【行政書士×税理士が解説】一般旅客自動車運送事業(タクシー・バス)の許可と運行管理者|要件・期間・費用を完全整理

監
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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一般旅客自動車運送事業(タクシー・バス)の許可と運行管理者|要件・期間・費用を完全整理
タクシー・バス事業を新規で立ち上げたい経営者に向けて、道路運送法に基づく3種類の許可(乗用・乗合・貸切)の要件、営業所・車庫・車両の基準、運行管理者と整備管理者の選任義務を行政書士の視点で整理します。この記事を読めば、自社がどの許可区分に該当するか、必要な人員・資金・期間の全体像を把握できます。
🏆 結論:旅客運送は「許可+2人の管理者」で始まる
一般旅客自動車運送事業は道路運送法第4条に基づく許可制で、乗用(タクシー)・乗合(路線バス等)・貸切(貸切バス)の3区分があります。営業所ごとに運行管理者1名以上+整備管理者1名の選任が法令上必須で、許可取得には3〜6ヶ月、開業時の所要資金は1,500万円〜数千万円規模です。区分により台数・車両定員・法令試験の要否が異なるため、初期設計を誤ると許可が下りません。
一般旅客自動車運送事業とは?3つの区分
一般旅客自動車運送事業とは、他人の需要に応じて、有償で旅客を運送する事業のうち、乗用・乗合・貸切のいずれかに該当するものを指します。道路運送法第3条第1号で定義され、同法第4条により国土交通大臣(実務上は地方運輸局長)の許可が必要です。詳細は国土交通省 タクシー事業についてのページをご参照ください。
「自家用車で友人を送って実費をもらう」ような行為は事業とみなされませんが、継続反復して不特定多数から運賃を受け取る場合はこの許可が必要になります。いわゆる「白タク行為」は道路運送法第78条違反で、3年以下の懲役または300万円以下の罰金の対象です。類似の運送業として「一般貨物自動車運送事業の許可要件」は人ではなく貨物を運ぶ事業ですが、運行管理・整備管理の枠組みは旅客運送事業と共通する部分があります。
3つの区分の違い【比較表】
| 区分 |
正式名称 |
車両定員 |
代表的な事業 |
| 乗用 | 一般乗用旅客自動車運送事業 | 10人以下 | 法人タクシー・個人タクシー・ハイヤー・介護タクシー |
| 乗合 | 一般乗合旅客自動車運送事業 | 制限なし(通常11人以上) | 路線バス・高速バス・コミュニティバス |
| 貸切 | 一般貸切旅客自動車運送事業 | 11人以上 | 観光バス・送迎バス(空港送迎等) |
💡 実務のポイント
「定員10人のワゴン車で団体客を運ぶ」場合は乗用(タクシー)、「定員15人のマイクロバスで同じ運送をする」場合は貸切となり、許可区分も運行管理者資格も異なります。車両選定の段階で区分を誤ると、事業計画全体を組み直すことになるため、必ず先に区分を確定させてください。
どの区分の許可が必要か?判定フロー
自社の事業がどの区分に該当するかは、①車両の乗車定員、②契約形態(貸切か個別か)、③運行形態(路線の有無)の3軸で判定します。
判定表:あなたの事業はどの区分?
