【行政書士×税理士が解説】住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出手続き|180日ルール・上乗せ条例・申請フローを完全整理

監
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出手続き|180日ルール・上乗せ条例・申請フローを完全整理
自宅や所有物件で民泊を始めたい不動産オーナー・創業者に向けて、住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出要件、年間180日ルール、東京23区を中心とする自治体の上乗せ条例、家主居住型/不在型の違い、申請フローを行政書士目線で整理します。この記事を読めば、自分の物件で民泊が合法的にできるかを判定し、届出を進められます。
🏆 結論:民泊は「180日+上乗せ条例+管理業委託」の3点を押さえる
住宅宿泊事業法(民泊新法)は、旅館業法より緩い手続きで民泊を始められる届出制の制度です。年間180日以内の営業制限があり、さらに多くの自治体が独自の上乗せ条例で営業日(週末のみ等)・営業区域を制限しています。家主不在型では住宅宿泊管理業者への委託が必須で、宿泊者名簿管理・近隣説明・2ヶ月ごとの定期報告等の義務があります。届出に手数料はかかりませんが、民泊制度運営システムへの登録が必要です。
住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?2018年の制度新設背景
住宅宿泊事業法(以下「民泊新法」)は、2018年6月15日施行の法律で、住宅を活用して旅行者等に有償で宿泊サービスを提供する事業を届出制で可能にしました。施行前は民泊サービスの提供には旅館業法の許可が必要でしたが、取得ハードルが高くAirbnb等のプラットフォーム普及に伴う「違法民泊」が急増していた状況を受け、新たな制度として整備されました。
観光庁の観光庁 民泊制度ポータルサイトに全国の届出情報・運用実態が公開されています。
3つの民泊制度の違い
日本の民泊関連制度は3つあり、目的に応じて使い分けます。
| 制度 |
根拠法 |
手続き |
日数制限 |
| 民泊新法 | 住宅宿泊事業法 | 届出 | 年180日以内 |
| 特区民泊 | 国家戦略特区法 | 認定 | なし(ただし2泊3日以上の滞在要件) |
| 旅館業法(簡易宿所) | 旅館業法 | 許可 | なし |
💡 実務のポイント:180日を超えるなら旅館業法
年間180日以上の稼働で収益を最大化したい場合、民泊新法ではなく旅館業法の簡易宿所許可を取得する必要があります。許可のハードルは上がりますが、営業日数制限がなく通年運営が可能です。特区民泊は大阪市・東京都大田区など特定地域のみで利用可能で、2泊3日以上の滞在要件がある代わりに日数制限なしです。
民泊事業を業務提携先に運営委託する場合は、仲介・手配業者との関係整理が必要です。ランドオペレーター(旅行サービス手配業)との業務連携を考える場合は「旅行サービス手配業の登録手続き」、観光バスとの連携なら「一般旅客自動車運送事業の許可と運行管理者」もご確認ください。
民泊新法の3つの事業類型
民泊新法では、関係事業者を3つの類型に分けて規制しています。それぞれ届出(登録)先・要件が異なります。
| 事業類型 |
役割 |
行政手続き |
| 住宅宿泊事業者 | 民泊施設を運営するオーナー | 都道府県知事等への届出 |
| 住宅宿泊管理業者 | 家主不在型の運営代行 | 国土交通大臣への登録 |
| 住宅宿泊仲介業者 | Airbnb等の予約仲介サイト | 観光庁長官への登録 |
本記事は住宅宿泊事業者(運営オーナー)の届出手続きを中心に解説します。
180日ルールとは?日数のカウント方法
民泊新法最大の特徴が、年間180日以内の営業日数制限です(法第2条第3項)。
カウントの基本
- 対象期間:毎年4月1日正午〜翌年4月1日正午
- 1日のカウント基準:宿泊サービスを提供した「日」単位
- 180日を超えるとその年度の営業は停止しなければならない
- 翌年度は再び180日の枠がリセットされる
カウントの具体例
🧮 日数カウント例
・1泊2日の宿泊:1日としてカウント
・2泊3日の宿泊:2日としてカウント
・チェックイン4月1日11時→チェックアウト4月2日10時:前年度の1日としてカウント
・自治体の上乗せ条例で「週末のみ営業」となっている場合、制限された日は稼働できず180日枠を使い切れない
180日ルールの収益シミュレーション
年間180日を上限とする場合の収益見込みは以下のようになります。上乗せ条例がない前提で最大稼働したケース。
