【行政書士×税理士が解説】旅行業登録の種類と申請手続き完全ガイド|第1種〜第3種・地域限定・管理者選任を整理

【行政書士×税理士が解説】旅行業登録の種類と申請手続き完全ガイド|第1種〜第3種・地域限定・管理者選任を整理
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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旅行業登録の種類と申請手続き完全ガイド|第1種〜第3種・地域限定・管理者選任を整理

インバウンド・国内ツアー・着地型観光などで旅行業を始めたい創業者・法人経営者に向けて、旅行業法に基づく5区分の登録、区分別の基準資産額・営業保証金、旅行業務取扱管理者の選任義務、申請フローと費用を行政書士の視点で完全整理します。この記事を読めば、自社に必要な登録区分を特定し、事業立ち上げの全体像を把握できます。

🏆 結論:旅行業は「業務範囲×財産要件×管理者資格」の3軸で決まる

旅行業登録は旅行業法第3条に基づく登録制で、第1種(海外募集型可)、第2種(国内募集型可)、第3種(自市町村+隣接の国内募集型)、地域限定(自市町村+隣接の着地型に限定)、旅行業者代理業の5区分があります。区分により基準資産額(100万〜3,000万円)と営業保証金(70万〜7,000万円)が大きく異なり、営業所ごとに旅行業務取扱管理者(総合/国内/地域限定)の選任が必須です。登録は5年更新制です。

旅行業とは?旅行業法の体系

旅行業とは、報酬を得て旅行者のために運送・宿泊サービスの手配、企画、販売等を行う事業です。旅行業法第2条に定義され、同法第3条により観光庁長官または都道府県知事の登録を受けなければ営業できません。無登録営業は旅行業法第74条に基づき1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となります。

制度の趣旨は旅行者の保護と公正な取引の確保にあり、登録制のほか、営業保証金の供託、業務取扱管理者の選任、旅行業約款の備置等、事業者に多くの義務が課されています。詳細は観光庁 旅行業法のページをご参照ください。

旅行業の「3形態」の理解

旅行業の業務は、その形態により以下の3つに分類されます。登録区分の理解にはこの3形態を押さえることが先決です。

旅行業登録の5区分【比較表】

旅行業登録は業務範囲により5区分に分かれます。事業モデルに合った区分を選ぶことが、基準資産額・保証金・管理者資格のすべてを決定づけます。

区分 業務範囲 登録先 基準資産額
第1種海外・国内の全ての旅行業務(海外募集型企画旅行を含む)観光庁長官3,000万円
第2種国内募集型企画旅行、国内・海外の受注型企画旅行・手配旅行都道府県知事700万円
第3種自営業所の市町村+隣接市町村の国内募集型企画旅行、国内・海外の受注型・手配旅行都道府県知事300万円
地域限定自営業所の市町村+隣接市町村の国内旅行(全形態)都道府県知事100万円
旅行業者代理業所属旅行会社の代理業務(1社専属)都道府県知事制限なし

💡 実務のポイント:海外「募集型」は第1種のみ

よくある誤解として「第2種・第3種でも海外ツアーを企画できるのでは?」という質問がありますが、海外の募集型企画旅行を販売できるのは第1種のみです。ただし、海外の「受注型企画旅行」と「手配旅行」は第2種・第3種でも可能です。企業の海外研修の手配(受注型)や海外航空券の個別手配は、第2種・第3種でもできる点は重要です。

財産的基礎の要件【基準資産額と営業保証金】

旅行業登録では、旅行者保護の観点から基準資産額営業保証金(または弁済業務保証金分担金)の二つの財産要件を満たす必要があります。

基準資産額の計算方法

基準資産額は以下の計算式で求めます。

📐 基準資産額の計算式

基準資産額 =(資産の総額)−(負債の総額)−(営業保証金相当額)

この基準資産額が区分別の下限額(第1種3,000万円、第2種700万円、第3種300万円、地域限定100万円)以上であることが必須です。下限を満たさない場合、増資(払込資本金の増額)や借入金の返済等で基準資産額を引き上げる必要があります。

営業保証金と弁済業務保証金分担金

旅行業者は、旅行者が損害を被った場合の補償のため、営業保証金を主たる営業所最寄りの供託所に供託するか、旅行業協会に入会して弁済業務保証金分担金を納付するかのいずれかを選択します。

区分 営業保証金(最低額) 弁済業務保証金分担金(最低額)
第1種7,000万円1,400万円
第2種1,100万円220万円
第3種300万円60万円
地域限定100万円20万円

※前年度の取引額が7億円未満の場合の最低額。取引額に応じて加算あり。

📝 行政書士の視点:旅行業協会入会を強く推奨

旅行業協会(日本旅行業協会JATA、全国旅行業協会ANTA)に入会すれば、分担金は営業保証金の5分の1で済みます。第2種であれば1,100万円の供託が220万円で済むため、資金負担は大幅に軽減されます。加えて、業界団体としての情報支援・研修・トラブル対応サポートを受けられるため、実務上は入会が標準的な選択肢です。

