セクハラ・マタハラ・パタハラ防止措置|事業主の措置義務一覧と2026年改正

セクハラ・マタハラ・パタハラ防止措置|事業主の措置義務一覧と2026年改正
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

【社労士が解説】セクハラ・マタハラ・パタハラ防止措置|事業主の措置義務一覧と2026年改正

「セクハラとマタハラで措置義務はどう違う?」「パタハラも含めて一元管理したい」でお困りの経営者・人事担当者に向けて、3つのハラスメントの根拠法・定義・措置義務を完全ガイドします。この記事を読めば、総合ハラスメント防止体制を構築でき、2026年10月の就活セクハラ義務化にも対応できます。

🏆 結論:均等法・育介法で既に全事業主に義務化、2026年10月からは就活セクハラも対象

セクシャルハラスメントは男女雇用機会均等法11条、マタニティハラスメント(妊娠・出産等に関するハラスメント)は均等法11条の3、パタニティハラスメント(育児休業等に関するハラスメント)は育児・介護休業法25条で、全事業主に防止措置が義務化されています。措置義務の枠組みはパワハラ防止法と同じ4本柱(方針明確化・相談体制・事後対応・プライバシー保護等)で、一元的な総合ハラスメント防止体制の構築が効率的です。2026年10月1日からは改正均等法により、求職者等への就活セクハラ防止措置も義務化されます。違反には指導・勧告・企業名公表のリスクがあり、判例では数百万円〜数千万円の損害賠償が命じられるケースもあります。

3つのハラスメント防止措置|根拠法と施行時期の全体像

職場における主要ハラスメントは、根拠法と施行時期が異なります。まず全体像を表で整理します。

ハラスメント 根拠法 義務化時期 対象
セクシャルハラスメント(セクハラ)均等法11条1999年〜措置努力義務/2007年〜措置義務全事業主(男女とも被害者になり得る)
マタニティハラスメント(マタハラ)均等法11条の32017年1月〜全事業主(妊娠・出産した女性労働者)
パタニティハラスメント(パタハラ)育介法25条2017年1月〜全事業主(育児・介護休業等を取得した労働者)
パワーハラスメント(パワハラ)労働施策総合推進法30条の22020年6月大企業/2022年4月中小企業全事業主
就活セクハラ(新設)改正均等法13条2026年10月1日〜(施行予定)全事業主(求職者・就活生・インターン生)
カスハラ(新設)改正労働施策総合推進法33条2026年10月1日〜(施行予定)全事業主(顧客等からの労働者)

既に全ハラスメントについて措置義務が課されているか、2026年10月1日の施行を控えています。どれか1つだけ対応するのではなく、一元的な総合ハラスメント防止体制を構築することが最も効率的です。

セクシャルハラスメント(セクハラ)の定義と2類型

セクハラは男女雇用機会均等法11条で定義されており、以下の2類型に分類されます。

2つの類型

類型 内容 具体例
対価型セクハラ性的言動への拒否・抵抗によって解雇・降格・減給等の不利益を受ける上司が部下に性的関係を要求し拒否されたため降格させた
環境型セクハラ性的言動により就業環境が不快となり能力発揮に悪影響が出る卑猥な画像を職場に掲示、身体的特徴の揶揄、継続的な性的発言

男女ともに被害者になり得る

セクハラは男女にかかわらず被害者・加害者になり得ます。2014年の指針改正で、同性間のセクハラや性的指向・性自認に関するセクハラ(SOGIハラ)も明確に対象とされています。

💡 実務のポイント

「男性→男性の発言は軽いスキンシップだからセクハラには該当しない」と考えるのは誤りです。2014年以降、同性間セクハラも明確に対象で、性的指向・性自認への言及(LGBTQへの揶揄等)もSOGIハラとしてセクハラに該当します。管理職研修では「同性同士でも・冗談でも・親しい関係でもセクハラになる」という基本原則を確実に伝えることが重要です。

マタニティハラスメント(マタハラ)の定義と2類型

マタハラは均等法11条の3で、妊娠・出産・育児休業等に関する制度利用・状態を理由とする嫌がらせを規制します。

2つの類型

類型 内容 具体例
制度等の利用への嫌がらせ型妊婦健診・産休・育休・短時間勤務等の制度利用を阻害「産休なんて取るなら辞めろ」と圧力をかける/制度利用者を冷遇する発言
状態への嫌がらせ型妊娠・出産等の状態そのものを理由とする嫌がらせ「妊娠したせいで仕事が回らない」等の発言/妊婦への業務軽減を拒否

対象となる制度(具体例)

  • 産前産後休業・妊婦健診時間・軽易業務への転換
  • 危険有害業務の就業制限・深夜業の制限
  • 時間外労働・休日労働の免除
  • 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)
  • 子の看護等休暇・介護休暇
  • 短時間勤務制度・所定外労働の制限

パタニティハラスメント(パタハラ)の定義と具体例

パタハラは育介法25条で、育児休業・介護休業等に関する制度利用を理由とする嫌がらせを規制します。被害者は男性労働者に限定されず、育児介護関連制度を利用する全労働者が対象です。

