【税理士×公認会計士が解説】償却資産の固定資産税|申告義務・対象資産・経費処理の方法

【税理士×公認会計士が解説】償却資産の固定資産税|申告義務・対象資産・経費処理の方法
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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償却資産の固定資産税|申告義務・対象資産・経費処理の方法

「償却資産の申告って何を出すの?」「パソコンは対象?」「少額減価償却資産は申告がいるの?」という法人経営者・個人事業主に向けて、償却資産の固定資産税の申告方法から経費処理・仕訳まで完全ガイドします。この記事を読めば、申告漏れのリスクを回避できます。

🏆 結論:事業用資産は毎年1月31日までに申告が必要。課税標準額150万円未満なら非課税

償却資産の固定資産税は、土地・家屋以外の事業用資産に毎年課税される地方税です。毎年1月1日時点の所有資産を1月31日までに市区町村に申告します。課税標準額の合計が150万円未満なら課税されませんが、申告義務は残ります。少額資産の処理方法によって課税対象が変わるため、会計処理との整合性が重要です。

償却資産の固定資産税とは?全体像を5ステップで把握

償却資産の固定資産税とは、事業用の機械・備品・構築物などに対して市町村が課税する地方税です(地方税法第341条)。土地や家屋の固定資産税は市町村が登記情報をもとに課税しますが、償却資産は所有者が自ら申告する必要がある点が大きな違いです。

申告から納付までの流れは以下の5ステップです。

ステップ 時期 内容
❶ 賦課期日1月1日この日に所有している償却資産が課税対象
❷ 申告1月31日まで資産の所在する市区町村に申告書を提出
❸ 価格決定3〜4月頃市区町村が申告内容をもとに評価額を決定
❹ 納税通知書6月上旬税額が記載された通知書が届く
❺ 納付年4回6月・9月・12月・翌2月(東京23区の場合)

⚠️ 注意

課税標準額が150万円未満で課税されない場合でも、申告義務は免除されません。「課税されないから申告しなくていい」は誤解です。申告を怠ると、市区町村から問い合わせが来たり、過去5年分の遡及課税を受けるリスクがあります。

固定資産税の基本的な仕組みについては「固定資産税の基礎知識|税率・評価替え・都市計画税との違い」で解説しています。

課税対象になる資産・ならない資産【判定表】

償却資産の固定資産税で最も間違えやすいのが「何が対象で何が対象外か」の判定です。以下の判定表で確認しましょう。

資産の種類別:対象/対象外

資産の種類 具体例 対象?
構築物舗装路面、門、塀、看板、外構○ 対象
機械・装置製造設備、機械式駐車場、太陽光発電○ 対象
工具・器具・備品パソコン、複合機、エアコン、冷蔵庫○ 対象
車両・運搬具大型特殊自動車(フォークリフト等)○ 対象
自動車乗用車、トラック(自動車税の対象)× 対象外
無形固定資産ソフトウェア、特許権、営業権× 対象外
土地・家屋建物本体、土地× 対象外(別途課税)

少額資産の会計処理別:償却資産税の課税判定

少額資産は会計処理の方法によって償却資産税の対象になるかが変わります。ここが最も間違えやすいポイントです。

取得価額 会計処理 償却資産税
10万円未満消耗品費等で一括損金算入× 対象外
10万円未満あえて資産計上して減価償却○ 対象
10万円以上20万円未満一括償却資産(3年均等償却)× 対象外
10万円以上40万円未満少額減価償却資産の特例(中小企業の即時償却)○ 対象
40万円以上通常の減価償却○ 対象

💡 実務のポイント

中小企業の少額減価償却資産の特例(取得価額40万円未満を即時償却)を使った場合、法人税では全額損金算入できますが、償却資産税は課税対象になります。一方、一括償却資産(3年均等償却)を選べば償却資産税は非課税です。償却資産が多い事業者は、法人税の節税効果と償却資産税の負担をトータルで比較することが重要です。

業種別の代表的な償却資産リスト

「うちの会社にはどんな償却資産があるのか」を把握するために、業種別の代表的な対象資産をまとめました。

業種 代表的な償却資産 見落としやすい資産
IT・Webサーバー、ハイスペックPC、モニター、NAS外付けGPU、ネットワーク機器
飲食店厨房設備、冷蔵庫、製氷機、レジテナント内装(借主の場合)、看板
製造業製造設備、クレーン、コンベア金型、測定機器、遊休設備
不動産外構(舗装・門・塀)、機械式駐車場太陽光発電設備、受変電設備
美容サロンシャンプー台、セット椅子、パーマ機テナント内装、サインポール

