【4士業のワンストップ解説】2024年〜2028年 社会保険・労務の法改正カレンダー|経営者が押さえるべき全スケジュール

【4士業のワンストップ解説】2024年〜2028年 社会保険・労務の法改正カレンダー|経営者が押さえるべき全スケジュール
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

2024年〜2028年 社会保険・労務の法改正カレンダー|経営者が押さえるべき全スケジュール

「法改正が多すぎて何から手をつけていいかわからない」という経営者・人事担当者に向けて、2024年から2028年までの社会保険・労務分野の主要法改正を年度別に一覧化し、企業規模別の対応優先度を整理します。

📢 本記事の情報基準日:2026年4月時点

社会保険・労務分野は制度変更が頻繁に発生します。本記事は2026年4月22日時点の確定情報・政府方針に基づいて作成していますが、施行時期・要件の詳細は変更される可能性があります。2027年以降の改正は政令で日程が確定次第、詳細が変わる可能性が高いため、実務対応の最新情報は厚生労働省HPまたは顧問社労士に必ずご確認ください。

🏆 結論:この5年間で社会保険・労務は「40年に1度の大改正期」

2024年〜2028年は、社会保険・労務分野にとって歴史的な改正期です。2024年4月の労働条件明示ルールと時間外上限規制の全面適用に始まり、2025年4月の育介法改正、2026年10月のカスハラ対策義務化と106万円の壁撤廃、そして2027年以降は企業規模要件の段階的撤廃と、中小企業まで巻き込む改正が連続します。特に影響が大きいのは「社会保険の適用拡大」(2026〜2035年かけて段階的)・「育児介護休業法の柔軟な働き方義務化」・「カスハラ防止措置の義務化」の3つ。企業規模別に対応優先度を整理し、就業規則改定と社内体制整備を計画的に進めることが不可欠です。

5年間の全体マップ|改正のハイライト

2024年から2028年までの主要な改正を俯瞰すると、3つの大きなテーマが並行して進行しています。

テーマ 主な改正項目 期間
① 社会保険の適用拡大短時間労働者の加入要件緩和、企業規模要件の段階的撤廃2024〜2035年
② 育児・介護と仕事の両立育介法改正、柔軟な働き方義務化、育休取得状況公表拡大2025〜2027年
③ 職場環境・ハラスメント対策カスハラ義務化、就活セクハラ対策、女性活躍推進強化2026〜2027年

2024年(令和6年)の主要改正

2024年4月:労働条件明示ルールの拡充

労働基準法施行規則が改正され、雇用契約書・労働条件通知書に明示すべき事項が追加されました。対象は全企業・全従業員(新規入社・契約更新時)です。

2024年4月:時間外労働の上限規制の全業種適用

建設業・運送業・医師などに猶予されていた時間外労働の上限規制(月45時間・年360時間、特別条項でも年720時間以内)が、全業種に適用されました。運送業では「自動車運転者の改善基準告示」改正も同時施行されています。

2024年10月:社会保険の適用拡大(51人以上企業)

短時間労働者への社会保険適用対象企業が「常時101人以上」から「常時51人以上」に拡大されました。以下の要件を満たすパート・アルバイトが加入対象となります。

💡 実務のポイント:2024年の改正は「土台」

2024年の改正は、2025年以降の本格的な改正ラッシュの前提となる制度整備です。雇用契約書の雛形改訂、51人以上企業の短時間労働者把握と加入手続き、運送業の勤務管理見直しは、2026年以降の改正への準備段階として位置づけられます。この時期の対応が不十分な企業は、2026年以降の改正で一気に労務負担が増加します。

2025年(令和7年)の主要改正

2025年1月:養育特例の戸籍書類添付不要化

3歳未満の子を養育する従業員が「養育期間標準報酬月額特例(養育特例)」を申請する際、事業主が申出者と子の関係を確認した場合、戸籍関係書類の添付が不要になりました。

2025年4月:育児・介護休業法の改正(第1段階)

