【社労士×行政書士が解説】社会保険の電子申請義務化と対応方法|e-Govの使い方と対象法人

【社労士×行政書士が解説】社会保険の電子申請義務化と対応方法|e-Govの使い方と対象法人
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

社会保険の電子申請義務化と対応方法|e-Govの使い方と対象法人

人事・労務担当者に向けて、社会保険電子申請義務化の対象法人・対象手続き・e-Govの具体的な申請手順・GビズID取得方法を完全ガイド。この記事を読めば、書面提出から電子申請への移行をスムーズに進められます。

🏆 結論:資本金1億円超の大法人は2020年4月から電子申請が義務化。中小企業も生産性向上のため移行推奨

資本金・出資金・拠出金が1億円超の法人、相互会社、投資法人、特定目的会社は、2020年4月から健康保険・厚生年金・労働保険・雇用保険の主要手続き(算定基礎届・月額変更届・賞与支払届・資格取得喪失届など)が電子申請義務化されています。中小企業は義務対象外ですが、GビズIDを取得すれば電子証明書なしで無料で電子申請可能。社労士クラウドソフト(SmartHR、freee、マネーフォワード等)を使えば更に簡便化できます。書面提出の事務負担軽減、提出漏れ防止のメリットは大きく、中小企業も早期移行を推奨します。

社会保険電子申請義務化とは?制度の全体像

社会保険の電子申請義務化は、2020年4月から施行された「デジタル・ファースト法(情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律)」に基づく措置です。一定規模以上の法人は、社会保険の主要手続きを書面ではなく電子申請で行うことが義務付けられています。

参考:厚生労働省「2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます」e-Gov電子申請

🔷 社労士の視点

弊所の労務顧問先では、義務化対象外の中小企業も積極的に電子申請へ移行する流れが加速しています。弊所が担当する従業員12名のIT企業N社では、書面申請時に年間約80時間かかっていた労務手続きが、電子申請+人事クラウドソフト導入で年間約15時間まで削減されました。特に新入社員の資格取得届は即日完了できるようになり、年度末の駆け込み対応の負担が大きく軽減されています。

義務化の対象となる法人【特定の法人】

電子申請義務化の対象となる「特定の法人」は、以下の4区分です。

区分 定義
大規模法人資本金・出資金・銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
相互会社保険業法に基づく相互会社(日本生命、第一生命など)
投資法人投資信託及び投資法人に関する法律に基づく投資法人(J-REITなど)
特定目的会社資産の流動化に関する法律に基づく特定目的会社(SPC)

⚠️ 注意:資本金増資で義務化対象になるケースあり

業務拡大で増資し、資本金が1億円を超えた場合、その事業年度の社会保険申請から義務化対象となります。上場準備や大型M&Aで資本金が変動する会社は、増資のタイミングに電子申請への移行準備を同時に進めることが重要です。弊所が支援した資本金6000万円のSaaS企業O社は、シリーズBで資本金が1.5億円になり、急遽電子申請への切り替えが必要になった経緯があります。

義務化対象外でも電子申請は可能

中小企業(資本金1億円以下)、個人事業主、社労士・税理士事務所などは義務対象外ですが、書面と電子申請のどちらでも選択可能です。近年は業務効率化・人件費削減の観点から、義務対象外の企業でも電子申請への移行が進んでいます。

電子申請義務化の対象手続き【24手続き】

義務化対象は、健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労働保険の主要24手続きです。すべての手続きが対象ではなく、頻度の高い定型手続きが中心です。

健康保険・厚生年金保険(日本年金機構)

雇用保険(ハローワーク)

労働保険(労働基準監督署・労働局)

義務対象外の手続き(書面でも可)

以下の手続きは義務対象外ですが、電子申請は可能です。

電子申請の3つの方法【特徴比較】

電子申請には主に3つの方法があります。それぞれのメリット・デメリットを比較し、自社に合った方法を選択します。

方法 認証 費用 特徴
e-Gov電子申請(GビズID)GビズID(無料)無料最も手軽。電子証明書不要
e-Gov電子申請(電子証明書)電子証明書(有料)1万〜3万円/年従来型。代理申請もしやすい
社労士クラウドソフト連携GビズIDまたは電子証明書月数千円〜数万円大量手続き・複数従業員向け

💡 実務のポイント:推奨はGビズID方式

中小企業〜中堅企業では、電子証明書不要でコストゼロのGビズID方式が最もおすすめです。電子証明書方式は2020年代前半まで主流でしたが、GビズIDの登場で無料・簡便な電子申請が実現しました。一度GビズIDを取得すれば、社会保険・労働保険だけでなく、補助金申請や各種行政手続きにも横展開できるのが大きな利点です。

