税込 | 税込価格の表示が必須 | 外税・内税どちらでもOK |
インボイス(適格請求書)は総額表示義務の対象外です。インボイスの記載要件として「消費税額等」の記載は必要ですが、個別の取引品目は税抜表示でも税込表示でも問題ありません。インボイス制度の全体像については「インボイス制度の概要」をご覧ください。
消費税のしくみ全体については「消費税のしくみと基礎知識」で、課税標準の計算方法については「消費税の課税標準と税率」で詳しく解説しています。
📋 この記事のポイント
簡易課税制度の仕組みについては「簡易課税制度の仕組み」で詳しく解説しています。