パタハラの具体例

  • 「男が育休を取るなんて情けない」等の発言
  • 育休取得を理由とする昇進停止・降格
  • 育休から復帰した労働者への閑職配置
  • 介護休業取得者を「仕事にやる気がない」と評価
  • 短時間勤務制度利用者への業務分配からの意図的な排除

⚠️ 政府の男性育休取得率目標との関係

政府は男性育休取得率を2025年50%、2030年85%とする目標を掲げています。この目標達成にはパタハラ根絶が不可欠であり、行政は違反事例を重点的に指導する傾向が強まっています。管理職が「男性育休はちょっとねえ」といった発言をするだけで、パタハラに該当する可能性があります。

事業主の措置義務|4本柱を一元的に実装

セクハラ・マタハラ・パタハラ・パワハラの事業主措置義務は、枠組みが統一されており、以下の4本柱で構成されます。

措置義務の4本柱(全ハラスメント共通)

措置 具体的実装
①方針の明確化と周知・啓発就業規則へのハラスメント禁止条項、管理職・全社員研修、啓発ポスター掲示
②相談体制の整備相談窓口の設置(内部・外部併用推奨)、担当者研修、マニュアル整備
③事後の迅速・適切な対応事実確認、被害者配慮措置、行為者への措置(懲戒処分・配置転換)、再発防止
④併せて講ずべき措置プライバシー保護、不利益取扱いの禁止の周知

マタハラ・パタハラに特有の措置(追加)

マタハラ・パタハラでは、上記4本柱に加えて以下の措置も求められます。

  • 制度等の利用ができることの周知:労働者が制度を知らないまま利用を諦めないよう、会社から積極的に情報提供
  • ハラスメントの背景となる業務体制の整備:妊娠・育児等により業務負担が偏らないよう業務分配を見直す

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【2026年10月施行】就活セクハラ防止措置の義務化

2025年6月11日公布の改正均等法により、2026年10月1日から求職者等への就活セクハラ防止措置が義務化されます。

改正均等法13条(新設)の概要

改正均等法13条(就活セクハラの定義)

事業主は、求職者等の求職活動等において行われる当該事業主が雇用する労働者による性的な言動により当該求職者等の求職活動等が阻害されることのないよう、当該求職者等からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

対象範囲

  • 就職活動中の学生(新卒採用)
  • 中途採用の応募者
  • インターンシップ生
  • OB・OG訪問の学生
  • 企業説明会の参加者

典型的な就活セクハラ事例

  • OB・OG訪問時に性的関係を要求
  • 面接時に交際相手や性経験を質問
  • 内定を条件に食事・デートを要求
  • 身体的接触(肩に触れる、抱きしめる等)
  • SNSで求職者に性的なメッセージを送る

💡 実務のポイント

就活セクハラは「OB・OG訪問」「カジュアル面談」等のインフォーマルな場で発生しやすい特徴があります。企業として、①OB・OG訪問を企業公認制度として管理、②社外での1対1の対応を禁止、③求職者からの相談窓口を社外・匿名で受け付ける体制を整備する必要があります。2026年10月施行までに体制構築が必要です。

相談窓口の統合設計|総合ハラスメント防止体制の構築

セクハラ・マタハラ・パタハラ・パワハラ・カスハラを別々に相談窓口を作ると労働者が混乱し、利用率が下がります。一元的な総合窓口の構築が実務のベストプラクティスです。

総合ハラスメント相談窓口の要件

  • 5種のハラスメント全てを1窓口で受け付け
  • 相談経路を複数用意(対面・電話・メール・匿名Web)
  • 内部窓口(人事部)+外部窓口(社労士・EAP)の併用
  • 対応担当者の研修を年1回以上実施
  • 相談後の対応フロー・期限(事実確認1〜2週間、措置実施2週間以内)を明確化
  • 秘密保持・不利益取扱い禁止の誓約

統合就業規則規定例

(ハラスメントの禁止)

第◯条 従業員は、職場において以下のハラスメント行為を行ってはならない。
(1)セクシャルハラスメント(性的言動による就業環境の阻害)
(2)マタニティハラスメント(妊娠・出産等に関する制度利用・状態を理由とする嫌がらせ)
(3)パタニティハラスメント(育児・介護休業等の制度利用を理由とする嫌がらせ)
(4)パワーハラスメント(優越的関係を背景とする就業環境の阻害)
(5)カスタマーハラスメント対応における労働者保護への妨害行為

2 前項に違反した従業員に対しては、就業規則第◯条(懲戒処分)の規定により懲戒処分を行う。

(相談窓口)

第◯条 会社は、全ハラスメント(セクハラ・マタハラ・パタハラ・パワハラ・カスハラ・就活セクハラ)に関する相談に一元的に応じるため、社内相談窓口および外部相談窓口を設置する。

2 会社は、相談者および事実関係確認に協力した者のプライバシーを保護し、相談または協力を理由とする不利益取扱いを行わない。

管理職研修の内容|総合ハラスメント研修

年1回以上の管理職向け研修で、全種類のハラスメントを一元的に扱います。研修教材は厚生労働省「あかるい職場応援団」の無料資料が活用できます。

研修カリキュラム例(2時間構成)