💡 実務のポイント

テナント入居者が自費で行った内装工事は、家屋ではなく償却資産として入居者が申告する必要があります。家主が家屋として申告している場合は二重課税になるため、賃貸物件で内装工事を行った際は家主と事前に確認してください。市区町村の調査で発覚すると過去5年分の遡及課税を受ける場合があります。

償却資産の評価額計算と税額シミュレーション

償却資産の固定資産税は「課税標準額×1.4%」で計算されます。ポイントは、法人税の定率法・定額法とは異なり、固定資産税の償却資産は原則として「旧定率法」で評価される点です。

計算式

前年中に取得した資産は「取得価額 ×(1 − 減価率/2)」、前年前に取得した資産は「前年度評価額 ×(1 − 減価率)」で計算します。評価額の最低限度は取得価額の5%です。

具体例:パソコン30万円(耐用年数4年・減価率0.438)

📐 シミュレーション前提条件

  • 取得価額:30万円(少額減価償却資産の特例で即時償却)
  • 耐用年数:4年(減価率0.438)
  • 取得時期:令和6年中(令和7年度が初年度)
年度 評価額 計算式
令和7年度(初年度)234,300円300,000 ×(1 − 0.438/2)= 234,300
令和8年度131,676円234,300 ×(1 − 0.438)= 131,676
令和9年度73,981円131,676 ×(1 − 0.438)= 73,981
令和10年度41,577円73,981 ×(1 − 0.438)= 41,577
令和11年度以降15,000円最低限度(取得価額の5%)に到達

※法人税で即時償却しても、償却資産税の評価では上記のとおり旧定率法で毎年評価されます。法人税の処理と償却資産税の評価は独立しています。

このパソコン1台だけなら課税標準額が150万円未満なので課税されませんが、全ての償却資産の評価額合計が150万円以上になると課税されます。

📊 公認会計士の視点

償却資産の固定資産税では圧縮記帳が認められません。補助金を使って取得した資産でも、法人税では圧縮記帳で取得価額を減額できますが、償却資産の申告では補助金控除前の本来の取得価額で申告する必要があります。この点を間違えると過少申告になるため要注意です。

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固定資産税の経費処理と仕訳方法【法人・個人事業主】

固定資産税(償却資産を含む)は、法人の場合は損金に、個人事業主の場合は必要経費に算入できます。

法人の仕訳

タイミング 借方 貸方 備考
納税通知書到着時租税公課 ○○円未払金 ○○円年額を一括で計上する方法
各期の納付時未払金 ○○円普通預金 ○○円分割納付のつど消込

法人税の損金算入時期は「賦課決定があった日の属する事業年度」です(法人税法基本通達9-5-1)。つまり、納税通知書が届いた事業年度で全額を損金にできます。分割納付のたびに計上する方法も認められています。

個人事業主の仕訳

パターン 借方 貸方
事業用口座から納付租税公課 ○○円普通預金 ○○円
個人口座から納付租税公課 ○○円事業主借 ○○円
現金で納付租税公課 ○○円現金 ○○円

💡 実務のポイント

自宅兼事務所で使っている備品にかかる固定資産税は、事業使用割合(家事按分)に応じた部分のみが経費になります。例えば、パソコンの事業使用割合が80%なら、そのパソコンに対応する固定資産税の80%が必要経費です。

よくある経費の償却資産税対象判定【一覧表】

日常的に発生する事業経費のうち、どれが償却資産の固定資産税に関わるかを一覧で整理します。

経費の種類 償却資産税の対象? 理由
高性能PC・ゲーミングPC○(10万円以上の場合)事業用備品として減価償却の対象
リモートワーク用の通信費×償却資産ではなく経常経費(通信費)
オフィス賃料・コワーキング利用料×賃料は経常経費(地代家賃)。物件の固定資産税は貸主が負担
予約サイト手数料(ホットペッパー等)×役務の対価であり償却資産ではない(支払手数料/広告宣伝費)
車両保険・自賠責保険×保険料は経常経費。車両本体は自動車税の対象であり償却資産税の対象外
テナント内装工事(借主負担)借主の資産として償却資産に該当。家主が家屋で申告していないか要確認
ソフトウェアのライセンス料×無形固定資産は償却資産税の対象外