共働き・共育て促進のための大規模改正。主な改正点は以下の6つです。

改正項目 内容
所定外労働免除の対象拡大3歳未満→小学校就学前の子を養育する労働者へ
子の看護休暇の拡充対象年齢を小3修了までに拡大、学校行事等も対象に(名称も「子の看護等休暇」に)
テレワークの努力義務化3歳未満の子を養育する労働者のテレワーク利用
介護離職防止の措置義務40歳到達時の情報提供、介護発生時の個別周知・意向確認
育休取得状況の公表拡大常時雇用労働者1,000人超→300人超の企業へ拡大
次世代育成支援対策推進法の延長有効期限を2035年3月31日まで10年延長

2025年4月:障害者雇用の除外率引き下げ

障害者の雇用義務を軽減する「除外率」が業種ごとに10ポイント引き下げられました。実質的な雇用義務人数が増えるため、対象業種(船員・道路旅客運送業・建設業等)では採用計画の見直しが必要です。

2025年4月:雇用保険の新給付金

2025年10月:育児・介護休業法の改正(第2段階)

2025年4月施行に続く第2弾の改正。3歳〜小学校就学前の子を育てる労働者向けの「柔軟な働き方措置」が義務化されました。

事業主は以下の5つから2つ以上を選択して措置を講じ、労働者はその中から1つを選んで利用できます。

  1. 始業時刻などの変更(フレックスタイム・時差出勤)
  2. テレワーク(月10日以上)
  3. 保育施設の設置運営・ベビーシッター費用負担
  4. 養育両立支援休暇(年10日以上)
  5. 短時間勤務制度

また、3歳になる前の個別周知・意向確認、妊娠・出産申出時の個別周知・意向確認も義務化されました。

2025年10月:19歳以上23歳未満の被扶養者収入要件の変更

健康保険の被扶養者認定における19歳以上23歳未満の者の収入要件が、年間130万円未満から150万円未満に引き上げられました。学生アルバイトの扶養判定への影響に注意が必要です。

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2026年(令和8年)の主要改正

2026年4月:健康保険法改正と被扶養者認定の運営変更

国民年金の第3号被保険者(130万円の壁)の判定基準について、被扶養者認定の運営変更が2026年4月から実施されます。また、年収103万円の壁引き上げに伴う所得税・住民税関連の制度変更も同時期に影響します。

2026年4月:女性活躍推進法・労働施策総合推進法の一部改正

2026年4月:えるぼし認定基準の改正

女性活躍推進法に基づく「えるぼし」認定の基準が改正され、新たに「プラス認定」が創設されました。採用・継続就業・労働時間・管理職比率・多様なキャリアコースの各基準が厳格化されています。

2026年10月:カスタマーハラスメント対策の義務化

改正労働施策総合推進法(カスハラ対策法)が2026年10月1日に施行。労働者が1人でもいれば全事業主が対象となり、以下の雇用管理上の措置が義務化されます。

2026年10月:就活セクハラ対策の強化

男女雇用機会均等法に基づき、セクシュアルハラスメント防止措置の対象が求職者(就活生)にも拡大されます。採用活動全般でのセクハラ防止体制の整備が必要です。

2026年10月:106万円の壁撤廃(社会保険の賃金要件廃止)

短時間労働者の社会保険加入要件のうち「月額8.8万円以上(年収106万円以上)」の賃金要件が撤廃されます。週20時間以上働く短時間労働者は、年収にかかわらず社会保険加入対象となります(ただし企業規模要件は継続)。

⚠️ 注意:106万円の壁撤廃の影響試算

従来の106万円の壁が撤廃されると、週20時間以上働くパート・アルバイトが一律に社会保険対象となります。厚労省の試算では、新たに約200万人が厚生年金加入対象になる見込みで、企業側の社会保険料負担(労使折半)は大きく増加します。対象企業(従業員51人以上)は、2026年夏までにパート・アルバイトの勤務時間実態を把握し、必要に応じて労働時間の見直し・人員計画の修正・キャリアアップ助成金の活用検討を進めておくべきです。

2027年〜2028年(令和9〜10年)の主要改正

2027年4月:次世代育成支援対策推進法の新規定施行

従業員101人以上の一般事業主行動計画策定義務企業には、計画策定時の現状把握項目として「労働時間の状況(時間外・休日労働時間)」「年次有給休暇の取得状況」の追加が予定されています。