| パターン |
1泊単価 |
営業日数 |
年間売上(概算) |
| 郊外・小規模戸建(平日ベース) | 8,000円 | 150日 | 120万円 |
| 都心・1LDKマンション | 15,000円 | 180日 | 270万円 |
| 観光地・戸建(インバウンド) | 25,000円 | 180日 | 450万円 |
※売上から仲介手数料(Airbnb等:10〜15%)、清掃費、管理委託費、光熱費、減価償却費等が差し引かれます。
自治体の上乗せ条例【東京23区の実例】
民泊新法第18条により、自治体は地域の生活環境保全のため独自の上乗せ条例で営業を制限できます。東京23区では大きな差があります。
東京23区の規制パターン
| 規制レベル |
主な区 |
規制内容 |
| 上乗せなし | 墨田・豊島・北・葛飾・江戸川 | 180日までフル稼働可能 |
| 用途地域で区分 | 渋谷・世田谷・品川・文京等 | 住居専用地域等で営業日が金土日祝のみに制限 |
| 区内全域で制限 | 中央・目黒・荒川・江東 | 週末のみ、または月曜昼〜土曜昼の営業制限 |
| 季節限定 | 港・新宿の一部地域 | 春・夏・冬休みのみ等 |
⚠️ 注意:京都市は住居専用地域で実質60日制限
京都市は全国で最も厳しい部類の上乗せ条例を施行しており、住居専用地域では年間営業期間を1〜2月の約60日間に限定しています(町家は例外で180日可)。また、苦情対応のため管理者が半径800m以内に駐在する要件も定めています。京都で民泊を検討する場合、旅館業法の簡易宿所許可の方が現実的な選択肢となるケースが多いです。
上乗せ条例の典型的な規制類型
- 曜日制限:平日営業禁止(金土日祝のみ可)
- 期間制限:特定月のみ営業可(夏休み・年末年始等)
- 区域制限:住居専用地域・文教地区では全面禁止
- 家主不在型の制限:家主居住型は制限なしだが、不在型は厳しい規制
- 届出前の近隣説明義務:15日前までに近隣住民への事前説明
住宅(物件)の要件
民泊新法で対象となる「住宅」には、法第2条第1項に基づく明確な要件があります。
住宅要件の3つの柱
- 現に人の生活の本拠として使用されている家屋(家主居住型)、または従前の所有者の生活の本拠として使用されていた家屋(空き家含む)
- 台所・浴室・便所・洗面設備の4設備がすべて備わっていること
- 人の居住の用に供されていると認められること(実態として住宅であること)
マンション規約の確認
分譲マンションで民泊を行う場合、管理規約で民泊営業が禁止されていないかを必ず確認します。国土交通省が管理規約のモデル改訂で「住宅宿泊事業の用に供さない」条項の追加を示したため、多くのマンションで実質的に民泊禁止となっています。規約違反で民泊を行うと、管理組合からの差止請求・損害賠償の対象となります。
家主居住型と家主不在型の違い
民泊新法では、運営形態を家主居住型と家主不在型に区分し、要件を変えています。
| 項目 |
家主居住型 |
家主不在型 |
| 定義 | 家主が住宅内に居住 | 家主が住宅内に不在 |
| 管理業委託 | 原則不要(家主自身が管理) | 必須(管理業者への委託) |
| 上乗せ条例の適用 | 緩和される傾向 | 厳しく制限される傾向 |
| 収益モデル | 空き部屋の副業利用 | 投資物件としての運用 |
💡 実務のポイント:家主不在型は管理業者委託が前提
家主不在型を選ぶ場合、住宅宿泊管理業者(国交大臣登録)への管理委託が法令上必須です。管理委託費は売上の15〜25%程度が相場で、収益性に直接影響します。自分で管理業登録を取得する道もありますが、宅建業者または賃貸住宅管理業者等の資格要件があり、ハードルは高めです。
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届出手続きの流れ【7ステップ】
民泊新法の届出は、主たる物件所在地の都道府県知事(または保健所設置市・特別区の長)に行います。届出自体に手数料はかかりませんが、申請準備に時間がかかります。
ステップ1:物件の法令適合性チェック
用途地域、マンション規約、建築基準法、消防法等の適合性を確認します。ここで不適合なら民泊は断念するか、旅館業法許可を検討します。
ステップ2:自治体への事前相談
物件所在地の自治体(民泊担当課・保健所)に事前相談。上乗せ条例の適用有無、必要書類、独自の運用ルールを確認します。
ステップ3:家主居住型・不在型の決定と管理業者の選定
不在型の場合、住宅宿泊管理業者を選定し、管理委託契約を締結します。
ステップ4:消防設備の設置
