【4士業ワンストップ解説】会社設立初年度に経費にできるもの完全チェックリスト|創立費・開業費・少額資産の最適化

【4士業ワンストップ解説】会社設立初年度に経費にできるもの完全チェックリスト|創立費・開業費・少額資産の最適化
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
📋 税理士監修 📊 公認会計士監修 🆕 令和8年度改正対応(40万円特例)

会社設立初年度に経費にできるもの完全チェックリスト|創立費・開業費・少額資産の最適化

「設立前に立て替えた費用は経費にできる?」「パソコンや備品はどこまで一括経費化できる?」と迷う創業者に向けて、設立初年度の経費の全分類を完全ガイドします。この記事を読めば、設立前の立替分も含めて漏れなく経費化でき、令和8年度税制改正の40万円特例を最大限活用できます。

🏆 結論:設立前の自費立替も「創立費」「開業費」で全額遡及経費化できる

会社設立前に社長個人が立て替えた費用は、領収書さえ残っていれば「創立費」(設立登記前の費用)または「開業費」(設立後〜営業開始前の費用)として法人の繰延資産に計上し、任意のタイミングで全額損金算入できます。さらに令和8年4月1日以降に取得する備品は、取得価額40万円未満まで即時償却が可能(中小企業者等の少額減価償却資産特例)。創業期の経費は「分類」「タイミング」「証憑」の3点で漏れなく押さえれば、初年度の税負担を大幅に圧縮できます。

設立初年度の経費は「3つの分類」で考える

創業期の経費分類マップ

設立初年度の支出は、発生時期と性質によって次の3つに分類されます。それぞれ会計処理が異なるため、最初の分類が重要です。
分類 発生時期 代表例 処理
創立費設立登記前定款認証・登録免許税・印鑑作成費・専門家報酬繰延資産(任意償却)
開業費設立登記後〜営業開始前広告宣伝・名刺・市場調査・営業準備・接待交際繰延資産(任意償却)
通常経費営業開始後家賃・通信費・消耗品・人件費等勘定科目別に費用計上

💡 実務のポイント

創業者の方からよく受ける相談が「設立前に使った費用はもう経費にできないですよね?」というものですが、答えは「全額経費化できる」です。設立日より前に支払った費用も、創立費・開業費として法人の帳簿に取り込めます。年商3,000万円規模の会社で、設立前の自費立替を100万円分計上できれば、概算で20〜30万円の税負担が減ります。

創立費として経費化できるもの

創立費の定義

創立費とは、会社設立登記が完了するまでに発生した費用のうち、会社の設立手続きそのものに直接かかわる支出です(法人税基本通達8-1-1)。設立登記日より前の支出が対象になります。

創立費に該当する代表例

  1. 定款の認証手数料(公証役場:5万円)
  2. 定款の謄本手数料(1部約2,000円)
  3. 収入印紙代(紙の定款の場合:4万円。電子定款なら不要)
  4. 登録免許税(株式会社:資本金の0.7%、最低15万円/合同会社:最低6万円)
  5. 司法書士・行政書士への報酬
  6. 設立企画運営費(発起人の打ち合わせ、交通費等)
  7. 会社印鑑(代表者印・銀行印・角印)の作成費
  8. 登記簿謄本・印鑑証明書の取得費
  9. 設立準備のための旅費・通信費
  10. 設立記念パーティーや株主募集の広告費

⚠️ 注意

資本金の払込金そのものは創立費に該当しません。資本金は法人の純資産(資本金勘定)に計上する項目で、経費ではありません。誤って創立費に含めると、税務調査で必ず指摘されます。

開業費として経費化できるもの

開業費の定義

開業費とは、会社設立登記が完了してから実際に営業を開始するまでの間に「特別に支出した」費用です(法人税法施行令第14条第1項第1号)。「特別に支出した」という限定があるため、開業後も継続的に発生する費用は対象外です。

開業費に該当する代表例

  1. 営業開始までの広告宣伝費(チラシ、Web広告、看板等)
  2. 名刺・パンフレット・販促ツールの制作費
  3. 市場調査費・コンサルティング報酬
  4. 営業活動のための接待交際費(開業前の挨拶回り等)
  5. 従業員の採用・研修費用
  6. 取引先開拓のための交通費
  7. 営業準備のための消耗品費
  8. 事業計画書作成のための調査費
  9. ホームページ制作費(少額の場合)