2027年10月以降:社会保険の企業規模要件の段階的撤廃

2025年6月成立の年金制度改正法により、社会保険適用の企業規模要件(現在「常時51人以上」)が段階的に撤廃されていきます。2035年10月には全ての企業(個人事業所含む)が対象となる方針です。段階的なスケジュールの詳細は政令で定められますが、中小企業への影響は極めて大きい改正です。

時期 適用対象(見込み)
〜2026年9月常時51人以上+賃金要件あり
2026年10月〜常時51人以上(賃金要件撤廃)
2027年10月〜段階的に拡大開始
2029年10月〜個人事業所(常時5人以上)の全業種適用(現行17業種から拡大)
2035年10月〜全企業(従業員1人から)適用

2027年10月以降:在職老齢年金の見直し

働きながら年金を受給する高齢者の「在職老齢年金」の支給停止基準額が段階的に引き上げられます。シニア人材の継続雇用を促進する改正です。

2026〜2028年:労働基準法の大改正(議論中)

「40年に1度の大改正」と呼ばれる労働基準法の抜本改正が議論されています。2025年1月の労働基準関係法制研究会報告書で提示された改正案は以下の通りですが、2025年10月の高市首相からの「労働時間規制の緩和検討」指示により、具体的な施行スケジュールは未定です。

企業規模別の対応優先度マトリクス

全ての改正に同時に対応するのは困難なため、自社の規模・業種に応じた優先順位づけが重要です。

改正項目 〜10名 11〜50名 51〜100名 101〜300名 301名〜
労働条件明示ルール(2024.4)◎必須◎必須◎必須◎必須◎必須
時間外上限規制(2024.4)◎必須◎必須◎必須◎必須◎必須
社保適用拡大51人以上(2024.10)◎必須◎必須◎必須
育介法第1段階(2025.4)◎必須◎必須◎必須◎必須◎必須
育休取得状況公表拡大(2025.4)◎必須(300名超)◎必須
柔軟な働き方措置(2025.10)◎必須◎必須◎必須◎必須◎必須
男女賃金差異公表(2026.4)◎必須(101名超)◎必須
カスハラ対策義務化(2026.10)◎必須◎必須◎必須◎必須◎必須
106万円の壁撤廃(2026.10)◎必須◎必須◎必須
企業規模要件撤廃(2027.10〜)△将来対象◎必須◎必須◎必須◎必須

🔷 社労士の視点:対応の優先順位

どの企業規模でも絶対に外せないのは「労働条件明示ルール」「時間外上限規制」「育介法」「カスハラ対策」の4つです。カスハラ対策は1人でも従業員がいれば義務化の対象で、就業規則への規定だけでなく相談窓口の実質的な整備が必要になります。弊所の顧問先では、2026年春から全社的なカスハラ研修と就業規則改定を並行して進めており、2026年10月の施行日までに社内体制を整えるスケジュールで動いています。51人以上企業は106万円の壁撤廃による社保料増への資金準備も最優先です。

就業規則改定の優先順位|1年以内に対応すべき項目

2026年中に就業規則・関連規程の改定が必要な項目は以下の通りです。労働者代表からの意見聴取と労基署への届出が必要なため、改定には最低1カ月の期間を見込む必要があります。

改定対象 主な改定内容 対応期限
育児・介護休業規程所定外労働免除の対象拡大、看護休暇・柔軟な働き方措置2025.10までに改定済みが必須
ハラスメント防止規程カスハラ対策の追加、就活セクハラ対応2026.10までに改定必須
就業規則(労働条件)短時間労働者の社保加入要件変更、治療と仕事の両立支援2026.10までに改定必須
テレワーク規程柔軟な働き方措置の一環としてのテレワーク整備2025.10までに新設推奨
雇用契約書雛形就業場所変更範囲、無期転換明示、有期契約更新上限2024.4より運用中(未対応なら即時)