住宅宿泊事業を行う家屋には、住宅用火災警報器・消火器等の消防設備設置が必要です。消防署の事前確認を受けます。
ステップ5:近隣住民への事前説明
自治体の条例で近隣説明が義務付けられている場合、届出の15日前まで等の期限内に説明を実施。説明の記録・署名を保管します。
ステップ6:届出書類の作成・民泊制度運営システムでの届出
観光庁の民泊制度運営システムでオンライン届出を行います(観光庁 民泊制度ポータルサイトの案内ページからアクセス)。必要書類は以下のとおり。
- 住宅宿泊事業届出書
- 住宅の登記事項証明書
- 住宅の図面(間取り図・付近の地図)
- 賃貸物件の場合、賃貸人の承諾書・分譲マンションの場合、規約の写し
- 消防法令適合通知書
- 委託契約書(家主不在型の場合)
- 誓約書(欠格事由非該当の誓約)
- 住民票の写し(個人)、登記事項証明書(法人)
ステップ7:届出番号の取得・営業開始
届出受理後、届出番号が付与されます。この番号をAirbnb等の仲介サイトに登録しないと掲載できないため、番号取得後にOTA(オンライン旅行会社)での販売が可能となります。
届出後の継続義務
届出後も、以下の継続的な義務があります。
- 宿泊者名簿の作成・3年間保存(氏名・住所・職業・国籍・旅券番号)
- 2ヶ月ごとの定期報告(宿泊日数・宿泊者数・国籍別人数を民泊制度運営システムから報告、偶数月の15日まで)
- 標識の掲示(届出番号を玄関等に掲示)
- 外国人観光客への案内(外国語での宿泊施設・交通機関の案内)
- 苦情対応の体制整備
- 非常用照明・避難経路の案内
- 衛生確保措置(清掃・換気)
- 届出事項の変更届(住宅・管理業者等の変更時)
⚠️ 注意:定期報告を怠ると30万円以下の罰金
2ヶ月ごとの定期報告を怠ると、民泊新法違反として30万円以下の罰金の対象となります。また、無届営業や虚偽届出は6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金の対象です。実際に自治体による調査や近隣からの通報により違反が発覚した事例が多数あるため、法令遵守は必須です。
民泊の税務上の取扱い
民泊収益は所得税・住民税の対象となり、所得区分は運営形態により異なります。
所得区分の判定
| 運営形態 |
所得区分 |
| 事業として継続的に運営 | 事業所得 |
| 副業・規模が小さい | 雑所得 |
| 家主不在型で他者に委託運営 | 原則、不動産所得ではなく事業所得または雑所得 |
📊 税理士の視点
民泊収益は原則として不動産所得ではなく事業所得または雑所得として取り扱われる点が重要です(役務提供を伴うため)。これは通常の賃貸経営(不動産所得)と所得区分が異なるため、青色申告特別控除(最大65万円)や損益通算の扱いが変わります。消費税については、課税売上高1,000万円超で納税義務が生じ、インバウンド宿泊(訪日外国人の国内消費)は国内取引として課税対象です。住宅宿泊事業で発生する仲介手数料、清掃費、管理業委託費等の経費を適切に計上することで、課税所得を抑えることができます。
取得にかかる費用の総額
📐 費用シミュレーション前提条件
- 都心のマンション1室で家主不在型の民泊を開業する想定
- 消防設備・家具・備品は自費調達
- 2026年4月時点の水準
| 費目 |
金額(目安) |
| 届出手数料 | 0円 |
| 消防設備設置費 | 10〜30万円 |
| 家具・家電・備品 | 50〜150万円 |
| リネン・アメニティ初期分 | 5〜15万円 |
| スマートロック・チェックインシステム | 5〜15万円 |
| 各種証明書取得費 | 5,000〜1万円 |
| 行政書士報酬(届出代行) | 10〜20万円 |
| 合計(概算) | 約80〜230万円 |
月額ランニング費用としては、管理業委託費(売上の15〜25%)、光熱費(2〜3万円)、仲介サイト手数料(売上の3〜15%)、清掃費(1泊5,000〜1万円)が発生します。
旅館業法との選択判断
民泊新法と旅館業法(簡易宿所)のどちらを選ぶかは、収益計画と物件の状況により異なります。
| 観点 |
民泊新法が適する |
旅館業法が適する |
| 営業日数 | 副業・180日以内で十分 | 通年営業・収益最大化したい |
| 物件 | 自宅・空き家の活用 | 投資物件・専用施設 |
| 初期投資 | 抑えたい(100〜200万円) | 本格投資可能(500万〜数千万円) |
| 規制対応 | 用途地域緩め(住居専用もOK) | 住居専用地域では原則不可 |
| 手続き | 届出のみ(1〜2ヶ月) | 許可制(3〜6ヶ月) |
よくある質問
マンションの1室でも民泊は可能ですか?