開業費に該当しないもの

⚠️ 開業費にできないもの

  • 事務所の家賃・水道光熱費(経常的費用)
  • 従業員給与(経常的費用)
  • 通信費・電話料金(経常的費用)
  • 商品の仕入れ代金(棚卸資産)
  • 10万円以上の設備・備品(固定資産)
  • 敷金・保証金(資産計上)
経常的に発生する費用は、たとえ営業開始前であっても開業費に含めることはできません。これらは通常の経費勘定(地代家賃・水道光熱費・給与等)で処理します。

参考: 国税庁 法人税基本通達8-1-1(繰延資産の範囲)

繰延資産の「任意償却」が創業期最強の節税ツール

5年定額法と任意償却の選択

創立費と開業費は、会計上は5年間の定額法による償却が原則ですが、法人税法上は「任意償却」が認められています(法人税法施行令第64条)。任意償却とは、好きなタイミングで好きな金額を償却できる方式です。
償却方式 償却額 特徴
5年定額法取得価額÷60か月×事業月数毎期一定額を償却。会計上の原則
任意償却0円〜全額の範囲で自由税法上認められる節税ツール

任意償却の戦略的活用例

🧮 シミュレーション

創立費80万円・開業費120万円(合計200万円)を計上した会社の例。1期目に赤字が見込まれる場合、創立費・開業費はあえて償却せず繰延資産のまま保留。2期目に大きな黒字(利益800万円)が出た時点で200万円全額を一括償却すれば、その期の法人税が概算で30万円〜46万円減少します。1期目に償却していたら、その節税効果は赤字に埋もれていました。

欠損金繰越との組み合わせ

📊 公認会計士の視点

青色申告法人の欠損金は10年間繰越控除可能ですが、繰延資産(創立費・開業費)の任意償却は「いつでも任意の金額を経費化できる」という点で欠損金繰越より柔軟です。具体的には、欠損金は古いものから順次使う必要があり、利益が大きい年に集中して使えませんが、繰延資産は任意のタイミングで全額を経費化できます。創業期の事業計画では、両者の組み合わせで税負担をならす戦略が有効です。

少額減価償却資産の特例【令和8年度改正で40万円未満まで拡大】

制度の概要と令和8年度改正の影響

中小企業者等が取得した少額の減価償却資産については、取得価額を一括して損金算入できる特例があります(租税特別措置法第67条の5)。

📢 令和8年度税制改正(2026年4月1日施行)

中小企業者等の少額減価償却資産の特例について、対象資産の取得価額が30万円未満から40万円未満に引き上げられました。令和8年4月1日以後に取得し、事業の用に供した資産から適用されます。1事業年度の合計上限は300万円のまま。創業期の備品購入で大きな影響があるため、設立月との関係で取得タイミングを検討すべきです。

取得価額別の処理早見表

取得価額 処理方法 償却期間 上限
10万円未満全額消耗品費(即時損金)なしなし
10万円以上20万円未満一括償却資産(3年均等償却)または少額減価償却資産特例3年or即時特例なら300万円/年
20万円以上40万円未満少額減価償却資産特例で即時損金即時300万円/年
40万円以上通常の減価償却(耐用年数で按分)資産別

※令和8年4月1日以後取得の資産。それ以前は「30万円未満」が即時損金の境界。

事業年度が1年未満の場合の上限調整

💡 実務のポイント

少額減価償却資産の年300万円上限は、事業年度が1年に満たない場合は月割按分されます。例えば設立1期目が6か月の場合は150万円(300万円÷12×6)が上限。創業期に大量の備品を購入予定の経営者は、設立月と決算月の選択で利用枠が変わる点に注意が必要です。

参考: 国税庁 No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

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設立前の自費立替を法人経費に「取り込む」手順

立替金精算のステップ

設立前の自費立替を法人の経費に取り込むには、次の手順を踏みます。
  1. 個人として支払った領収書・レシートを日付順に整理
  2. 支払先・支払日・金額・内容を一覧表(Excel等)にまとめる
  3. 設立後、法人で「創立費」または「開業費」として繰延資産計上
  4. 同額を社長への「未払金」または「役員借入金」として計上
  5. 法人の運転資金が安定したら、社長個人へ精算(支払い)

仕訳例:設立前に社長が30万円立替えたケース

タイミング 借方 貸方 摘要
①設立後の取込時創立費 300,000役員借入金 300,000設立前立替の取込
②社長へ精算時役員借入金 300,000普通預金 300,000立替分の支払い
③償却(任意のタイミング)創立費償却 300,000創立費 300,000全額損金算入