よくある質問

従業員10名以下の会社はどの改正に対応すべきですか?
労働条件明示ルール(2024.4)、時間外労働上限規制(2024.4)、育介法改正(2025.4・10)、カスハラ対策義務化(2026.10)は全て対象です。社会保険の適用拡大は企業規模要件により現時点では対象外ですが、2035年10月までに全企業適用となるため将来を見据えた準備が必要。まずは就業規則改定と育介法対応を優先してください。
カスハラ対策は具体的に何をすればいいですか?
①方針の明確化(就業規則への規定+トップメッセージ)、②相談窓口の設置(社内または外部)、③迅速な事後対応体制の整備、④マニュアル整備・研修実施、の4点が柱です。従業員1人でも対象となるため、2026年10月までに最低限の体制整備が必要。社労士に依頼すると規程整備から研修まで一括対応できます。
106万円の壁撤廃で企業の負担はどれくらい増えますか?
対象従業員1名あたり、企業の社会保険料負担は月額約13,000〜15,000円増(労使折半分)程度です。対象パート5人なら年額約80万円の負担増。ただしキャリアアップ助成金の「社会保険適用時処遇改善コース」など一部の軽減措置もあるため、社労士と連携して助成金活用を検討するのが実務的です。
2025年10月の柔軟な働き方措置は必ず2つ以上導入しないといけませんか?
はい、義務です。5つの選択肢(始業時刻変更・テレワーク・保育施設・養育両立支援休暇・短時間勤務)から事業主が2つ以上を選んで提供し、労働者が1つを選べる仕組みにする必要があります。過半数組合等からの意見聴取も義務のため、2025年10月前に就業規則改定と意見聴取手続きを完了させる必要があります。
育児休業取得状況の公表義務化は何名以上の企業が対象ですか?
2025年4月から、常時雇用労働者が300人を超える企業が対象です(改正前は1,000人超)。対象企業は、男性労働者の育児休業等の取得割合を年1回、インターネット等で一般に公表する必要があります。公表しない場合、厚生労働大臣による勧告・企業名公表の対象になり得ます。
労働基準法の大改正はいつ施行されますか?
2026年4月時点で具体的な施行スケジュールは未定です。2025年1月の労働基準関係法制研究会報告書に基づく改正案は2026年国会提出が予想されていましたが、2025年10月に首相が労働時間規制の緩和検討を指示したことで議論継続となりました。労働者の範囲・労使コミュニケーション・労働時間制度の抜本見直しが中心テーマですが、施行は早くても2027年度以降の見込みです。
女性活躍推進法の情報公表はどう対応すればいいですか?
常時雇用101人超の企業は、2026年4月から「男女間賃金差異」「女性管理職比率」等を公表する必要があります。公表方法は自社HPまたは厚労省「女性の活躍推進企業データベース」への掲載で、データ算定には管理職の定義・男女別平均賃金の算出など実務上の細かい判断が必要です。初年度は社労士に相談しながら進めるのが安全です。
小規模企業でも全ての改正に対応する必要はありますか?
対象外の改正もあります。例えば「育休取得状況公表」は300人超企業、「男女賃金差異公表」は101人超企業、「社保適用拡大(現行)」は51人超企業が対象です。ただし「労働条件明示」「時間外上限規制」「育介法」「カスハラ対策」は全企業対象なので、これらは規模にかかわらず対応が必要です。

📋 この記事のポイント

  • 2024〜2028年は社会保険・労務の「40年に1度の大改正期」
  • 2024年4月:労働条件明示の拡充、時間外上限の全業種適用
  • 2024年10月:社会保険の適用拡大(51人以上企業)
  • 2025年4月・10月:育児・介護休業法の大改正(柔軟な働き方義務化)
  • 2026年4月:女性活躍推進法強化、男女間賃金差異公表(101人超)
  • 2026年10月:カスハラ対策義務化(全事業主)、106万円の壁撤廃
  • 2027年10月以降:社会保険の企業規模要件を段階的撤廃(2035年に全企業対象)
  • 労基法の大改正(40年ぶり)は2027年度以降施行見込み、具体日程は未定
  • 対応の4本柱:就業規則改定/カスハラ体制整備/社保料増への資金準備/育介法対応

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