管理規約で禁止されていなければ可能です。ただし、国交省モデル規約改訂後、多くの分譲マンションで「住宅宿泊事業の用に供さない」旨の規約条項が追加されているため、事前に規約確認が必須です。規約に禁止条項がある場合、管理組合の合意で変更することは可能ですが、ハードルは高いです。
賃貸物件を借りて民泊として運営できますか?
賃貸借契約書の使用目的が「居住用」となっている場合、家主の承諾書が必須です。使用目的に反する用途は契約違反(転貸の禁止規定にも抵触)となり、契約解除のリスクがあります。民泊運営を認める賃貸物件は限られており、事前確認と明確な承諾書取得が必要です。
180日を超えて営業したい場合はどうすればいいですか?
旅館業法の簡易宿所許可を取得する必要があります。住居専用地域では取得できないため、用途地域の制約を受けます。または国家戦略特区内では特区民泊の認定(2泊3日以上の滞在要件あり)も選択肢です。
家主居住型で自分が旅行中の期間だけ民泊に貸し出せますか?
可能です。このケースでは家主不在型として扱われ、管理業者への委託が必要です。または、旅行中のみ管理業者に委託契約を結ぶ形で対応する事業者もいます。短期間でも180日ルールのカウントは発生するため、年間計画の管理が重要です。
外国人宿泊者の旅券(パスポート)確認は必須ですか?
必須です。旅館業法と同様に、宿泊者名簿への国籍・旅券番号の記載が義務付けられています。外国人宿泊者の場合、チェックイン時に旅券の提示を求め、コピーを取ることが実務上の標準対応です。名簿は3年間保存する必要があります。
Airbnbでの運営は適法ですか?
届出番号を取得し、Airbnbにその番号を登録すれば適法です。番号未登録の物件はAirbnbに掲載できない仕組みになっています。また、Airbnb側もホストの法令遵守をチェックしており、無届物件は掲載停止となります。
民泊と旅行業は同時に行う必要がありますか?
まとめ:民泊新法は「物件適合性」から逆算する
📋 この記事のポイント
- 民泊新法は2018年6月施行、年間180日以内の営業制限あり
- 事業類型は3つ(住宅宿泊事業者・管理業者・仲介業者)、本記事は運営オーナー向け
- 自治体の上乗せ条例で営業日が大きく制限されるため、物件所在地の規制確認が最優先
- 家主不在型は住宅宿泊管理業者への委託が必須
- マンション規約、賃貸契約書の使用目的で民泊不可となるケースが多い
- 2ヶ月ごとの定期報告・宿泊者名簿の3年保存が継続義務
- 180日超の通年営業なら旅館業法、特定エリアなら特区民泊を検討
- 届出手数料は無料だが、消防設備・家具備品・管理業委託等で100〜200万円の初期投資が必要
✅ 次のアクション
- 物件所在地の自治体サイトで上乗せ条例を確認する
- マンション管理規約・賃貸借契約書の使用目的を確認する
- 家主居住型と不在型のどちらで運営するかを決定する
- 180日稼働と旅館業法通年稼働の収益比較を行う
- 消防設備・家具備品の手配計画を立てる
- 専門家(行政書士・税理士)に初期相談して届出・税務設計を逆算する
民泊新法の届出は、単なる書類提出ではなく、物件適合性・自治体条例・税務・収支計画が一体となった事業設計です。鮎澤パートナーズでは行政書士が届出申請、税理士がインバウンド対応の税務・消費税、社労士が従業員雇用までワンストップで対応しています。関連する許認可として、旅行商品の企画販売を行う場合は「旅行業登録の種類と申請手続き完全ガイド」、ランドオペレーター業務を行う場合は「旅行サービス手配業の登録手続き」、許認可全般の体系は「建設業許可の要件と申請フロー」、インバウンド向け外国人雇用は「在留資格の種類と選定ガイド」で解説しています。
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