申告書の書き方と提出方法

償却資産申告書は「全資産申告」と「増減申告」の2種類があります。初回は全資産を記載する全資産申告、2回目以降は前年からの増減のみを記載する増減申告が一般的です。

申告に必要な情報

申告書には資産ごとに取得年月・取得価額・耐用年数・数量を記載します。法人は固定資産台帳や法人税申告書の別表16、個人事業主は所得税の確定申告における減価償却明細をもとに記載してください。

提出方法の比較

方法 メリット 注意点
窓口提出その場で受理確認できる1月末は窓口が混雑
郵送都合のよいタイミングで送付可能消印が1月31日以前であること
eLTAX(電子申告)複数の自治体にまとめて申告可能事前のID取得が必要

複数の市区町村に事業所がある場合は、資産が所在する市区町村ごとに申告が必要です。eLTAXを使えば一度のデータ送信で複数自治体に申告できるため、事業所が分散している法人にはeLTAXがおすすめです。

参考: 東京都主税局「固定資産税(償却資産)」

申告漏れのリスクと対策

償却資産の申告を怠ると、市区町村の調査により過去5年分まで遡及して課税される可能性があります。

市区町村の調査方法

市区町村は法人税の申告書(別表16)の閲覧、電話・訪問調査、国税資料の閲覧などの方法で、申告内容が適正かを確認します。特に新規開業した事業者や、法人税の減価償却明細と償却資産申告書の内容が大きく乖離している事業者は調査対象になりやすいです。

💡 実務のポイント

過去の申告漏れに気づいた場合は、速やかに自治体に修正申告を行いましょう。自主的に修正すれば延滞金のみで済むケースが多いですが、調査で発覚した場合は印象が悪くなります。税理士に依頼している場合は、法人税の確定申告時に償却資産申告書も同時に作成するフローを組むと漏れを防げます。

加算税・延滞税のペナルティについて詳しくは「加算税・延滞税の全体像」をご覧ください。固定資産税の軽減措置については「固定資産税の軽減措置」、トラブル対処法は「固定資産税のトラブル事例」をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

償却資産の申告は毎年必要ですか?
はい。毎年1月1日時点の所有状況を1月31日までに申告する義務があります。前年と資産の増減がなくても「増減なし」として申告が必要です。課税標準額が150万円未満で課税されない場合でも、申告義務は免除されません。
少額減価償却資産の特例で即時償却したパソコンは申告が必要ですか?
はい。中小企業の少額減価償却資産の特例(取得価額40万円未満の即時償却)で処理した資産は、法人税では全額損金になりますが、償却資産の固定資産税は課税対象です。一方、一括償却資産(3年均等償却)で処理した場合は対象外になります。
ソフトウェアは償却資産の申告が必要ですか?
いいえ。ソフトウェアは無形固定資産に分類されるため、償却資産の固定資産税の対象外です。申告も不要です。ただし、ソフトウェアを利用するためのサーバーやパソコン本体は有形の償却資産として申告が必要です。
リース資産の固定資産税は誰が払いますか?
原則としてリース会社(所有者)が申告・納税します。ただし、ファイナンスリースで所有権移転条項がある場合は借主が申告する場合もあります。リース契約書の条項を確認してください。
償却資産の固定資産税に都市計画税はかかりますか?
かかりません。都市計画税の課税対象は土地と家屋のみです。償却資産には固定資産税(税率1.4%)のみが課税されます。
遊休設備(使っていない機械)も申告が必要ですか?
はい。現在使用していなくても、事業の用に供する目的で所有し、稼働できる状態にある遊休・未稼働資産は申告対象です。完全に廃棄処分したものは対象外ですが、その場合は「減少」として申告に記載してください。
個人事業主が自宅で使っているパソコンは申告対象ですか?
事業に使用している部分は申告対象です。自宅兼事務所の場合、事業使用割合に応じた取得価額で申告します。完全にプライベート使用のパソコンは対象外です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 償却資産の固定資産税は毎年1月31日までに申告義務あり。課税されなくても申告は必須
  • 課税標準額150万円未満は免税点で非課税。ただし150万円以上なら全額に1.4%課税
  • 少額減価償却資産の特例(即時償却)は償却資産税の課税対象。一括償却資産(3年均等)は対象外
  • テナント内装工事は借主が償却資産として申告。家主との二重課税に注意
  • 法人は「租税公課」で損金算入、個人事業主は「租税公課」で必要経費算入
  • ソフトウェア・自動車・保険料・通信費・賃料は償却資産税の対象外
  • 申告漏れは過去5年分の遡及課税リスクあり。法人税の確定申告と同時に償却資産申告を行うフローが安全

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