💡 実務のポイント

役員借入金として計上する方法のメリットは、法人の資金繰りが苦しい時期にすぐ社長へ精算しなくてよい点です。社長への返済を後回しにできるため、創業初期のキャッシュフローが楽になります。なお、役員借入金には利息を付けない(無利息)運用が一般的で、税務上も問題ありません。

創業期の経費「グレーゾーン」判定一覧

創業期によく判定に迷う費用について、経費化の可否を整理します。
支出内容 経費化 勘定科目・処理
設立前に購入した名刺開業費(設立後注文の場合は単純な広告費)
事業計画書作成のための書籍代開業費 or 図書費
創業セミナー受講料開業費 or 研修費
設立前に支払った事務所の敷金×(資産)差入保証金(経費化不可、退去時に償却)
設立前のスーツ購入費×経費化不可(個人的支出)
設立前に契約したコワーキング利用料事業準備のためなら開業費、純粋に個人利用なら経費化不可
設立前のホームページ制作費(30万円)開業費 or ソフトウェア(資産計上)の選択
設立祝賀パーティー費用創立費
設立前のパソコン購入費(25万円)少額減価償却資産特例(30万円未満として処理。令和8年4月以降40万円未満)
設立前の市場調査費(外注)開業費
設立前の交通費(営業準備の挨拶回り)開業費

消費税の課税仕入控除との関係

創立費・開業費の消費税区分

📊 公認会計士の視点

創立費・開業費に含まれる支出のうち、消費税が課された取引(例:印鑑作成費・専門家報酬・名刺制作費)は、課税事業者であれば仕入税額控除の対象になります。一方、登録免許税・収入印紙代は不課税取引のため控除対象外です。インボイス未登録の事業者からの仕入は、80%控除(2026年9月まで)、50%控除(2026年10月〜2029年9月)の経過措置適用となります。

免税事業者と課税事業者で異なる経理方式

設立1期目が免税事業者の場合、すべての取引は税込経理(税抜と税込を分けず、税込金額で記帳)が原則です。少額減価償却資産の40万円未満判定も、税込金額で行います。一方、課税事業者を選択した場合は税抜経理を採用でき、税抜40万円未満で判定できるため、より多くの資産を即時損金にできます。

領収書・証憑の管理ルール

創業期の証憑管理3原則

  1. すべての領収書を保管:設立準備期間のレシート・領収書は1枚も捨てない
  2. 支払者・支払日・内容を記録:領収書の裏に用途と「設立準備のため」等を手書きでメモ
  3. 電子取引はデータで保管:クレジットカード明細・通販の領収書PDFは電子帳簿保存法に従って保管

電子帳簿保存法対応

📢 電子帳簿保存法の完全施行

2024年1月以降、電子取引で受領した請求書・領収書はデータでの保存が義務化されています(電子帳簿保存法第7条)。設立準備期間の通販購入・サブスクリプション契約・電子請求書は、紙への出力ではなくPDF等のデータで保存し、検索要件(日付・取引先・金額で検索可能)を満たす必要があります。猶予措置はあるものの、創業時から正しい保存方法を確立しておくことが安全です。

創業期の節税効果を最大化する3つの判断

判断1:創立費・開業費の償却タイミング

利益見込みに応じて任意償却を活用します。初年度赤字なら無償却で繰延、黒字化したタイミングで一括償却が原則戦略です。

判断2:パソコン・備品の購入タイミング

令和8年4月1日施行の40万円特例を踏まえ、可能な範囲で取得タイミングを調整します。30万円〜40万円未満の備品は、施行日以降の取得・事業供用にすることで即時損金化できます。

判断3:経理方式(税込 or 税抜)の選択

課税事業者の場合、税抜経理を選択することで、少額減価償却資産の判定が税抜額で行われるため、より多くの資産を即時損金にできます。

創業期の経費漏れチェックリスト

設立後、最初の決算前に以下を確認してください。
  1. 定款認証手数料・登録免許税の領収書を創立費に計上したか
  2. 会社印鑑・登記簿謄本の取得費を創立費に計上したか
  3. 司法書士・行政書士の報酬を創立費に計上したか
  4. 設立前の名刺・パンフレット制作費を開業費に計上したか
  5. 設立前の市場調査費・コンサル費を開業費に計上したか
  6. 設立前の研修・セミナー受講料を開業費に計上したか
  7. 設立前の営業挨拶回りの交通費を開業費に計上したか
  8. 設立前のパソコン購入費を少額減価償却資産で計上したか
  9. 創立費・開業費の任意償却を当期の利益に合わせて選択したか
  10. 個人立替分を役員借入金で取り込み、領収書原本を保管しているか
  11. 電子取引データは電子帳簿保存法の要件を満たして保管しているか
  12. 少額減価償却資産の年300万円上限を超えていないか確認したか