| 事業の特徴 |
乗用 |
乗合 |
貸切 |
| 個別の顧客ごとに運賃を受ける | ○ | ○ | × |
| 1契約で車両を貸切 | ○ | × | ○ |
| 決まった路線を定時運行 | × | ○ | × |
| 車両定員11人以上を使用 | × | ○ | ○ |
| 車両定員10人以下を使用 | ○ | △ | × |
※乗合の定員10人以下は、地域公共交通会議等での合意がある場合に限る例外扱い。
📝 行政書士の視点
弊所で過去に相談があった「ホテル送迎用にマイクロバスを運行したい」というケースでは、宿泊客から別途運賃を受け取らないため道路運送法第78条第2号の自家輸送と整理し、許可不要と判断しました。一方で「送迎料金を宿泊料金と別建てで徴収する」設計では貸切の許可が必要となります。料金の設計と許可区分は連動するため、ビジネスモデル設計の初期段階で専門家に確認することをお勧めします。
許可取得の要件【5つの柱】
許可を取得するには、道路運送法第6条に基づく以下の5要件を満たす必要があります。乗用(法人タクシー)の場合を中心に、要件の中身を整理します。
要件1:営業所
営業所は、市街化調整区域内にないこと、都市計画法・建築基準法に抵触しないことが求められます。土地・建物は自己所有または3年以上の契約期間を有する賃貸借契約のいずれかが必要です。営業区域内に設置することが原則で、東京23区・武蔵野市・三鷹市は1つの営業区域として扱われます。
要件2:車庫
車庫は以下を満たすこと。道路運送法施行規則および旅客自動車運送事業運輸規則に具体的な基準が定められています(e-Gov「道路運送法」)。
・原則として営業所に併設(併設できない場合は営業所から直線2km以内)
・車両と車庫境界、車両相互間が50cm以上
・全配置車両を収容できる面積
・出入口が幅員5.5m以上の道路に面する
営業所・車庫の物件選定は、許認可全般で難易度が高いプロセスです。建設業許可の要件と申請フローにおいても同様に、用途地域と建築基準法の適合性チェックが最初の関門となります。
要件3:車両
乗用(法人タクシー)は1営業所あたり5両以上の配置が必要です。個人タクシーは1両。貸切バスは営業所ごとに5両以上(ただし地域により3両の場合あり)で、一部地域では期間限定の需給調整規制があります。
要件4:資金
開業までに必要な資金、開業後2ヶ月の運転資金、車両取得費を合計した「所要資金」の100%以上を自己資金で確保していることが要件です。残高証明書は申請時と処分時の2回提出します。
要件5:人的要件(欠格事由・法令試験)
申請者(法人の場合は常勤役員)が道路運送法第7条の欠格事由に該当しないこと、および法令試験に合格することが求められます。試験は奇数月に実施され、運輸局ごとに出題範囲・合格基準が定められています。
⚠️ 注意
貸切バス事業の許可は5年ごとの更新制です(2017年改正以降)。更新時には過去の運行実績や安全管理状況が審査され、違反歴があると更新不可となります。更新忘れは事業停止に直結するため、許可取得後も期限管理を徹底してください。
運行管理者の選任義務【車両台数別一覧】
運行管理者は、営業所ごとに事業用自動車の運行の安全を確保する責任者です。道路運送法第23条および旅客自動車運送事業運輸規則第47条の9により、営業所ごとに車両台数に応じた人数の選任が義務付けられています。
旅客運送事業の運行管理者選任数
| 事業区分 |
選任が必要な条件 |
必要人数 |
| 乗用(タクシー) | 定員10人以下の車両5台以上 | 〜39台:1名 / 40〜79台:2名 / 80〜119台:3名 (車両数÷40の整数部+1) |
| 乗合・貸切(バス) | 定員11人以上の車両1台以上 | 〜39台:1名 / 40〜59台:2名 / 60〜99台:3名 (40台以降、40ごとに1名追加) |
参考: 国土交通省 タクシー事業について
運行管理者の資格要件
運行管理者になるには、以下のいずれかの方法で運行管理者資格者証を取得する必要があります。
💡 取得ルート
①運行管理者試験に合格(受験には1年以上の実務経験または基礎講習修了が必要)
②実務経験5年+講習5回以上(うち1回は基礎講習)
旅客運送事業の運行管理者は、旅客用の資格者証が必要です。貨物用資格では選任できない点に注意が必要です。
統括運行管理者の選任
1つの営業所に運行管理者が複数いる場合、統括運行管理者1名を選任する必要があります(旅客自動車運送事業運輸規則第47条の7)。統括運行管理者は他の運行管理者を指揮監督し、営業所における運行管理の責任者となります。
軽貨物運送の場合は運行管理者の選任義務はなく、届出のみで開業可能です。詳細は「軽貨物運送事業の届出と要件」で整理しています。
整備管理者の選任義務
整備管理者は、事業用自動車の点検整備と車庫管理を担う責任者です。道路運送車両法第50条に基づき、以下の要件に該当する営業所ごとに1名の選任が義務付けられています。
整備管理者の選任基準
| 車両 |
選任基準 |
| 定員11人以上のバス | 1両以上で選任 |
| タクシー(乗用) | 5両以上で選任 |
整備管理者の資格要件
整備管理者になるには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 3級以上の自動車整備士資格を有する者
