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損益分岐点分析の計算方法と経営活用|限界利益・変動費・固定費の分解
「あといくら売れば赤字を脱出できるのか」を知りたい経営者に向けて、損益分岐点分析の計算方法から経営判断への活用まで完全ガイドします。この記事を読めば、自社の損益構造を分解し、利益を出すための具体的なアクションが見えるようになります。


「あといくら売れば赤字を脱出できるのか」を知りたい経営者に向けて、損益分岐点分析の計算方法から経営判断への活用まで完全ガイドします。この記事を読めば、自社の損益構造を分解し、利益を出すための具体的なアクションが見えるようになります。
🏆 結論:損益分岐点=固定費÷限界利益率で計算できる
損益分岐点売上高は「固定費÷限界利益率」で求められます。限界利益率は「(売上高−変動費)÷売上高」です。この計算には、費用を「変動費」と「固定費」に分解する作業が必要です。損益分岐点比率が80%以下なら安全圏、90%を超えると赤字転落リスクが高まります。損益分岐点を下げるには「固定費を減らす」「変動費率を下げる」「単価を上げる」の3つのアプローチがあります。
損益分岐点分析は、以下の5つのステップで行います。
損益分岐点を計算するためには、まず会社のすべての費用を「変動費」と「固定費」の2つに分類する必要があります。
変動費とは、売上の増減に比例して金額が変動する費用です。商品仕入高、原材料費、外注加工費、販売手数料などが該当します。固定費とは、売上の増減に関係なく一定額が発生する費用です。人件費(固定給)、家賃、減価償却費、保険料などが該当します。
限界利益とは「売上高から変動費を差し引いた利益」です。言い換えると、「商品を1つ売るごとに、固定費の回収に貢献する利益」です。
限界利益 = 売上高 − 変動費
限界利益率は、売上高に占める限界利益の割合です。
限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上高 = 1 − 変動費率
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
この金額が「最低限、この売上がないと赤字になる」というラインです。
安全余裕率 =(実際の売上高 − 損益分岐点売上高)÷ 実際の売上高 × 100
| 安全余裕率 | 経営状態 | アクション |
|---|---|---|
| 20%以上 | 安全圏。売上が20%下がっても赤字にならない | 成長投資を検討できる |
| 10〜20% | 概ね安全。ある程度の余裕がある | 固定費の増加には慎重に |
| 5〜10% | 注意。わずかな売上減少で赤字に | コスト削減を優先 |
| 5%未満 | 危険。赤字転落のリスクが非常に高い | 緊急のコスト構造見直しが必要 |
目標利益達成売上高 =(固定費 + 目標利益)÷ 限界利益率
この計算式は「○○万円の利益を出すには、いくらの売上が必要か?」に即座に答えてくれます。経営計画や資金計画の基礎になる重要な計算です。
変動費と固定費の分類は損益分岐点分析の精度を左右する最も重要なステップです。業種によって分類が異なるため、自社に合った分類を行ってください。
| 勘定科目 | 製造業 | 小売業 | IT・サービス | 飲食業 | 建設業 |
|---|---|---|---|---|---|
| 原材料費・仕入高 | 変動 | 変動 | — | 変動 | 変動 |
| 外注加工費 | 変動 | — | 変動 | — | 変動 |
| 人件費(正社員・固定給) | 固定 | 固定 | 固定 | 固定 | 固定 |
| 人件費(パート・残業代) | 変動 | 変動 | 固定 | 変動 | 変動 |
| 家賃・地代 | 固定 | 固定 | 固定 | 固定 | 固定 |
| 減価償却費 | 固定 | 固定 | 固定 | 固定 | 固定 |
| 販売手数料 | 変動 | 変動 | 変動 | 変動 | 変動 |
| 水道光熱費 | 変動 | 固定 | 固定 | 変動 | 固定 |
| 運送費・配送費 | 変動 | 変動 | — | — | 変動 |
| 広告宣伝費 | 固定 | 固定 | 変動※ | 固定 | 固定 |
※IT業でリスティング広告など成果連動型の広告費は変動費として扱うのが適切です。固定月額の広告は固定費に分類します。
💡 実務のポイント
実務では、全ての費用を完璧に変動費と固定費に分けるのは不可能です。「厳密に分ける」よりも「概ね正しい分類をして、毎月モニタリングする」ことの方が重要です。迷ったら固定費に分類してください。変動費に分類すると限界利益率が高く計算され、損益分岐点が低く出て安全度を過大評価するリスクがあるためです。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 年商1,000万円 | 年商3,000万円 | 年商1億円 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,000万円 | 3,000万円 | 1億円 |
| 変動費(60%) | 600万円 | 1,800万円 | 6,000万円 |