旅行業務取扱管理者の選任義務

旅行業法第11条の2により、旅行業者等は営業所ごとに1名以上の旅行業務取扱管理者を選任する必要があります。管理者は国家資格者で、3種類に分かれます。

管理者資格の3区分と選任要件

営業所の業務範囲 選任できる管理者資格
海外旅行を取り扱う営業所総合旅行業務取扱管理者のみ
国内旅行のみ取り扱う営業所総合 または 国内旅行業務取扱管理者
拠点区域内の国内旅行のみ取り扱う営業所総合・国内 または 地域限定旅行業務取扱管理者

参考: 観光庁 旅行業法

管理者の選任数・兼任の可否

営業所に必ず1名以上の選任が必要で、社員10名以上の営業所では複数名の選任が必要です。また、管理者が欠けた場合、新たな旅行業務の契約ができなくなるため、早急に後任を選任しなければなりません。管理者は5年ごとに定期研修の受講義務があります(旅行業法第11条の2第7項)。

⚠️ 注意:管理者資格取得が開業の最大のハードル

総合旅行業務取扱管理者試験の合格率は例年10〜15%前後と難関です。開業予定者本人が未資格の場合、管理者資格を持つ人材を雇用することが実務的な選択肢となります。地域限定管理者試験は他2資格より難易度が低めで、地域限定旅行業のみを扱う場合には入門ルートとなり得ます。

5区分の登録要件まとめ【総合比較】

項目 第1種 第2種 第3種 地域限定
基準資産額3,000万700万300万100万
営業保証金7,000万1,100万300万100万
保証金分担金(協会入会時)1,400万220万60万20万
登録免許税9万9万9万1.5万
管理者資格(最低)総合国内国内地域限定
初期資金合計(協会入会想定)4,400万超930万超370万超125万超

※数字は万円単位。基準資産額+分担金+登録免許税+α(事務費等)の合算目安。

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申請手続きの流れ【7ステップ】

旅行業登録の申請から営業開始までの期間は、書類提出から約1〜2ヶ月ですが、事前準備(定款変更・管理者確保)を含めると3〜6ヶ月を見込んでください。

ステップ1:事業計画の策定と区分決定

扱いたい旅行の形態(募集型/受注型/手配のどれか)、対象地域(海外/国内/地域限定)から、必要な登録区分を決定します。5年後の事業拡大も見越した選択が必要です。

ステップ2:定款・事業目的の整備

法人申請の場合、定款の事業目的に「旅行業」または「旅行業法に基づく旅行業」の記載が必須です。記載がない場合は、株主総会決議と法人登記の変更が必要です。

ステップ3:旅行業務取扱管理者の確保

該当区分の管理者資格を有する者を1名以上確保します。経営者本人が未資格の場合、有資格者の雇用または外部委託先の確保が必要です。

ステップ4:基準資産額の確保

貸借対照表で区分別の基準資産額を満たしているか確認します。不足の場合は増資・借入返済等で調整します。

ステップ5:申請書類の作成・提出

登録先(第1種は観光庁、その他は主たる営業所の都道府県)に申請書を提出します。主要書類は以下のとおり。

ステップ6:営業保証金の供託(または分担金納付)

登録通知を受けた後、14日以内に営業保証金を供託するか、旅行業協会に入会して弁済業務保証金分担金を納付します。

ステップ7:登録完了・営業開始

供託済みの証明書を提出すると登録が完了し、登録票(または登録通知書)が交付されます。営業所への登録票掲示義務があります。

5年更新制と更新の要件

旅行業登録は登録日から5年間有効で、期間満了前に更新登録が必要です。更新忘れは登録失効に直結し、営業継続ができなくなります。

更新申請のタイミング

⚠️ 注意:更新忘れで登録失効

有効期間の満了日を過ぎると登録は失効し、再度新規登録が必要となります。基準資産額の再確認、営業保証金の再供託等、新規と同じ手続きを繰り返すことになるため、5年ごとの更新期限は社内カレンダーに必ず登録しておくべきです。

取得にかかる費用総額

📐 費用シミュレーション前提条件

  • 旅行業協会に入会し、分担金制度を利用する想定
  • 管理者は外部招聘ではなく自社内で確保(報酬費除く)
  • 2026年4月時点の数字
費目 第1種 第2種 地域限定
登録免許税9万円9万円1.5万円
弁済業務保証金分担金1,400万円220万円20万円
協会入会金・年会費50〜100万円30〜60万円10〜20万円
登記事項証明書・納税証明書等1〜2万円1〜2万円1〜2万円
行政書士報酬(相場)30〜50万円20〜35万円15〜25万円
合計(概算)約1,490〜1,560万約280〜326万約47〜68万

※基準資産額(自社保有)は含まず。分担金は最低額ベース。

📊 税理士の視点

営業保証金や分担金は預け金(差入保証金)として資産計上し、費用処理しません。旅行業協会の入会金は「長期前払費用」または「繰延資産」として5年程度で償却するのが一般的です。行政書士報酬・登録免許税は「開業費」として任意償却できるため、開業初年度の利益調整にも活用できます。資金調達と併せて、免許取得時に日本政策金融公庫の創業融資を検討する事業者も多く見られます。