セクション 時間 内容
①法令概観20分均等法・育介法・パワハラ防止法の概要、2026年改正動向
②セクハラ対応20分対価型・環境型の具体例、SOGIハラ、男女の被害者
③マタハラ・パタハラ対応20分妊娠出産育児介護の制度利用を阻害しない配慮、業務体制整備
④パワハラ対応20分6類型、適正指導との境界、具体事例でのロールプレイ
⑤カスハラ・就活セクハラ対応15分2026年10月施行の新義務、求職者対応
⑥相談受付と対応フロー20分相談窓口の利用方法、管理職としての初期対応
⑦質疑応答5分事例相談等

違反時のリスク|行政指導・企業名公表・損害賠償

ハラスメント防止措置義務違反のリスクは以下のとおりです。

行政上のリスク

  • ①助言 → ②指導 → ③勧告 → ④企業名公表(悪質事案)の段階的対応
  • 厚労省報告義務違反には20万円以下の過料

民事上のリスク

  • 被害労働者から損害賠償請求(数百万円〜数千万円)
  • 会社は使用者責任(民法715条)を負う可能性
  • 加害者個人の損害賠償と会社の連帯責任

判例の傾向

  • セクハラ事案:平均300〜800万円の賠償
  • マタハラ・パタハラ事案:降格等の不利益取扱いに対し数百万円
  • 重度のハラスメント(うつ病発症・自殺等):数千万円に達するケース

よくある質問

セクハラとマタハラは別々に就業規則に規定する必要がありますか?
統合的に規定する方が効率的です。「ハラスメントの禁止」という1つの条項で5種(セクハラ・マタハラ・パタハラ・パワハラ・カスハラ)を並列列挙し、相談窓口も一元化する規定例が実務で広く採用されています。別々の条項にすると改定のたびに複数箇所の修正が必要となり管理が煩雑です。
男性→男性・女性→女性のセクハラも対象ですか?
対象です。2014年の指針改正で同性間セクハラが明確に対象となりました。性的指向・性自認への言及(LGBTQへの揶揄等)もSOGIハラとしてセクハラに該当します。管理職研修でこの点を確実に伝えることが重要です。
マタハラと間違われそうな合理的業務配慮はどう行いますか?
妊娠労働者の体調・業務内容に応じた配慮は、本人との合意の上で行えばマタハラには該当しません。たとえば「重い荷物を持つ業務の免除」「立ち仕事の座り仕事化」「深夜業の免除」等は、本人から申し出を受けて合意文書を残す運用で問題ありません。一方的に「妊娠したから軽い業務に移す」と言う対応は、合意がなければマタハラになり得ます。
パタハラを防ぐため管理職研修では何を強調すべきですか?
①男性育休を含む育児介護制度は労働者の権利であり利用を阻害できない、②「男のくせに」「仕事より育児を優先するのか」等の発言は即違法、③育休取得を理由とする評価・配置への影響禁止、の3点を明確に伝えます。特に政府の男性育休取得率目標(2030年85%)との関連で、行政指導が強化されている点も共有します。
就活セクハラの2026年10月施行までに何を準備すべきですか?
①OB・OG訪問を会社公認制度化し個人任せにしない、②求職者向けの社外相談窓口を設置(匿名可)、③採用担当者・面接官の研修実施、④就業規則の就活セクハラ条項追加、の4点が最低限必要です。厚労省の指針公表後に詳細対応を追加調整します。
ハラスメントに関する社外相談窓口の費用相場はいくらですか?
社労士事務所への委託で月額2〜10万円程度、EAP事業者で月額5〜20万円程度が相場です。従業員数や相談対応範囲(平日日中のみ/24時間対応)により変動します。中小企業では月額2〜5万円で社労士に委託するパターンが一般的です。
ハラスメント相談があった際、事実確認で行為者にヒアリングする際の注意点は?
①相談者の希望と合意の上で実施、②行為者を糾弾する目的ではなく事実確認の趣旨を明確化、③相談者の氏名等の情報を最小限に伝える、④行為者に報復的行為を禁止する旨を伝える、⑤ヒアリング記録を残す、の5点を守ります。行為者の弁明権も配慮し、公平な手続きとして実施することが重要です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • セクハラは均等法11条、マタハラは均等法11条の3、パタハラは育介法25条で全事業主に防止措置が義務化済
  • セクハラは対価型・環境型の2類型、男女・同性間・SOGIハラも対象
  • マタハラは制度利用への嫌がらせ型・状態への嫌がらせ型の2類型
  • パタハラは育児・介護休業等を利用する労働者(男性含む)に対する嫌がらせ
  • 事業主の措置義務は4本柱(方針明確化・相談体制・事後対応・プライバシー保護等)でパワハラ・カスハラと共通
  • マタハラ・パタハラには追加措置として制度周知と業務体制整備も必要
  • 2026年10月施行の就活セクハラ義務化(均等法13条新設)で求職者・インターン生まで対象拡大
  • セクハラ・マタハラ・パタハラ・パワハラ・カスハラ・就活セクハラを一元的に扱う総合ハラスメント防止体制が最も効率的

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