| 限界利益(40%) | 400万円 | 1,200万円 | 4,000万円 |
| 固定費 | 300万円 | 900万円 | 3,200万円 |
| 損益分岐点売上高 | 750万円 | 2,250万円 | 8,000万円 |
| 損益分岐点比率 | 75% | 75% | 80% |
| 安全余裕率 | 25% | 25% | 20% |
| 営業利益 | 100万円 | 300万円 | 800万円 |
年商1億円の企業は固定費が大きくなる分、損益分岐点比率が80%と高くなっています。売上が20%下がると赤字に転落するため、景気変動への耐性は年商1,000万〜3,000万円の企業よりやや低いことがわかります。
AYUSAWA PARTNERS
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鮎澤パートナーズに相談する損益分岐点を下げるには「固定費を減らす」「変動費率を下げる」「販売単価を上げる」の3つしかありません。それぞれの効果を同じ条件で比較します。
📐 比較の前提条件
| アプローチ | 改善内容 | 改善後の損益分岐点 | 削減効果 | 実現の難易度 |
|---|---|---|---|---|
| 固定費を10%削減 | 900万→810万円 | 2,025万円 | ▲225万円 | ★★☆(比較的容易) |
| 変動費率を10%改善 | 60%→54% | 1,957万円 | ▲293万円 | ★★★(困難) |
| 販売単価を10%値上げ | 単価×1.1(販売数同じ) | 1,875万円 | ▲375万円 | ★★★(顧客離れリスク) |
値上げは効果が最も大きいですが、顧客離れのリスクもあります。実務では、まず固定費の削減から着手し、次に変動費率の改善(仕入先の見直し・ロス削減等)、最後に値上げの検討という順序が現実的です。
📊 公認会計士の視点
変動費率の改善で注意すべきは「品質低下」です。原材料を安いものに切り替えて変動費率を下げても、品質が落ちれば売上自体が減少します。変動費率の改善は「ムダの削減」と「仕入条件の交渉」に絞るのが安全です。
変動損益計算書は、費用を変動費と固定費に組み替えた損益計算書です。通常のP/Lでは見えない「限界利益」が一目でわかるため、経営判断に役立ちます。
| 通常のP/L | 金額 | 変動損益計算書 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,000万円 | 売上高 | 3,000万円 |
| 売上原価 | 2,100万円 | 変動費 | 1,800万円 |
| 売上総利益 | 900万円 | 限界利益 | 1,200万円 |
| 販管費 | 600万円 | 固定費 | 900万円 |
| 営業利益 | 300万円 | 営業利益 | 300万円 |
通常のP/Lでは売上原価に固定費(工場の減価償却費等)が含まれているため、「売上総利益」は限界利益とは異なります。変動損益計算書では費用の性質で分類するため、限界利益率が正確に把握でき、損益分岐点の計算に直接使えます。
新しい社員を雇う、事務所を移転する、設備投資をする——こうした判断をするとき、「この追加固定費を賄うにはいくらの売上増が必要か」を即座に計算できます。
必要な追加売上高 = 追加固定費 ÷ 限界利益率
| 追加固定費の例 | 年間追加固定費 | 限界利益率40%の場合 | 限界利益率60%の場合 |
|---|---|---|---|
| 正社員1名採用 | 500万円 | 1,250万円 | 833万円 |
| 事務所移転(家賃増額分) | 120万円 | 300万円 | 200万円 |
| 設備投資(年間減価償却費) | 200万円 | 500万円 | 333万円 |
限界利益率40%の製造業の場合、正社員を1名採用すると、年間1,250万円の売上増(月約104万円)が必要になります。この計算を採用前にしておくだけで「この人を雇って元が取れるか」の判断ができます。
決算書の全体像については「決算書(財務諸表)の種類と全体像」、財務分析の主要指標は「財務分析の基本指標」で解説しています。簿記の基礎知識は「簿記と帳簿付けの基礎知識」をご参照ください。また、会計ソフト選びは「会計ソフトの選び方」をどうぞ。
損益分岐点分析にはいくつかの前提条件があり、それを理解しておかないと分析結果を過信するリスクがあります。
| 前提条件 | 実際の経営との違い | 対処法 |
|---|---|---|
| 変動費率は一定 | 原材料価格は変動する | 四半期ごとに変動費率を再計算 |
| 固定費は一定 | 売上が大幅に増えると人員増で固定費も増える | 売上レンジごとに固定費を設定 |
| 単一商品を想定 | 複数商品では商品ミックスが変わる | 加重平均の限界利益率を使用 |
| 全て売り切る前提 | 在庫が残る場合がある | 在庫の廃棄コストを固定費に含める |
📋 この記事のポイント
まずは自社のP/Lから変動費と固定費を分類し、限界利益率と損益分岐点を計算してみてください。自社の損益構造が見えるだけで、日々の経営判断のスピードと精度が大きく変わります。
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