- 事業用自動車の整備実務経験2年以上+整備管理者選任前研修を修了した者
🧮 シミュレーション:タクシー10両で新規開業する場合
・運行管理者:1名(10台は39台以下のため1名)
・整備管理者:1名(5両以上のため選任義務あり)
・2役の兼任は原則可能(ただし運行管理業務に支障が出ない範囲で)
・補助者を選任すれば運行管理者の負担軽減が可能
許可申請の手続きと期間
許可申請から営業開始までの全体の流れは、おおむね4〜6ヶ月を見込んでください。貸切バスは5年更新制のため、更新期限の管理も重要です。
手続きのタイムライン
| 時期 |
実施事項 |
留意点 |
| −6ヶ月 | 営業所・車庫の物件選定、事業計画策定 | 用途地域と建築基準法の適合性確認 |
| −4ヶ月 | 申請書類作成・残高証明書取得(1回目) | 所要資金の100%確保が必要 |
| −3〜4ヶ月 | 運輸局へ申請書提出 | 運輸局の受付印で標準処理期間開始 |
| −2ヶ月 | 法令試験受験(奇数月実施) | 不合格の場合は翌々月再受験 |
| −1ヶ月 | 許可処分、残高証明書取得(2回目) | 許可書交付後、登録免許税納付 |
| 開業時 | 運行管理者・整備管理者選任届、運賃認可、車両登録(緑ナンバー) | 運輸開始前確認を受けてから営業開始 |
登録免許税
許可取得時には、登録免許税法に基づき1件につき3万円(バス)・1万5,000円(タクシー)の登録免許税を納付します。
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所要資金の目安と内訳
許可取得時に必要となる所要資金は、車両費+人件費(2ヶ月分)+営業所・車庫費+諸経費で構成されます。事業規模により大きく異なりますが、目安は以下のとおりです。
所要資金シミュレーション(3パターン)
📐 シミュレーション前提条件
- 車両は中古(タクシー)/ 新車(貸切バス)を想定
- 営業所・車庫は賃貸、敷金・礼金各2ヶ月
- 人件費は運転者月25万円×2ヶ月分で計算
| 項目 |
タクシー5両 |
タクシー10両 |
貸切バス5両 |
| 車両取得費 | 500万円 | 1,000万円 | 7,500万円 |
| 営業所・車庫(敷金含む) | 200万円 | 300万円 | 400万円 |
| 人件費(2ヶ月分) | 250万円 | 500万円 | 400万円 |
| 任意保険・車検・諸経費 | 150万円 | 300万円 | 500万円 |
| 合計(目安) | 1,100万円 | 2,100万円 | 8,800万円 |
※概算値です。地域・車両選定・人員構成により異なります。正確な試算は専門家にご相談ください。
📊 公認会計士の視点
所要資金は「自己資金で100%確保」が要件ですが、車両はリース契約を活用すれば初期投資を抑えられます。また、バス車両は中小企業経営強化税制の対象資産になり得るため、即時償却または10%税額控除(資本金3,000万円以下)が選択可能です。資金調達と税務戦略を連動させることで、開業初年度のキャッシュアウトを大きく圧縮できます。
運賃・料金の認可
旅客運送事業の運賃・料金は、道路運送法第9条〜第9条の3に基づく認可または届出が必要です。区分によって扱いが異なります。
| 区分 |
運賃の扱い |
| 乗用(タクシー) | 公定幅運賃の範囲内で認可申請(地域ごとに上限・下限が定められる) |
| 乗合(路線バス等) | 国土交通大臣の認可 |
| 貸切(観光バス等) | 公示された運賃・料金を下限とし、事前届出で運用 |
社会保険と労務管理の注意点
旅客運送事業は運転者の勤務が長時間に及ぶ特性上、社会保険加入と労務管理が許可審査の対象になります。
社会保険加入の要件化
道路運送法の許可基準において、社会保険(健康保険・厚生年金保険)・労災保険・雇用保険の加入義務者が加入していることが明示的に求められます。申請時に新規適用届の写しまたは加入計画の宣誓書を提出します。
🔷 社労士の視点
運転者の拘束時間・休息期間は「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)で厳しく制限されています。2024年4月の改正により、1日の拘束時間上限がタクシーで原則13時間・バスで原則13時間に短縮されました。違反すると運輸局の監査対象となり、車両使用停止処分のリスクがあります。就業規則と勤務シフトの両輪で法令遵守体制を構築することが重要です。
許可後の義務と監査リスク
許可取得後も、事業者は多数の法令上の義務を継続して履行する必要があります。主な義務は以下のとおりです。
- 運行記録計(タコグラフ)による運行記録の保存(1年間)
- 運転者に対する指導教育(年間12項目以上)
- 点呼の実施(乗務前・乗務後・途中点呼)とその記録保存
- 事業報告書・輸送実績報告書の毎年度提出
- 運行管理者・整備管理者の講習受講(2年に1回)
- 定期監査・巡回指導への対応
違反が発覚した場合、行政処分(車両使用停止・事業停止・許可取消)のほか、累積点数制度により重い処分が科されるため、継続的なコンプライアンス体制の整備が不可欠です。
よくある質問
自家用車(白ナンバー)で送迎を有償で引き受けると違法ですか?