よくある質問

設立日の半年前に購入したパソコンも創立費にできますか?
設立準備のために購入したと客観的に説明できれば創立費(または少額減価償却資産)として計上可能です。ただし、半年前という時間的距離があるため、税務調査では「個人で使用していた資産を法人に移転しただけではないか」を問われる可能性があります。領収書・購入時のメール・事業計画書等で「設立準備目的の購入」であることを立証できる証拠を残してください。
創立費・開業費はいつまでに償却すべきですか?
償却期限は法律上明示されていません。任意償却のため、何十年でも繰延資産として保有可能です。実務上は、黒字化した年度に全額または大半を償却して節税効果を享受するのが一般的です。会社清算時に未償却残高があれば、その時点で全額損金算入されます。
設立前の食費・接待費は経費にできますか?
個人的な食事は経費化不可ですが、「設立準備のための打ち合わせ」「事業協力者との接待」など、明確に事業目的があれば開業費として計上可能です。誰と・何の目的で・どのような話をしたかを記録し、領収書とセットで保管してください。ただし、過度の接待費は税務調査で否認リスクが高いため、合理的な範囲に留める必要があります。
創立費と開業費はどちらに分類してもよいですか?
原則として「設立登記前=創立費」「設立登記後〜営業開始前=開業費」と日付で区分します。両者は会計処理上ほぼ同じ扱い(繰延資産・任意償却)のため、税負担に違いはありません。ただし、税務調査で「分類が混在している」と指摘されることがあるため、領収書の日付に応じて正しく分けて記帳することを推奨します。
設立前のWebサイト制作費30万円はどう処理しますか?
3つの選択肢があります。①開業費として繰延資産計上、②少額減価償却資産特例で即時損金(30万円「未満」のため厳密にはアウト。令和8年4月以降の40万円未満なら適用可)、③ソフトウェアとして資産計上し5年で減価償却。デザイン中心のサイトなら①、機能性の高いシステム的なサイトなら③が一般的です。判断に迷う場合は税理士へご相談ください。
少額減価償却資産の年300万円上限を超えそうです。どうすれば?
300万円超の部分は通常の減価償却(耐用年数による按分)または一括償却資産(3年均等償却)として処理します。年度をまたいで取得することで、複数年に分散できます。例えば、3月決算法人で4月に予定していた備品購入を翌年度に回す、または当年度のうちに済ませる、といった調整が可能です。
設立前の自費立替を社長に精算しない場合、どうなりますか?
役員借入金として法人の負債に計上したまま据え置けます。利息を付けない無利息運用が一般的で、税務上の問題はありません。社長が「将来の役員退職金で相殺する」「会社清算時に債権放棄する」等の選択肢があり、相続税対策にもなるケースがあります。長期的な観点で税理士と相談してください。
会計ソフト(freee/MF/弥生)は創立費・開業費の処理に対応していますか?
主要な会計ソフトはすべて創立費・開業費の繰延資産計上に対応しています。勘定科目で「創立費」「開業費」を選択し、設立後に償却する際は「創立費償却」「開業費償却」を選択します。任意償却にも対応しているため、決算時に当期の償却額を手入力で設定できます。

📋 この記事のポイント

  • 設立初年度の経費は「創立費」「開業費」「通常経費」の3分類で整理
  • 設立前の自費立替も領収書があれば全額遡及で経費化できる
  • 創立費=設立登記前、開業費=設立登記後〜営業開始前、というタイミングで区分
  • 創立費・開業費は任意償却が可能。黒字化した年に一括償却して節税効果を最大化
  • 令和8年4月以降、少額減価償却資産特例の上限が30万円未満→40万円未満に拡大
  • 事業年度が1年未満の場合、少額減価償却資産の300万円上限は月割按分
  • 個人立替は「役員借入金」として処理し、法人の資金繰りに応じて精算
  • 電子取引データは電子帳簿保存法に従ってデータ保存(紙出力では不可)

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