旅行業と隣接する事業形態の違い

旅行業法の適用範囲は広いため、隣接する事業との線引きが重要です。

事業 必要な登録・免許
旅行の企画・販売旅行業登録(本記事で解説)
旅行サービス手配業(ランドオペレーター)旅行サービス手配業登録(別制度)
民泊(住宅宿泊事業)住宅宿泊事業法に基づく届出
タクシー・貸切バス事業道路運送法の許可(「一般旅客自動車運送事業の許可と運行管理者」参照)
ホテル・旅館の運営旅館業法の許可

ランドオペレーター事業は「旅行サービス手配業の登録と要件」、民泊届出は「住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出」でそれぞれ整理しています。

よくある質問

個人事業主でも旅行業登録は取れますか?
取得可能です。ただし基準資産額の確認方法が法人と異なり、個人の資産証明が必要です。法人化した方が信頼性・管理者選任の柔軟性等の観点から実務的に有利なケースが多く、旅行業開業を機に法人化する事業者も少なくありません。
第2種で登録し、後から第1種に変更できますか?
変更登録の手続きで可能です。ただし基準資産額・営業保証金(分担金)・管理者資格(総合)等、第1種の要件を全て満たす必要があります。変更登録は新規登録に準じた審査となり、追加の分担金納付や登録免許税が必要です。
地域限定旅行業の「隣接市町村」の範囲はどこまでですか?
旅行業法施行規則で定められた観光庁長官指定の拠点区域内です。自営業所が存する市町村+隣接する市町村が基本範囲で、さらに観光庁が地域公共交通会議等を通じて指定する「拠点区域」がある場合はその範囲まで認められます。地域限定管理者の配置が前提です。
1人で旅行業務取扱管理者と代表取締役を兼任できますか?
1つの営業所であれば兼任可能です。ただし営業所が複数ある場合、各営業所ごとに管理者を選任する必要があります(旅行業法施行規則第10条)。また営業所間の距離が近くても、兼任で複数営業所の管理者にはなれません。
旅行業登録を取得するとインバウンド事業もできますか?
海外からの訪日旅行者向けの手配・受注型企画旅行は第2種以上で可能です。海外からの募集型(訪日パッケージツアー)を販売するのは第1種に限られます。インバウンドの取り扱いは会話・契約とも外国語対応が必要なため、通訳案内士や外国人材確保(在留資格含む)も検討が必要です。
民泊(Airbnb等)を運営するのに旅行業登録は必要ですか?
不要です。民泊は住宅宿泊事業法に基づく届出(民泊新法)または旅館業法の許可が必要で、旅行業登録とは別制度です。ただし自社で旅行商品を企画して民泊施設とセット販売する場合は、旅行業登録が追加で必要となります。
ランドオペレーター(旅行サービス手配業)と旅行業の違いは?
旅行業は旅行者に対して旅行商品を販売する事業、ランドオペレーターは旅行業者に対して運送・宿泊等の手配を行う事業です。ランドオペレーターは2018年新設の「旅行サービス手配業登録」が必要で、基準資産額等の要件は旅行業より緩やかです。両方を同時に行う事業者は両方の登録が必要です。

まとめ:区分選定が旅行業登録の出発点

📋 この記事のポイント

  • 旅行業登録は5区分(第1種〜第3種・地域限定・代理業)あり、業務範囲で決まる
  • 基準資産額は100万円(地域限定)〜3,000万円(第1種)
  • 営業保証金か弁済業務保証金分担金のいずれかを供託・納付(協会入会で1/5に軽減)
  • 営業所ごとに旅行業務取扱管理者(総合/国内/地域限定)の選任が必須
  • 5年更新制で、更新時も基準資産額の充足が再審査される
  • 地域限定旅行業は基準資産額100万円で参入可能、着地型観光の入口として有力
  • 隣接事業(民泊、ランドオペレーター、運送)との線引きを事前に整理する

✅ 次のアクション

  • 自社の事業モデルから必要な登録区分を特定する
  • 旅行業務取扱管理者の確保(雇用・試験受験のいずれか)を計画する
  • 基準資産額の充足状況を決算書で確認する
  • 定款の事業目的に「旅行業」が含まれているか確認する
  • 旅行業協会(JATA・ANTA)への入会を検討する
  • 専門家(行政書士・税理士)に初期相談して申請スケジュールを逆算する

旅行業登録は、業務範囲・財産要件・管理者資格の3軸が絡み合う複合的な許認可です。鮎澤パートナーズでは行政書士が登録申請、税理士が事業計画・資金調達、社労士が従業員雇用までワンストップで対応しています。関連する許認可として、許認可全般の体系は「建設業許可の要件と申請フロー」、外国人雇用・インバウンド対応は「在留資格の種類と選定ガイド」でそれぞれ解説しています。観光・宿泊周辺の廃棄物処理については「産業廃棄物収集運搬業の許可」もご覧ください。

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