継続反復して不特定多数から運賃を受け取る場合は、道路運送法第78条違反(白タク行為)となり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金の対象です。ただし、バス・タクシーが運行されていない過疎地域等では、自家用有償旅客運送制度(同法第78条第2号)により市町村・NPO法人が登録を受けて運送できる仕組みがあります。
運行管理者と整備管理者は兼任できますか?
資格要件が異なるため、両方の資格を取得すれば兼任は可能です。ただし小規模な営業所での兼任は業務負荷の観点から慎重に判断すべきで、運行管理に支障をきたさない範囲に限られます。実務上は補助者を選任して負担軽減を図るケースが一般的です。
個人タクシーの許可要件はどう違いますか?
個人タクシーは1人1車制で、年齢制限(原則65歳未満)、法人タクシー等での10年以上の運転経験、直近3年間の無事故・無違反等の厳格な要件が課されます。車両は1両で足り、営業所と自宅を兼ねることができる点は法人タクシーと異なります。近年は地域により新規参入が制限されているため、事前に運輸局への確認が必要です。
貸切バスの5年更新で不許可になることはありますか?
あります。過去5年間に重大事故、車両使用停止処分、労務違反等があれば更新不許可となる可能性が高いです。更新時には直近の安全性評価認定(セーフティバス)の有無や運行管理体制も審査対象となるため、平時からの安全管理体制が更新可否を左右します。
法令試験はどれくらい難しいですか?
運輸局により異なりますが、道路運送法、車両法、労働基準法、改善基準告示等の知識が問われ、合格率は概ね70〜80%です。基礎知識がない状態で臨むと不合格となるケースが多く、許可取得が遅れる大きな要因となります。市販の対策テキストと過去問演習で準備することをお勧めします。
ライドシェア(日本版ライドシェア)は旅客運送事業の許可が必要ですか?
2024年4月に制度化された日本版ライドシェアは、既存のタクシー事業者が運行管理責任を負う形で一般ドライバーを活用する仕組みです。自家用車活用事業として道路運送法第78条第3号の許可が必要で、タクシー事業者による運行管理・車両整備・事故時の責任が前提となります。個人が単独で運行することはできません。
タクシー許可と介護タクシー許可は別ですか?
介護タクシーは正式には一般乗用旅客自動車運送事業(福祉限定)で、タクシー許可の一種です。ただし車両を福祉車両(車いす乗降リフト等)に限定する代わりに、所要資金・車両台数等の要件が緩和されています。一般タクシー許可から福祉限定への変更、またはその逆は事業計画変更認可の対象となります。
まとめ:許可取得は4〜6ヶ月の逆算設計がカギ
📋 この記事のポイント
- 一般旅客自動車運送事業は乗用(タクシー)・乗合(路線バス)・貸切(観光バス)の3区分があり、定員・契約形態で決まる
- 許可要件は営業所・車庫・車両・資金・人的要件の5要素で、所要資金は自己資金100%確保が必要
- 運行管理者は営業所ごとに1名以上(40台ごとに追加)、整備管理者はバス1両以上・タクシー5両以上で選任
- 許可取得には4〜6ヶ月、貸切バスは5年ごとの更新制
- 社会保険加入・改善基準告示遵守は許可後も継続的にチェックされる
- ライドシェアや介護タクシーなど新領域も既存許可の枠組みに連動する
✅ 次のアクション
- 自社の事業が乗用・乗合・貸切のどれに該当するか判定表で確認する
- 営業所・車庫の候補地について用途地域と建築基準法の適合性を調査する
- 所要資金シミュレーションで自己資金の必要額を算出する
- 運行管理者・整備管理者の候補者を社内から選定または外部採用の準備を進める
- 専門家(行政書士・税理士・社労士)へ初期相談し、許可申請スケジュールを逆算する
旅客運送事業の許可申請は、単なる書類作成にとどまらず、会社設立・税務設計・社会保険適用・労務管理が絡み合う複合的なプロジェクトです。鮎澤パートナーズでは行政書士・税理士・社労士・公認会計士が連携し、事業計画の策定から許可取得、開業後の運営支援までワンストップで対応しています。
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