GビズIDの取得方法【4ステップ】

GビズIDは、経済産業省が運営する法人・個人事業主向けの共通認証システムです。電子申請に必要な「GビズIDプライム」の取得手順を示します。

ステップ1:GビズIDサイトで申請書を作成

GビズIDサイト(https://gbiz-id.go.jp/top/)にアクセスし、「プライムアカウント作成」を選択。必要事項を入力して申請書をPDFで出力します。

ステップ2:印鑑証明書を準備

法人代表者または個人事業主の印鑑証明書(発行から3か月以内)を用意します。

ステップ3:申請書と印鑑証明書を郵送

出力した申請書に実印を押印し、印鑑証明書と一緒にGビズID運用センターに郵送します。

ステップ4:審査・アカウント発行(1〜2週間)

審査完了後、登録メールアドレスにアカウント発行の通知が届きます。この時点でe-Gov電子申請の利用が可能になります。

参考:GビズID公式サイト

e-Govで算定基礎届を電子申請する手順

社会保険の電子申請で最も頻度の高い「算定基礎届」を例に、e-Govでの申請手順を示します。

ステップ1:e-Gov電子申請にログイン

e-Gov電子申請(shinsei.e-gov.go.jp)にアクセスし、GビズIDでログインします。初回はe-Gov電子申請アプリのインストールが必要です。

ステップ2:手続き検索で「算定基礎届」を選択

手続き名欄に「算定基礎」と入力して検索。表示された「被保険者報酬月額算定基礎届」を選択します。

ステップ3:申請書に入力

画面上の入力フォームに、事業所情報・被保険者情報・4〜6月の報酬額を入力します。

ステップ4:入力データのアップロード

従業員数が多い場合はCSVファイルを作成してアップロードすることも可能です。給与計算ソフトから出力したCSVをそのまま利用できるため、実務ではこの方法が主流です。

ステップ5:内容確認・送信

入力内容を確認して送信。送信後は「到達番号」が発行され、処理状況はe-Govの「申請書状況照会」で随時確認できます。

ステップ6:完了確認

通常1〜2週間で処理完了の通知がメールで届きます。決定通知書もe-Gov上でダウンロード可能です。

AYUSAWA PARTNERS

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社労士クラウドソフトの活用【大量手続きを効率化】

従業員数が多い企業(目安50名以上)や、頻繁に人事異動がある企業では、社労士クラウドソフトの活用が生産性を大きく高めます。主要サービスと特徴を示します。

サービス 主な特徴 料金目安
SmartHR人事情報一元管理。年末調整電子化も強み従業員100名で月4万円〜
マネーフォワード クラウド社会保険給与計算と連動。請求書連携従業員50名で月3万円〜
freee 人事労務会計連動。スモールビジネス向け従業員20名で月2万円〜
オフィスステーション社労士事務所向けの多企業管理機能従業員100名で月5万円〜

クラウドソフトの実務メリット

🧮 電子申請導入効果シミュレーション(従業員50名の企業)

導入前(紙申請)
算定基礎届:10時間×1回
賞与支払届:5時間×2回
入退社手続き:月4時間×12か月=48時間
年末調整(紙):40時間
合計:約108時間/年

導入後(電子申請+クラウドソフト)
上記業務:合計約25時間/年
削減効果:年間約83時間
時給3,000円換算で年間約25万円の人件費削減

電子申請のメリット・デメリット

メリット

デメリット

電子申請の例外【書面申請が認められるケース】

義務化対象法人でも、以下のケースでは書面申請が認められます。

  1. 電気通信回線の故障や災害などの理由により電子申請が困難
  2. 労働保険事務組合に委託している場合(労働保険関係手続)
  3. 単独有期事業を行う場合
  4. 年度途中に保険関係が成立した事業で、成立日から50日以内に申告書を提出する場合

📝 行政書士の視点:許認可申請とGビズIDの連携

GビズIDは社会保険以外の行政手続きにも使えます。建設業許可、産業廃棄物処理業許可、宅建業免許など、多くの許認可申請でGビズID対応が進んでおり、ワンストップで各種申請が可能になります。弊所では、新規事業で建設業許可と社会保険電子申請を同時に進めるケースで、GビズIDを先行取得してから両手続きを並行進行するフローを採用しています。

よくある失敗事例と対策

失敗事例1:GビズID取得が期限に間に合わない

GビズID取得には1〜2週間かかります。「4月1日の義務化に合わせて」と3月末に申請しても間に合わないケース。義務化対象法人になった時点で早期取得が必須です。

失敗事例2:マイナンバーの入力漏れ

電子申請では被保険者のマイナンバーが必要ですが、書面申請時代は任意だったため、データが揃っていない企業が多いです。移行前にマイナンバー収集を徹底します。

失敗事例3:添付書類のPDF化忘れ

電子申請でも添付書類(資格喪失時の離職証明書類など)は必要で、紙原本をPDF化して添付します。紙のまま提出しても受理されないケースがあります。

失敗事例4:クラウドソフト導入だけで満足

クラウドソフトを導入しても、従業員にマイナンバーや住所変更の入力をさせる運用ルールが整っていないと、手動入力が残り効率化できません。社内運用ルールの整備と従業員への説明が不可欠です。

よくある質問(FAQ)

資本金5000万円の会社は電子申請義務化の対象ですか?
資本金1億円以下のため義務対象外です。ただし電子申請は任意で可能であり、GビズIDを取得すれば無料で利用できます。
個人事業主も電子申請義務化の対象ですか?
個人事業主は義務対象外です。ただし、従業員を雇用して社会保険に加入している場合、電子申請の活用は強く推奨されます。
GビズIDの取得に費用はかかりますか?
GビズIDの取得・利用は完全無料です。電子証明書方式と比較して年間数万円のコスト削減効果があります。
社労士事務所に委託している場合も対象法人は電子申請が必要ですか?
社労士が代理申請する場合も電子申請が必要です。社労士側で電子申請に対応していない場合、別の社労士への切り替えを検討する必要があります。
電子申請後の書類(通知書など)はどこで確認できますか?
e-Govの「申請書状況照会」から過去の申請履歴・通知書をいつでもダウンロードできます。書面での送付はなくなります。
マイナンバーカードは電子申請に必須ですか?
担当者(会社側)のマイナンバーカードは不要で、GビズIDで認証します。被保険者(従業員)のマイナンバー(個人番号)は申請データに含めて送信します。
電子申請が義務化されているのに書面提出すると罰則はありますか?
明文化された罰則は現時点ではありませんが、書面提出した場合は受理されず差し戻しとなり、結果として申請期限を徒過するリスクがあります。期限徒過は年金制度上の遅延損害金や社保加入の遡及適用など、実質的な不利益につながります。
労働保険の年度更新も電子申請義務化の対象ですか?
対象です。概算保険料申告書・確定保険料申告書・一般拠出金申告書は、特定の法人の場合電子申請での提出が必要です。労働保険事務組合に委託している場合は例外的に書面可です。
2026年現在、電子申請義務化の対象は拡大されますか?
中小企業への一律拡大は現時点で決まっていませんが、デジタル庁主導でオンライン化推進が加速しており、将来的には拡大される方向です。対象外でも早期移行することで、将来の強制移行時の混乱を避けられます。
電子申請のセキュリティは大丈夫ですか?
e-Gov・日本年金機構とも、SSL/TLS通信・多要素認証・アクセスログ管理など、政府基準のセキュリティ対策が施されています。GビズIDは二段階認証で、不正アクセスのリスクは書面申請より低いと言えます。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 資本金1億円超の法人、相互会社、投資法人、特定目的会社は2020年4月から電子申請義務化
  • 対象手続きは健保・厚年・雇用保険・労災の主要24手続き
  • 推奨は無料のGビズID方式(電子証明書不要、1〜2週間で取得可能)
  • 大量手続き・複数従業員の企業は社労士クラウドソフト併用で効率化
  • 電子申請で年間80時間以上の業務削減が可能(従業員50名モデル)
  • 義務対象外の中小企業も生産性向上のため早期移行を推奨
  • 電子申請は24時間365日対応・添付書類も電子化・履歴管理が簡便

社会保険の電子申請義務化は、大法人向けの規制としてスタートしましたが、実質的には業務DX化の大きな流れの一環です。中小企業でも、GビズID取得後のe-Gov電子申請+クラウドソフト活用で、コストをかけずに大幅な効率化が実現できます。年間80時間以上の業務削減効果は、従業員1人分の人件費に相当する規模です。

鮎澤パートナーズでは、社会保険労務士がGビズID取得サポート・電子申請代行・クラウドソフト選定を、行政書士が関連する許認可手続きと連携した電子申請フロー設計を、ワンストップで提供しています。特に義務化対象ではない中小企業が「初めての電子申請」に取り組む際の、立ち上げ支援に強みがあります。